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電子取引情報の保存方法について

2024-01-23

輸入や輸出を業とする個人、法人は、該当の貨物に関する品名、数量及び価格等を記載した帳簿を備え付け、帳簿、書類及び電子データを保存する義務を負います。

ただ、実際のところ、このような各書類の保存を適切に行うことができていない事業者も多く存在するように思います。

また、一概に電子データといっても、どのようなデータとすべきか、よくわからない、保存方法が分からない等、実務としての対応に不安がある方も多いのではないでしょうか。

本日は、電子取引情報の保存方法に関して、税関の実務上の考え方をご紹介いたします。

 

1 電子取引情報の保存方法について

①電子メールに請求書等の書類が添付された場合の保存方法について

請求書等の書類が添付された電子メールそのものを自社システム上に保存する必要があります。または、添付された請求書等をサーバ等に保存する必要があります。

②発行者のウェブサイト上で領収書等をダウンロードする場合の保存方法について

まず、PDF データ等をダウンロードできる場合には、ウェブサイトに領収書等を保存する、又はウェブサイトから領収書等をダウンロードしてサーバ等に保存する必要があります。

次に、HTML データで表示される場合には、ウェブサイト上に領収書を保存する、又はウェブサイト上に表示される領収書をスクリーンショットし、サーバ等に保存する必要があります。また、ウェブサイト上に表示された HTML データを領収書の形式に変換し、サーバ等に保存することも可能です。

 

2 輸入や輸出の手続には様々なルールが存在します

関係書類や電子データの保存義務は、あくまでも様々な手続の中の一つであり、これ以外にも様々なルールが存在します。

これらのルールを適切に遵守しない場合には、輸入や輸出の手続が停止してしまうことや、脱税、密輸等の行政事件、刑事事件に発展するリスクも十分あります。

いずれにしても、ビジネス上は大きな支障となりますし、また、そもそも人生そのものに対しても大きな悪影響となり得ます。

これまで問題なく輸入や輸出をすることができたから問題ないと過信することは非常に危険です。一度問題が発生した場合には上記のとおり、取り返しのつかない状況となってしまうからです。

まずは、自社のビジネス上の各手続が問題ないかどうかをしっかりとチェックすることが重要ではありますが、様々なルールを正確に理解することが前提となりますので、ご不安な点がある場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

電子データの保存方法のよくある疑問点

2024-01-18

輸入や輸出を業とする個人、法人は、該当の貨物に関する品名、数量及び価格等を記載した帳簿を備え付け、帳簿、書類及び電子データを保存する義務を負います。

ただ、実際のところ、このような各書類の保存を適切に行うことができていない事業者も多く存在するように思います。

また、一概に電子データといっても、どのようなデータとすべきか、よくわからない、保存方法が分からない等、実務としての対応に不安がある方も多いのではないでしょうか。

本日は、よくある疑問点について、税関の実務上の考え方をご紹介いたします。

 

1 よくある疑問点

①書類をスキャンする際のプリンタ等の性能について

規則上は、電磁的記録は、ディスプレイ等に出力して視認できるような状態である必要があります。プリンタやディスプレイの性能や設置すべき台数について必要要件はありません。

ただし、規則第 10 条第1項第2号及び同条第4項第4号において、電磁的記録は「速やかに出力することができる」ことが要件とされている点には注意が必要です。

 

②該当のデータを複数の媒体で保存することができるかどうか

原則として、データに関する検索機能については、関係帳簿書類を保存すべきこととなる期間内の関税関係帳簿書類に係るデータを通じて任意の範囲を指定して条件設定を行い検索ができる必要があります(令第 83 条第6項(同第8項)、通達 12 の 2-12/通達 94 の 2-28)。

しかしながら、法定の保存期間を通じて検索をすることが困難であることについて合理的な理由があるときには、該当のデータを複数の媒体で保存することができるとされています。例えば、データ量が膨大である等、複数の保存媒体で保存せざるを得ない場合等が、『合理的な理由』に該当すると考えられております。

 

③データは、事務所内のサーバで保存する必要があるかどうか

電磁的記録については、ディスプレイや書面に、法定の要件に従った状態で速やかに出力することができることが義務付けられているのみであり、データが保存されたサーバの設置場所についての決まりはありません。

そのため、クラウドサービスを利用することも可能ですし、海外にサーバーが置かれていても問題ありません(通達 94 の 2-7 注書き)。

 

2 輸入や輸出手続には様々なルールがありますのでご注意ください

輸入や輸出を事業として(あるいは副業として)行っている法人、個人の方は非常に多くおり、増加傾向にあります。

その一方で、輸入や輸出の手続に関しては様々なルールが存在しますので十分注意が必要です。ルールを正確に把握しない場合には、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあり、事業の存亡にかかわりかねません。

正確にルールを把握し、適切な輸入、輸出手続を行うことがビジネス上非常に重要ですので、万一、手続やルールに不安がある場合には、ご相談ください。

輸入事業者の書類保存義務

2024-01-13

輸入や輸出を業とする個人、法人は、該当の貨物に関する品名、数量及び価格等を記載した帳簿を備え付け、帳簿、書類及び電子データを保存する義務を負います。

ただ、実際のところ、このような各書類の保存を適切に行うことができていない事業者も多く存在するように思います。

そこで、本日は、輸入者が保存すべき各書類をご紹介いたします。輸出者が保存すべき書類と大枠では同様ですが、保存期間が異なりますので、十分注意が必要です。

 

1 保存義務がある書類

(1)帳簿

まず、輸入者は、輸入許可が下りた日の翌日から7年間、帳簿を保存する必要があります。

帳簿における具体的な記載事項としては、該当の貨物の品名、数量、価格、仕出人の氏名(名称)、輸入許可年月日、許可書の番号を記載する必要があります。ただし、必要な事項が網羅されている場合には、既存の帳簿や仕入書等に追記したものでも代替可能であるとされております。

 

(2)輸入関係書類

輸入者は、輸入許可が下りた日の翌日から5年間、輸入関係書類を保存する必要があります。

輸入関係書類とは、

①輸入許可貨物の契約書、②仕入書、③運賃明細書、④保険料明細書、⑤包装明細書、⑥価格表、⑦製造者又は売渡人の作成した仕出人との間の取引についての書類、⑧その他税関長に対して輸入の許可に関する申告の内容を明らかにすることができる書類、

のことを指します。

 

(3)電磁的記録

輸入者は、輸入許可が下りた日の翌日から5年間、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存する必要があります。

電磁的記録の具体的な内容としては、電子取引(インターネット等による取引、電子メール等により取引情報を授受する取引等を指します。)を行った場合における当該電子取引の取引情報、のことを指します。

 

2 輸出や輸入に関する不明点はお気軽にご相談ください

輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち安易な対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。

その一方で、輸出や輸入に関する知識を詳しく教えてもらうことができるケースは限られており、また、なんとなく輸出や輸入の手続を進めたとしても、手続自体は一見すると問題なく進む場合も多くあります。これは、輸入においては申告納税制度という制度が取られていることも多きない要因ではありますが、法律上は、輸入事業者は、輸入制度を適切に理解し、手続を行うことを前提として考えられております。

以上から、輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。

最新の裁判例その5

2023-12-26

ECサイトの利用の拡大や副業の推進等により、輸入や輸出に関わる個人、法人は増加傾向にあります。

そこで、本日は、輸入トラブルによって裁判まで発展した事案である、東京地判平成29年12月8日(LLI/DB 判例秘書登載)をご紹介いたします。

 

1 事案の概要

Xが、Yに対し、Yから納入された有名ブランド品のバッグ等の商品についてYが真正な製品であると保証したにもかかわらずその後に偽物であることが判明し、商標法違反によりこれらの商品が廃棄没収された結果、Xが同商品販売代金相当額の損害を被ったことを理由として、不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案である。

 

2 裁判所の判断

裁判所は、以下の諸要素を総合的に踏まえ、XはYから本件商品が偽物であることを認識して購入し、転売していたものと認められると判断した上で、XとYとは、有名ブランドの偽物を継続的に売買していたにすぎず、XとYとの関係において、同売買は不法行為を構成するものではないと判断した。

①Xは、Aに対して有名ブランド品の廉価販売をしているBの販売価格のその65パーセントの値段で有名ブランド品を納入していること、

②Yから正規品の販売価格の2割程度の値段で購入していること、

③それにもかかわらず本件商品をブランド品メーカーの工場から直接に仕入れた物であると称していること、

④本件取引をするに当たって、正規価格と仕入価格の差が半分以下であり、商品によっては7、8割引きのものがあることを知っていたこと、

⑤Yから本件確約書の提供を求める以外には、本件商品が正規品であることを確認することは行っていないこと、

⑥Yから納品された本件商品の中の添付文書がいずれも至る箇所に誤字があり、一見して正規品ではないことが明らかな文書であったこと、

⑦Yに対し、納品時には同添付文書を除去して納品するよう指示したこと、

⑧本件商品を購入した顧客に対して、X独自の「保証書」を作成して、商品に内包して納品していたこと、

⑨同保証書には正規代理店の修理業者ではない業者名が記載されていたこと、

⑩原告の販売する商品を購入した顧客から商品がおかしいという苦情が寄せられたことがあること、

⑪修理等のクレームがついた場合に正規代理店の指定する修理業者ではないFという商号の修理業者に、クレームがついた商品を修理させていたこと

 

 

3 輸出や輸入のトラブルにはご注意ください

輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。

輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。

最新の裁判例その4

2023-12-19

ECサイトの利用の拡大や副業の推進等により、輸入や輸出に関わる個人、法人は増加傾向にあります。

そこで、本日は、輸入トラブルによって裁判まで発展した事案である、東京地判平成30年2月20日(LLI/DB 判例秘書登載)をご紹介いたします。

 

1 事案の概要

Xが、輸出入代行業等を目的とするYとの間で、①XがYから株式会社A製の農業用トラクターを購入し、Xを輸出者とする旨の合意を締結し、②本件契約に基づき,Yが取引業者に指示して、農業用トラクターをイランへ輸出する旨の合意をしたところ、Yが、本件個別合意に反して、船荷証券の記載を偽るなどして、農業用トラクターをイラクへ輸出しようとしたこと等に関し、Yに対して本件契約及び本件個別合意の債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です。

 

2 裁判所の判断

①前記認定の事実によれば、本件製品の売買契約は、当初より本件製品をイラクへ輸出する目的で締結されたものであると認められる以上、本件製品が、本件製品をイラクへ輸出することを前提とした手続がとられたことに関し、Yに本件個別合意の債務不履行又は不法行為が成立する余地はなく、Xの主張には理由がない。

②XとYとの間で、本件製品の輸出先がイランであると合意されたとは認められず、これに関するXの主張は採用できない。そのため,その余の争点について検討するまでもなく、本件個別合意に関する債務不履行及び不法行為に関するXの請求には理由がない。

 

3 輸出や輸入のトラブルにはご注意ください

輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。

輸出代行や輸入代行の利用は拡大しておりますが、それに伴い様々なトラブルが発生しております。便利なサービスである一方で、利用する際には適切な対応を期待することができるかどうかを慎重に検討する必要がある点には注意が必要です。

 

輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。

最新の裁判例その3

2023-12-12

ECサイトの利用の拡大や副業の推進等により、輸入や輸出に関わる個人、法人は増加傾向にあります。

そこで、本日は、輸入トラブルによって裁判まで発展した事案である、東京地判令和2年9月9日(LLI/DB 判例秘書登載)をご紹介いたします。

 

1 事案の概要

冷凍肉の米国から日本までの海上運送の荷受人であるXが、運送人であるYに対し、①Yはコンテナ内の温度を華氏0度に設定すべき義務を負っていたにもかかわらず、これを懈怠し5日間にわたり摂氏0度に設定したため、積荷である冷凍肉が損傷したこと、及び②Xとの間で損傷した冷凍肉を米国に返送する旨の合意が成立したにもかかわらず、これに反して当該冷凍肉をXに無断で処分したこと等ろ理由として、不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です。

 

2 裁判所の判断

①約款上、本件コンテナのような冷凍冷蔵コンテナの温度設定については荷主がその危険及び責任を負担することと定められており、本件船荷証券の表面に特定の温度が記載されている場合であっても、また、運送人又は荷主のいずれが温度設定をしたかにかかわらず、運送人は冷凍冷蔵コンテナ内の温度の維持について保証するものではないとされていたことが認められる。

②そうすると、本件コンテナ内の温度の設定については、荷送人又は荷受人であるXがその危険及び責任を負担しており、Yが本件コンテナ内の温度の設定、維持及び管理をすべき義務を負っていたということはできない。

③Xは、本件コンテナ内の温度の設定に誤りがあったことを受けて、本件コンテナを米国まで返送することを検討していたものと認められるが、X又はBとYとの間において、返送の時期や費用の負担について具体的な協議がされていたことを認めるに足りる証拠はないことなどからすれば、XとYとの間において、本件コンテナの返送に関して具体的な合意がされていたと認めるには足りない。

 

3 輸出や輸入のトラブルにはご注意ください

輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。

輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。

最新の裁判例その2

2023-12-05

ECサイトの利用の拡大や副業の推進等により、輸入や輸出に関わる個人、法人は増加傾向にあります。

そこで、本日は、輸入トラブルによって裁判まで発展した事案である、東京地判令和5年4月27日(LLI/DB 判例秘書登載)をご紹介いたします。

 

1 事案の概要

Xが、自身が権利を有する商標に関して、Yが類似する商標を付したバックパック、肩掛けかばん、ブリーフケース、旅行かばん、カジュアルバッグ等を輸入、販売し、又は販売のために展示する行為を行っているとして、商標権侵害を理由に損害賠償請求を行った事案です。

 

2 裁判所の判断

①商標法38条は、商標権侵害の際に商標権者が請求し得る最低限度の損害額を法定した規定であり、その損害額は、原則として、侵害品の売上高を基準として、実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。

②実施に対し受けるべき料率は、(i)当該商標の実際の実施許諾契約における実施料率や、それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ、(ii)当該商標に蓄積された信用や顧客吸引力の程度、(iii)当該商標を当該商品に使用した場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、(iv)商標権者と侵害者との競業関係や商標権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して、合理的な料率を定めるべきである(知的財産高等裁判所平成30年(ネ)第10063号令和元年6月7日特別部判決参照)

③本件訴訟の審理経過や証拠関係に鑑みると、弁論の全趣旨に照らし、本件における侵害品の売上高は、損益計算書の売上高に、売上高に占める侵害品の割合を乗じて算定することが相当であり、上記売上高に占める侵害品の割合は、被告作成に係る納品書等から算定するのが相当である。

 

3 輸出や輸入のトラブルにはご注意ください

輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。

輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。

最新の裁判例その1

2023-11-28

ECサイトの利用の拡大や副業の推進等により、輸入や輸出に関わる個人、法人は増加傾向にあります。

そこで、本日は、輸入トラブルによって裁判まで発展した事案である、東京地判令和4年9月30日(LLI/DB 判例秘書登載)をご紹介いたします。

 

1 事案の概要

Xが、海外の企業Aからアルコールジェル製品を購入し、化粧品製造販売業許可を有するYを輸入代行業者として、当該製品を化粧品として輸入した。その後、①同製品には「除菌」と表示されたラベルが添付されているものの、薬機法上化粧品に「除菌」の表示をすることは違法であること、及び②同製品のラベルに表示されたアルコール濃度より実際のアルコール濃度が低いことが発覚したこと。そこで、Xは、Yが薬機法上の義務及び民法の信義則上の義務に違反し、その結果、Xが同製品を販売予定であった顧客からのキャンセルや値引き等の要求に対応しなければならなくなり、損害を生じたとして損害賠償請求を行った。

 

2 裁判所の判断

①薬機法はあくまで取締法規上の行為規範であって、直ちに不法行為法上の行為義務ないし注意義務を意味するものではない。したがって、薬機法上の義務違反が、直ちに医薬品等を購入した業者に対する不法行為法上の行為義務違反となるものではないというべきである。

②本件商品の瑕疵の内容を見ると、法令上許されない「除菌」という効能の表示がなされた、あるいはアルコール濃度が実際の数値よりも高い表示がなされたということにとどまり、それを使用する者に保健衛生上の危害を及ぼすような、基本的な安全性を欠くものでもなく、その瑕疵の程度は軽微であるうえ、Xの主張する被侵害利益は、結局のところ、法令上あるいは品質上の瑕疵のない商品の引渡しを受ける権利その他の契約上の利益にすぎないのであって、薬機法が想定する保護法益ではない。したがって、Xの主張するYによる薬機法上の義務違反行為は、それ自体あるいは信義則上の義務違反のいずれとしても、不法行為責任を基礎づけるものとは認められない。

 

3 輸出や輸入のトラブルにはご注意ください

輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。

輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。

知的財産権侵害物品の具体的な差止実績その2

2023-11-21

知的財産権の侵害は、独創的な技術やアイデアの発展を損なうものですので、幅広く規制が行われていますが、輸入品が知的財産権を侵害しているとして問題になる場合も多くあります。

本日は、税関が公表した令和5年上半期における知的財産権侵害物品の差止状況についてご紹介いたします。

 

1 令和5年上半期における知的財産権侵害物品の具体的な差止実績について

税関(財務省)から公表された令和5年上半期における知的財産権侵害物品の具体的な差止実績のうち、どのような製品が実際に差止となっているか、その概要は、以下の通りです。

①輸入差止件数としては、衣類が5,041件(構成比28.1%、前年同期比50.3%増)と最も多く、次に、財布やハンドバッグなどのバッグ類が4,292件(同23.9%、同3.8%増)、携帯電話及び付属品が2,618件(同14.6%、同200.9%増)、靴類が1,931件(同10.8%、同5.7%減)となりました。

②輸入差止点数としては、煙草及び喫煙用具が78,064点(構成比16.7%、前年同期比約758倍)と最も多く、次いで医薬品が62,587点(同13.4%、同10.8%増)、イヤホンなどの電気製品が38,123点(同8.2%、同33.5%減)、衣類が37,474点(同8.0%、同1.4%減となりました。

 

権利者側としては、自身の権利を侵害する貨物が出回っていないかを常に注意するとともに、もしそのような疑いがある場合には速やかに税関に相談する、差止の申し立てを行う等適切な対応を取り、権利を守っていく姿勢を示すことが重要です。

 

2 輸出、輸入に関しては様々な法規制がありますのでご注意ください

日本は貿易大国ですが、輸出や輸入に関しては様々な法規制が存在します。

輸出に関しては、外為法を中心に厳格な規制が存在しており、それに反する輸出をすると刑事事件等に発展するリスクがあります。

また、輸入に関しては、基本的には申告納税方式が採用されておりますが、輸入後には輸入事後調査等が存在しておりますので、安易に間違った申告をすることは絶対に避ける必要があります(場合によっては脱税等に該当するリスクもあります。)。

事業として輸出や輸入に従事している以上は、知らなかったでは済まされませんので、自社の事業に関する輸出や輸入に関連した法規制については十分注意する必要があります。

これらの法規制は変更になることも多いので、定期的に自社に関連する法規制を確認いただく必要があることは改めてご留意ください。

なかなか自社で法規制を確認することが難しい場合には、適宜専門家を含めてご相談等いただくことを強くお勧めいたします。

知的財産権侵害物品の具体的な差止実績

2023-11-14

知的財産権の侵害は、独創的な技術やアイデアの発展を損なうものですので、幅広く規制が行われていますが、輸入品が知的財産権を侵害しているとして問題になる場合も多くあります。

本日は、税関が公表した令和5年上半期における知的財産権侵害物品の差止状況についてご紹介いたします。

 

1 令和5年上半期における知的財産権侵害物品の具体的な差止実績について

税関(財務省)から公表された令和5年上半期における知的財産権侵害物品の具体的な差止実績の概要は、以下の通りです。

①輸入差止件数は、偽ブランド品などの商標権侵害物品が14,991件(構成比95.8%、前年同期比25.1%増)で、引き続き全体の大半を占めました。次に、偽キャラクターグッズなどの著作権侵害物品が374件(同2.4%、同5.1%減)でした。

②輸入差止点数は、商標権侵害物品が238,004点(構成比51.0%、前年同期比11.0%減)で、次いで意匠権侵害物品が178,916点(同38.4%、同295.4%増)、著作権侵害物品が41,112点(同8.8%、同44.9%減)でした。

 

知的財産権侵害物品の差止状況ですが、全体としては年々増加傾向にあるといえます。

知的財産権侵害については、権利者にとっては回復できない損害を与えるものですので、税関としても検査や摘発を厳しく行っているといえますが、問題のある輸入はなかなか減らない現状です。

権利者側としては、自身の権利を侵害する貨物が出回っていないかを常に注意するとともに、もしそのような疑いがある場合には速やかに税関に相談する、差止の申し立てを行う等適切な対応を取り、権利を守っていく姿勢を示すことが重要です。

 

2 輸出、輸入に関しては様々な法規制がありますのでご注意ください

日本は貿易大国ですが、輸出や輸入に関しては様々な法規制が存在します。

輸出に関しては、外為法を中心に厳格な規制が存在しており、それに反する輸出をすると刑事事件等に発展するリスクがあります。

また、輸入に関しては、基本的には申告納税方式が採用されておりますが、輸入後には輸入事後調査等が存在しておりますので、安易に間違った申告をすることは絶対に避ける必要があります(場合によっては脱税等に該当するリスクもあります。)。

事業として輸出や輸入に従事している以上は、知らなかったでは済まされませんので、自社の事業に関する輸出や輸入に関連した法規制については十分注意する必要があります。

これらの法規制は変更になることも多いので、定期的に自社に関連する法規制を確認いただく必要があることは改めてご留意ください。

なかなか自社で法規制を確認することが難しい場合には、適宜専門家を含めてご相談等いただくことを強くお勧めいたします。

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