最新の裁判例その1

ECサイトの利用の拡大や副業の推進等により、輸入や輸出に関わる個人、法人は増加傾向にあります。

そこで、本日は、輸入トラブルによって裁判まで発展した事案である、東京地判令和4年9月30日(LLI/DB 判例秘書登載)をご紹介いたします。

 

1 事案の概要

Xが、海外の企業Aからアルコールジェル製品を購入し、化粧品製造販売業許可を有するYを輸入代行業者として、当該製品を化粧品として輸入した。その後、①同製品には「除菌」と表示されたラベルが添付されているものの、薬機法上化粧品に「除菌」の表示をすることは違法であること、及び②同製品のラベルに表示されたアルコール濃度より実際のアルコール濃度が低いことが発覚したこと。そこで、Xは、Yが薬機法上の義務及び民法の信義則上の義務に違反し、その結果、Xが同製品を販売予定であった顧客からのキャンセルや値引き等の要求に対応しなければならなくなり、損害を生じたとして損害賠償請求を行った。

 

2 裁判所の判断

①薬機法はあくまで取締法規上の行為規範であって、直ちに不法行為法上の行為義務ないし注意義務を意味するものではない。したがって、薬機法上の義務違反が、直ちに医薬品等を購入した業者に対する不法行為法上の行為義務違反となるものではないというべきである。

②本件商品の瑕疵の内容を見ると、法令上許されない「除菌」という効能の表示がなされた、あるいはアルコール濃度が実際の数値よりも高い表示がなされたということにとどまり、それを使用する者に保健衛生上の危害を及ぼすような、基本的な安全性を欠くものでもなく、その瑕疵の程度は軽微であるうえ、Xの主張する被侵害利益は、結局のところ、法令上あるいは品質上の瑕疵のない商品の引渡しを受ける権利その他の契約上の利益にすぎないのであって、薬機法が想定する保護法益ではない。したがって、Xの主張するYによる薬機法上の義務違反行為は、それ自体あるいは信義則上の義務違反のいずれとしても、不法行為責任を基礎づけるものとは認められない。

 

3 輸出や輸入のトラブルにはご注意ください

輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。

輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。

 

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