Archive for the ‘コラム~通関手続、輸出入トラブル~’ Category

個人的な使用に供される輸入貨物に係る課税価格決定の特例について

2021-03-21

輸入貨物の課税価格の算定方法は、原則として現実支払価格をベースとして考えることになりますが、一定の輸入貨物については、原則的な方法によらず、特別な取扱いを行う場合があります。

そこで、本日はこのような場合として、個人的な使用に供される輸入貨物に係る課税価格決定の特例について、ご紹介いたします。

 

1 個人的な使用に供される輸入貨物に係る課税価格決定の特例について

輸入貨物の課税価格は、輸入貨物の輸入取引がされた場合において、買手から売手に対し又は売手のために、現実に支払われた又は支払われるべき価格に基づいて決定することを原則としています(関税定率法第4条第1項)。
したがって、通常は、実際の輸入取引の売買価格(卸価格で輸入された貨物の場合は卸売価格、小売取引で購入された貨物の場合は小売価格等)を課税価格のベースとして考えることになります。

しかしながら、本邦に入国する者が携帯して輸入する貨物その他その輸入取引が小売段階によるものと認められる貨物で、当該貨物の輸入者の個人的使用に供されると認められるものは、小売価格で購入された貨物であっても、その課税価格は、実際の売買価格によることなく、その輸入貨物の輸入が通常の卸取引の段階でされたとした場合の価格により課税価格を決定することになります(関税定率法第4条の6第2項)。

なお、輸入貨物が日本に居住する者に寄贈される貨物で、その寄贈を受ける者の個人的な使用に供されるものも、課税価格はその輸入貨物の輸入が通常の卸取引の段階でされたとした場合の価格により決定します。
この場合、「本邦の入国するものにより携帯して輸入される貨物」には、関税定率法施行令第14条の手続きを経て別送して輸入される貨物を含み、また、「その他その輸入取引が小売取引の段階によるものと認められる貨物」とは、一般消費者が通信販売により又は外国に居住する知人に依頼して小売り取引の段階の価格で購入して輸入する貨物等をいいます。

また、「通常の卸取引の段階」とは、本邦の卸売業者が一般的に本邦における再販売等の商業目的のために、輸入貨物と同種の貨物を輸入する場合の取引段階をいいます。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が、輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出入トラブルや通関トラブルのご相談を幅広く取り扱っております。
輸出入トラブルや通関トラブルでお悩みの方や、ご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

変質又は損傷した輸入貨物の課税価格の決定方法について

2021-03-15

輸入貨物の課税価格の原則的な考え方は、現実支払価格をベースとする考え方となります。
もっとも、当該原則的な考え方では不合理な場合には、例外的な算定方法が採用される場合があります。
本日は、輸入貨物が変質又は損傷した場合における課税価格の例外的な決定方法について、ご紹介いたします。

 

1 変質又は損傷した輸入貨物の課税価格の考え方について

輸入貨物の課税価格を関税定率法第4条から第4条の4までの規定により計算する場合において、その輸入取引の条件から見て、輸入申告時までに輸入貨物に変質又は損傷があったと認められるときは、その貨物の課税価格は、変質又は損傷がなかった場合に計算される課税価格からその変質又は損傷があったことによる減価に相当する額を控除して得られる価格となります(関税定率法第4条の5)。

「その輸入取引の条件からみて、輸入申告等の時までに輸入貨物に変質又は損傷があった」とは、輸入契約において取り決められた性質、形状、数量等を基準として、輸入申告等の時までに、その輸入貨物に変質又は損傷が生じたことを指します。
したがって、輸入契約が、貨物が一定の変質又は損傷が生じた場合をも想定して締結されている場合には、関税定率法第4条の5の適用はなく、通常の課税価格の算定方法を用いることになりますので、注意が必要です。

また、「減価に相当する額」の算出にあたっては、公認検定機関等の作成した損害見積書等に記載された損傷部分の評価額、原状回復に要する費用等、合理的でかつ妥当な数値による額を用いることが必要となります。
なお、輸入貨物が輸入の許可目に変質又は損傷した場合には、関税定率法第10条第1項の規定により減税されます。

 

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製造原価に基づく課税価格の決定方法について

2021-03-12

輸入貨物の課税価格については、原則として現実支払価格をベースとして算定することは、別のコラムでもご紹介しておりますが、このような原則的な方法を利用できない場合ももちろんあります。
そのような場合に、どのような算定方法を採用する必要があるかは、関税定率法等で規定されているところですが、本日は、例外的な採用方法のうち、製造原価に基づく課税価格の決定方法をご紹介いたします。

 

1 製造原価に基づく課税価格の決定方法について

関税定率法第4条の3第1項までの方法により課税価格を決定することができない場合には、製造原価に基づく課税価格の決定方法により、輸入貨物の課税価格を算定することを試みることになります。
この場合、国内販売価格に基づく方法が製造原価に基づく方法に優先して適用されることが原則となっていますが、当該輸入貨物を輸入しようとする者が希望する旨を税関長に申し出たときは、この優先順位を逆転することができます。

「製造原価に基づく課税価格の決定方法」とは当該輸入貨物の製造原価を確認できる場合において、当該輸入貨物の製造原価に、当該輸入貨物の生産国で生産された当該輸入貨物と同類の貨物の本邦への輸出のための販売に係る通常の利潤及び一般経費と輸入港までの運賃等を加算して課税価格を決定する方法です。
ここでの「製造原価」には、輸入貨物の容器及び包装費用並びに関税定率法第4条第1項第3号に規定する物品及び役務の費用を含むこととなっており、本邦で開発された技術、設計、意匠又は工芸に要する費用であっても、生産者がこれを負担した場合には、当該負担した額を含むこととなります。なお、「製造原価」は、当該輸入貨物の生産者により又は当該生産者のために提供された当該輸入貨物の生産者の商業帳簿に基づくこととなります。
また、「同類の貨物」は、輸入貨物の場合と同一の国から輸入されたものに限ります。

以上を踏まえて、製造原価に基づく課税価格の決定方法を簡単に整理すると、以下のようになります。

【製造原価に基づく課税価格の計算式】

課税価格=①+②+③

①輸入貨物の製造原価
②生産国を同じくする同類の輸入貨物の本邦への輸出のための販売に係る通常の利潤及び一般経費
③当該輸入貨物の輸入港までの運賃等

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

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同種又は類似の貨物が存在する輸入貨物における例外的な課税価格の決定方法

2021-03-08

現実支払価格をベースとした原則的な課税価格の決定方法(別のコラムで特集しておりますので、ご参照ください。)により課税価格を決定することができない輸入貨物については、まず、当該輸入貨物と同種又は類似の貨物に係る取引価格による課税価格の決定方法による評価を試みることとなります。
そこで、本日は、同種又は類似の貨物に係る取引価格による課税価格の決定方法について、ご紹介いたします。

 

1 「同種の貨物」の意義

「同種の貨物」とは、次の全ての条件を満たす貨物をいいます。

①輸入貨物の本邦への輸出の日又はこれに近似する日に本邦へ向けて輸出されたものであること

②輸入貨物の生産国で生産されたものであること

③形状、品質及び社会的評価を含む全ての点で輸入貨物と同一であること(外見上微細な差異があるものであっても、他の点で同一であるものを含む。)

 

2 「類似の貨物」の意義

「類似の貨物」とは、次の全ての条件を満たす貨物をいいます。

①上記1の①及び②の二つの条件を満たすものであること

②輸入貨物と全ての点で同一ではないが、同様の形状及び材質の貨物であって当該輸入貨物と同一の機能を有し、かつ、当該輸入貨物との商業上の交換が可能なもの

 

3 同種の貨物又は類似の貨物に係る取引価格の優先順位

同種の貨物又は類似の貨物に係る取引価格による課税価格の決定方法により課税価格を決定する場合における「同種の貨物に係る取引価格」又は「類似の貨物に係る取引価格」の適用についての優先順位は、次のとおりです。

①同種の貨物に係る取引価格と類似の貨物に係る取引価格との双方があるときは、同種の貨物に係る取引価格が優先します。

②輸入貨物の生産者が生産した同種の貨物に係る取引価格とそれ以外の生産者が生産した同種の貨物に係る取引価格の双方があるときは、輸入貨物の生産者が生産した同種の貨物に係る取引価格が優先します。この優先関係は、類似の貨物に係る取引価格についても応用です。

③上記①及び②によっても、なお競合する同種又は類似の貨物に係る取引価格が二つ以上あるときは、それらの取引価格のうち、最小のものが優先します。

 

4 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が、輸入・通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、輸入・通関のトラブルに関するご相談を幅広く受けております。
輸入貨物の課税価格の決定方法を含め、輸入・通関に関するトラブルでご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

原則的な方法で課税価格を決定できない場合

2021-03-05

本日は、課税価格の決定の原則により課税価格を決定することができない輸入貨物について、ご紹介いたします。
輸入取引によらないで輸入された貨物あるいは、輸入取引に基づいて輸入される貨物であっても、関税定率法第4条第2項に掲げる「特別な事情」がある場合には、原則的な課税価格の決定方法を適用することはできず、関税定率法第4条の2以下の規定により課税価格を決定することとなります。
具体的には、次のような貨物が、原則的な課税価格の決定方法により課税価格を決定することができない輸入貨物に該当します(関税定率法第4条第1項及び同条第2項、関税定率法基本通達4-1(1)、同4-1の2)。

 

1 輸入取引によらない輸入貨物

①無償貨物

②委託販売のために輸入される貨物

③売手の代理人により輸入され、その後売手の計算と危険負担によって輸入国で販売される貨物

④賃貸借契約に基づき輸入される貨物

⑤送り人の所有権が存続する貨物

⑥同一の法人格を有する本支店間の取引により輸入される貨物

⑦本邦で滅却するために、輸出者が輸入者に滅却費用を支払うことにより輸入される貨物

 

2 特別な事情がある輸入貨物

①買手による輸入貨物の処分又は使用について、制限がある場合

②輸入貨物の課税価格の決定を困難とする条件が輸入取引に付されている輸入貨物

③売手に帰属する収益があり、その額が明らかでない輸入貨物

④特殊関係による取引価格への影響がある輸入貨物(この場合については、別のコラムで具体的に整理しておりますので、ご参照ください。)

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

輸入貨物の課税価格の考え方は、非常に技巧的な面があり、なかなか理解することが難しいといえます。
当事務所は、代表弁護士が、輸入・通関に関する国家資格である通関士資格を保有しており、輸入・通関に関するトラブルを幅広く取り扱っております。
輸入貨物の課税価格に関する問題をはじめ、輸入・通関に関するトラブルでお悩みの方は、お気軽に当事務所までご相談ください。

郵便物の輸出(輸入)通関手続について

2021-02-25

郵便物は、通常の貨物とは異なる輸出通関・輸入通関手続が必要となりますので、注意が必要です。
本日は、各手続の概要をご紹介いたしますので、郵便物を輸出又は輸入なさる場合にはご参照いただけますと幸いです。

 

1 郵便物の輸出通関

(1)輸出郵便物の簡易手続き
輸出される郵便物で課税価格が20万円以下のもの、及び寄贈物品である郵便物については、輸出通関の迅速性の観点から、簡易手続きが行われ、輸出者は輸出申告をする必要があります(関税法76条)。

なお、かつては全ての郵便物について簡易手続きが行われておりました。
しかしながら、2009年2月16日以降は、課税価格が20万円を超える郵便物については、上記のとおり、寄贈物品である郵便物を除き輸出申告が必要となりますので注意が必要です。

 

(2)郵便物の輸出申告
課税価格が20万円を超えて輸出申告が必要となる郵便物は、通関業者に委託して、又は輸出者自身で輸出申告を行う必要があります。

 

2 郵便物の輸入通関

(1)輸入郵便物の簡易手続き
輸入される郵便物で課税価格が20万円以下のものおよび以下に掲げる①及び②については、輸入通関の迅速性の観点から簡易手続きが行われ、輸入者は輸入申告をする必要がありません(関税法67条)。

なお、かつては全ての郵便物について簡易手続きが行われていました。しかしながら、2009年2月16日以降は、課税価格が20万円を超える郵便物については、上記のとおり、以下に掲げるものについては、輸入申告が必要となる点には注意が必要です。

①寄贈物品である郵便物
②無償で貸与されることその他の事由により、名宛人において課税価格を把握し、または定率法別表の適用上の所属区分を判断することが困難と認められる郵便物

 

(2)郵便物の輸入申告

課税価格が20万円を超えて輸入申告が必要となる郵便物は、名宛人に対して輸入申告の手続が必要である旨の案内文書が通常送付されますので、それに従い輸入申告を行うことが必要となります。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が通関士資格を有しており、輸入・輸出に関するご相談を幅広く承っております。
輸入・輸出に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽にご相談いただけますと幸いです。

環境問題に関する代表的な国際的協定と貨物の輸出入の関係性について

2021-02-21

環境問題に関する国際協定が貨物の輸出入にどのように関係しているのか、疑問をお持ちの方もいらっしゃるものと思われます。
しかしながら、世界的に環境問題に関する意識が高まり、今後ますますその傾向は強まることが予測されるところです。
今後、環境問題の観点から輸出入に一定の規制が課されることが考えられますので、現時点でそのような規制を伴う国際協定の概要を認識しておくことが重要です。

そこで、本日は、環境問題に関する代表的な国際協定等の概要について、ご紹介いたします。

 

1 ワシントン条約

ワシントン条約とは、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」のことを指し、「希少動植物の輸出入取引の制限及び禁止」を目的としております。
具体的には、ワシントン条約の既製品を輸出する場合には、外為法、輸出貿易管理令により、経済産業大臣の承認が必要です。
また、ワシントン条約付属書Ⅰに掲げられた既製品を輸入する場合においても、外為法、輸入貿易管理令により、経済産業大臣の承認が必要です。

 

2 モントリオール議定書

ウィーン条約に基づくもので、フロン・ハロン等の特定物質によるオゾン層の破壊からオゾン層を保護すること(特定フロン・ハロン等の全廃)を目的としております。

 

3 バーゼル条約

バーゼル条約とは、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関する条約」のことを指し、有害廃棄物の移動及び処分の規制を目的としています。
また、これら有害廃棄物を輸出をする場合には、外為法、輸出貿易管理令により、経済産業大臣の承認が必要です。
輸入に関しても、外為法、輸入貿易管理令により、経済産業大臣の承認が必要です。

 

4 弁護士へのご相談をご希望の方へ

上記のとおり、今後、環境問題の観点から、新たに輸出入に一定の規制が課されることも考えられます。
当事務所は、代表弁護士が、輸出入や通関手続きに関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出入や通関手続きのトラブルに関して幅広くご相談をお受けしております。
環境問題の観点から輸出入に課される規制をはじめとして、輸出入や通関手続きに関してご不明な点等ありましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

原産地証明書について

2021-02-17

原産地証明書とは、輸出入貨物について、一国の政府や公的機関が、その国が原産地であることを証明して発行する文書のことを指します。
輸出入をビジネスで行っている方にとっては、このような原産地証明書という書類はどこかで聞いたことがある書類なのではないでしょうか。
もっとも、原産地証明書というものは何となく知っているが、どのような効果のある書類であるかについてまではあまりご存知でない方も多いものと思われます。

そこで、本日は、原産地証明書の概要をご紹介いたします。

 

1 輸出貨物の原産地証明書

日本では、輸出通関の際に原産地証明書を提出する必要はありません。
他方で、輸入国や輸入者からの要請に基づき発行する必要が生じる場合があります。
日本からの輸出貨物についての原産地証明書は、日本では、商工会議所法9条6号によって、商工会議所が発行することになっております。なお、EPAの特定原産地証明書は日本全国の21の商工会議所に限り発行することが可能ですのでご注意いただく必要があります。
なお、上記のような輸入者でも輸出者でもない第三の機関が原産地証明を発行する場合を、第三者証明制度といいます。

他方で、オーストラリアとの間のEPAや、TPPにおいては、輸入者や輸出者が自ら原産品であることを証明する自己証明制度が採用されている点には、注意が必要です。

 

2 輸入貨物の原産地証明書

輸入者が税関に対して原産地証明書を提出する必要がある場合の代表例は以下のとおりです。

①EPA税率の適用を受ける場合
この場合、それぞれの国において原産地証明書を発給する権限を有する機関が発給する締約国原産地証明書で、発給日から1年を経過しないものを、税関に提出する必要があります。なお、輸入貨物の種類、形状により原産地が明らかであると税関が認めるもの及び1つの輸入申告の課税価格の総額が20万円以下のものについては、提出する必要はありません。

②特恵関税の適用を受ける場合
特恵関税の適用を受けることを希望する場合は、原産地の税関、または発給の権限を有する官公署又は商工会議所が発給する「特恵原産地証明書(様式A)」で発給日から1年を経過しないものが必要となります。
ただし、輸入貨物の種類、形状により原産地が明らかであると税関が認めるもの及び1つの輸入申告の課税価格の総額が20万円以下のものについては、提出する必要はありません。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

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ご注意ください!~貨物の輸入申告価格は、売買代金と思っていませんか?~

2021-02-14

輸入貨物の輸入申告価格について、「売買代金とすれば問題ない」、と誤解されている方が多くいらっしゃいます。
そこで、本日は、輸入貨物の輸入申告価格(課税価格)の考え方の概要をご紹介いたします。

 

1 輸入貨物の課税価格の考え方

輸入貨物の課税価格は、当該貨物の「現実支払価格」に、その含まれていない限度において、運賃等の「加算要素」の額を加えた価格によることを原則として規定されています(関税定率法第4条第1項等)。
この「加算要素」は、関税定率法第4条第1項の第1号から第5号までにおいて限定列挙されています。これらの要素の現実支払価格への加算は、客観的で、かつ、数値化された資料に基づいてのみ行われます。

 

2 具体的な「加算要素」について

具体的な加算要素は、以下の①から⑦のとおりです。

①輸入港までの運賃等(関税定率法第4条第1項第1号)
輸入貨物が輸入港に到着するまでの運送に要する運賃、保険料その他当該運送に関連する費用を指します。

②仲介料その他の手数料(関税定率法第4条第1項第2号イ)
買付けに関し当該買手を代理する者に対し、当該買付にかかる業務の対価として支払われるものを除きます。

③容器の費用(関税定率法第4条第1項第2号ロ)
「容器」とは、関税定率法別表に規定する関税率表の解釈に関する通則5により「当該物品に含まれる」ものとされるケースその他これに類する容器及び包装容器をいいます。

④包装に要する費用(関税定率法第4条第1項第2号ハ)
輸入貨物の包装及び梱包に要する材料費の他、包装及び梱包に要する人件費その他の関連する費用を指します。

⑤買手が無償で又は値引きをして提供した物品又は役務の費用(関税定率法第4条第1項第3号)
輸入貨物の生産又は輸入取引に関連して、買手により無償で又は値引きをして直接又は間接に提供された物品又は役務の内、同号で規定されているものを指します。

⑥特許権等の使用に伴う対価(関税定率法第4条第1項第4号)

⑦売手帰属収益(関税定率法第4条第1項第5号)
買手による輸入貨物の再販売その他の処分又は使用により得られる売上代金、賃貸料、加工賃等の収益が売手に帰属する場合、当該売手に帰属する収益の額は輸入貨物の課税価格に加算されます。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

輸入貨物の課税価格の考え方は技巧的な面が強く、なかなか正確に理解することが難しいといえますので、専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
当事務所は、輸入に関するトラブルや輸入手続き、税関対応等、輸出入に関する問題について幅広くご相談をお受けしておりますので、輸入貨物の課税価格に関してご不明な点等ございましたら、ご遠慮なくご相談ください。

特別な事情がある場合の課税価格について

2021-02-10

原則的な課税価格の考え方は、「現実支払価格」をベースに考えるということは、以前のコラムにてご紹介いたしました。
しかしながら、輸入取引に係る特別な事情がある場合には、原則的な課税価格の考え方を適用することが出来ませんので、注意が必要です。
そこで、本日は、輸入取引に係る特別な事情の代表的な場合である、「特殊関係」の概要に関してご紹介いたします(関税定率法4条2項4号、同法施行令1条の8、同法基本通達4-18等参照)。

 

1 「特殊関係」とは

「特殊関係」とは、輸入取引における売手と買手との間に次の①から⑨に掲げる場合のいずれかに該当する関係があることをいいます。

①一方の者と他方の者とがその行う事業に関し相互に事業の取締役その他の役員となっている場合
この場合の「取締役その他の役員」とは、取締役、監査役、理事、監事等をいいます。

②一方の者と他方の者とがその行う事業の法令上認められた共同経営者である場合
「法律上認められた共同経営者」とは、それぞれ、その金銭、資産、労務、技術等を出資し、共同事業を営むものをいいます。

③いずれか一方が他方の者の使用者である場合

④いずれか一方が他方の者の事業に係る議決権を伴う社外株式の総数の5%以上の社外株式を直接又は間接に所有し、管理し、又は所持している場合

⑤上記④の場合を除き、いずれか一方の者が他方の者を直接又は間接に支配している場合
例えば、一方の者が法律上まあは事実上他方の者を拘束し、又は指示する立場にある場合には、当該他方の者を「支配」しているものとします。

⑥一方の者と他方の者との事業に係る議決権を伴う社外株式の総数のそれぞれ5%以上の社外株式が同一の第三者によって直接又は間接に所有され、管理され、又は所持されている場合

⑦一方の者と他方の者とが同一の第三者によって直接又は間接に支配されている場合

⑧一方の者と他方の者とが共同して同一の第三者を直接又は間接に支配している場合

⑨一方の者と他方の者とが親族関係にある場合
この場合の「親族」とは、6親等以内の血族、配偶者及び3親等以内の姻族をいいます。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

輸入貨物の課税価格の考え方は技巧的な要素が強く、なかなか理解が難しいものと思われます。
当事務所では代表弁護士が通関士資格を有しており、輸出入に関するトラブルを幅広く取り扱っておりますので、輸入貨物の課税価格に関して、ご不安な点やご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

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