Archive for the ‘コラム~通関手続、輸出入トラブル~’ Category
最新の裁判例その3
ECサイトの利用の拡大や副業の推進等により、輸入や輸出に関わる個人、法人は増加傾向にあります。
そこで、本日は、輸入トラブルによって裁判まで発展した事案である、東京地判令和2年9月9日(LLI/DB 判例秘書登載)をご紹介いたします。
1 事案の概要
冷凍肉の米国から日本までの海上運送の荷受人であるXが、運送人であるYに対し、①Yはコンテナ内の温度を華氏0度に設定すべき義務を負っていたにもかかわらず、これを懈怠し5日間にわたり摂氏0度に設定したため、積荷である冷凍肉が損傷したこと、及び②Xとの間で損傷した冷凍肉を米国に返送する旨の合意が成立したにもかかわらず、これに反して当該冷凍肉をXに無断で処分したこと等ろ理由として、不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
①約款上、本件コンテナのような冷凍冷蔵コンテナの温度設定については荷主がその危険及び責任を負担することと定められており、本件船荷証券の表面に特定の温度が記載されている場合であっても、また、運送人又は荷主のいずれが温度設定をしたかにかかわらず、運送人は冷凍冷蔵コンテナ内の温度の維持について保証するものではないとされていたことが認められる。
②そうすると、本件コンテナ内の温度の設定については、荷送人又は荷受人であるXがその危険及び責任を負担しており、Yが本件コンテナ内の温度の設定、維持及び管理をすべき義務を負っていたということはできない。
③Xは、本件コンテナ内の温度の設定に誤りがあったことを受けて、本件コンテナを米国まで返送することを検討していたものと認められるが、X又はBとYとの間において、返送の時期や費用の負担について具体的な協議がされていたことを認めるに足りる証拠はないことなどからすれば、XとYとの間において、本件コンテナの返送に関して具体的な合意がされていたと認めるには足りない。
3 輸出や輸入のトラブルにはご注意ください
輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。
輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
最新の裁判例その2
ECサイトの利用の拡大や副業の推進等により、輸入や輸出に関わる個人、法人は増加傾向にあります。
そこで、本日は、輸入トラブルによって裁判まで発展した事案である、東京地判令和5年4月27日(LLI/DB 判例秘書登載)をご紹介いたします。
1 事案の概要
Xが、自身が権利を有する商標に関して、Yが類似する商標を付したバックパック、肩掛けかばん、ブリーフケース、旅行かばん、カジュアルバッグ等を輸入、販売し、又は販売のために展示する行為を行っているとして、商標権侵害を理由に損害賠償請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
①商標法38条は、商標権侵害の際に商標権者が請求し得る最低限度の損害額を法定した規定であり、その損害額は、原則として、侵害品の売上高を基準として、実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。
②実施に対し受けるべき料率は、(i)当該商標の実際の実施許諾契約における実施料率や、それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ、(ii)当該商標に蓄積された信用や顧客吸引力の程度、(iii)当該商標を当該商品に使用した場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、(iv)商標権者と侵害者との競業関係や商標権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して、合理的な料率を定めるべきである(知的財産高等裁判所平成30年(ネ)第10063号令和元年6月7日特別部判決参照)
③本件訴訟の審理経過や証拠関係に鑑みると、弁論の全趣旨に照らし、本件における侵害品の売上高は、損益計算書の売上高に、売上高に占める侵害品の割合を乗じて算定することが相当であり、上記売上高に占める侵害品の割合は、被告作成に係る納品書等から算定するのが相当である。
3 輸出や輸入のトラブルにはご注意ください
輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。
輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
最新の裁判例その1
ECサイトの利用の拡大や副業の推進等により、輸入や輸出に関わる個人、法人は増加傾向にあります。
そこで、本日は、輸入トラブルによって裁判まで発展した事案である、東京地判令和4年9月30日(LLI/DB 判例秘書登載)をご紹介いたします。
1 事案の概要
Xが、海外の企業Aからアルコールジェル製品を購入し、化粧品製造販売業許可を有するYを輸入代行業者として、当該製品を化粧品として輸入した。その後、①同製品には「除菌」と表示されたラベルが添付されているものの、薬機法上化粧品に「除菌」の表示をすることは違法であること、及び②同製品のラベルに表示されたアルコール濃度より実際のアルコール濃度が低いことが発覚したこと。そこで、Xは、Yが薬機法上の義務及び民法の信義則上の義務に違反し、その結果、Xが同製品を販売予定であった顧客からのキャンセルや値引き等の要求に対応しなければならなくなり、損害を生じたとして損害賠償請求を行った。
2 裁判所の判断
①薬機法はあくまで取締法規上の行為規範であって、直ちに不法行為法上の行為義務ないし注意義務を意味するものではない。したがって、薬機法上の義務違反が、直ちに医薬品等を購入した業者に対する不法行為法上の行為義務違反となるものではないというべきである。
②本件商品の瑕疵の内容を見ると、法令上許されない「除菌」という効能の表示がなされた、あるいはアルコール濃度が実際の数値よりも高い表示がなされたということにとどまり、それを使用する者に保健衛生上の危害を及ぼすような、基本的な安全性を欠くものでもなく、その瑕疵の程度は軽微であるうえ、Xの主張する被侵害利益は、結局のところ、法令上あるいは品質上の瑕疵のない商品の引渡しを受ける権利その他の契約上の利益にすぎないのであって、薬機法が想定する保護法益ではない。したがって、Xの主張するYによる薬機法上の義務違反行為は、それ自体あるいは信義則上の義務違反のいずれとしても、不法行為責任を基礎づけるものとは認められない。
3 輸出や輸入のトラブルにはご注意ください
輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。
輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
知的財産権侵害物品の具体的な差止実績その2
知的財産権の侵害は、独創的な技術やアイデアの発展を損なうものですので、幅広く規制が行われていますが、輸入品が知的財産権を侵害しているとして問題になる場合も多くあります。
本日は、税関が公表した令和5年上半期における知的財産権侵害物品の差止状況についてご紹介いたします。
1 令和5年上半期における知的財産権侵害物品の具体的な差止実績について
税関(財務省)から公表された令和5年上半期における知的財産権侵害物品の具体的な差止実績のうち、どのような製品が実際に差止となっているか、その概要は、以下の通りです。
①輸入差止件数としては、衣類が5,041件(構成比28.1%、前年同期比50.3%増)と最も多く、次に、財布やハンドバッグなどのバッグ類が4,292件(同23.9%、同3.8%増)、携帯電話及び付属品が2,618件(同14.6%、同200.9%増)、靴類が1,931件(同10.8%、同5.7%減)となりました。
②輸入差止点数としては、煙草及び喫煙用具が78,064点(構成比16.7%、前年同期比約758倍)と最も多く、次いで医薬品が62,587点(同13.4%、同10.8%増)、イヤホンなどの電気製品が38,123点(同8.2%、同33.5%減)、衣類が37,474点(同8.0%、同1.4%減となりました。
権利者側としては、自身の権利を侵害する貨物が出回っていないかを常に注意するとともに、もしそのような疑いがある場合には速やかに税関に相談する、差止の申し立てを行う等適切な対応を取り、権利を守っていく姿勢を示すことが重要です。
2 輸出、輸入に関しては様々な法規制がありますのでご注意ください
日本は貿易大国ですが、輸出や輸入に関しては様々な法規制が存在します。
輸出に関しては、外為法を中心に厳格な規制が存在しており、それに反する輸出をすると刑事事件等に発展するリスクがあります。
また、輸入に関しては、基本的には申告納税方式が採用されておりますが、輸入後には輸入事後調査等が存在しておりますので、安易に間違った申告をすることは絶対に避ける必要があります(場合によっては脱税等に該当するリスクもあります。)。
事業として輸出や輸入に従事している以上は、知らなかったでは済まされませんので、自社の事業に関する輸出や輸入に関連した法規制については十分注意する必要があります。
これらの法規制は変更になることも多いので、定期的に自社に関連する法規制を確認いただく必要があることは改めてご留意ください。
なかなか自社で法規制を確認することが難しい場合には、適宜専門家を含めてご相談等いただくことを強くお勧めいたします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
知的財産権侵害物品の具体的な差止実績
知的財産権の侵害は、独創的な技術やアイデアの発展を損なうものですので、幅広く規制が行われていますが、輸入品が知的財産権を侵害しているとして問題になる場合も多くあります。
本日は、税関が公表した令和5年上半期における知的財産権侵害物品の差止状況についてご紹介いたします。
1 令和5年上半期における知的財産権侵害物品の具体的な差止実績について
税関(財務省)から公表された令和5年上半期における知的財産権侵害物品の具体的な差止実績の概要は、以下の通りです。
①輸入差止件数は、偽ブランド品などの商標権侵害物品が14,991件(構成比95.8%、前年同期比25.1%増)で、引き続き全体の大半を占めました。次に、偽キャラクターグッズなどの著作権侵害物品が374件(同2.4%、同5.1%減)でした。
②輸入差止点数は、商標権侵害物品が238,004点(構成比51.0%、前年同期比11.0%減)で、次いで意匠権侵害物品が178,916点(同38.4%、同295.4%増)、著作権侵害物品が41,112点(同8.8%、同44.9%減)でした。
知的財産権侵害物品の差止状況ですが、全体としては年々増加傾向にあるといえます。
知的財産権侵害については、権利者にとっては回復できない損害を与えるものですので、税関としても検査や摘発を厳しく行っているといえますが、問題のある輸入はなかなか減らない現状です。
権利者側としては、自身の権利を侵害する貨物が出回っていないかを常に注意するとともに、もしそのような疑いがある場合には速やかに税関に相談する、差止の申し立てを行う等適切な対応を取り、権利を守っていく姿勢を示すことが重要です。
2 輸出、輸入に関しては様々な法規制がありますのでご注意ください
日本は貿易大国ですが、輸出や輸入に関しては様々な法規制が存在します。
輸出に関しては、外為法を中心に厳格な規制が存在しており、それに反する輸出をすると刑事事件等に発展するリスクがあります。
また、輸入に関しては、基本的には申告納税方式が採用されておりますが、輸入後には輸入事後調査等が存在しておりますので、安易に間違った申告をすることは絶対に避ける必要があります(場合によっては脱税等に該当するリスクもあります。)。
事業として輸出や輸入に従事している以上は、知らなかったでは済まされませんので、自社の事業に関する輸出や輸入に関連した法規制については十分注意する必要があります。
これらの法規制は変更になることも多いので、定期的に自社に関連する法規制を確認いただく必要があることは改めてご留意ください。
なかなか自社で法規制を確認することが難しい場合には、適宜専門家を含めてご相談等いただくことを強くお勧めいたします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
リスト規制と該非判定について
様々な技術革新によって、現代社会は人やモノの行き来がこれまでになく自由に行われている状況です。
しかしながら、そのような中でも国際平和及び安全の観点から、国際的な輸出管理レジームが存在します。
日本ではそのような国際輸出管理レジームを踏まえて独自の安全保障貿易管理制度を設けております。
本日は、その内のリスト規制をご紹介いたします。
1 リスト規制と該非判定の重要性について
リスト規制とは、国際的な合意を踏まえ、武器並びに大量破壊兵器等及び通常兵器の開発等に用いられるおそれの高いものを法令等でリスト化して、そのリストに該当する貨物や技術を輸出や提供する場合には、経済産業大臣の許可が必要になる制度です。
・規制対象の貨物は、「輸出令・別表第1」の 1 項~15 項、
・規制対象の技術は、「外為令・別表」の 1 項~15 項にリスト化され、
・規制対象の貨物や技術の機能や仕様(スペック)は、「貨物等省令」に規定されています。
その為、実務上はリスト規制に該当する貨物や技術に該当するかどうかを判断するために該非判定が非常に重要となります。
この該非判定を慎重にかつ厳格に行わずに間違った対応を取ってしまった場合には、無許可輸出等の違法行為に該当することになってしまいますので十分ご注意ください(該非判定を行う際には、仕入元等にも協力してもらう必要がありますので、輸出の前の製品の製造、購入の段階から適切な取り扱いを行うことが重要です。)。
2 輸出、輸入に関しては様々な法規制がありますのでご注意ください
日本は貿易大国ですが、輸出や輸入に関しては様々な法規制が存在します。
輸出に関しては、外為法を中心に厳格な規制が存在しており、それに反する輸出をすると刑事事件等に発展するリスクがあります。
また、輸入に関しては、基本的には申告納税方式が採用されておりますが、輸入後には輸入事後調査等が存在しておりますので、安易に間違った申告をすることは絶対に避ける必要があります(場合によっては脱税等に該当するリスクもあります。)。
事業として輸出や輸入に従事している以上は、知らなかったでは済まされませんので、自社の事業に関する輸出や輸入に関連した法規制については十分注意する必要があります。
これらの法規制は変更になることも多いので、定期的に自社に関連する法規制を確認いただく必要があることは改めてご留意ください。
なかなか自社で法規制を確認することが難しい場合には、適宜専門家を含めてご相談等いただくことを強くお勧めいたします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
安全保障貿易管理制度
様々な技術革新によって、現代社会は人やモノの行き来がこれまでになく自由に行われている状況です。
しかしながら、そのような中でも国際平和及び安全の観点から、国際的な輸出管理レジームが存在します。
日本ではそのような国際輸出管理レジームを踏まえて独自の安全保障貿易管理制度を設けております。
1 日本における安全保障貿易管理制度について
我が国の安全保障貿易管理制度は、国際輸出管理レジームでの合意を受けて、外為法を含む以下の法令等に基づき実施しています。
①外為法:貨物の輸出と技術の提供の規制を規定。なお、外為法に基づく規制は、『リスト規制』と『キャッチオール規制』から構成されており、これらの規制に該当する貨物の輸出や技術の提供は、経済産業大臣の許可が必要になる点に特徴があります。
②輸出令:規制対象の貨物を規定
③外為令:規制対象の技術を規定
④貨物等省令:規制対象の貨物や技術の機能や仕様を規定
なお、たまにご質問いただくことがありますが、これらの輸出規制は、「輸出しようとする者」が対象となりますので、個人(自然人)についても当然規制は及びます。
たまにこれらの大規模な規制は法人が対象であり、単なる個人に対しては規制が免除されると誤解されている方もおりますので、改めて個人であっても規制対象となる点には十分ご注意ください。
2 輸出、輸入に関しては様々な法規制がありますのでご注意ください
日本は貿易大国ですが、輸出や輸入に関しては様々な法規制が存在します。
輸出に関しては、外為法を中心に厳格な規制が存在しており、それに反する輸出をすると刑事事件等に発展するリスクがあります。
また、輸入に関しては、基本的には申告納税方式が採用されておりますが、輸入後には輸入事後調査等が存在しておりますので、安易に間違った申告をすることは絶対に避ける必要があります(場合によっては脱税等に該当するリスクもあります。)。
事業として輸出や輸入に従事している以上は、知らなかったでは済まされませんので、自社の事業に関する輸出や輸入に関連した法規制については十分注意する必要があります。
これらの法規制は変更になることも多いので、定期的に自社に関連する法規制を確認いただく必要があることは改めてご留意ください。
なかなか自社で法規制を確認することが難しい場合には、適宜専門家を含めてご相談等いただくことを強くお勧めいたします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
国際輸出管理レジーム
様々な技術革新によって、現代社会は人やモノの行き来がこれまでになく自由に行われている状況です。
しかしながら、そのような中でも国際平和及び安全の観点から、国際的な輸出管理レジームが存在します。
このような国際輸出管理レジームの中で主要なものが4つあります。
1 主要な国際輸出管理レジームについて
①NSG(Nuclear Suppliers Group)
核兵器の製造等に使用される可能性のある原材料や技術等の輸出規制を主たる内容としています(輸出令別表第1・外為令別表2の項)。
②オーストラリア・グループ(Australia Group)
核兵器や生物兵器の原材料や技術等の輸出規制を主たる内容としています(輸出令別表第1・外為令別表3の項・3の2の項)。
③MTCR(Missile Technology Control Regime)
大量破壊兵器の運搬に寄与できるミサイルやその他の部分品等の輸出規制を主たる内容としています(輸出令別表第1・外為令別表4の項)。
④ワッセナー・アレンジメント(WA)
地域の安定を損なう通常兵器の過剰な蓄積を防止する目的に原材料等の輸出規制を主たる内容としています(輸出令別表第1・外為令別表5から15の項)。
以上の主要な国際輸出管理レジームについて、日本は全てに参加しておりますが、全く参加していな国、一部にのみ参加している国等も多数存在しておりますので、世界で共通のレジームとなってまではいないというのが実情です。
2 輸出、輸入に関しては様々な法規制がありますのでご注意ください
日本は貿易大国ですが、輸出や輸入に関しては様々な法規制が存在します。
輸出に関しては、外為法を中心に厳格な規制が存在しており、それに反する輸出をすると刑事事件等に発展するリスクがあります。
また、輸入に関しては、基本的には申告納税方式が採用されておりますが、輸入後には輸入事後調査等が存在しておりますので、安易に間違った申告をすることは絶対に避ける必要があります(場合によっては脱税等に該当するリスクもあります。)。
事業として輸出や輸入に従事している以上は、知らなかったでは済まされませんので、自社の事業に関する輸出や輸入に関連した法規制については十分注意する必要があります。
これらの法規制は変更になることも多いので、定期的に自社に関連する法規制を確認いただく必要があることは改めてご留意ください。
なかなか自社で法規制を確認することが難しい場合には、適宜専門家を含めてご相談等いただくことを強くお勧めいたします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
前払金と輸入申告価格の考え方について
はじめに:具体的な相談事例の紹介
本日は、輸入取引において頻繁に活用される前払金、いわゆるデポジットや頭金と、輸入申告価格(課税価格)の決定に関する重要な論点について解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。輸入実務に携わる企業様にとって、非常に示唆に富む内容となっております。
【相談者】
千葉県内で海外製のスポーツ用品の輸入販売を営む株式会社サクセス 代表取締役 佐藤氏
【相談内容】
「当社は3年前から、アメリカのメーカーであるエー社から、新型のトレーニング機器を輸入しています。取引の形態としては、まず契約時に代金の7割にあたる100万円を「前払金(デポジット)」として送金し、残りの3割の30万円については、製品が完成して日本へ発送される際に支払うことになっています。
製品が発送される際、エー社からは残金の「30万円」が記載されたインボイス(仕入書)が送られてきます。佐藤氏は、通関業者に対してこの30万円のインボイスを提出し、そのまま30万円を輸入申告価格として申告してきました。
ところが先日、税関から事後調査の通知が届きました。調査官からは、この前払金100万円が申告価格に含まれていないのではないかという指摘を受けています。佐藤氏は、前払金はあくまで予約金のようなもので、最終的な商品の請求書(インボイス)の金額こそが申告価格であると考えていました。もしこれが過少申告と判断された場合、過去3年分に遡って追徴課税を受けるのでしょうか。また、法的に正しい申告価格の算出方法を教えてください。」
このような事例は、輸入実務に慣れていない企業において非常に多く見受けられます。輸入者は意図的な脱税のつもりはなくても、法的な理解不足から結果として過少申告となってしまうケースが後を絶ちません。本記事では、専門的な知見に基づき、前払金が輸入申告価格に与える影響とその適切な処理方法を解説いたします。
1 前払金と輸入申告価格の基本的な考え方
輸入業を行う場合、売買代金の送金等に時間が掛かることから、一定額を前払金(デポジット等という場合もあります)として送金しておき、実際の売買代金に充当するという対応を取る場合も相当程度ございます。
例えば、前払金として100万円を送金しておいて、実際の商品価格が150万円である場合、取引の際には、前払金100万円を充当し、商品代金として50万円のみを新たに支払った場合、輸入申告価格としては、150万円と50万円のいずれとして取り扱う必要があるでしょうか。
結論から申し上げますと、適正な輸入申告価格としては、前払金を含めた総額である150万円をベースに考えることが必要となります。
関税定率法等の法令上は、「現実支払価格」といった専門的な用語がでてきます。なかなか理解が難しい面もありますが、要するに、輸入する商品のために買手側がいくら支出することになったのか、ということをベースに考えることになります。
実際に商品のために買手が支払った金額として、前払金100万円と残金の商品代金としての50万円の合計150万円となります。したがって、課税価格(輸入申告価格)はこの合計額となります。
インボイスに商品代金としていくらと記載されているかどうかということは、輸入申告価格を検討する際には重要な要素の一つとはなります。しかし、あくまでも要素の一つであり、インボイスにいくらと記載されているから輸入申告価格もインボイス上の価格と同じはずだということには必ずしもなりませんので、十分注意が必要です。
2 現実支払価格の定義と法的根拠
輸入申告価格(課税価格)を決定するための原則は、関税定率法第4条に規定されています。この条文は、輸入取引における「価格」とは何かを定義する極めて重要なものです。
第1項 輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされたときに別表の規定により計算される価格(以下取引価格という。)とする。ただし、その取引価格が次に掲げる費用を含んでいないときは、その含まれていない限度において、当該費用をこれに加算するものとする。
さらに、この取引価格の基礎となる「現実支払価格」については、関税定率法基本通達において詳細に説明されています。
関税定率法基本通達4-2(現実支払価格)
(1) 法第4条第1項に規定する現実支払価格とは、輸入貨物に係る輸入取引につき、買手が売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物の対価として直接又は間接に現実に支払った又は支払うべき総額をいう。
この「直接又は間接に現実に支払った又は支払うべき総額」という文言が鍵となります。前払金は、輸入貨物の対価として「直接」あるいは「現実に」支払われた金額の一部であり、当然にこの総額に含まれるべきものです。残金の支払いの際、便宜上インボイスに未決済分のみが記載されていたとしても、法的な課税対象は商品の「対価としての総額」であるという点を忘れてはなりません。
3 前払金(デポジット)が関税評価に与える実務的影響
実務上、前払金が申告漏れとなる原因の多くは、書類の管理体制にあります。インボイスと送金記録の紐付けができていないことが、税関事後調査での指摘に直結します。
【前払金がある場合の申告価格算定フロー】
一 契約書(プロフォーマインボイス等)にて総額を確認する。
二 前払金の送金時期と金額を記録する。
三 最終インボイスに前払金が差し引かれた額が記載されている場合、その控除額を「加算」して申告する。
四 通関業者に対し、前払金の存在と総額を明確に伝える。
インボイス上に「Deposit Paid(支払い済みデポジット)」といった記載があれば、通関業者も気づくことができます。しかし、そのような記載がなく、単に「30万円」とだけ書かれたインボイスでは、通関業者はその裏にある100万円の前払金を把握することができません。最終的な納税責任は輸入者自身に帰属するため、正しい情報を開示する義務があります。
4 輸入者が活用すべき実務チェックリスト
以下に、前払金や加算要素の漏れを防ぐためのチェックリストを作成いたしました。社内のコンプライアンス管理にご活用ください。
【前払金および加算要素に関する法的適合性確認表】
確認項目|具体的な確認内容|
前払金の有無|契約時に内金やデポジットを送金していないか|
インボイスの総額|インボイス記載額は前払金差引後の金額ではないか|
送金記録の整合性|銀行の送金総額と輸入申告価格は一致しているか|
ライセンス料の支払|商標権等の対価を別途権利者に支払っていないか|
無償提供物品の有無|製造用の金型や原材料を無償で提供していないか|
仲介手数料の支払|売手と買手を仲介する者に報酬を支払っていないか|
5 輸入申告価格の算定を誤った場合のペナルティ
貨物の輸入や輸出に関するルールは、関税法や関税定率法、これらの通達等に詳細に規定されております。なかなか一般的には理解が難しい点も多く、知らずに輸出入を行うと追徴課税を含む様々なペナルティを課されてしまうリスクがございます。
無事に輸出入できているのだから問題ないだろうと考え、これらのルールを軽視することは非常に危険であり、中長期的に大きなしっぺ返しを受けるリスクが非常に高いと言わざるを得ません。
(1)過少申告加算税の賦課
事後調査により申告漏れが発覚した場合、不足税額に加えて過少申告加算税が課されます。
税関長は、更正(中略)があった場合には、当該納税義務者に対し、不足税額に100分の10(一定額を超える部分は100分の15)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。
(2)重加算税の適用リスク
意図的に前払金を隠蔽し、安価なインボイスのみで申告を繰り返していたと判断された場合、さらに強力な重加算税が課されます。
事実を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告をしていたときは、過少申告加算税に代え、不足税額に100分の35(一定の場合は40)を乗じた重加算税を課する。
(3)延滞税の徴収
本来の納期限から修正申告の日までの期間に応じて、利息相当の延滞税が徴収されます。
6 ライセンス料やその他の加算要素に関する留意点
輸入申告価格の算定において、前払金以外にも注意すべき項目は多岐にわたります。特に「ライセンス料」は、税関が最も注視する項目の一つです。
例えば、輸入する貨物のライセンス料を輸出者側等に支払っている場合には、当該ライセンス料については、課税価格に加算しなければなりません。加算せずに輸入申告を行う場合には、過少申告となり、事後的に追徴課税が行われることとなります。
【ライセンス料(ロイヤリティ)が加算される条件】
一 当該輸入貨物に関連していること。
二 当該輸入貨物の輸入取引の条件として買手により支払われるものであること。
これらは、商品の仕入れ価格とは別の名目で支払われることが多いため、前払金と同様に申告漏れが発生しやすい項目です。他にも、輸入港までの運賃、保険料、仲介手数料、そして製造に関わる原材料や金型の無償提供費用(アシスト費用)などが挙げられます。
7 専門家による事前リーガルチェックの重要性
他にも、輸出入特有の規制は多数あります。可能であれば、輸出入を継続的に行う最初の段階で事業計画が法的に問題ないかどうかをリーガルチェックすることをお勧めいたします。
最初の段階できちんとした体制を整備しておくことで、事業を中長期的に円滑に進めることが可能となります。
【専門家によるチェックを受けるメリット】
一 適切な課税価格の算定根拠を構築できる点。
二 税関事後調査における否認リスクを最小限に抑えられる点。
三 不必要な追徴課税や過少申告加算税の支払いを回避できる点。
四 法令遵守体制を整えることで、税関からの信頼性を向上させられる点。
特に、新しい取引先と契約する際や、新しい商品カテゴリーを扱う際には、契約書の文言一つが将来の関税負担に大きく影響することがあります。
8 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出・輸入や通関上のトラブルを中心に企業法務を幅広く扱っております。
弁護士でありながら通関士の専門知識を併せ持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、税関当局がどのような視点で調査を行い、どのような証拠書類を重視するかといった実践的なアドバイスを提供することが可能です。
【当事務所が提供できる主なサポート】
一 輸入取引における現実支払価格の適正性診断。
二 前払金、ロイヤリティ、アシスト費用等の加算要素に関する法的整理。
三 税関事後調査への立ち会いおよび当局との法的な交渉。
四 不当な課税処分に対する不服申立てや税関訴訟の代理。
輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。
【お問合せは、こちらから】
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
債務の相殺と輸入申告価格
はじめに:仮の相談者からの相談事例
本日は、輸入取引における課税価格の決定において、買手が売手の債務を肩代わりしたり、相殺を行ったりした場合の法的な取り扱いについて解説いたします。まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。輸入実務において、継続的な取引がある企業様にとっては、非常に重要かつ見落としやすい内容となっております
【相談者】
大阪府内で海外ブランドの輸入卸売業を営む株式会社ライト 代表取締役 A氏
【相談内容】
「当社は、イタリアの家具メーカーであるB社から定期的に製品を輸入しております。前回の取引において、B社から届いた貨物の一部に破損があり、B社に対して40万円の損害賠償債権が発生いたしました。B社はその支払いを認めたものの、送金の手間を省くため、今回の取引代金100万円からその40万円を差し引き、残りの60万円だけを支払ってほしいと提案してきました。
当社はこの提案を受け入れ、実際に60万円を海外送金いたしました。通関業者には、B社から送られてきた60万円のインボイス(仕入書)を提出し、そのまま60万円を輸入申告価格として申告いたしました。しかし、佐藤氏は、本来の商品の価値は100万円であることを知っており、この申告方法で問題がないのか不安に感じています。もし税関の事後調査で指摘を受けた場合、どのような責任を問われるのでしょうか。また、正しい申告価格はどのように算出されるべきなのか、専門的な見地からのアドバイスを求めています。」
このような事例は、国際ビジネスの現場では珍しくありません。迅速、円滑な取引のために債権債務を相殺等して実際にやり取りする代金を増減させるという対応が行われております。しかし、関税法および関税定率法の観点からは、実際に送金した金額だけを申告することは、重大な過少申告に該当する可能性が極めて高いといえます。本記事では、専門的な知見に基づき、買手が売手の債務の一部を肩代わりした場合の輸入申告価格の考え方を詳しく解説いたします。
1 買手が売手の債務の一部を肩代わりした場合の輸入申告価格
結論から申し上げますと、実際の売買代金が100万円である以上は、100万円を輸入申告価格として取り扱うことが必要です。たとえ実際に送金した金額が相殺後の60万円であっても、関税の課税対象となる貨物の価値は、相殺前の総額(100万円)に基づかなければなりません。
【現実支払価格の定義と法的根拠】
輸入申告価格の決定にあたっては、関税定率法第4条第1項に規定される「現実支払価格」を正しく理解する必要があります。
第1項 輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされたときに別表の規定により計算される価格(以下取引価格という。)とする。ただし、その取引価格が次に掲げる費用を含んでいないときは、その含まれていない限度において、当該費用をこれに加算するものとする。
ここで言う取引価格の基礎となるのが現実支払価格ですが、これについては関税定率法基本通達4-2(現実支払価格)において詳細に規定されています。
関税定率法基本通達4-2(現実支払価格)
(1) 法第4条第1項に規定する現実支払価格とは、輸入貨物に係る輸入取引につき、買手が売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物の対価として直接又は間接に現実に支払った又は支払うべき総額をいう。
直接の支払いだけでなく、間接的な支払いも含まれるという点が極めて重要です。売買代金としては100万円だが、売主が買主に対して有するその他の債務40万円分を相殺させ、60万円のみを売買代金として買主が売主に対して支払うということが行われることがありますが、この相殺された40万円分は、売手のために買手が債務を免除した、あるいは肩代わりした「間接的な支払い」に該当いたします。
仮に、インボイス等の書類上の数字を調整したとしても、実際の商品の価値が100万円である場合には100万円を商品価格として取り扱う必要がある点には十分ご注意ください。
2 相殺取引と課税価格の関係性を整理した実務表
実務において混乱しやすい相殺取引の構成を以下の表にまとめました。社内でのチェックリストとしてご活用ください。
【債務相殺がある場合の課税価格算定表】
項目名|金額の内容|課税価格への算入要否
契約上の総額|商品の本来の売買価格|全額算入する
直接支払額|実際に海外送金した金額|算入する
相殺・肩代わり額|債務の免除や相殺分|算入する(間接支払)
値引き額|純粋な商慣習上の値引き|算入しない
課税価格(申告額)|上記直接及び間接支払の合計|合計額を申告する
このように、送金額イコール申告価格ではないという事実を、実務担当者は正しく認識しなければなりません。単に帳簿上の数字を追うだけでは、知らず知らずのうちに脱税行為に加担してしまうリスクがあります。
3 輸入を継続的に行う場合に留意すべき様々な規制
貨物の輸入に関する規制は、主として関税法や関税定率法等に規定されておりますが、なかなか通常の感覚では理解できない部分も多いといえます。
上記1の説明内容についても、通常の感覚では、輸入申告価格は、単に商品価格を申告すればよいのではないか、と考えるところですが、正確な理解はむずかしいといえます。
この他にも、例えば、貨物の輸入の際に、何らかのロイヤリティを売手や第三者に対して支払う場合、当該ロイヤリティについては、輸入申告価格に加算しなければならないというのが原則です。
【ロイヤリティ加算の法的根拠】
(関税定率法第4条第1項第4号)
四 当該輸入貨物に係る特許権、実用新案権、意匠権、商標権その他これらに類するもの(中略)の使用の対価として買手により直接又は間接に支払われる費用であつて、当該輸入貨物に関連し、かつ、当該輸入貨物の輸入取引の条件として買手により直接又は間接に支払われるもの。
加算せずに輸入申告を行う場合には、過少申告となり、事後的に刑事罰や追徴課税が行われることとなります。特に、商品の代金とは別ルートで国内の権利会社や海外の親会社に支払っているロイヤリティは、税関の事後調査において最も厳しく追及される項目の一つです。
他にも、買手が負担する容器の費用や包装の費用、あるいは製造のために無償提供した金型の費用なども、課税価格に算入しなければなりません。これらを知らずに放置することは、企業にとって極めて大きな法的リスクを抱え込むことを意味いたします。
4 不適切な輸入申告に伴う厳格なペナルティ
正しい価格で申告を行わなかった場合、関税法に基づく厳しい制裁が待っています。特に相殺によって申告価格を低く見せる行為は、悪質な「アンダーバリュー」とみなされる危険性があります。
(1)追徴課税および加算税の賦課
税関の事後調査で過少申告が発覚した場合、不足税額の徴収に加え、過少申告加算税が課されます。
税関長は、更正(中略)があった場合には、当該納税義務者に対し、不足税額に100分の10(一定額を超える部分は100分の15)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。
(2)重加算税の適用リスク
意図的に相殺後の金額で申告書類を作成し、本来の取引総額を隠蔽したと判断された場合、さらに強力な重加算税が課されます。
事実を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告をしていたときは、過少申告加算税に代え、不足税額に100分の35(一定の場合は40)を乗じた重加算税を課する。
(3)刑事罰の可能性
偽りその他不正の行為により関税を免れた場合、懲役や罰金が科される可能性もあります(関税法第110条)。
一度、税関のブラックリストに掲載されると、その後の輸入において全件検査の対象となるなど、ビジネスのスピードが著しく低下し、企業の社会的信用も大きく毀損されることとなります。
5 専門家による事前リーガルチェックの重要性
他にも、輸入特有の規制は多数ありますので、可能であれば、輸入を継続的に行う最初の段階で事業計画が法的に問題ないかどうかを事前にリーガルチェックすることをお勧めいたします。また、もし既に輸入を開始しているという場合には、一度ビジネスの仕組みが問題ないかどうかを確認いただくことをお勧めします。
専門家の視点を入れることによる具体的なメリットは、以下の通りです。
一 契約書の不備の発見
売買契約書において、債務の相殺やロイヤリティの支払いがどのように規定されているかを精査し、関税評価上のリスクを事前に排除いたします。
二 適切な申告フローの構築
通関業者に対し、どのような証拠書類(相殺前のインボイスや送金証明書)を提出すべきか、適正な実務手順を指導いたします。
三 事後調査への備え
税関が事後調査に来た際、どのように説明すれば法的整合性が保たれるかを準備しておくことで、不当な加算税の賦課を防ぎます。
四 節税とコンプライアンスの両立
法令の範囲内で、加算する必要のない費用を適切に切り分け、無駄な納税を抑えつつ完璧なコンプライアンスを実現いたします。
6 弁護士へのご相談をご希望の方へ
弊事務所は、税関事後調査を含む税関対応や輸出入トラブル、広告関連法務を中心に企業法務を幅広く扱っております。代表弁護士は、輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。
弁護士でありながら通関士の専門知識を併せ持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、税関当局がどのような視点で調査を行い、どのような書類を重視するかといった実践的なアドバイスを提供することが可能です。
【当事務所が提供できる主なサポート】
一 輸入取引における課税価格算定のリーガルアドバイス
二 税関事後調査への立ち会いおよび当局との法的な交渉
三 ロイヤリティ契約や代理店契約のリーガルチェック
四 不当な更正処分に対する不服申立てや税関訴訟の代理
お困りの点等ございましたら、まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。不必要なペナルティを回避し、貴社の輸入ビジネスをより強固なものにするお手伝いをいたします。
7 まとめ:適正な関税評価がビジネスの安定を支える鍵
輸入ビジネスにおけるコンプライアンスは、単なる守りではありません。正しい法的知識に基づき、適正な申告を継続することは、税関からの信頼を獲得し、ひいては円滑な物流を実現することに繋がります。
企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。
通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。
正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な作業こそが、グローバルビジネスを安定させ、企業の成長を守る唯一の道です。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮してサポートを継続してまいります。
【お問合せは、こちらから】
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
