Archive for the ‘コラム~通関手続、輸出入トラブル~’ Category
郵便物の輸出(輸入)通関手続について
郵便物は、通常の貨物とは異なる輸出通関・輸入通関手続が必要となりますので、注意が必要です。
本日は、各手続の概要をご紹介いたしますので、郵便物を輸出又は輸入なさる場合にはご参照いただけますと幸いです。
1 郵便物の輸出通関
(1)輸出郵便物の簡易手続き
輸出される郵便物で課税価格が20万円以下のもの、及び寄贈物品である郵便物については、輸出通関の迅速性の観点から、簡易手続きが行われ、輸出者は輸出申告をする必要があります(関税法76条)。
なお、かつては全ての郵便物について簡易手続きが行われておりました。
しかしながら、2009年2月16日以降は、課税価格が20万円を超える郵便物については、上記のとおり、寄贈物品である郵便物を除き輸出申告が必要となりますので注意が必要です。
(2)郵便物の輸出申告
課税価格が20万円を超えて輸出申告が必要となる郵便物は、通関業者に委託して、又は輸出者自身で輸出申告を行う必要があります。
2 郵便物の輸入通関
(1)輸入郵便物の簡易手続き
輸入される郵便物で課税価格が20万円以下のものおよび以下に掲げる①及び②については、輸入通関の迅速性の観点から簡易手続きが行われ、輸入者は輸入申告をする必要がありません(関税法67条)。
なお、かつては全ての郵便物について簡易手続きが行われていました。しかしながら、2009年2月16日以降は、課税価格が20万円を超える郵便物については、上記のとおり、以下に掲げるものについては、輸入申告が必要となる点には注意が必要です。
①寄贈物品である郵便物
②無償で貸与されることその他の事由により、名宛人において課税価格を把握し、または定率法別表の適用上の所属区分を判断することが困難と認められる郵便物
(2)郵便物の輸入申告
課税価格が20万円を超えて輸入申告が必要となる郵便物は、名宛人に対して輸入申告の手続が必要である旨の案内文書が通常送付されますので、それに従い輸入申告を行うことが必要となります。
3 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、代表弁護士が通関士資格を有しており、輸入・輸出に関するご相談を幅広く承っております。
輸入・輸出に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽にご相談いただけますと幸いです。
環境問題に関する代表的な国際的協定と貨物の輸出入の関係性について
環境問題に関する国際協定が貨物の輸出入にどのように関係しているのか、疑問をお持ちの方もいらっしゃるものと思われます。
しかしながら、世界的に環境問題に関する意識が高まり、今後ますますその傾向は強まることが予測されるところです。
今後、環境問題の観点から輸出入に一定の規制が課されることが考えられますので、現時点でそのような規制を伴う国際協定の概要を認識しておくことが重要です。
そこで、本日は、環境問題に関する代表的な国際協定等の概要について、ご紹介いたします。
1 ワシントン条約
ワシントン条約とは、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」のことを指し、「希少動植物の輸出入取引の制限及び禁止」を目的としております。
具体的には、ワシントン条約の既製品を輸出する場合には、外為法、輸出貿易管理令により、経済産業大臣の承認が必要です。
また、ワシントン条約付属書Ⅰに掲げられた既製品を輸入する場合においても、外為法、輸入貿易管理令により、経済産業大臣の承認が必要です。
2 モントリオール議定書
ウィーン条約に基づくもので、フロン・ハロン等の特定物質によるオゾン層の破壊からオゾン層を保護すること(特定フロン・ハロン等の全廃)を目的としております。
3 バーゼル条約
バーゼル条約とは、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関する条約」のことを指し、有害廃棄物の移動及び処分の規制を目的としています。
また、これら有害廃棄物を輸出をする場合には、外為法、輸出貿易管理令により、経済産業大臣の承認が必要です。
輸入に関しても、外為法、輸入貿易管理令により、経済産業大臣の承認が必要です。
4 弁護士へのご相談をご希望の方へ
上記のとおり、今後、環境問題の観点から、新たに輸出入に一定の規制が課されることも考えられます。
当事務所は、代表弁護士が、輸出入や通関手続きに関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出入や通関手続きのトラブルに関して幅広くご相談をお受けしております。
環境問題の観点から輸出入に課される規制をはじめとして、輸出入や通関手続きに関してご不明な点等ありましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。
原産地証明書について
原産地証明書とは、輸出入貨物について、一国の政府や公的機関が、その国が原産地であることを証明して発行する文書のことを指します。
輸出入をビジネスで行っている方にとっては、このような原産地証明書という書類はどこかで聞いたことがある書類なのではないでしょうか。
もっとも、原産地証明書というものは何となく知っているが、どのような効果のある書類であるかについてまではあまりご存知でない方も多いものと思われます。
そこで、本日は、原産地証明書の概要をご紹介いたします。
1 輸出貨物の原産地証明書
日本では、輸出通関の際に原産地証明書を提出する必要はありません。
他方で、輸入国や輸入者からの要請に基づき発行する必要が生じる場合があります。
日本からの輸出貨物についての原産地証明書は、日本では、商工会議所法9条6号によって、商工会議所が発行することになっております。なお、EPAの特定原産地証明書は日本全国の21の商工会議所に限り発行することが可能ですのでご注意いただく必要があります。
なお、上記のような輸入者でも輸出者でもない第三の機関が原産地証明を発行する場合を、第三者証明制度といいます。
他方で、オーストラリアとの間のEPAや、TPPにおいては、輸入者や輸出者が自ら原産品であることを証明する自己証明制度が採用されている点には、注意が必要です。
2 輸入貨物の原産地証明書
輸入者が税関に対して原産地証明書を提出する必要がある場合の代表例は以下のとおりです。
①EPA税率の適用を受ける場合
この場合、それぞれの国において原産地証明書を発給する権限を有する機関が発給する締約国原産地証明書で、発給日から1年を経過しないものを、税関に提出する必要があります。なお、輸入貨物の種類、形状により原産地が明らかであると税関が認めるもの及び1つの輸入申告の課税価格の総額が20万円以下のものについては、提出する必要はありません。
②特恵関税の適用を受ける場合
特恵関税の適用を受けることを希望する場合は、原産地の税関、または発給の権限を有する官公署又は商工会議所が発給する「特恵原産地証明書(様式A)」で発給日から1年を経過しないものが必要となります。
ただし、輸入貨物の種類、形状により原産地が明らかであると税関が認めるもの及び1つの輸入申告の課税価格の総額が20万円以下のものについては、提出する必要はありません。
3 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関手続きに関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出入や通関に関する手続き上のトラブル、税関との間のトラブル等を幅広く取り扱っております。
輸出入や通関上のトラブルや、税関との間のトラブルに関してご不安な点やご不明な点等ありましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。
ご注意ください!~貨物の輸入申告価格は、売買代金と思っていませんか?~
輸入貨物の輸入申告価格について、「売買代金とすれば問題ない」、と誤解されている方が多くいらっしゃいます。
そこで、本日は、輸入貨物の輸入申告価格(課税価格)の考え方の概要をご紹介いたします。
1 輸入貨物の課税価格の考え方
輸入貨物の課税価格は、当該貨物の「現実支払価格」に、その含まれていない限度において、運賃等の「加算要素」の額を加えた価格によることを原則として規定されています(関税定率法第4条第1項等)。
この「加算要素」は、関税定率法第4条第1項の第1号から第5号までにおいて限定列挙されています。これらの要素の現実支払価格への加算は、客観的で、かつ、数値化された資料に基づいてのみ行われます。
2 具体的な「加算要素」について
具体的な加算要素は、以下の①から⑦のとおりです。
①輸入港までの運賃等(関税定率法第4条第1項第1号)
輸入貨物が輸入港に到着するまでの運送に要する運賃、保険料その他当該運送に関連する費用を指します。
②仲介料その他の手数料(関税定率法第4条第1項第2号イ)
買付けに関し当該買手を代理する者に対し、当該買付にかかる業務の対価として支払われるものを除きます。
③容器の費用(関税定率法第4条第1項第2号ロ)
「容器」とは、関税定率法別表に規定する関税率表の解釈に関する通則5により「当該物品に含まれる」ものとされるケースその他これに類する容器及び包装容器をいいます。
④包装に要する費用(関税定率法第4条第1項第2号ハ)
輸入貨物の包装及び梱包に要する材料費の他、包装及び梱包に要する人件費その他の関連する費用を指します。
⑤買手が無償で又は値引きをして提供した物品又は役務の費用(関税定率法第4条第1項第3号)
輸入貨物の生産又は輸入取引に関連して、買手により無償で又は値引きをして直接又は間接に提供された物品又は役務の内、同号で規定されているものを指します。
⑥特許権等の使用に伴う対価(関税定率法第4条第1項第4号)
⑦売手帰属収益(関税定率法第4条第1項第5号)
買手による輸入貨物の再販売その他の処分又は使用により得られる売上代金、賃貸料、加工賃等の収益が売手に帰属する場合、当該売手に帰属する収益の額は輸入貨物の課税価格に加算されます。
3 弁護士へのご相談をご希望の方へ
輸入貨物の課税価格の考え方は技巧的な面が強く、なかなか正確に理解することが難しいといえますので、専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
当事務所は、輸入に関するトラブルや輸入手続き、税関対応等、輸出入に関する問題について幅広くご相談をお受けしておりますので、輸入貨物の課税価格に関してご不明な点等ございましたら、ご遠慮なくご相談ください。
特別な事情がある場合の課税価格について
原則的な課税価格の考え方は、「現実支払価格」をベースに考えるということは、以前のコラムにてご紹介いたしました。
しかしながら、輸入取引に係る特別な事情がある場合には、原則的な課税価格の考え方を適用することが出来ませんので、注意が必要です。
そこで、本日は、輸入取引に係る特別な事情の代表的な場合である、「特殊関係」の概要に関してご紹介いたします(関税定率法4条2項4号、同法施行令1条の8、同法基本通達4-18等参照)。
1 「特殊関係」とは
「特殊関係」とは、輸入取引における売手と買手との間に次の①から⑨に掲げる場合のいずれかに該当する関係があることをいいます。
①一方の者と他方の者とがその行う事業に関し相互に事業の取締役その他の役員となっている場合
この場合の「取締役その他の役員」とは、取締役、監査役、理事、監事等をいいます。
②一方の者と他方の者とがその行う事業の法令上認められた共同経営者である場合
「法律上認められた共同経営者」とは、それぞれ、その金銭、資産、労務、技術等を出資し、共同事業を営むものをいいます。
③いずれか一方が他方の者の使用者である場合
④いずれか一方が他方の者の事業に係る議決権を伴う社外株式の総数の5%以上の社外株式を直接又は間接に所有し、管理し、又は所持している場合
⑤上記④の場合を除き、いずれか一方の者が他方の者を直接又は間接に支配している場合
例えば、一方の者が法律上まあは事実上他方の者を拘束し、又は指示する立場にある場合には、当該他方の者を「支配」しているものとします。
⑥一方の者と他方の者との事業に係る議決権を伴う社外株式の総数のそれぞれ5%以上の社外株式が同一の第三者によって直接又は間接に所有され、管理され、又は所持されている場合
⑦一方の者と他方の者とが同一の第三者によって直接又は間接に支配されている場合
⑧一方の者と他方の者とが共同して同一の第三者を直接又は間接に支配している場合
⑨一方の者と他方の者とが親族関係にある場合
この場合の「親族」とは、6親等以内の血族、配偶者及び3親等以内の姻族をいいます。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
輸入貨物の課税価格の考え方は技巧的な要素が強く、なかなか理解が難しいものと思われます。
当事務所では代表弁護士が通関士資格を有しており、輸出入に関するトラブルを幅広く取り扱っておりますので、輸入貨物の課税価格に関して、ご不安な点やご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。
ご注意ください!~貨物の輸入申告価格、間違っていませんか?~
貨物を輸入する際の輸入申告価格の決定方法をご存知でしょうか。
多くの方は、「貨物を購入した価格を申告すればいいのでは?」とお考えではないでしょうか。
そのようなお考えとなるのももっともなのですが、貨物の輸入申告価格の決定方法には、「現実支払価格」にその含まれていない限度において「加算要素」の額を加えるという特別なルール(関税定率法4条1項)が存在いたしますので、注意が必要です。
そこで、本日は、「現実支払価格」の考え方の概要をご紹介いたします。
1 「現実支払価格」の考え方の概要
「現実支払価格」とは、輸入貨物について、輸入取引(買手が日本に住所、居所、本店、支店、事務所、事業所等を有しない者である場合を除きます。以下同様です。)がされた場合において、買手により売手に対し又は売手のために行われた又は行われるべき支払(間接的な支払を含みます。)の総額をいいます。
そして、この「現実支払価格」は、輸入取引に係る仕入書又はこれに代わる書類に当該取引の価格その他の条件が正当に表示されている場合には、当該仕入書等により認定することになります。
もっとも、以下の2で列挙した費用等の額は「現実支払価格」に含みませんので、注意が必要です。
なお、この場合、当該輸入貨物につき、以下の2で列挙した費用等の内、その額を明らかにすることができないものがあることにより、当該明らかにすることができない費用等の額を含んだものとしてでなければ当該支払の総額を把握することができない場合においては、本来含める必要のない当該費用等の額を含んだ当該支払の総額を「現実支払価格」として取り扱うこととなります。
2 「現実支払価格」に含まれない費用等
以下の①から⑤で列挙する費用等は、現実支払価格に含みません。
①輸入貨物の輸入申告等の時の属する日以後に行われる当該輸入貨物に係る据付け、組立て、整備又は技術指導に要する役務の費用
②輸入港到着後の運送に要する運賃、保険料その他当該運送に関連する費用
③本邦において課される関税その他の公課
④延払条件付取引である場合の延払金利
⑤輸出国において輸出の際に軽減又は払戻しを受けるべき関税その他の課徴金
なお、買手が自己のために行う活動のうち、加算要素に該当する加算の対象となる活動以外の活動に係る支払いは、例えそれが売手の利益になると認められる活動に係るものであっても、売手に対する間接的な支払とはなりませんので、当該活動に係る費用は「現実支払価格」に含まれないことになります。このような費用としては、買手が自己のために行う広告宣伝費、販売促進、アフターサービス等に係る支払があります。
また、配当金の移転その他の支払であって、輸入貨物と関係のないもの(例えば、売手から受けた融資に対する金利の支払)は、当該輸入貨物の課税価格には算入されません。
3 弁護士にご相談をご希望の方へ
当事務所では、代表弁護士が通関士資格を有しており、輸出入トラブルや税関対応等を幅広く取り扱っております。
貨物の輸入申告価格でトラブルが発生した場合はもちろんのこと、貨物の輸出入に関してトラブルが発生した場合には、当事務所までお気軽にご相談ください。
輸入貨物の課税価格はこのように決定されます!
本日は、貨物を輸入する場合の課税価格の決定方法の原則の概要をご紹介いたします。
課税価格の決定方法の原則に関する法令上の規定は、非常にテクニカルなものとなっている部分があり、理解が難しいものといえます。
もっとも、貨物を輸入する方には是非ご理解いただきたい内容となりますので、本日ご説明する内容をご参照いただけますと幸いです。輸入する貨物の課税価格の考え方を確認したい等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。
1 課税価格の決定方法の原則について
課税価格の決定方法については、関税定率法4条から4条の9までの規定で定められております。
そして、課税価格の決定方法の原則は、関税定率法4条で規定されております。
具体的には、同条では、輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物の取引価格(現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において、輸入港までの運賃等の加算要素を加えた価格)とする旨を規定しています。
しかしながら、この原則的な課税価格の決定方法は、輸入貨物に係る輸入取引に特別な事情がある場合(買手による輸入貨物の処分又は使用の制限、輸入貨物の課税価格の決定を困難とする条件が輸入取引に付されている場合等)には適用されませんので、注意が必要です。
以上の原則的な方法を利用することが出来ない場合は、課税価格の決定方法の例外として、関税定率法4条の2以下の規定に従って課税価格の決定を行うこととなります。
2 課税価格の決定方法の例外について
課税価格の決定方法の例外は、以下の①から③のとおり規定されております。
基本的には、①を優先利用することとなり、①の方法を利用できない場合には、②の方法を利用することになります。そして、①及び②の方法のいずれも利用することが出来ない場合には、③の方法を利用することになります。このように、課税価格の決定方法の例外が適用となる順番等についても法令上規定されておりますので、注意が必要です。
①関税定率法4条の2:同種又は類似の貨物に係る取引価格による課税価格の決定
②関税定率法4条の3:国内販売価格又は製造原価に基づく課税価格の決定
③関税定率法4条の4:特殊な輸入貨物に係る課税価格の決定
課税価格の決定方法の概要は上記のとおりですが、輸入申告等の時までに変質又は損傷があった貨物の場合等、一定の場合には、上記で説明した課税価格の決定方法ではなく、それぞれの貨物に関して、特別な方法により課税価格を決定することとなりますので、この点についても注意が必要です。
繰り返しとなりますが、課税価格の決定方法は非常にテクニカルな内容となっている一方で、貨物を輸入する場合には、是非理解しておいていただきたい内容となりますので、ご不明な点等ありましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。
中小企業の海外進出は年々増加しています!
近年、中小企業の海外進出は増加傾向にあると言われております。
本日は、中小企業庁が公表している「中小企業白書2019年版」に掲載されている統計を踏まえ、中小企業の海外進出の概況をご紹介いたします。
前提として、中小企業の海外進出の概況と言っても、海外と直接取引する場合から、現地に自社の子会社を設立する場合まで様々な段階があります。一般的には、以下の①から③の3段階に分類されることが多いようです。
①間接輸出:日本の中小企業が、主に商社を利用して、自社の商品を海外市場に輸出するケースです。
②直接輸出:日本の中小企業が、自社自身で直接海外の企業と取引を行うケースです。
③直接投資:日本の中小企業が、海外に自社の拠点を設けて海外で取引を行うケースです。拠点の確保の方法としては、自社の子会社を設立する方法や、現地の企業を買収する方法等があります。
以上の3段階について、現在の状況をみると、②直接輸出を行う中業企業の割合は徐々に増加しており、2016年度では、21.4%となっております。
また、③直接投資の内、海外で現地子会社を保有する中小企業の割合も年々増加しているようで、2016年度では、14.2%となっております。
中小企業が現地子会社を保有する国としては、90年代後半から2000年代前半にかけては中国の割合が高く、一時期は50%を大きく超える状況でした。しかしながら、2000年代後半からはASEAN諸国の割合が増加し、2017年度は、ASEANの割合が42.9%、中国の割合が21.4%と、ASEANに現地子会社を保有する中小企業の割合が、中国に現地子会社を保有する中小企業の割合の2倍以上となっております。
今後の展望としては、2018年12月30日に環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)が発行し、2019年2月1日には日EU経済連携協定(日EU・EPA)が発行されましたので、ますます、中小企業の海外進出は増加するものと思われ、その進出先としては以前のように中国中心ということではなく、幅広い国、地域が対象となっていくことが予想されます。
海外進出に限らず、海外の企業との取引をする際には、様々な法規制の問題があります。
どうしてもビジネスの中身の具体化に集中しがちですが、法規制をクリアしないことには、ビジネスを進めることも困難となりますので、海外の企業との取引を検討されている場合には、一度専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
過少申告加算税が課されない「正当な理由」とは?
貨物の輸入時に行う納税申告が過少申告であった場合には、通常過少申告加算税が課されることとなりますが、過少申告であったことについて「正当な理由」がある場合には、過少申告加算税は課されません。
過少申告加算税が課されない「正当な理由」については、関税法第12条の2第3項、関税法基本通達12の2-1に規定されておりますので、本日は、当該規定の概要について、ご紹介いたします。
1 「正当な理由」の意義
まず、「正当な理由」の意義についてですが、当初の納税申告が過少であったことについて、真にやむを得ない事由があると認められ、加算税を課すことが不当又は酷になる場合のことを指します。
そのため、輸入者による法令の不知や適用の誤り、貨物の内容を誤解していたような場合や単純なミスに起因するものは「正当な理由」には該当しないと考えられます。
2 「正当な理由」に該当する具体的な事情
具体的には、例えば、以下の①から④のような場合が「正当な理由」に該当すると考えられております。ただし、「正当な理由」、すなわち過少申告に関して真にやむを得ない事由があるか否かの判断は、あくまでも個々の事情に応じて判断されることになりますので、ご注意ください。
①納税申告に関して必要な輸入貨物に係る関税率表の適用上の所属、税率及び課税標準等について、輸入者等から十分な資料の提出等があったにもかかわらず税関職員が輸入者等に対して誤った教示等を行い、輸入者等がその教示等に従っていたもので、輸入者等がその教示等を信じたことについて真にやむを得ないと認められる事情がある場合
②新規商品であるため、その分類を確定し適用税率を決めることが多大な困難を伴う場合
③輸入許可後にやむを得ない事情により課税価格に変更があり、速やかに修正申告が行われた場合
④輸入者に課税標準の確定に日時を要する事情があり、関税法第73条第1項に規定する税関長の承認を受けて貨物が引き取られた場合で、輸入の許可前に輸入者からの申し出に基づいて課税標準を確定したことによる場合
なお、過少申告加算税について、「正当な理由」がある場合、修正申告又は更正により納付すべきこととなる税額のうちに、過少申告であったことについて「正当な理由」があると認められる部分に限って、過少申告加算税が課されないことになります。
過少申告加算税全体が課されないことになるわけではありませんので、ご注意ください。
以上、過少申告加算税が課されない「正当な理由」の概要をご紹介いたしました。
当事務所では、代表弁護士が通関士資格を有しており、輸出入や通関に関して豊富な知識・対応経験を有しております。
過少申告加算税が課されない「正当な理由」に関して、もう少し詳しい考え方を知りたいといったご相談や実際に加算税を課されてしまって困っているといったご相談等を幅広く承っておりますので、過少申告加算税を含む各加算税に関して、少しでも不安や悩み、気になる点がある方は当事務所までお気軽にお問い合わせください。
貨物を輸入する場合、加算税の理解は必須です!
輸入に関与されている方の中には、貨物を輸入する際に申告価額を間違えて加算税が課せられてしまった、という経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、本日は、加算税制度の概要をご紹介します。
加算税と一括りに言っても、以下のとおり、過少申告加算税、無申告加算税、重加算税の3種類あり、それぞれ全く異なる内容となりますので、ご注意ください。
また、以下でご紹介する内容は概要にとどまり、例外的な算定方法を用いる必要がある場合もありますので、より詳細な内容を確認する必要がある場合には、専門家までご相談いただくことをお勧めいたします。
1 過少申告加算税
貨物の輸入時に行う納税申告後、当該納税申告額が誤っていたことが発覚した場合に、原則として課される加算税のことを指します。具体的には、原則、当該修正申告又は更正によって納付すべき税額(すなわち、当初申告税額との差額部分)を基礎として10%の過少申告加算税が課されることになります。
例えば、当初申告税額が200万円であったところ、実際に申告すべき税額が300万円であった場合には、過少申告加算税として10万円が課されることとなります。
ただし、過少申告であったことについて「正当な理由」があると認められる部分に対しては過少申告加算税は課されません(もっとも、実際には「正当な理由」があると認められる場合は非常に限られております。)。
2 無申告加算税
納税申告が必要とされる貨物について、輸入の時までに納税申告が行われずに税関長による決定が行われた等の場合に、本来輸入者が納付すべき税額を基礎として15%の無申告加算税が課されます。
ただし、無申告であったことについて「正当な理由」があると認められる場合には、無申告加算税は課されません(過少申告加算税の場合と同様に、実際には「正当な理由」があると認められる場合は非常に限られております。)。
3 重加算税
過少申告加算税又は無申告加算税が課される場合において、納税義務者がその納付すべき関税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装していた場合に、課される可能性がある加算税です。
過少申告加算税の場合には、原則として35%、無申告加算税の場合には、原則として40%の割合にて算定されます。
当事務所では、代表弁護士が通関士資格を有しており、輸出入や通関に関して豊富な知識・対応経験を有しております。
加算税に関して、もう少し詳しい考え方を知りたいといったご相談や実際に加算税を課されてしまって困っているといったご相談等を幅広く承っておりますので、加算税に関して、少しでも不安や悩み、気になる点がある方は当事務所までお気軽にお問い合わせください。