Archive for the ‘コラム~通関手続、輸出入トラブル~’ Category

原産地基準について

2021-04-06

特恵関税等の優遇措置を受けるためには、輸入貨物が原産地基準を充足する必要があります。
原産地を認定する基準としては、WTO原産地規則に関する協定第9条第1項(b)において、「特定の物品の原産地であると決定される国は、当該物品が完全に生産された国又は、最後の実質的な変更が行われた国のいずれかとすることを規定すべき」としており、この考え方が日本を含め世界の多くの国で原則的な考え方として採用されているのが実情です。

以下では、日本で採用されている原産地基準をご紹介いたします。

 

1 原産地基準について

(1)完全生産品基準
一つの国において完全に生産されることを要件とするもので、主に農産品や鉱業品などに適用されております。

(2)実質的変更基準
物品の生産に2カ国以上の国が関与している場合、当該物品に最後に実質的変更を加えた国を原産地とする基準で、さらに以下の三つの基準があります。

①関税番号変更基準
関税分類番号(HSコード)の変更を実質的変更とみなす基準のことを指します。
関税分類番号は、上2桁を「類」、上4桁を「項」、上6桁を「号」と区別されます。そして、日本では、上4桁「項」の変更基準を採用しております(関税法施行規則第1条の6、関税法基本通達68-3-5)。

②付加価値基準
物品の調達、生産、加工等の作業に伴って付加された価値を価額換算し、当該付加価値が一定の基準値を超えた場合に、実質的変更があったとみなす基準です。

③加工工程基準
特定の生産・加工工程が実施された場合に実質的変更がなされたとみなす基準です。

具体的な条約内において、上記の内のどの基準が採用されるかが規定されているので、実際にどの基準が採用されているかを判断するためには、条約の内容を詳細に確認する必要があります。
例えば、シンガポールとの間のEPAにおいては、関税番号変更基準が原則とされておりますが、化学製品等特定の品目の貨物については、付加価値基準を用いることもできると規定されております。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

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輸出入トラブルや通関トラブルでお困りの方やご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

原産地規則について

2021-04-05

原産地規則とは、輸入又は輸出される貨物の原産地(原産地とは、ひとまず、貨物の「国籍」のこととイメージいただければ大丈夫です。)を決定するために用いられるルールのことです。
このような原産地規則は貨物を輸入する際には非常に重要なルールとなりますが、輸入者は、輸入通関手続を通常通関業者に委任することが多いので、このような原産地規則までは理解していないことがほとんどであるものと思います。
もっとも、何かトラブルが発生した場合には輸入者自身が対応する必要が生じる場合もありますので、概要程度であっても原産地規則を理解しておいた方がよいものと考えられます。

以下では、原産地規則の概要をご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。

 

政策目的に応じて、原産地規則は、以下の1及び2のとおり大別されます。

1 特恵原産地規則

特恵原産地規則とは、輸入品に特恵関税を付与するために利用する規則で、以下の(1)及び(2)に分類されます。

(1)一般特恵関税(GSP)を適用するための原産地規則
開発途上国に対する一般特恵関税制度に基づく税率の適用対象となる貨物であるかどうかを決定するための規則のことを指します(関税暫定措置法施行規則第8条、第9条及び別表等)。

(2)自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の税率を適用するための規則
自由貿易協定(FTA)とは、特定の国や地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定のことを指します。
他方で、経済連携協定(EPA)とは、貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含む幅広い経済関係の強化を目的とする協定のことを指します。

日本が自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)を締結している国や地域は、シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN全体、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル等です。

 

2 非特恵原産地規則

非特恵原産地規則とは、1以外の目的のために利用されるもので、例えば、WTO協定税率の適用や貿易統計計上等のための規則等があります(関税法施行規則第1条の6及び第1条の7等)。
上記の原産地規則においては、それぞれ原産地基準が規定されており、実際に貨物を輸入する際には、原産地基準の内容を確認することが必須です。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出入トラブルや通関トラブルに関するご相談を幅広くお受けしております。
原産地規則に関する問題をはじめ、輸出入トラブルや通関トラブルでお悩みの方、ご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

代表的な輸入関連書類について

2021-04-01

ビジネスで貨物を輸入する際に必要となる書類は複数あります。
通常は、貨物の輸入は通関業者依頼し、通関業者からの指示に沿って書類を提出すれば、あとは通関業者が適切に輸入申告をしてくれます。
そのため、どのような書類が、輸入申告においてどのような意味合いを持っているのか、ということに関してまで明確には認識することができていないケースも多いのではないでしょうか。

そこで、本日は、概要にとどまりますが、輸入申告を行う上で特に重要な書類についてご紹介いたします。各書類の内容等はまた、別の機会にご紹介できればと思います。

 

1 インボイス(送付状、仕入書、請求書等と呼ばれる場合もあります)

通常は、貨物の購入者(輸入者)に対してメーカー側が発行する納品書兼請求書のことを指しますが、送付状や見積もり段階で発行される場合もあります。
代表的なものとしては、プロフォーマーインボイスとコマーシャルインボイスの2種類があります。

 

2 パッキングリスト(梱包明細書)

貨物がどのように梱包されているのか、梱包の数はいくつなのか、梱包の番号と内容、大きさと重量はどうなっているのか、梱包の外装に書かれたマーク(荷印)はどんなものなのか、といった梱包の状況や梱包された貨物の内容等を把握することを目的として作成される書類です。インボイスだけでは、実際の貨物の状況が分かりませんので、インボイスとあわせて輸入申告の際には提出されることになります。

 

3 運送書類(B/L、AWB)

船便輸送の場合のB/L(船荷証券)は、輸入取引に関する書類で最も重要なものの一つです。なぜなら、この書類と引き換えに、貨物を受領することができるからです。
なお、航空便の場合の航空貨物輸送上はAWBといいます。

 

4 原産地証明書

特恵関税等、税制上の優遇等を受けるために必要な書類です。

 

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輸入ビジネスにおける注意点

2021-03-31

輸入取引をビジネスの中心とする場合、通常は、通関手続きや貨物の運送などは、フォワーダー等の専門家に依頼すればよいので、基本的には、ビジネスを行う者はそれらの手続面を気にする必要はないのが実情といえます。

 

1 輸入通関手続の適正さを日々精査することが重要です

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。
しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。
通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

というのも、税関事後調査という制度があり、貨物を輸入した後、相当程度の期間経過後に税関が貨物の輸入申告が適切に行われたかどうかを輸入者の事業所等で調査することがあります。
このような調査があることを踏まえて、具体的にどのような点に注意しておく必要があるかというと、それは、ビジネスの内容ごとに大きく異なります。

特に、輸入者側から輸出者側に対して原材料の一部を無償で提供している場合や知的財産権に絡む問題がある場合等では注意が必要です。
具体的なビジネスの内容を踏まえて、どのような内容を特に注意すべきかを把握した上で、輸入関連の法令に照らして適切となるように、日々のビジネスの内容を精査していくといった作業が必要となります。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所では、代表弁護士が、輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出入トラブルや通関トラブルに関するご相談を幅広く取り扱っております。
ご相談いただいたビジネスの内容を踏まえ、日々の業務においてどのような点を注意すべきかを整理するといったサービスもご提供しております。
日々の業務で貨物の輸入を頻繁に行っているものの、輸入・通関に関して把握できていない等ご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。。

一括加算について

2021-03-25

輸入取引をビジネスとしている方の中には、一括加算という仕組を聞いたことがある方もいらっしゃるものと思います。
一括加算は、便利な面もありますが、注意すべき点もありますので、その利用に当たっては少なくとも一通りの概要を把握しておく必要があります。
以下では、一括加算の概要について、ご紹介いたします。

 

1 一括加算の概要

一括加算とは、簡単に言うと、特定の要件を充足する場合において、複数回にわたって輸入される貨物に係る無償提供費用等の額を、特定の輸入貨物の課税価格に一括して算入する仕組のことを指します。
すなわち、複数の輸入貨物に係る加算要素としての無償提供費用等が一括して支払われる場合には、原則として、個々の輸入貨物に関連する額を案分して当該輸入貨物の課税価格に算入することとなりますが、次の①及び②に掲げる費用等の額の加算について、それぞれに掲げる要件を充足するときは、便宜特定の輸入貨物の課税価格に一括して算入することができるというものです。
継続的に輸入取引をビジネスとして行っている輸入者にとっては、非常に便利な仕組であるものといえます。

①関税定率法第4条第1項第3号に掲げる費用
「輸入者から希望する旨の申し出があり、かつ、課税上その他特に支障がないと認められるとき」に一括加算が認められます。

②上記①以外の費用等
「輸入者から希望する旨の申し出があり、かつ、課税上その他特に支障がないと認められるとき」との要件に加え、「個々の輸入貨物への按分が困難と認められるもの」に一括加算が認められます。

なお、実際に一括加算を希望する場合は、原則として、あらかじめ包括評価申告書を提出することが必要であることにはご留意ください。

 

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評価申告について

2021-03-24

輸入取引をビジネスとして継続的に行っている方の中には、評価申告という制度を聞いたことがある方もいらっしゃるものと思います。
評価申告は便利な面もありますが、注意すべき点もありますので、制度の内容を踏まえて慎重に対応を検討する必要があります。
以下で、評価申告の概要をご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。

 

1 評価申告の概要

評価申告とは、簡単に言うと、輸入取引に係る仕入書価格と現実支払価格とが一致しない場合等、課税価格の計算の基礎が明らかでない場合に、当該課税価格の計算に必要な事項を税関に対して申告する制度のことを指します。

関税の納税申告の一環として、当該輸入貨物の課税価格の決定のための基礎、売手と買手との間の特殊関係の有無、輸入取引に係る特別な事情等、当該輸入貨物の課税価格を決定するために必要な事項を書面に記載して輸入貨物の輸入(納税)申告の際に又はあらかじめ税関長に申告することになります。

ただし、輸入取引における売手と買手との間に特殊関係がなく、かつ、輸入取引に係る特別な事情がない場合で、輸入貨物の課税価格を仕入書、運賃明細書、保険料明細書及び包装明細書により決定できるときは、評価申告をする必要はありません(関税法7条及び同法施行令第4条)。

 

2 評価申告において申告すべき事項

評価申告において申告すべき事項は、上記1でも簡単に言及しましたが、より具体的には、関税法施行令第4条第1項又は同令第4条の2第1項の規定により次に掲げる事項とされています。

①輸入貨物の課税価格の計算につき関税定率法第4条第1項に定める原則的な方法により課税価格を決定できる場合以外の場合にあっては、課税価格の計算の基礎及びこれに関連する事項
②課税価格が異なることにより関税の額が異なることとされている輸入貨物に係る定率法第4条第2項第1号から第3号までに掲げる事情、同行第4号に規定する特殊関係及び課税価格の計算に関係がある取引上の特殊な条件の有無及びその内容

 

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輸入取引における「売手」と「買手」について

2021-03-23

輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物の輸入取引(買手が本邦に住所、居所、事務所等に準ずるものを有しない者であるものを除く。)がされた場合において、「買手」により「売手」に対し又は「売手」のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格の総額に基づいて決定することを原則としています(関税定率法第4条第1項)。

したがって、課税価格の決定にあたっては、輸入取引に関与する者のうち、誰が「売手」であり、誰が「買手」であるかを認定することが基礎となります。
そこで、以下では「売手」及び「買手」の考え方をご紹介いたします。

 

1 「売手」及び「買手」について

輸入取引における「売手」及び「買手」とは、実質的に自己の計算と危険負担の下に輸入取引をする者をいいます。
具体的には、売手及び買手は自ら輸入取引における輸入貨物の品質、数量、価格等を取り決め、瑕疵、数量不足、事故、不良債権等の危険を負担することになります。

なお、典型的な輸入取引においては貨物の輸出者及び輸入者がそれぞれ売手及び買手となりますが、輸出者及び輸入者は単に貨物の荷送人及び荷受人であって、当該貨物を実際に販売し又は購入する者が別に存在するときは、当該販売又は購入するものがそれぞれ売手及び買手となります。

 

2 輸入申告者について

「輸入申告者」とは、一般的には「保税地域から輸入貨物を引き取る物」を意味する者であり、「輸入申告者」には、例えば「売手」又は「買手」のどちらもなることができます。
また、「課税価格」は、原則として関税定率法第4条第1項の「輸入取引」に係る取引価格に基づいて決定する者であり、連続する複数の取引がある場合には、輸入申告者にとらわれることなく、どの取引がこの「輸入取引」に当たるか判定を行い「課税価格」を決定することになります。

 

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輸入申告価格の通貨の換算に用いる外国為替相場について

2021-03-22

貨物を輸入する際には、輸入する貨物の価格を輸入申告価格として税関に申告する必要があります。
税関は、申告された輸入申告価格に基づいて課税価格を算定し、関税や消費税の計算をします。そして、この一連の価格はいずれも日本円ではなく、アメリカドルなどで表示されることになります。
そこで、本日は、輸入申告価格等の通貨の換算に用いる外国為替相場に関してご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。

 

1 原則としての考え方

仕入書に表示された外国通貨で輸入貨物の代金を支払う場合には、課税価格を決定するために、外国通貨で表示された価格を本邦通貨へ換算することが必要となります。
また、通貨の換算に用いる外国為替相場について、関税定率法第4条の7において「課税価格を計算する場合において、外国通貨により表示された価格の本邦通貨への換算は、その輸入貨物の輸入申告の日における外国為替相場によるものとする」と規定されています。

具体的な取扱いに関しては、関税定率法施行規則第1条で、「輸入申告の日の属する週の前々週における実勢外国為替相場の当該週間の平均値に基づき税関長が公示する相場とする」と規定されております。
この場合の「税関長が公示する相場」を決定するための計算の基礎となる外国為替相場は、アメリカドルであれば、本邦の外国為替市場における銀行間の直物取引(翌々営業日渡し)の中心相場、アメリカドル以外の通貨であれば、ニューヨーク外国為替市場等における銀行間の直物取引の中心相場に類するアメリカドルの相場により裁定した相場となります。

 

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個人的な使用に供される輸入貨物に係る課税価格決定の特例について

2021-03-21

輸入貨物の課税価格の算定方法は、原則として現実支払価格をベースとして考えることになりますが、一定の輸入貨物については、原則的な方法によらず、特別な取扱いを行う場合があります。

そこで、本日はこのような場合として、個人的な使用に供される輸入貨物に係る課税価格決定の特例について、ご紹介いたします。

 

1 個人的な使用に供される輸入貨物に係る課税価格決定の特例について

輸入貨物の課税価格は、輸入貨物の輸入取引がされた場合において、買手から売手に対し又は売手のために、現実に支払われた又は支払われるべき価格に基づいて決定することを原則としています(関税定率法第4条第1項)。
したがって、通常は、実際の輸入取引の売買価格(卸価格で輸入された貨物の場合は卸売価格、小売取引で購入された貨物の場合は小売価格等)を課税価格のベースとして考えることになります。

しかしながら、本邦に入国する者が携帯して輸入する貨物その他その輸入取引が小売段階によるものと認められる貨物で、当該貨物の輸入者の個人的使用に供されると認められるものは、小売価格で購入された貨物であっても、その課税価格は、実際の売買価格によることなく、その輸入貨物の輸入が通常の卸取引の段階でされたとした場合の価格により課税価格を決定することになります(関税定率法第4条の6第2項)。

なお、輸入貨物が日本に居住する者に寄贈される貨物で、その寄贈を受ける者の個人的な使用に供されるものも、課税価格はその輸入貨物の輸入が通常の卸取引の段階でされたとした場合の価格により決定します。
この場合、「本邦の入国するものにより携帯して輸入される貨物」には、関税定率法施行令第14条の手続きを経て別送して輸入される貨物を含み、また、「その他その輸入取引が小売取引の段階によるものと認められる貨物」とは、一般消費者が通信販売により又は外国に居住する知人に依頼して小売り取引の段階の価格で購入して輸入する貨物等をいいます。

また、「通常の卸取引の段階」とは、本邦の卸売業者が一般的に本邦における再販売等の商業目的のために、輸入貨物と同種の貨物を輸入する場合の取引段階をいいます。

 

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変質又は損傷した輸入貨物の課税価格の決定方法について

2021-03-15

輸入貨物の課税価格の原則的な考え方は、現実支払価格をベースとする考え方となります。
もっとも、当該原則的な考え方では不合理な場合には、例外的な算定方法が採用される場合があります。
本日は、輸入貨物が変質又は損傷した場合における課税価格の例外的な決定方法について、ご紹介いたします。

 

1 変質又は損傷した輸入貨物の課税価格の考え方について

輸入貨物の課税価格を関税定率法第4条から第4条の4までの規定により計算する場合において、その輸入取引の条件から見て、輸入申告時までに輸入貨物に変質又は損傷があったと認められるときは、その貨物の課税価格は、変質又は損傷がなかった場合に計算される課税価格からその変質又は損傷があったことによる減価に相当する額を控除して得られる価格となります(関税定率法第4条の5)。

「その輸入取引の条件からみて、輸入申告等の時までに輸入貨物に変質又は損傷があった」とは、輸入契約において取り決められた性質、形状、数量等を基準として、輸入申告等の時までに、その輸入貨物に変質又は損傷が生じたことを指します。
したがって、輸入契約が、貨物が一定の変質又は損傷が生じた場合をも想定して締結されている場合には、関税定率法第4条の5の適用はなく、通常の課税価格の算定方法を用いることになりますので、注意が必要です。

また、「減価に相当する額」の算出にあたっては、公認検定機関等の作成した損害見積書等に記載された損傷部分の評価額、原状回復に要する費用等、合理的でかつ妥当な数値による額を用いることが必要となります。
なお、輸入貨物が輸入の許可目に変質又は損傷した場合には、関税定率法第10条第1項の規定により減税されます。

 

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