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1.企業をとりまく労働問題~従業員との労働問題は大企業だけの問題ではありません。中小企業こそ対応が必要です~
「うちの会社は10人程度のこじんまりとした会社で、従業員一人一人と信頼関係で結ばれているから特に労働問題なんて関係ないですよ」、このように話をされる経営者の方は依然として多い印象を受けます。
しかしながら、労使関係の流動化、労働法制の急激な変化など、使用者と従業員を取り巻く環境は急激に変化しております。また、インターネットの発展等により、自分の会社がもしかしたら法令に違反しているのではないか、自分は労働者としての正当な権利を受けることができていないのではないか、等と従業員が考える機会が極めて多くなっております。
ここで念頭に置くべきは、使用者と従業員との関係は、あくまでも労働契約を前提とした法律関係であるということです。そのため、使用者が信頼関係に基づき腹を割って話し合い解決することを従業員に求めたとしても、従業員側が法律に則った解決を主張した場合には、最終的には従業員の主張通り、法律に従った解決がなされることになります。そこでは、これまでの信頼関係といったことは重視されません。
したがいまして、「うちの従業員はそんなことを言ってこない」等と考えることは、残念ながら経営者としては非常に危険な状況と言わざるを得ません。例えば、業績不振が続き経営者としては断腸の思いで従業員の内の一部を解雇したとします。経営者は自分の思いを従業員も分かってくれるだろうと考えていたとしても、その従業員から解雇後未払残業代を請求されて、さらに経営不振になるといった事態に陥ることも十分考えられます。
2.従業員との労働問題・トラブル~弁護士に相談いただくメリット~
労働問題・トラブルに対するケアといっても、何をすればよいか分からない、といった方が多いのではないでしょうか。インターネットや本等を読んだ結果大まかな理解をしている状況と、具体的に会社にどのように導入するか、とは全く別問題です。
労働法関連に詳しい弁護士にご相談いただくことで、会社のビジネス等を踏まえたオーダーメードのサポートを受けることができます。また、トラブル予防の観点から弁護士の協力を得ておくことで、実際にトラブルが発生した場合に、弁護士がスムーズに紛争対応できることにもつながります。
是非、労働問題に詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
3.従業員とのトラブル対応事例
従業員との間の労働問題として企業から相談を受けることが多い代表的なトラブル事例と対応方針を検討する上で重要な視点をご紹介します。
(1)解雇された従業員が未払い残業代等を請求したケース
このケースの場合の対応を検討する上では、次の各視点が重要となります。
- 雇用契約書を書面で交わしているかどうか。
- 残業代を基本給に含む、という形を取っているかどうか。また、取っている場合には、具体的にどのような規定内容となっているか。
- 1日の実労働時間は何時間か。また、どのように実労働時間を管理しているか。
- 36協定、変形労働時間制等の規定内容はどのようになっているか。
- 就業規則の作成の有無及びその内容はどのようになっているか。
(2)能力不足の従業員を解雇したケース
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効であるとされています(労働契約法16条)。
実際には、解雇に至る経緯や指導状況等を具体的な個別の事情を総合的に勘案して判断されます(普通解雇が認められるハードルは高い点にはご注意ください。)。
そのため、このケースの場合の対応を検討する上では、次の視点が重要です。
- 能力不足に関する具体的な事情
- 解雇に至る具体的な経緯
- 当該従業員への指導への有無及びその内容
- 就業規則や雇用契約書の内容
(3)契約社員を契約期間中に解雇したケース
期間の定めのある労働契約(有期労働契約)の期間途中の解雇については、労働契約法第17条において「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」と定めています。ここにある「やむを得ない事由」とは、通常の解雇事由よりもさらに重いものとされています。
つまり、契約期間中に契約社員を解雇することは、正社員を解雇するよりも難しいといえ、慎重な対応が必要です。
検討すべき視点は、上記(2)の場合と類似いたしますが、特に、解雇に至る具体的な経緯を慎重に整理し、検討を進める必要があります。
なお、このケースとは異なりますが、期間の定めのある労働契約の契約社員の取り扱いについては、同一労働同一賃金の原則や、更新方法等、様々な規制があります。これらの規制は、複雑な内容も含みますが、企業における労働問題・トラブルを防止するという観点からは、規制の内容を把握することは必須ともいえる内容ですので、是非、労働問題に詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、お気軽にご相談ください。
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