こんな時は弁護士に~事前教示制度の紹介~

事前教示制度は、貨物の輸入をお考えの方等が、貨物の輸入前に税関に対して、当該貨物の関税分類(税番)及び関税評価等についての照会を行い、その回答を受けることができる制度です。事前に関税分類(税番)等に関する税関の見解を知ることができるので、輸入計画や販売計画を立てることに利用でき、また、適正かつ迅速な輸入申告につながります。

以下では、ご相談の多い関税評価に関する事前教示制度をご説明いたします。

 

1.事前教示制度の概要

関税評価に関する事前教示制度とは、輸入する貨物に係る関税評価上の取扱いに関する照会があった場合に、関税法第7条第3項の規定に基づき、税関が回答を行う制度です。なお、関税評価とは、課税価格(課税標準となる価格です)を法令に基づき計算、決定することです。

事前教示制度においては、税関は、原則として、文書により照会を受け、文書で回答を行います。照会者が希望する場合には、口頭による照会も可能ですが、この場合には、口頭での回答となります。

 

2.事前教示制度を利用できる主体

貨物を輸入しようとする方の他に、輸入しようとする貨物について利害関係を有する方も事前教示制度を利用した照会を行うことができます。ただ、税関が適切な回答を行うためには照会者から十分な情報が提供されることが不可欠ですので、その貨物の輸入取引の事情を概ね把握している方に限られます。

 

3.文書回答と口頭回答における税関の取扱いの違い

文書回答の内容は、一定条件の下で、その回答の対象となっている輸入貨物における税関の審査において尊重されるという特別な取扱いがなされますが、口頭回答の場合については、このような特別な取扱いは行われません。

また、照会者は、文書回答の内容に不服がある場合には、税関に対して意見の申出を行い、再考を促すことができますが、口頭回答については、このような意見の申出を行うことはできません。

以上のような取扱いの違いを踏まえて、文書による照会と口頭による照会のいずれを利用するかを判断する必要があります。

 

4.文書回答は、どのような効力をもつものなのか

上記のとおり、文書回答の内容は、有効期限(最長で3年間)内は、その回答の対象となっている輸入貨物における税関の審査において尊重されます。

ただし、文書回答の内容は、あくまで照会者から示された事実関係に基づき、その時点の法令に則して、その範囲内での税関の判断を示したものとなります。そのため、その示された事実関係が実際の取引等と異なっていたり、新たな事実が生じたような場合には、回答内容と異なる関税評価上の取扱いが行われることがあります。

したがって、文書回答の内容どおりの申告が行われた場合であっても、例えば、法令の改正等が行われたときや、調査による事実確認の結果として照会者から示された事実関係が実際の取引に係る事実関係と異なることが判明したようなときには、税関として別の判断を行い、回答内容と異なる関税評価上の取扱いが行われる可能性があります。

 

5.照会を行ってから文書回答までの期間

税関による文書回答は、照会書を受理してから原則として90日以内の極力早期に行うように努めることとなっております。ただし、照会の内容等によっては、その期間内に回答できない場合もあるようです。

 

6.文書回答手続による照会を行えば、必ず文書回答をもらえるかどうか

以下の場合には、基本的には文書回答がなされないので、注意が必要です。

  1. 照会書が受理された場合であっても、照会内容等が関税法基本通達7-19の2(2)に定められた文書回答の対象となるための要件を満たしていないことが判明したとき
  2. 税関から照会者に対して審査のために必要な資料の追加提出等を求めた場合に、その資料の追加提出等が行われなかったとき

 

7.文書回答手続による照会を行う場合、どのような書類を提出する必要があるか

照会を行う際に提出することが必要な代表的な書類は、以下の通りです。

  1. 事前教示に関する照会書(関税評価照会用)
  2. 照会に係る取引等の事実関係を証明できる関係書類。例えば、売買契約書や仕入書等。

 

8.事前教示制度を利用する際の注意点

文書回答の内容は、回答後原則として税関ホームページ等において公開されることとなっております。ただし、公開に当たっては、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に定める不開示情報に該当すると考えられる部分や守秘義務に抵触すると考えられる部分については、当該部分が伏せられる形で公開されます。

また、文書回答の内容が公開されることによる不利益を受けるおそれがある場合等、照会者が正当な理由を有する場合で、照会者から非公開期間(180日を超えない期間)の設定の要請があったものについては当該要請に係る期間後に、上記と同様に不開示情報等に該当する部分を伏せた上で公開することとなります。

事前教示制度を利用する場合には、このように照会内容が公開されることを念頭において実施する必要があります。

当事務所では、通関士資格を有し、通関・貿易分野に強みをもつ代表弁護士が、事前教示制度の利用に関して様々なサポートをさせていただきます。事前教示制度の利用に関心がある場合には、まずは当事務所まで、お気軽にご相談ください。

 

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

03-5877-4099電話番号リンク 問い合わせバナー