残業代請求を受けた方へ

1.残業代請求を受ける企業~以下の企業は残業代請求を受ける可能性がありますのでご注意ください~

  1. 会社の経営が苦しく、残業代を払える状況ではないので、残業代を支払ってこなかった。
  2. 残業代も含めて給料として支払っている。その点は契約書上明記しているし、丁寧に説明し、従業員の同意を得ている。
  3. 小さな会社で家族のような付き合いをしている。残業代を支払ってほしい等という従業員はいないと信じている。

 

2.残業代についての考え方~正確な理解がない場合、企業に大きなデメリットをもたらします~

残業代に関して、ご注意いただきたい論点や概念を以下でご紹介いたします。

 

(1)残業代の時効について

残業代の時効は、基本的には2年となります。例えば、毎月末締め翌月10日払いで月給を支払う会社の場合、令和2年4月分の残業代は、令和2年5月10日が支払日となります。そのため、令和4年5月10日の経過で2年が経過し時効が完成することになります。

 

(2)固定残業代について

固定残業代とは、毎月の残業時間にかかわらず、定額の残業代を支払うことをいい、企業によっては、みなし残業代、固定残業手当、みなし残業手当等の名称を付けている場合もあるようです。

「固定残業代として従業員の同意を得ておけば、何時間の残業が発生しても追加の残業代を支払う必要はない」、と考えている方もいらっしゃるようですが、そのような考えは労働関連の法令上間違った考えとなりますので、ご注意ください。

固定残業代は、あくまでも残業代の見込額を支給するものに過ぎず、実際の残業時間に応じて計算した実残業代が、固定残業代の額を超えた場合には、企業はその超過額を支払う必要があります。

なお、固定残業代の金額を決める際には、以下の点に特にご注意ください。

  1. 固定残業代の金額と時間数を労働契約書や就業規則上で明示することが必要です。
  2. 固定残業代の支給に伴って基本給を減額する場合、基本給について最低賃金額を下回らないように注意することが必要です。

 

(3)会社が未払残業代を請求されたときに確認するべき視点について

①時効について

未払残業代の時効が成立しているかどうかについて、未払残業代の支払日を確認する必要があります。

 

②従業員が主張する未払残業代の金額について

従業員は、自らの実労働時間を踏まえて、未払残業代を請求しているはずですので、従業員が主張する実労働時間が正しいかどうかを改めて確認する必要があります。

ここで労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。従業員が主張する実労働時間が、企業の指揮命令下に置かれている時間と認定できるかどうか、という視点から、当該従業員の勤務状況等を確認していくことになります。

 

③当該従業員の管理監督者への該当性について

労働基準法では、「監督若しくは管理の地位にある者」、すなわち管理監督者に該当するものには、労働時間等に関する労働基準法の規定が適用されないと規定されています。そのため、当該従業員が管理監督者に該当した場合には残業代を支払う必要はないことになります。しかしながら、管理監督者への該当性の判断は非常に難しく、なかなか認められないのが実情です。

なお、深夜労働に対する割増賃金については、管理監督者に対しても支払う必要がありますのでご注意ください。

 

④固定残業代について

固定残業代に関する考え方、注意点は、上記(2)をご参照ください。残業時間によっては、既に残業代を支給済みであるという反論を行うことができる可能性があります。

 

3 残業代に関するその他の注意点

残業代に関して、特にご注意いただき点は、以下のとおりです。

  1. 残業代を支払わない場合、遅延損害金が発生します。例えば、従業員の退職後は、年14.6%の遅延損害金が発生します。多額の残業代の支払いを怠っている場合、遅延損額金の額も膨大になります。
  2. 労働審判や訴訟を従業員から起こされる可能性があります。この場合、労働審判や訴訟への対応に伴うコストを踏まえると、残業代を適切に支払う場合よりも圧倒的にコストが高くなる可能性があります。
  3. 訴訟の中で、企業の対応が悪質である等と判断された場合、企業へのペナルティとして、残業代の額と同額までの範囲で付加金の支払いが命じられるケースがあります。
  4. これは、事実上の問題ではありますが、昨今の社会情勢を踏まえますと、未払残業代がある場合、当該企業はいわゆるブラック企業等とのレッテルを貼られるリスクがあります。この場合、取引先や顧客との関係、ひいては、今後優秀な人材の採用に悪影響を及ぼすおそれもあります。

 

 

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