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保税倉庫で保管中の売買と輸入取引該当性について

2023-03-27

1 保税倉庫で保管中の売買と輸入取引について

貨物を日本の保税倉庫に搬入後、輸入許可が下りる前に、当該貨物の売買が行われた場合の輸入取引の考え方はどのように考えることになるでしょうか。

例えば、日本に拠点を有するAが、海外在住のBから商品を購入し、日本の保税倉庫に搬入後、日本国内のCに対して、当該商品を転売したとします。
この場合、AB間の取引が輸入取引に該当するのか、それとも、AC間の取引が輸入取引に該当するのでしょうか。

ここで、そもそもの「輸入取引」の定義にさかのぼって考えてみますと、「輸入取引」とは、日本に拠点を有するものが買手として貨物を日本に到着させることを目的として売手との間で行った売買のことを指し、現実に当該貨物が日本に到着することとなった原因としての取引のことを指します(関税定率法第4条第1項、同法基本通達4-1(1))。

この定義を前提に考えますと、AC間の取引はあくまでも日本国内における国内取引過ぎず、AC間の取引があったことから貨物が日本に搬入されたわけではありません。
そのため、AB間の取引が輸入取引に該当すると考えて問題ないでしょう。

実際に輸入許可が下りるまでの間に複数の取引が行われている場合には、貨物が日本に到着することとなった直接の取引が何であるかを特定することが重要です。

2 輸出入をめぐるルールには様々なものがありますのでご注意ください

貨物の輸入や輸出に関するルールは、関税法や関税定率法、これらの通達等に規定されておりますが、なかなか一般的には理解が難しい点も多く、知らずに輸出入を行うと刑事罰や追徴課税などの様々なペナルティを課されてしますリスクがございます。

例えば、輸入する貨物の輸入申告価格を実際の貨物の価格よりも低額に申告した場合には明確な脱税となりますので、刑事罰や追徴課税など様々なペナルティがあります。輸入申告価格は、単に貨物の仕入れ価格と考えればよいわけではなく、様々な加算要素がありますので、慎重に検討することが非常に重要です。
他にも、輸出入特有の規制は多数ありますので、可能であれば、輸出入を継続的に行う最初の段階で事業計画が法的に問題ないかどうかをリーガルチェックすることをお勧めいたします。

最初の段階できちんとした体制を整備しておくことで、事業を円滑に進めることが可能となります。
弊事務所は、税関事後調査を含む税関対応や輸出入トラブルを中心に企業法務を幅広く扱っておりますので、お困りの点等ございましたら、まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

貨物が第三国を経由した場合の輸入取引について

2023-03-20

1 貨物が第三国を経由した場合について

海外から貨物を輸入する際、例えば、日本に所在するA氏が海外のB氏から商品を輸入するとしましょう。
この場合、海外から日本に商品を輸送する過程で、第三国であるC国を経由して日本に届いた場合、輸入申告価格の前提となる輸入取引はA氏とB氏との間で発生した売買であると考えて良いでしょうか。
それとも、直接的な商品の輸出国がC国となりますので、輸入取引は存在せず、例外的な取引に該当するとして輸入申告価格を考える必要があるでしょうか。

ここで、そもそもの「輸入取引」の定義にさかのぼって考えてみますと、「輸入取引」とは、日本に拠点を有するものが買手として貨物を日本に到着させることを目的として売手との間で行った売買のことを指し、現実に当該貨物が日本に到着することとなった原因とした取引のことを指します(関税定率法第4条第1項、同法基本通達4-1(1))。

そうしますと、確かに直接的な輸出国は第三国であるC国となりますが、輸入取引該当性を判断する上では、直接的な輸出国がどこかということは必ずしも重要ではなく、あくまで実際に日本に商品が到着することとなった原因である売買取引は何かということが中心となることがわかります。

したがって、A氏とB氏との間の売買取引が輸入取引に該当すると考えて問題ないものと考えられます。

2 輸入や輸出を継続的に(業として)行う場合には、ご注意ください

貨物の輸入や輸出に関する規制は、関税法や関税定率法等に規定されておりますが、なかなか通常の感覚では理解できない部分も多く、また、あまり知られていないものの重要なルールも相当程度ございます。
例えば、貨物の輸入のために現地でパートナーに動いてもらう場合、パートナーに支払う委託料については、例外的に買付代理人に対して手数料と構成できる場合は除き、課税価格に加算しなければならない場合も多く、加算せずに輸入申告を行う場合には、過少申告となり、事後的に追徴課税が行われることとなります。

他にも、輸出入特有の規制は多数ありますので、可能であれば、輸出入を継続的に行う最初の段階で事業計画が法的に問題ないかどうかを事前にリーガルチェックすることをお勧めいたします。

弊事務所は、税関事後調査を含む税関対応や輸出入トラブル、広告関連法務を中心に企業法務を幅広く扱っておりますので、お困りの点等ございましたら、まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

日本在住の当事者間での売買に基づく輸入について

2023-03-13

1 日本在住の当事者間での売買に基づく輸入について

輸入というと、通常のイメージでは、日本在住の法人又は個人が、海外の法人又は個人から商品を仕入れることを指します。
では、日本在住の当事者間での売買に基づき輸入する場合、何か異なる対応が必要になるのでしょうか。

例えば、日本に所在する法人Aが、同じく日本に所在する法人Bから、法人Bが海外で保管している商品を購入した場合を想定しましょう。
このような場合には、そもそも日本に所在する法人同士の取引である以上、通常の輸入とは考えられないのではないか、というイメージをお持ちになる方もいるかもしれません。

ここで、そもそもの「輸入取引」の定義にさかのぼって考えてみますと、「輸入取引」とは、日本に拠点を有するものが買手として貨物を日本に到着させることを目的として売手との間で行った売買のことを指し、現実に当該貨物が日本に到着することとなった原因としての取引のことを指します(関税定率法第4条第1項、同法基本通達4-1(1))。

このような輸入取引の定義を前提に考えますと、買手は日本に拠点を有することが必要ですが、売手は必ずしも日本に拠点を有する必要はありません。
そのため、買手のみではなく、売手も日本に所在するような日本国内での通常の取引に思われる場合でも、輸入取引には問題なく該当することとなります。

この辺りは、なかなか通常のイメージとは乖離する部分でもありますが、基本的な定義やルールを出発点に考えていくことが肝要です。

2 輸入申告価格の算定にはご注意ください

貨物の輸入や輸出に関するルールは、関税法や関税定率法、これらの通達等に規定されておりますが、なかなか一般的には理解が難しい点も多く、知らずに輸出入を行うと追徴課税を含む様々なペナルティを課されてしますリスクがございます。

例えば、輸入する貨物のライセンス料を輸出者側等に支払っている場合には、当該ライセンス料については、課税価格に加算しなければならず、加算せずに輸入申告を行う場合には、過少申告となり、事後的に追徴課税が行われることとなります。

他にも、輸出入特有の規制は多数ありますので、可能であれば、輸出入を継続的に行う最初の段階で事業計画が法的に問題ないかどうかをリーガルチェックすることをお勧めいたします。
最初の段階できちんとした体制を整備しておくことで、事業を円滑に進めることが可能となります。

弊事務所は、税関事後調査を含む税関対応や輸出入トラブルを中心に企業法務を幅広く扱っておりますので、お困りの点等ございましたら、まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

輸出国からの発送後、輸入国に到着前に売買された貨物について

2023-03-06

1 輸出国からの発送後、輸入国に到着前に売買された貨物について

輸入申告価格は、通常、輸入取引における売買価格が基礎となります。

ここで、「輸入取引」とは、日本に拠点を有するものが買手として貨物を日本に到着させることを目的として売手との間で行った売買のことを指し、現実に当該貨物が日本に到着することとなった原因として取引のことを指します(関税定率法第4条第1項、同法基本通達4-1(1))。

では、売買Aを原因として輸出国から日本に発送後、日本に到着する前に、改めて同じ貨物について売買Bが行われ、結果として売買Bを原因として日本に到着した貨物の場合、輸入申告価格は、売買Aにおける価格と売買Bにおける価格のどちらになるでしょうか。

中国や韓国など日本の近隣の国から航空便で輸送することに慣れている方にとっては教室事例のように思える事案ですが、実際に船便等輸送に一定の時間が掛かる取引の場合には、このような問題が発生することも十分あり得るところです。

結論としては、最終的には売買Bを原因として日本に到着し輸入申告を行うことになっている以上、売買Bにおける貨物の取引価格を基礎として輸入申告を行う必要があります。
実際に輸入申告を行う原因となったのは、最終的には売買Bとなりますので、輸入取引に該当する取引は売買Bとなります。

ただ、実際問題としては、輸入申告の際に利用するインボイスなどが売買Aのものと間違えてしまったり、通関業者への差し替えの依頼が間に合わない等の手続上の問題が発生する可能性は十分考えられますので、鉄d期は慎重に行うことが非常に重要です。

2 輸入申告価格の算定にはご注意ください

貨物の輸入や輸出に関する規制は、関税法や関税定率法、これらの通達等に規定されておりますが、なかなか理解が難しい部分も多く、知らずに輸出入を行うと追徴課税がなされる等予想外の対応を事後的に強いられる場合もございます。

例えば、輸入するのために、タグ等の備品を無償提供物として輸出者側に提供していた場合、当該無償提供物の費用については、課税価格に加算しなければならず、加算せずに輸入申告を行う場合には、過少申告となり、事後的に追徴課税が行われることとなります。

他にも、輸出入特有の規制は多数ありますので、可能であれば、輸出入を継続的に行う最初の段階で事業計画が法的に問題ないかどうかをリーガルチェックすることをお勧めいたします。

弊事務所は、税関事後調査を含む税関対応や輸出入トラブルを中心に企業法務を幅広く扱っておりますので、お困りの点等ございましたら、まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

輸出代行業者や輸入代行業者を利用する際の課税価格の決定方法について

2023-02-27

従来、輸出入といえば、商社や規模の大きな会社が中心になって行うものと考えられていました。

しかしながら、インターネットを利用すれば世界中とつながることが可能であるため現在では、中小企業や、ひいては一個人までが幅広く輸出入を業として行うことが日常となっております。

ここで、貨物を輸出入する際には、貨物の課税価格の決定のために「売手」及び「買手」を特定することが必須ですが、輸出代行業者や輸入代行業者を利用する場合には、誰が「売手」、「買手」に該当するのかわからない、というご質問をいただくことがあります。

1 輸出代行業者や輸入代行業者を利用する際の「売手」、「買手」について

「売手」、「買手」とは、実質的に自己の計算と危険負担に基づいて輸入取引を行う者のことを指します。より具体的には、輸入貨物の品質、数量、価格等を自らの責任により決定し、貨物の欠陥や数量不足等の取引上の危険を負担する者のことを指します(関税定率法第4条第1項、同法基本通達4-2(1))。

輸出代行業者や輸入代行業者については、形式的な名称だけで判断することは難しいですが、通常は、単に輸出や輸入の手続の代行業務を行うだけであり、実質的に自己の計算と危険負担に基づいて輸入取引を行うことはありません。

そのため、「売手」、「買手」はそれぞれ売買契約の当事者が該当することとなります。

例えば、個人で副業として輸出入を行う方も増えておりますが、輸出入の代行業者を利用したとしても、一切輸出入に関係ないということにはなりませんのでご注意ください。

2 輸入や輸出を継続的に(業として)行う場合には、ご注意ください

貨物の輸入や輸出に関する規制は、関税法や関税定率法等に規定されておりますが、なかなか通常の感覚では理解できない部分も多く、知らずに輸出入を行うと予想外の対応を事後的に強いられる場合もございます。

例えば、貨物の輸入のために現地でパートナーに動いてもらう場合、パートナーに支払う委託料については、課税価格に加算しなければならない場合も多く、加算せずに輸入申告を行う場合には、過少申告となり、事後的に追徴課税が行われることとなります。

他にも、輸出入特有の規制は多数ありますので、可能であれば、輸出入を継続的に行う最初の段階で事業計画が法的に問題ないかどうかをリーガルチェックすることをお勧めいたします。

弊事務所は、税関事後調査を含む税関対応や輸出入トラブルを中心に企業法務を幅広く扱っておりますので、お困りの点等ございましたら、まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

 

テスト出勤における賃金支払いの要否について

2023-02-20

休職期間中に、復職できるかどうかをテストするために出勤して一定の作業を行った場合に、会社は当該従業員に対して賃金を支給する必要があるでしょうか。
復職の可否の判断のための作業であることから労働ではないとして賃金を支給する必要はないという考え方もある一方で、このような場合に、賃金の支給義務があると判断した裁判例があります。
以下、ご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。

 

1 NHK名古屋放送局事件(名古屋高判平30・6・26労判1189・51)

【判示の概要】
本件テスト出局中、控訴人はその上司であるD部長の指示に従って、編集責任者から割り振られたニュース項目について、送られてきたラジオニュース用原稿を編集担当者と打ち合わせながらテレビ用に作り替えるとともに、使用する映像を確認し、原稿に基づいてテロップ(スーパー)を発注し、ニュース放送中は、自分が担当したニュース項目の放送にスタジオ外で立ち会うなど、被控訴人の業務であるニュース制作に関与し、控訴人が関与したニュースは放映され、その成果を被控訴人が享受しており、控訴人が出局していた時間は使用者である被控訴人の指揮監督下にあったものと見られるから、この時間は労働基準法11条の規定する労働に従事していたものであり、無給の合意があっても最低賃金の適用により、被控訴人は控訴人に対し、その労働に対し最低賃金額相当の賃金を支払う義務を負うこととなる(労働基準法11条、13条、28条、最低賃金法2条、4条1項、2項)。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

過少申告加算税の具体的な計算方法について

2023-02-13

本日は、輸入申告時の納税申告において課税価格を過少に申告してしまった場合における過少申告加算税の具体的な計算方法をご紹介いたします。
なお、自主的に修正申告を行った場合には、申告時期によっては過少申告加算税が課されない場合がありますので、以下では、輸入事後調査の結果を踏まえて修正申告を行った場合を前提といたします。
また、一定の場合には、過少申告加算税が加重され、以下とは異なる算定方法が用いられる場合があります。以下は、あくまでも計算方法の一例となりますので、ご注意ください。

 

1 過少申告加算税の計算におけるルール

①過少申告加算税の計算の基礎となる、修正申告又は更正により納付すべき税額が1万円未満の場合には、過少申告加算税は賦課されません。
②また、納付すべき税額に1万円未満の端数がある場合には、これを切り捨てることとされています。
③次に、実際に算定した過少申告加算税が5千円未満の場合にはこれを徴収しないこととされています。
④また、過少申告加算税に100円未満の端数がある場合は、これを切り捨てることとされています。

以上のルールを前提に、過少申告加算税を計算すると、以下のとおりとなります。

・当初の申告税額  750,000円

・修正申告後の税額 900,000円

・修正申告により納付すべき税額=150,000円

・過少申告加算税  150,000円×10%=15,000円

 

2 過少申告加算税の計算における端数計算の例

修正申告による納付税額が8,000円の場合、過少申告加算税の計算の基礎は8,000円となります。この場合、納付すべき税額が10,000円未満となりますので、過少申告加算税は課されません(ルール①)。
他方で、修正申告による納付税額が35,000円の場合、加算税の計算の基礎は、35,000円ではなく、30,000円となります(ルール②)。その結果、過少申告加算税は3,000円となりますが、5,000円未満ですので、過少申告加算税は徴収されません(ルール③)。

過少申告加算税の計算方法は、端数処理を含め、なかなか理解しづらいところです。
実際にどの程度の過少申告加算税が課されるか不安だ、過少申告加算税についてもう少し詳しく知りたい、等ございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。

三六協定に基づかない残業命令の有効性について

2023-02-06

会社の業務の繁閑に応じて、従業員には残業を命じる必要がある場合も多いものと思います。
もっとも、このような残業命令については、無制約で行うことができるわけではありませんので注意が必要です。
本日は、三六協定に基づかない残業命令の有効性が問題となった裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 宝製鋼所事件(東京地判昭25・10・10民集1・5・766)

【判示の概要】
従業員が割増賃金要求のための、交渉をなすことについては、組合において明示の承認を与えていたのであるから、申請人等が、その要求貫徹のためになした行為は、もとより正当な組合活動である。
もつとも、申請人等が、被申請人会社との交渉をもつことなく、直ちに産業拒否の態度に出たことは、信義則に背くといえないこともないが、その残業は、被申請人会社と前記労働組合との協定に基くものではなく、会社の慣行によつて行われてきたものであるから、申請人等に法律上そのような残業を強制するということはできないのであつて、それゆえ、残業拒否を違法とする前提要件を欠いているというベきであり、七の信義則違反ということも問題とならない。

上記裁判例はやや古いものですが、仮に会社内で慣行として残業命令が行われ、従業員が従っていたとしても、三六協定がない以上は、法律上強制力をもつ形で残業命令を行うことはできないと判示しており、当然といえば当然ではありますが、改めて念頭に置いておくべき重要な裁判例であるものといえます。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

みなし労働時間制の適用が認められるかどうかが問題となった裁判例

2023-01-30

本コラムにおいては、労働者の労働時間に関する裁判例をいくつかご紹介してまいりました。
本日は、みなし労働時間制の適用が認められるかどうかが問題となった裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 ハイクリップス事件(大阪地判平20・3・7労判971・72)

【判示の概要】
みなし労働時間制は、単に労働者が事業場外で業務に従事しただけでなく、労働時間を算定し難い場合に適用されるところ(労働基準法38条の2第1項本文)、被告は、タイムシートを従業員に作成させ、始業時刻や終業時刻を把握していただけでなく、どのような業務にどのくらいの時間従事したかも把握していたこと、に電子メール等の連絡手段を通じて業務上の連絡を密にとっていたものと認められること、タイムシートには、みなし労働時間制の適用を前提とした画一的な始業時刻と終業時刻を記載するよう指示するのではなく、原則として実際の始業時刻と終業時刻を記載するよう指示していたことからすると、原告について、労働時間を算定し難い状況があったとは認められない。
よって、みなし労働時間制、(労働基準法38条の2)の適用はない。

以上のとおり、本裁判例においては、労働時間を算定しがたい状況にあったといえるかどうかを、客観的な資料、状況を踏まえて判断し、結論としてみなし労働時間制の適用を否定いたしました。
他の事案でも考え方が参考となる裁判例といえます。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

賃金制度の変更と黙示の承諾について

2023-01-23

本コラムにおいては、労働者の賃金に関する裁判例をいくつかご紹介してまいりました。
本日は、会社が歩合給制を導入した後に、退職した従業員から歩合給制への変更は無効であり、変更前の賃金制度に基づく退職金の請求がなされた事案に関する裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 大阪地判平14・7・19(労判833・22)

【判示の概要】
歩合給制の導入には合理的な理由があり、またこれの導入によって賃金額が上がった従業員もおり、歩合給制の導入が直ちに従業員に不利益な賃金体系であるということもできないし、歩合給制が導入され、これに基づく賃金が支給された後も原告らを含む従業員から苦情や反対意見が述べられたとの事情はうかがわれず、むしろ、営業社員の中には成果主義導入を歓迎する者もいた(被告本人兼被告会社代表者松岡)のであるから、原告らは歩合給制導入を認識し、歩合給制に基づいて計算された賃金を受領することにより歩合給制の導入を黙認していたというべきである。
また、平成12年11月の基本給減額についても、賃金を使用者が一方的に減額することは認められるものではないが、原告らはいずれも減額された賃金を受領しており、基本給の減額については黙示に承諾していたものというべきである。
この点、原告らは、生活のために賃金を受領していたにすぎない旨主張するが、原告らが基本給減額時に被告会社に抗議した等減額を拒絶した等の事情を認めるに足りる証拠は全くない。
したがって、歩合給制導入及びその後の基本給減額が無効であるとの原告らの主張は採用できない。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

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