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輸入貨物と共に輸入される容器の関税評価

2021-11-12

1 はじめに―相談事例

輸入実務において、貨物の本体価格だけでなく、それを収める容器や包装の費用をどのように取り扱うかは、課税価格(関税を計算する際の基礎となる価格)を正しく算出する上で極めて重要な論点となります。まずは、当事務所に寄せられる具体的な相談事例をみていきましょう。

【相談者】

輸入化粧品販売業 P社 物流管理担当者

【相談内容】

「当社では、フランスのメーカーから高級な香水を輸入しております。これまでは、香水が瓶に詰められた状態で輸入していましたが、このたびコスト削減のため、香水本体をドラム缶のような大型容器(バルク)で輸入し、同時に、国内で詰め替えるための専用のデザイナーズガラスボトルを別途同じ船で輸入することになりました。

メーカーからの請求書(インボイス)では、香水液体の代金と、空のガラスボトルの代金が別々に記載されています。税関に申告を行う際、このガラスボトルの費用は、香水液体の課税価格に加算しなければならないのでしょうか。それとも、液体は液体、ボトルはボトルとして別々に申告すればよいのでしょうか。

また、輸送時に使用する再利用可能なパレットやコンテナの費用についても、どのように申告に含めるべきか迷っております。正しい法的な判断基準を教えてください」

このようなケースでは、関税定率法における「加算要素」の規定と、関税率表の解釈に関する「通則」の理解が不可欠です。本記事では、輸入貨物の容器と課税価格の考え方について、専門的な視点から詳しく解説いたします。

2 関税評価の基本原則と加算要素の体系

輸入貨物の関税を計算するための基礎となる「課税価格」は、原則として、その貨物の輸入取引において実際に支払われた、または支払われるべき「現実支払価格」に、運賃や保険料などの「加算要素」を加えた価格(取引価格)によって決定されます。

関税定率法第4条第1項(輸入貨物の課税価格の決定の原則)では、以下のように規定されています。

「輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされたときの価格(以下「取引価格」という。)による。この場合において、取引価格とは、当該輸入貨物の輸入取引に関し買手により売手に対し又は売手の利益のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において次に掲げる運賃等の額を加えた価格をいう」

同項第2号ロにおいて、容器に関する加算要素が以下のように明記されています。

「輸入貨物に係る輸入取引に関し買手により負担される当該輸入貨物の容器の費用」

つまり、ある貨物を輸入する際、その貨物を収める容器の費用を買手が負担している場合、その費用は貨物本体の価格に加算され、一体として課税されることになります。

3 関税法及び関税定率法における容器の定義

ここで重要となるのが、どのようなものが法的な「容器」に該当するかという点です。関税評価の実務において、この「容器」の範囲は、関税率表の解釈に関する通則5の規定に基づいて判断されます。

通則5(ケースその他これに類する容器並びに包装材料及び包装容器の取扱い)

(a)写真機用ケース、楽器用ケース、銃用ケース、製図機用ケース、首飾り用ケースその他これらに類する容器で、特定の物品又は物品のセットを収納するために特に製作し又は適合させたものであつて、長期間の使用に適し、当該容器に収納される物品とともに提示され、かつ、通常当該物品とともに販売されるものは、当該物品に含まれるものとしてその所属を決定する。

(b)(a)の規定に従うことを条件として、物品とともに提示し、かつ、当該物品の包装に通常使用する包装材料及び包装容器は、当該物品に含まれるものとしてその所属を決定する。

関税定率法第4条第1項第2号ロにいう「容器」とは、この通則5によって「当該物品に含まれる」とされるものを指します。これには、製品の個装箱、香水の瓶、薬品のアルミ包装などが含まれます。

4 容器の費用を加算する場合としない場合の判断基準

容器の費用を課税価格に加算するかどうかの分かれ目は、輸入申告の時点で「その容器が貨物を収納しているか」という点にあります。

(1)貨物を収納した状態で輸入される場合

輸入時に、貨物が容器に入っている(あるいは包装されている)場合、その容器の費用は関税定率法第4条第1項第2号ロの規定により、貨物の課税価格に加算されます。

例えば、瓶入りのワインを輸入する場合、ワインの液体の価格に、瓶の費用を加算します。これが基本的な加算要素の考え方です。

(2)貨物と容器が別々に輸入される場合

冒頭の相談事例のように、飲料水や香水などの「中身」と、それを詰めるための「空のペットボトルやガラス瓶」をそれぞれ別々の貨物として輸入する場合、その空容器は輸入申告の時点で貨物を収納していません。

この場合、空容器は「容器」としての加算要素ではなく、それ自体が独立した一つの「貨物(物品)」として取り扱われます。

したがって、中身(液体)の価格に容器の費用を加算する必要はなく、それぞれの物品に対して、それぞれの税番(HSコード)を適用して申告を行うことになります。

5 容器の種類と関税評価の取り扱い比較

実務において混同しやすい容器や包装の取り扱いについて、以下の表にまとめました。ワードデータ等にコピーして社内マニュアルとして活用できる形式で作成いたします。

【容器・包装の形態別関税評価の取り扱い一覧】

容器・包装の形態 関税評価上の取り扱い 加算要素の該否
輸入時に貨物を収納している個装容器(瓶、缶、箱等) 貨物の現実支払価格にその費用を加算する 該当する
輸入時に貨物を収納している外装用包装材料 貨物の現実支払価格にその費用を加算する 該当する
国内での詰め替え用に、空の状態で輸入される容器 独立した別の貨物として申告する(中身への加算は不要) 該当しない
反復使用される輸送用コンテナやタンク 原則として独立した貨物(または免税物品)として扱う 該当しない
買手が無償で提供した容器(いわゆる無償供与資材) 買手の取得費用または製作費用を課税価格に加算する 該当する

6 特殊なケースにおける実務上の留意点

(1)無償供与される容器の費用

買手が国内または第三国で容器を調達し、それを海外の売手(製造者)に無償で送付して、中身を詰めてもらった後に輸入する場合、買手が負担した容器の調達費用は加算要素となります。

関税定率法第4条第1項第3号イにおいて、買手が無償または軽減した価格で提供した材料の費用を加算することが規定されていますが、容器についても同様に、買手が負担したコストは課税価格に含まれなければなりません。

(2)反復使用される容器(リターナブル容器)

ガスシリンダーや化学品のドラム缶など、繰り返し使用される容器については、通常の使い捨て容器とは異なる取り扱いが必要となる場合があります。

通則5(b)のただし書きでは、「反復使用に適することが明らかな包装材料及び包装容器については、この規定は適用しない」とされており、これらは中身の物品に含まれず、独立した貨物として扱われるのが原則です。

関税評価上も、これらが輸入取引の一部として費用負担されているのか、あるいは貸与されているのかによって、加算すべきかどうかの慎重な判断が求められます。

(3)パレットの費用

貨物を固定し、輸送を容易にするためのパレットも、輸入取引において買手がその費用を負担している場合は、包装の費用(関税定率法第4条第1項第2号ハ)として課税価格に加算されます。

ただし、パレット自体が後日返却される仕組み(プールパレット等)である場合や、一時免税の規定を適用する場合などは、複雑な法解釈を伴うことがあります。

7 現実支払価格にすでに含まれている場合

多くの取引では、インボイス価格(CIF価格等)にすでに容器や包装の代金が含まれています。この場合、さらなる加算は不要です。

しかし、メーカーが容器の代金を別途請求してきたり、買手が第三者から容器を購入してメーカーに送り届けたりしている場合には、加算漏れが発生しやすくなります。

加算漏れは、税関の事後調査において最も厳しく指摘されるポイントの一つであり、過少申告加算税や延滞税の対象となるリスクがあります。

8 図解による課税価格の計算構成

以下に、容器の費用を含む課税価格の計算構造を視覚化します。

【輸入貨物の課税価格の構成図】

1.現実支払価格(仕入書価格)

(貨物本体の代金として売手に支払う金額)

2.加算要素(買手が負担するものに限る)

(イ)仲介手数料及び口銭(買付手数料を除く)

(ロ)容器の費用(関税率表の通則5に規定するもの)

(ハ)包装の費用(梱包資材費や労働費)

(ニ)買手による無償供与資材(材料、工具、金型、技術等)

(ホ)特許権等の使用料(ロイヤリティ)

(ヘ)売手への帰属収益

3.輸入港までの運賃・保険料

(日本に到着するまでの輸送コスト)

4.課税価格(この金額に関税率をかけて税額を算出)

9 弁護士へのご相談をご希望の方へ

関税評価における容器の取り扱いや加算要素の判断は、取引の形態が多様化する中で、非常に複雑なものとなっています。単に「瓶に入っているから足す」といった単純な判断だけでは、不必要な関税の過払い、あるいは深刻な過少申告を招く恐れがあります。

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、関税法や関税定率法に関する専門的な知見に基づき、輸入・通関上のトラブルに関するご相談を幅広くお受けしております。

弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと存じますが、お悩みをご相談いただくことで、以下のようなメリットを提供し、お悩み解消の一助となることができます。

・最新の関税定率法及び関税評価技術的注釈に基づいた、適正な課税価格の算定支援。

・税関事後調査において容器や包装の加算漏れを指摘された際の、法的な反論及び交渉。

・複雑なリターナブル容器や無償供与資材が絡む取引における、契約書のリーガルチェックとアドバイス。

・事前教示制度を活用した、税関との見解の事前確認。

輸入取引のコスト計算に不安がある場合や、税関との見解の相違が生じている場合には、どうぞご遠慮なく当事務所までご相談ください。

10 まとめ

本日は、輸入貨物とともに輸入される容器の関税評価について解説いたしました。

容器の費用を貨物の価格に加算するかどうかの判断基準は、輸入申告の時点でその容器が貨物を収納しているか、そしてその費用を買手が負担しているかという点に集約されます。

国内での詰め替えを目的として空の状態で輸入される容器については、加算要素ではなく独立した貨物として扱うというルールは、実務上非常に重要なポイントです。

関税定率法第4条第1項の規定を正しく理解し、現実支払価格と加算要素を適切に区分して申告することは、企業のコンプライアンス維持と、適正な納税コストの把握に直結いたします。

本記事の解説が、皆様の輸入実務における正確な課税価格の決定に寄与すれば幸いです。もし、自社の取引形態における判断が難しい場合や、過去の申告内容に不安がある場合には、専門家への相談を検討することをお勧めいたします。

容器と課税価格に関する重要事項の再確認

・輸入時に貨物を収納している容器の費用は加算要素となること

・空の状態で別途輸入される容器は、独立した別の貨物として扱うこと

・容器の定義は関税率表の解釈に関する通則5に準ずること

・買手が無償で提供した容器のコストも課税価格に含まれること

・リターナブル容器は、その性質や取引形態により個別の判断が必要であること

適正な申告と納税を通じて、健全で透明性の高い貿易ビジネスを実現していきましょう。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

関税ほ脱罪及び無許可輸出入罪の留意点

2021-10-16

1 はじめに―相談事例

輸出入をビジネスとして継続的に行う企業にとって、関税法という法律は常に隣り合わせの存在です。しかし、その中には「知らなかった」では済まされない重い刑事罰を伴う規定が含まれています。まずは、どのような状況でこれらの罪が問題となるのか、具体的な相談事例を通じて見てみましょう。

【相談者】

輸入卸売業 O社 代表取締役

【相談内容】

「当社は海外から雑貨やアパレル製品を輸入し、国内の小売店に販売しています。先日、税関による事後調査が行われた際、一部の輸入申告において実際の仕入価格よりも低い金額で申告していた、いわゆる『アンダーバリュー』の事実を指摘されました。 担当者に確認したところ、取引先との交渉の過程で発行された低い金額の仮のインボイスを、そのまま本物の書類として税関に提出してしまったとのことです。担当者は『納期を急いでいたため、確認を怠っただけで悪意はなかった』と主張していますが、税関からは『関税を免れる等の罪』に該当する可能性があると告げられました。 会社として意図的に脱税を指示したわけではありませんが、私自身や会社も処罰の対象になるのでしょうか。また、どのような罰則が想定されるのか、法的な観点から詳しく教えてください」

このような事例は、実務の現場では決して珍しいものではありません。しかし、関税法違反として立件された場合、企業が被るダメージは計り知れません。本日は、特に関税法の中で重要な二つの罪について詳しく解説いたします。

2 関税を免れる等の罪(関税ほ脱罪)の詳細

関税を免れる等の罪は、一般に「関税ほ脱罪」とも呼ばれます。これは、国の税収を不当に侵害する行為に対して科される非常に重い罰則です。

(1)法的根拠と要件

関税法第110条第1項には、以下の通り規定されています。

「次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 偽りその他不正の行為により関税を免れ、又は関税の払戻しを受けたとき

二 関税を納付すべき貨物について偽りその他不正の行為により関税を納付しないで輸入したとき」

ここで重要となるのが「偽りその他不正の行為」という文言です。これは、単なる申告漏れや計算ミスを超えて、意図的に真実を隠蔽し、または虚偽の事実を捏造して関税を免れようとする行為を指します。具体的には、前述のアンダーバリュー(価格の過少申告)や、関税率の低い別の品目として偽って申告する行為などが該当します。

(2)罰則の強化規定

関税ほ脱罪の罰則には、免れた税額に応じた加重規定があります。関税法第110条第4項によれば、免れた関税額等の10倍が1000万円を超える場合、罰金は「免れた関税額等の10倍以下」とされます。例えば、多額の輸入を継続し、免れた税額が合計で5000万円に達していた場合、罰金は最大で5億円にまで跳ね上がる可能性があるということです。

(3)通関業者の責任

本条の規定は輸入者本人だけでなく、通関業者にも及びます(関税法第110条第2項)。通関業者が輸入者と共謀したり、あるいは不正の事実を知りながら偽りの申告を行ったりした場合、通関業者自身も同一の罰則の対象となります。これは、通関業者が通関手続きの適正を確保すべき公的な役割を担っているためです。

3 許可を受けないで輸出入する等の罪(無許可輸出入罪)

関税を免れる意図がなかったとしても、税関の許可を得ずに貨物を移動させる行為自体が「無許可輸出入罪」として処罰の対象となります。

(1)法的根拠と要件

関税法第111条第1項には、以下の通り規定されています。

「次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 第67条(輸出又は輸入の許可)の許可を受けるべき貨物について、当該許可を受けないで当該貨物を輸出し、又は輸入した者

二 第67条の申告又は検査に際し、偽つた申告若しくは証明をし、又は偽つた書類を提出して貨物を輸出し、又は輸入した者」

(2)「無許可」の状態とは

第1号に該当するのは、いわゆる「密輸入」や「密輸出」の典型例です。税関を通さずに貨物を国内に持ち込んだり、国外へ持ち出したりする行為です。一方、実務で特に注意が必要なのは第2号です。これは、申告自体は行っているものの、その内容が「偽り」である場合を指します。例えば、輸入禁止品(模倣品や特定の薬品など)を、別の一般的な雑貨として偽って申告し、許可を得ようとした場合などがこれに該当します。この場合、形式上の許可は得ていても、法律上は「正当な許可」を得ていないものとみなされ、重い処罰の対象となります。

(3)罰則の加重

本罪においても、貨物の価格に基づく罰金の加重規定があります。当該犯罪に係る貨物の価格の5倍が1000万円を超えるときは、罰金は「当該価格の5倍以下」とされます。貨物自体の価格が高い場合、罰金総額は莫大な金額になるリスクがあります。

4 刑事罰と行政罰(加算税等)の相違

輸出入における不正が発覚した場合、税関から課されるのは刑事罰だけではありません。多くの場合、まず行政罰としての「附帯税」が課されます。

(1)過少申告加算税と重加算税

申告された税額が不足していた場合、不足分に加えて「過少申告加算税」が課されます。さらに、事実の隠蔽や仮装が認められる場合には、より重い「重加算税」が課されます。これは行政上のペナルティであり、刑事手続きとは別に行われます。

(2)刑事罰への発展

すべての不正が刑事事件になるわけではありませんが、免れた税額が高額である場合や、手口が悪質である場合、あるいは反復継続して行われている場合には、税関の犯則調査部門(通称「関税版の査察」)が動き、検察官への告発が行われます。そうなると、前述の懲役や罰金という刑事罰の対象となります。

以下に、関税法第110条と第111条の主な相違点を整理した比較表を作成しました。

【関税ほ脱罪と無許可輸出入罪の比較】

|項目|関税を免れる等の罪(第110条)|許可を受けないで輸出入する等の罪(第111条)|

|主な犯罪の目的|関税等の納付を免れること|税関の輸出入規制を回避すること|

|典型的な行為|アンダーバリュー、虚偽の還付請求|密輸、禁止品の偽り申告による輸入|

|懲役刑|10年以下|5年以下| |罰金刑(原則)|1000万円以下|1000万円以下|

|罰金の加重規定|免れた税額の5倍以下|貨物価格の5倍以下|

|併科の有無|懲役と罰金の併科が可能|懲役と罰金の併科が可能|

5 企業に与える社会的影響と法的リスク

関税法違反で処罰された場合、企業には単なる罰金の支払い以上の損失が生じます。

(1)AEO認定の取り消し

認定通関業者や認定輸入者などの「AEO制度」を利用している企業の場合、関税法違反による処罰は認定の取り消し事由となります。これにより、通関手続きの簡素化や迅速化といったメリットをすべて失うことになります。

(2)検査率の上昇

一度でも重大な違反を起こした企業は、税関のシステムにおいて「要注意企業」として登録されます。その結果、その後の輸入申告のたびに厳格な書類審査や現物検査が行われるようになり、リードタイムの増大やコストの上昇を招きます。

(3)両罰規定による法人の処罰

関税法第117条には「両罰規定」があります。これは、従業員がその業務に関して違反行為を行った場合、実行行為者である従業員だけでなく、その雇用主である法人に対しても罰金刑を科すという規定です。代表取締役が直接手を下していなくとも、会社として多額の罰金を支払わなければならず、役員の解任や株主代表訴訟などのリスクにも発展しかねません。

6 不法行為を未然に防ぐためのチェック体制

犯罪に手を染めないためには、社内におけるガバナンスの構築が不可欠です。

(1)インボイスの精査

海外の取引先から送られてくるインボイスが、実際の送金金額と一致しているかを必ずダブルチェックする体制を整えましょう。

(2)通関業者との連携

通関業者に対しては、取引の実態を正確に開示してください。不透明な指示は、通関業者を犯罪に巻き込むだけでなく、自社の首を絞めることになります。

(3)定期的な社内研修

輸出入実務に携わるスタッフに対し、関税法違反がどのような結果をもたらすのかを教育し、コンプライアンス意識を高めることが重要です。

以下に、事後調査から刑事手続きに至るまでの一般的な流れを整理したフロー図を示します。

【関税法違反の調査及び処分フロー】

1.税関事後調査の実施 (帳簿や書類の精査により不審な点が発見される)

2.犯則調査への切り替え (意図的な不正の疑いがある場合、犯則調査部門による強制調査等が行われる)

3.税関長による通告処分または告発 (軽微な場合は罰金相当額の納付を命じる通告処分。悪質な場合は検察官へ告発)

4.刑事訴追 (検察官による起訴を経て、裁判所での審理が始まる)

5.判決の確定 (懲役刑、罰金刑の確定。法人に対する両罰規定の適用)

7 弁護士へのご相談をご希望の方へ

関税法上の犯罪規定に触れる可能性がある事案は、単なる税務上のミスでは済まされません。事態が刑事事件に発展し、会社や個人の将来が脅かされる前に、適切な法的措置を講じる必要があります。

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を保有しております。弁護士としての高度な法的知見と、通関士としての実務的な視点を融合させることで、貴社のビジネスを多角的に守ることが可能です。

弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと存じますが、早い段階でご相談いただくことには以下のような大きなメリットがあります。

・税関調査の初期段階において、不当な取り調べを防ぎ、適切な反論を行うことができる。

・修正申告のタイミングや方法を助言し、刑事告発を回避するための最善の策を講じることができる。

・両罰規定の適用を回避するために、法人が必要な監督責任を果たしていたことを立証する準備を整えられる。

・通関業者との間に生じたトラブルや責任の所在について、法的な整理を行うことができる。

お悩みをご相談いただくことで、法的な見通しが立ち、不安の解消につながることも多々あります。輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

8 まとめ

本日は、関税法第110条の関税ほ脱罪、および第111条の無許可輸出入罪を中心に、その深刻なリスクと実務上の留意点について解説いたしました。

これらの罪は、実行行為者に重い懲役刑を課すだけでなく、法人に対しても莫大な罰金を課す「両罰規定」を伴います。また、刑事罰が確定しなくとも、重加算税の賦課やAEO認定の取り消しといった行政上の不利益は、企業の国際競争力を大きく削ぐことになります。

輸出入ビジネスは「スピード」が求められる現場ですが、そのスピードを優先するあまり、法的手続きを疎かにしたり、安易なコスト削減のために不正な申告を行ったりすることは、結果として最も高い代償を支払うことになります。

本記事の解説が、皆様の事業におけるコンプライアンス意識の向上と、適正な通関業務の維持に寄与すれば幸いです。もし、現在の申告状況に不安を感じたり、税関から不審な指摘を受けたりした場合には、一人で悩まずに、専門的な知識を持つ弁護士へ速やかに相談することをお勧めいたします。

主要な犯罪規定に関するチェックポイント ・アンダーバリューは「関税を免れる等の罪」に直結すること ・偽りの申告による許可取得は「無許可輸入」とみなされること ・罰金刑は免れた税額や貨物価格の5倍に達する可能性があること ・従業員の犯行であっても会社が処罰される「両罰規定」があること ・事後調査において誠実に対応し、早期に専門家のアドバイスを受けること

適正な申告と納税こそが、貴社のビジネスを長期的な成功に導く唯一の道であることを、改めて強調させていただきます。

【お問合せは、こちらから】

・・・・・・・・・・・

執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

関税率表の所属の決定における原則

2021-10-04

1 はじめに―相談事例

輸入実務において、一つの製品がどのような素材で構成され、どのような状態(完成品か未完成品か)で提示されるかによって、適用されるHS符号(税番)は大きく変動いたします。まずは、関税率表の解釈に関する通則の理解が不可欠となる具体的な相談事例をご紹介いたします。

【相談者】

スポーツ・ホビー用品輸入販売業者 R社 物流管理部長

【相談内容】

「当社ではこのたび、海外のメーカーから新型の電動アシスト自転車を輸入することになりました。この製品は輸送コストを抑えるため、タイヤやハンドル、バッテリーなどが取り外された『未帰属・未組み立て』の状態で一つの梱包に収められています。 また、この自転車には専用のキャリングケースと、メンテナンス用の工具、清掃用洗剤のボトルがセットになっています。 関税率表を確認したところ、自転車本体の項、個々の部品の項、あるいはセット品としての項など、複数の候補が考えられます。また、未組み立ての状態であっても『自転車』として申告して良いのか、あるいはバラバラの部品として申告すべきなのか判断に迷っております。 さらに、専用ケースの価値も高く、これらを一つの税番にまとめて良いのか、それとも個別に分けるべきなのかも不明確です。関税率の誤りは事後調査での追徴リスクに直結するため、所属決定の根本的なルールを詳しく教えてください」

このような複雑な物品の分類を世界共通のルールで統一的に行うために定められているのが、関税定率法別表の解釈に関する通則です。本日は、通則1から通則6までをすべて統合し、実務における判断の指針を徹底的に解説してまいります。

2 関税率表の解釈に関する通則の全体像

関税率表の適用について、世界中で統一的な運用を確保するための分類解釈の原則が通則です。これは単なるガイドラインではなく、法的拘束力を持つルールであり、通関実務において最も優先されるべき判断基準となります。

3 通則1 項の規定と注の最優先原則

通則1は、分類の出発点であり、かつ最も重要な原則です。

通則1の内容 「部、類、節の表題は、単に参照上の便宜のために設けたものである。この表の適用に当たつては、物品の所属は、項の規定及びこれに関係する部又は類の注の規定に従い、かつ、これらの項又は注に別段の規定がある場合を除くほか、通則2以下の原則に従つて決定する」

実務上のポイントは、部や類のタイトル(表題)だけで判断してはならないという点です。例えば、第15部(卑金属及びその製品)という表題があっても、第15部の「注」において特定の物品が除外されている場合、その物品は第15部には分類されません。

「項(4桁の数字)の文言」と、各部や各類に付されている「注(ノート)」の規定こそが法的な決定権を持っており、通則2以下のルールは、これらで解決できない場合に初めて登場する補助的なもの。

4 通則2 未完成品・未組み立て品及び混合物の扱い

通則2は、項の規定を拡張し、物品の状態や構成材料の変化に対応するためのルール。

(1)通則2(a)-未完成品及び未組み立て物品

「各項に記載するいずれかの物品には、未完成の物品で、提示の際に完成した物品としての重要な特性を有するものを含むものとし、また、完成した物品(この原則により完成したものとみなす未完成の物品を含む。)で、提示の際に組み立ててないもの及び分解しているものを含む」

相談事例の電動自転車のように、バラバラの状態で輸入されても、組み立てれば自転車としての機能を果たすことが明らかな場合、それは部品の集合体ではなく「自転車」として分類されます。また、塗装前の自転車のフレームであっても、重要な特性を有していれば自転車として扱われる。

(2)通則2(b)-材料又は物質の混合及び結合

「各項に記載するいずれかの材料又は物質には、当該材料又は物質に他の材料又は物質を混合し又は結合した物品を含むものとし、また、特定の材料又は物質から成る物品には、一部が当該材料又は物質から成る物品を含む。二以上の項に属するとみられる物品の所属は、通則3の原則に従つて決定する」

これは、例えば「プラスチック製の容器」という項がある場合、それが100パーセントプラスチックである必要はなく、少量のゴムや金属が結合されていても、依然としてプラスチック製品の項に含まれ得るということを示しています。これにより所属が複数の項にまたがる場合に、次の通則3へと進むことになります。

5 通則3-二以上の項に属するとみられる物品の決定

物品が複数の項に該当しそうな場合、以下の(a)から(c)の順序で判断します。

(1)通則3(a)-特殊な限定による優先

「最も特殊な限定をして記載をしている項が、これよりも一般的な記載をしている項に優先する」

例えば、航空機用はじゅうたんを輸入する場合、「航空機の部分品」という一般的な項よりも、「じゅうたん」という具体的な項が優先されます。

(2)通則3(b)-重要な特性による決定

(a)で決まらない混合物や小売用のセット品については、当該物品に「重要な特性(エッセンシャル・キャラクター)」を与えている要素で分類します。相談事例のセット品であれば、自転車本体が重要な特性を持っているため、付属の洗剤や工具も含めて、セット全体を自転車の項に分類できる可能性がある。

(3)通則3(c)-数字上の配列における最後

(a)および(b)でも決まらない場合、候補に挙がった項のうち、最も大きな数字の項(後ろにある項)に分類するという法的な割り切りです。

6 通則4-類似性による分類

通則1から3を尽くしても所属が決定できない、新開発の未知の製品などに適用される極めて稀なルール。

通則4の内容 「通則1から3までの原則によりその所属を決定することができない物品は、当該物品に最も類似している物品が属する項に属する」

7 通則5-ケースその他これらに類する容器及び包装の扱い

(1)通則5(a)-特定の物品を収納する容器

写真機用ケース、楽器用ケース、銃用ケースなどの特定の物品用に作られた容器は、以下の条件を満たせば中身の物品に含まれます。

・特定の物品を収納するために特に製作されている

・長期間の使用に適している

・通常その物品と共に販売される

ただし、容器自体が物品に重要な特性を与えている場合は適用されません。

(2)通則5(b)-包装材料及び包装容器

通常、その物品の包装に使用される材料(段ボールやプラスチック袋等)は中身に含まれます。ただし、反復使用に適することが明らかな容器(高圧ガス用シリンダー等)には適用されず、容器単独で分類される。

8 通則6-号の所属決定

通則6は、項(4桁)の下の「号(サブヘディング)」を決定するためのルールです。

通則6の内容 「項のうちのいずれの号に物品が属するかは、号の規定及びこれに関係する号の注の規定に従い、かつ、前記の原則を準用して決定するものとし、この場合において、同一の水準にある号のみを比較することができる」

一重ダッシュ(ー)の号は一重ダッシュの号同士でのみ比較し、二重ダッシュ(ーー)は二重ダッシュ同士でのみ比較するという階層構造の厳守を求めています。

9 実務活用ガイド―通則の適用判断一覧表

通則1から6までの役割と実務上の判断基準を体系化いたしました。

【関税率表の解釈に関する通則1~6の完全体系表】

|通則|分類のステップ|具体的な判断基準および留意点|

|通則1|絶対優先の原則|項の文言と部・類の注を最優先する。表題に惑わされないこと。|

|通則2(a)|不完全・未組立|重要な特性があれば未完成品も完成品として扱う。未組立品も含む。|

|通則2(b)|混合・結合物|異物が混ざっていても特定の材料の項に含め得る。複数項にまたがる端緒。|

|通則3(a)|特殊性の優先|より具体的・詳細に物品を記述している項を選択する。| |通則3(b)|本質的特性|セット品などは、価格・重量・役割で最も重要な構成要素で分類する。|

|通則3(c)|配列の最後|(a)(b)で決まらない際の最終手段。数字が最大の項を採用する。|

|通則4|類似性の原則|いずれの規定にも当てはまらない場合、最も似ている物品の項に従う。|

|通則5(a)|専用容器|楽器ケース等の特定物品用容器は中身と一体。容器主体の場合は別。|

|通則5(b)|包装材料|通常の使い捨て包装は中身と一体。反復使用容器は単独で分類。|

|通則6|号の細分類|号の文言と号の注に従う。同一階層(ダッシュ数)のみを比較。|

10 実務上の重要留意事項

(1)部・類の注(ノート)の精査

通則1に従い、分類の鍵は常に「注」にあります。例えば、第64類(履物)の注には、アスベスト製の履物や中古の履物を除外する旨が記載されている。これを見落とすと、通則3を適用する以前に誤った分類をしてしまうことになる。

(2)小売用セットの厳格な要件

通則3(b)を適用する「セット」には、WCO(世界関税機構)の解説により以下の三条件が必要。

1.二以上の異なる物品で構成されている

2.特定の目的のために共に使用される

3.再包装せずに直接販売される形態である これらを満たさない場合、一括分類は認められず、個別に申告しなければなりません。

11 弁護士へのご相談をご希望の方へ

関税率表の所属決定は、単なるカタログの照合作業ではなく、関税法及び関税定率法に基づいた高度な法的解釈を伴う専門的業務。特に、通則2(a)の「重要な特性」の有無や、通則3(b)のセット品の判断、さらには通則5の容器の随伴性の判断を誤ると、税関から申告不備を指摘され、多額の追徴課税や加算税といったペナルティを課されるリスクが生じます。

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を保有しており、法務と実務の両面から一貫したサポートを提供できる強みを持っております。

弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと存じますが、お悩みをご相談いただくことで、以下のようなメリットを提供し、お悩み解消の一助となることができます。

・最新の関税率表及びWCO解説に基づいた、論理的で強固な分類根拠の構築

・複雑なセット商品や未組み立て製品に関する、税関との事前教示手続きのサポート

・事後調査において分類の妥当性を問われた際の、法的な論理構成による不服申立ての代理

・社内の輸出入コンプライアンス体制を強化するための、分類マニュアルの整備支援

輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。法律の専門家であり、かつ通関実務の専門家でもある当事務所が、貴社のグローバルビジネスを法的な側面から全力でバックアップいたします。

12 まとめ

本日は、関税率表の解釈に関する通則1から通則6までの全容について解説いたしました。

すべての分類の土台となる通則1、製品の状態を定義する通則2、複数候補から最適解を導く通則3、類似性を探る通則4。そして容器や号の分類を精緻化する通則5と6。これらの原則は、パズルのように組み合わさって一つの適正な税番を導き出します。

特に、グローバルなサプライチェーンの中で流通する多機能製品や、輸送効率を求めた未組み立て品、意匠を凝らした専用パッケージなどは、その分類一つで関税コストが大きく変動いたします。通則の文言一つ一つを精査し、客観的な事実に基づいた判断を行うことが、企業の信頼性を守ることにも繋がります。

本記事の包括的な解説が、皆様の輸出入実務における正確な税番決定の一助となれば幸いです。もし判断に迷うような複雑な案件や、税関との見解相違が予想される案件がございましたら、一人で悩まずに専門家への相談を検討することをお勧めいたします。

【通則1から6の理解における重要ポイントの再確認】

・通則1が最優先であり、項の文言と注が法的な決定権を持つこと

・通則2(a)により、未組み立て品も完成品として分類されること

・通則3は(a)>(b)>(c)の厳格な順序で適用すること

・通則5により、専用ケースは中身に含めるのが原則であること

・通則6は同一階層(ダッシュ数)の号のみを比較すること

・通則の適用にあたっては常に客観的な証拠資料(カタログ等)が必要であること

適正な分類と納税を通じて、健全で透明性の高い貿易ビジネスを実現していきましょう。

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

関税法における通告処分制度

2021-09-24

1 はじめに―相談事例

輸出入を業とする企業にとって、予期せぬトラブルの一つに税関による犯則調査があります。まずは、通告処分が問題となる具体的な相談事例を見てみましょう。

【相談者】

海外ブランド品輸入卸売業 L社 代表取締役

【相談内容】

「当社では長年、欧州からブランドバッグを輸入しておりますが、先日、通関業務を担当していた社員が、納税額を抑える目的で仕入書(インボイス)の金額を意図的に低く書き換えて申告していたことが税関の調査で発覚しました。

税関の犯則調査部門による厳しい取り調べを受け、多額の関税を免れた疑い(関税ほ脱罪)を指摘されています。幸い、税関長から『通告処分』という手続きの案内を受けました。

担当官からは、罰金に相当する金額を支払えば、刑事裁判にはならないという説明を受けましたが、これまで刑事事件とは無縁であったため、この通告処分がどのような法的性質を持つものなのか、また、支払いに応じた場合に前科がつくのか、あるいは応じなかった場合にどのような不利益があるのかがわからず、非常に不安を感じております。制度の全容と、会社としてどのように対応すべきかを詳しく教えてください」

このような状況は、企業のコンプライアンス体制が問われる重大な事態です。通告処分は、刑事手続きと密接に関わりながらも、行政官庁である税関長が行う独自の制度です。以下、その詳細について専門的な視点から解説してまいります。

2 通告処分制度の概要と目的

通告処分とは、関税法違反などの犯則事件について、税関長が調査の結果、犯則の心証を得た場合に、犯則者に対して罰金相当額等の納付を命じる行政上の処分を指します。

この制度の最大の目的は、事件の迅速な処理と、司法機能の負担軽減にあります。すべての犯則事件を最初から刑事裁判にかけるのではなく、比較的定型的あるいは情状に酌むべき点がある事件について、行政段階で金銭的な制裁を課すことにより、事案を完結させる仕組みです。

実務上、この処分は「検察官への告発」を留保した状態で行われます。犯則者が通告された金額を納付すれば、刑事訴追を免れることができるという、一種の恩恵的な側面も持ち合わせております。

3 通告処分の法的根拠

通告処分の手続きと内容は、関税法第146条に厳格に定められています。専門的な理解を深めるため、具体的な条文を確認しましょう。

関税法第146条第1項(通告処分)

「税関長は、犯則事件の調査により犯則の心証を得たときは、その理由を明示し、罰金に相当する金額、没収に該当する物件、追徴金に相当する金額並びに書類の送達並びに差押物件の運搬及び保管に要した費用(以下「罰金相当額等」という。)を税関に納付すべき旨を書面により通告しなければならない」

この条文により、税関長は以下の4点を通告の内容とすることが規定されています。

1.罰金に相当する金額

2.没収に該当する物件

3.追徴金に相当する金額(没収すべき貨物がすでに消費・転売されている場合等)

4.事務手続きに要した費用(送達費用や保管料等)

この通告は、口頭ではなく必ず「書面」によって行われ、その理由も明示されなければなりません。

4 通告処分の履行とその法律効果

通告処分を受けた者が、その内容に従って金銭を納付し、物件を差し出した場合を「履行」と呼びます。

(1)公訴提起の禁止(一事不再理の効力)

関税法第146条第5項には、履行による法的効果が規定されています。

関税法第146条第5項

「犯則者が通告の旨を履行したときは、同一事件について、公訴を提起されることはない」

本来、通告処分は行政処分であり、刑罰ではありません。しかし、行政処分に従ったにもかかわらず、さらに刑事罰を科されることになると、犯則者にとって過重な負担となります。そこで、関税法では明文をもって「一事不再理」と同様の効果を認めています。これにより、履行が完了した時点で、当該事件についての刑事責任は法的に解消されることになります。

(2)前科との関係

通告処分に基づく納付は、あくまで「行政上の制裁」に従ったものであり、裁判所による「刑罰」の確定ではありません。したがって、いわゆる戸籍謄本等に付随する犯罪歴(前科)として記録されることはありません。これが、企業が通告処分を履行する大きなメリットの一つといえます。

5 通告処分の不履行と検察官への告発

一方で、通告処分に従わない(不履行)場合には、事態は刑事手続きへと移行します。

関税法第147条第1項(告発)

「犯則者が通告書の送達を受けた日から20日以内に通告の旨を履行しないときは、税関長は、直ちに検察官に告発しなければならない」

(1)強制的な告発

税関長には裁量の余地はなく、期限である20日以内に履行がない場合は「直ちに」告発する義務を負います。告発がなされると、事件は検察庁に送られ、検察官による捜査を経て、起訴・不起訴の判断がなされることになります。

(2)刑事裁判への移行

起訴された場合は、裁判所での公判手続きが行われます。ここで有罪判決が確定すれば、それは正式な「刑罰」となり、前科として記録されることになります。また、法人の場合は、前述した両罰規定により、会社自体にも高額な罰金刑が科されるリスクがあります。

6 実務上の手続きフローと留意事項

通告処分に至るまでの一般的な流れを整理いたします。ワードデータ等にコピーして活用できる形式で作成いたします。

【犯則調査から通告処分までの流れ】

1.犯則事件の調査開始

(税関の犯則調査部門による立ち入り検査、証拠品の差し押さえ、事情聴取等)

2.調査の終結と犯則の心証

(税関長が関税法違反の事実を確信した段階)

3.通告処分の決定

(税関内部での審議、罰金相当額等の算出)

4.通告書の送達

(関税法第146条第1項に基づく書面による通知)

5.犯則者による判断

((A)履行:20日以内に罰金相当額等を納付)

((B)不履行:期限内に納付せず)

6.結末

((A)の場合:事件終了、刑事訴追なし、前科なし)

((B)の場合:税関長が検察官に告発、刑事裁判へ移行)

7 通告処分と刑事手続きの比較

通告処分を受けることの意義をより深く理解するため、刑事裁判との違いを比較表にまとめました。

【通告処分と刑事訴追の比較一覧】

比較項目 通告処分 刑事訴追(公判)
決定の主体 税関長(行政官庁) 裁判所(司法府)
手続きの性質 行政処分(行政上の制裁) 刑罰(国家的な制裁)
納付する金銭 罰金相当額(行政納付金) 罰金(刑罰)
前科の有無 一般的な意味の前科にならない 有罪確定により前科となる
社会的影響 公開されないため、影響を抑えやすい 公開の裁判となり、報道リスクがある
拒否の権利 履行せず刑事裁判で争うことが可能 司法手続きに従う義務がある

8 実務上のポイントと企業の対応策

通告処分は、ある意味では「司法の手続きによらずに金銭解決を認める」という税関からの最終的な提示です。しかし、以下の点には十分な注意が必要です。

(1)罰金相当額の算出基準

罰金相当額は、関税法の各罰則規定に定められた金額を基準に算出されます。ほ脱罪などの場合、免れた税額の倍数(最高5倍以下)で算出されることがあり、その額は数千万円から数億円に及ぶこともあります。企業にとっては、支払能力の有無が履行できるかどうかの重要な分かれ目となります。

(2)事実関係の精査

通告処分を受けるということは、税関側が「犯則の心証を得た」ということです。しかし、会社として、あるいは行為者として、本当にそのような意図(故意)があったのか、あるいは税関の解釈が法的に妥当なのかを慎重に見極める必要があります。もし全くの事実無根であるならば、あえて履行せず、刑事裁判の場で無罪を主張するという選択肢も理論上は存在します。

(3)期間の短さ

通告を受けてから履行期限までは「20日間」と非常に短期間です。この間に、事実関係の確認、資金の調達、意思決定を行わなければなりません。迅速な法的判断が求められます。

9 弁護士へのご相談をご希望の方へ

税関による犯則調査や通告処分は、通常の行政指導や税務調査とは全く次元の異なる、刑事手続きに直結した事態です。初期対応を誤ると、会社の代表者や役員が逮捕・勾留されたり、会社が刑事罰を受け、輸出入ビジネスの継続が困難になったりする深刻なリスクを伴います。

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を保有しております。税関の内部事情や犯則調査の実務、そして関税法という特殊な法体系を熟知していることが、当事務所の最大の強みです。

「通告処分の内容が妥当なのかわからない」

「罰金相当額が高すぎて支払えないが、どうにか交渉できないか」

「刑事裁判に発展した場合の見通しを知りたい」

「事後調査が犯則調査に切り替わりそうで不安だ」

このようなお悩みをお悩みの際は、ぜひ当事務所までご相談ください。お悩みをご相談いただくことで、法的な見通しを立て、最善の着地点を見つけるための一助となることができます。

当事務所では、以下のようなサポートを提供いたします

・犯則調査における取り調べのアドバイス

・通告処分の理由および算出根拠の正当性の検証

・検察官への告発を回避するための税関との交渉

・履行後のコンプライアンス体制の再構築支援

・刑事裁判へ移行した場合の弁護活動

輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

10 まとめ

通告処分制度は、関税法第146条に基づき、行政の効率化と犯則者の救済という二つの側面を併せ持つ特異な制度です。この処分を正しく理解し、適切に対応することは、輸出入ビジネスにおける極めて重要なリスクマネジメントといえます。

履行すれば、一事不再理の原則により刑事訴追を免れ、前科という致命的なダメージを避けることができます。一方で、不履行を選択すれば、国家の刑罰権が発動し、厳格な刑事手続きへと進むことになります。

20日間という限られた時間の中で、自社の将来を左右する重い決断を迫られるのがこの通告処分制度の厳しさです。不測の事態に直面した際は、専門家である弁護士の知見を借り、最善の選択を行ってください。適正な通関と法令遵守こそが、長くビジネスを続けるための唯一の鍵であることを、改めて強調させていただきます。

通告処分に関する重要事項の再確認

・税関長が犯則の心証を得た際に出される行政処分

・関税法第146条がその中心となる根拠規定

・罰金相当額等の納付を命じる書面による通知

・履行すれば刑事裁判にならず、前科もつかない

・不履行の場合は直ちに検察官へ告発される

・履行期限は送達から20日以内という短期間である

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

関税法における両罰規定の構造

2021-09-22

1 はじめに―相談事例の紹介

輸出入ビジネスを展開する企業において、法令遵守(コンプライアンス)の徹底は事業継続の生命線といえます。しかし、経営者がどれほど注意を払っていても、現場の従業員による一時の判断ミスや不正行為が、会社全体を揺るがす深刻な事態を招くことがあります。まずは、関税法上の両罰規定が問題となる具体的な相談事例を見てみましょう

【相談者】

機械部品輸出入業 K社 代表取締役

【相談内容】

「当社は長年、東南アジア諸国への精密機械部品の輸出を行っております。先日、輸出担当のベテラン従業員が、納期を急ぐあまり、本来必要であった経済産業大臣の輸出許可証を取得せずに、虚偽の申告を行って貨物を輸出していたことが税関の調査で発覚しました。 当該従業員は『会社のために良かれと思ってやった』と供述しておりますが、税関からは当該従業員個人だけでなく、法人である当社に対しても多額の罰金が科される可能性があると説明を受けました。 不正を行ったのはあくまで従業員個人であり、会社として組織的に指示したわけではありません。それにもかかわらず、会社まで処罰されるというのは本当なのでしょうか。また、法人に対する処罰が確定した場合、今後の輸出入業務にどのような悪影響が出るのか、法的な観点から詳しく教えてください」

このようなケースにおいて適用されるのが、関税法第117条に規定される「両罰規定」です。これは、実際に違反行為を行った個人(実行行為者)を罰するだけでなく、その者が所属する法人や事業主に対しても罰金刑を科すという非常に強力な規定です。以下、その詳細について専門的な解説を行います

2 関税法上の両罰規定とは

両罰規定とは、法人の代表者や従業員等がその法人の業務に関して違反行為を行った場合に、行為者本人を処罰するだけでなく、その雇用主である法人等に対しても罰金刑を併せて科す制度を指します。関税法における根拠条文は第117条です

(1)関税法第117条第1項

「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務又は財産について、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して当該各号に定める罰金刑を課する」

この規定により、法人の業務遂行過程で発生した犯罪については、法人自身も刑事責任を問われることになります。これは、法人が事業活動を通じて利益を得ている以上、その過程で発生した違法行為についても責任を負うべきであるという考え方(報償責任)や、法人の監督責任を追及することで再発を防止するという目的に基づいています

(2)法人の範囲

関税法第117条第3項により、法人格を持たない「人格のない社団等」についても法人とみなしてこの規定が適用されます。具体的には、代表者や管理人の定めがある団体であれば、会社組織でなくとも両罰規定の対象となり得る点に注意が必要です

3 両罰規定の対象となる違反行為の範囲

関税法上の両罰規定は、すべての違反行為に適用されるわけではありません。同法第117条では、対象となる条文が具体的に列挙されております。以下、実務上重要となる主な違反行為を整理します

(1)輸出入禁止貨物及び密輸に関連する罪(第108条の4から第112条まで)

これらは関税法の中でも特に重い罪とされており、両罰規定の対象となります

①第108条の4:輸出してはならない貨物を輸出する罪

②第109条:輸入してはならない貨物を輸入する罪

③第109条の2:輸入してはならない貨物を保税地域に置く等の罪

④第110条:関税を免れる等の罪(関税ほ脱罪)

⑤第111条:許可を受けないで輸出入する等の罪(無許可輸出入罪)

⑥第112条:密輸貨物の運搬等をする罪

(2)その他の重要な罪

①第112条の2:用途外に使用する等の罪(減免税を受けた貨物の目的外流用など)

②第113条の2:特例申告書を提出期限までに提出しない罪

③第114条の2:報告等を怠った等の罪(税関からの資料提出要求に対する拒否など)

④第115条の2:帳簿の記載を怠った等の罪(記帳義務・保存義務の違反)

⑤第116条:重大な過失犯

特に、第115条の2(帳簿の記載義務違反)などは、意図的な密輸でなくとも、管理体制の不備によって法人が罰金刑を受ける可能性があるため、実務担当者は細心の注意を払う必要があります

4 実行行為者と法人の責任の関係

両罰規定が適用されるためには、以下の要件を満たす必要があります

(1)主体要件

法人の代表者、代理人、使用人(従業員)、その他の従業者が行為者であること。

正社員だけでなく、アルバイトや派遣社員、あるいは外部の委任を受けた代理人が行った行為であっても、法人の業務に関するものであれば対象となります

(2)業務関連性要件

「その法人又は人の業務又は財産について」行われた行為であること。

従業員が私生活で行った個人的な密輸などは対象外ですが、会社の荷物の中に私物を紛れ込ませて輸入した場合や、納期を守るために勝手に虚偽申告を行った場合などは、業務に関連するものと判断される可能性が極めて高いといえます

(3)過失の推定と監督責任

日本の判例理論上、両罰規定における法人の責任は「選任監督上の過失」に基づくものと解釈されています。つまり、従業員が違反行為を行った場合、法人側には「適切な監督を行っていなかった」という過失が推定されます。法人が処罰を免れるためには、違反行為を防止するために必要な相当の注意及び監督を尽くしていたことを、法人側が立証しなければなりませんが、実務上この立証は非常に困難です。

5 罰則の具体的内容と企業への影響

(1)罰金額の算定

法人に科される罰金は、原則として各罰則条項に定められた金額となります。しかし、関税ほ脱罪(第110条)などの場合、免れた税額の倍数(例えば5倍以下)で罰金が算定されることもあり、法人の経営基盤を揺るがすほどの高額に達するケースもあります。

(2)社会的信用の失墜

刑事罰を受けることは、単なる金銭的損失に留まりません。報道等により「密輸に関与した企業」というレッテルを貼られることで、取引先からの契約解除や、金融機関からの融資引き揚げなど、甚大な社会的ダメージを受けることになります。

(3)行政上の不利益処分

関税法上の罰金刑が確定すると、以下のような行政上の不利益が生じる可能性があります

①AEO(認定事業者)制度の承認取消しまたは申請却下

②通関手続きにおける検査率の上昇(信頼性の低下による)

③特定の免税制度や簡易手続きの利用制限

以下に、両罰規定の対象となる主要な罪状と罰則の概要を整理した図表を掲載いたします

【関税法第117条(両罰規定)の対象となる主な罪状一覧】

|対象条文|罪の名称|行為者の罰則|法人の罰則|

|第108条の4|禁止貨物の輸出罪|10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金|左記と同じ罰金刑|

|第109条|禁止貨物の輸入罪|10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金|左記と同じ罰金刑|

|第110条|関税ほ脱罪|10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金(免れた税額の5倍が上限)|左記と同じ罰金刑|

|第111条|無許可輸出入罪|5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金|左記と同じ罰金刑|

|第115条の2|帳簿記載義務違反|1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金|左記と同じ罰金刑|

※注:懲役刑は実行行為者のみに科され、法人は罰金刑のみとなります

6 法人としての防御策とコンプライアンス体制の構築

両罰規定のリスクを回避するためには、「相当の注意及び監督」を尽くしていることを客観的に証明できる体制を構築しておく必要があります。具体的には以下の対策が考えられます

(1)明確な社内規定の整備

輸出入実務に関するマニュアルを作成し、どの工程でどのような法令遵守が必要かを明文化すること。特に、他法令(外為法等)が関わる貨物の確認フローを厳格化することが重要です

(2)定期的かつ継続的な社員教育

輸出入担当者に対し、関税法の基礎知識や両罰規定の恐ろしさを周知させる研修を定期的に実施すること。相談事例のように「良かれと思って」行った行為が会社を滅ぼす可能性があることを理解させる必要があります

(3)内部監査制度の導入

現場の申告書類や帳簿の記載内容を、定期的あるいは抜き打ちでチェックする体制を整えること。問題が発生した際に早期に発見できる仕組み(内部通報制度等)も有効です

(4)専門家との連携

判断に迷う事案や、複雑な通関手続きについては、事前に通関士や弁護士に相談する体制を作っておくこと。税関との見解の相違が生じた際にも、専門家が介在することで適正な手続きを維持できます。

7 図解-両罰規定の適用プロセス

以下に、従業員が違反行為を行った際の両罰規定の仕組みを視覚化したフローを示します。

【関税法第117条(両罰規定)の適用メカニズム】

1.従業員(実行行為者)による違反行為の発生 (例:関税を免れる目的での虚偽申告) ↓

2.税関による調査・告発 (法人への立ち入り調査、証拠品の押収等)

3.刑事手続きの開始 (検察官による起訴判断)

4.裁判所による判断 (行為者の故意・過失の認定)

5.判決(両罰規定の適用) (A)従業員個人:懲役刑及び/又は罰金刑 (B)法人(会社):罰金刑(第117条に基づく)

6.付随的な影響 (行政処分、AEO資格喪失、社会的信用の失墜)

8 弁護士へのご相談をご希望の方へ

関税法上の両罰規定が問題となる事案は、単なる刑事事件としての側面だけでなく、企業の存続に関わる重大な経営リスクとしての側面を持っています。特に、税関から調査を受けている段階での初動対応が、その後の結果を大きく左右します

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、輸出・輸入や通関上のトラブルに関するご相談を幅広くお受けしております。弁護士としての高度な法的防衛能力と、通関士としての実務的な知見を掛け合わせることで、貴社に最適な解決策を提示することが可能です

弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。具体的には以下のようなサポートを提供いたします

①税関調査への立ち会い、及び法的な主張の整理

②従業員の行為が法人の業務範囲内であったかどうかの精緻な法的検討

③法人としての「相当の注意及び監督」を証明するための証拠収集

④事後調査や刑事手続きを見据えた、最適な修正申告や自首の判断に関するアドバイス

⑤再発防止策としてのコンプライアンス体制の構築支援

輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。法律と実務の両面から、貴社のビジネスを全力でバックアップいたします

9 まとめ

関税法第117条の両罰規定は、企業の管理責任を厳しく問うものです。たとえ一部の従業員による独断であったとしても、それが業務に関連するものである限り、法人としての責任を免れることは容易ではありません

しかし、日頃から透明性の高い通関体制を整え、万が一の事態に備えて専門家とのネットワークを構築しておくことで、そのリスクを最小限に抑えることは可能です。この記事で紹介した条文や規定の重要性を、今一度社内で共有していただくことをお勧めいたします

適正な通関実務の維持は、一朝一夕には成し遂げられません。日々の積み重ねが、最終的に企業を守る盾となります。もし現状の体制に不安を感じたり、具体的なトラブルに直面したりした際には、迷わず専門家の門を叩いてください

法人としての責任を重く受け止めつつ、より強固な法令遵守体制を築いていくことが、グローバル社会で信頼される企業であり続けるための唯一の道といえます

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

賦課課税方式による関税の徴収と注意点

2021-09-13

1 はじめに―相談事例

まずは、輸入実務において賦課課税方式が問題となる具体的な場面を想定してみましょう。

【相談者】

輸入雑貨販売業 I社 代表者

【相談内容】

「当社では、主に海外のアンティーク家具や雑貨を輸入して販売しております。これまでは通関業者を通じて申告納税方式で関税を支払ってきましたが、今回、海外の知人から個人的に譲り受けた高額な工芸品を、国際郵便(EMS)を利用して日本へ送ってもらいました。

すると、後日、郵便局から『関税等の支払いが必要である』という連絡があり、これまでの輸入手続きとは全く異なる流れで税額が決定されていることに驚きました。自分たちで計算して申告するのではなく、税関側が税額を一方的に決めて通知してくる仕組みがあるのでしょうか。

また、その通知には『賦課決定通知』や『納税の告知』といった言葉が並んでおり、それぞれの法的意味や、万が一税額に納得がいかない場合の対応方法についても知っておきたいと考えております」

このように、ビジネス目的の輸入であっても、郵送物の形態をとる場合や特定の貨物については、通常の「申告納税方式」ではなく「賦課課税方式」が適用されることがあります。以下、関税法に基づく詳細な仕組みを解説いたします。

2 賦課課税方式の原則と対象範囲

関税の確定方式には、大きく分けて「申告納税方式」と「賦課課税方式」の二種類が存在します。その根拠となるのは、関税法第6条の2第1項です。

関税法第6条の2第1項第2号(賦課課税方式)

「賦課課税方式 税関長の処分により、納付すべき税額が確定する方式をいう」

日本の関税制度では、輸入者が自ら税額を計算する申告納税方式が原則ですが、以下の貨物については、税務行政の効率化や客観的な判断の必要性から、例外的に税関長が税額を決定する賦課課税方式が採用されています(関税法第6条の2第1項第2号イからハ)。

賦課課税方式が適用される主な貨物

・入国者が携帯して持ち込む別送品や携帯品

・国際郵便物(一定の金額以下のもの等)

・関税法第6条の2各号に掲げる一定の事実が発生したことにより直ちに徴収される貨物

・過少申告加算税、無申告加算税、重加算税などの附帯税

輸入ビジネスを営む方にとって特に身近なのは、郵便物や附帯税に関する規定でしょう。

3 賦課決定の通知手続き

税関長が賦課課税方式によって関税を課そうとする場合、まず「いくらの税金を課すか」を決定し、それを納税者に伝えなければなりません。これを「賦課決定の通知」と呼びます。

(1)賦課決定通知書の送達

関税法第8条第4項前段には、以下の規定があります。

「税関長は、賦課課税方式が適用される貨物について関税を賦課しようとするときは、納税義務者に対し、その決定をした課税標準及び納付すべき税額その他所要の事項を記載した賦課決定通知書を送達しなければならない」

税関は、輸入された貨物を調査し、その課税標準(価格や数量)と適用される税率を決定した上で、この通知書を発行します。これにより、納税義務の内容が法的に確定することになります。

(2)通知書の送達を要しない特例

ただし、すべてのケースで通知書の送達が必要なわけではありません。迅速な処理が求められる場面では、手続きが簡素化されています。

関税法第8条第4項ただし書きでは、以下の例外が認められています。

「ただし、郵便物に係る関税を賦課する場合その他政令で定める場合には、当該通知書の送達を要しない」

例えば、国際郵便物については、関税法第77条の規定に基づき、郵便事業体を通じて税額を知らせる仕組みがあるため、別途の通知書送達が免除される場合があります。

4 納税の告知手続き

賦課決定によって税額が確定した後、次に必要となるのが「期限までに税金を納めてください」という催告です。これを「納税の告知」と呼びます。

(1)納税告知書の役割

関税法第9条の3第1項には、以下の規定があります。

「税関長は、賦課課税方式による関税で、次に掲げる関税以外のものを徴収しようとするときは、納税の告知をしなければならない」

この納税告知書には、納付すべき税額、納付期限、納付場所が記載されており、納税者はこれに基づいて納付手続きを行うことになります。実務上、賦課決定通知書と同時に、あるいは一つの書面でこれらが示されることもあります。

(2)納税告知の省略ができるケース

賦課決定と同様に、納税の告知についても例外が存在します。

具体的には、入国者の携帯品についてその場ですぐに現金で納付する場合などがこれに当たります。

5 賦課課税方式の主な対象となる貨物と手続き

賦課課税方式が具体的にどのように運用されているかを、主要な例を挙げて整理します。

(1)郵便物(関税法第77条関連)

国際郵便によって輸入される貨物については、賦課課税方式が原則となります。

関税法第77条第1項(郵便物の輸出入の簡易手続)に基づき、郵便物の受取人は原則として輸入申告を行う必要がありません。その代わりに、税関が内容品を確認し、税額を算出します。

算出された税額は、郵便物の交付時に「納付書」として受取人に示されるか、あるいは郵便物の表面に税額が記載されたラベルを貼付するなどの方法で告知されます。

(2)加算税などの附帯税

輸入申告に誤りがあり、後日追加で関税を納めることになった場合、本税(関税)自体は申告納税方式ですが、ペナルティである加算税(過少申告加算税など)は、税関長が計算して賦課する「賦課課税方式」となります。

この場合、税関長は調査結果に基づいて加算税額を決定し、輸入者に対して「賦課決定通知書」を送達します。

6 申告納税方式と賦課課税方式の比較

輸入実務における二つの方式の違いを以下の表にまとめました。

【関税の確定方式比較一覧表】

項目 申告納税方式 賦課課税方式
原則となる対象 一般的な商業輸入貨物 郵便物、携帯品、附帯税等
税額確定の主体 納税義務者(輸入者) 税関長(行政処分)
手続きの流れ 納税申告→許可→納付 税関の調査→賦課決定→告知→納付
根拠条文 関税法第6条の2第1項第1号 関税法第6条の2第1項第2号
訂正の手段 修正申告、更正の請求 不服申し立て(審査請求等)
特徴 輸入者の自主性を尊重 税関が主導して正確性を確保

7 不服申し立てと権利救済

賦課課税方式において税関長からなされた決定や告知の内容に納得がいかない場合、輸入者は法的な救済を求めることができます。

(1)審査請求

税関長が行った賦課決定等の処分に不服があるときは、行政不服審査法に基づき、財務大臣に対して審査請求を行うことが可能です。これは、処分の取り消しや変更を求める手続きとなります。

(2)処分の理由付記

税関長が賦課決定通知書を送達する際には、なぜそのような税額になったのかという「理由」を付記しなければなりません。輸入者はこの理由を精査し、自身の法的解釈と異なる場合には、専門家を通じて適切な反論を検討することになります。

8 実務上の留意点とトラブル回避策

(1)郵便物と商業輸入の境界線

郵便物であっても、その課税価格の合計額が20万円を超える場合などには、賦課課税方式ではなく、通常の申告納税方式による輸入申告が必要となります。この境界線を誤ると、通関手続きが停滞し、納期に影響を及ぼす恐れがあるため注意が必要です。

(2)附帯税への対応

事後調査等で加算税の賦課決定通知を受けた場合、本税の更正内容に不服がなくても、加算税の算出根拠や過失の有無について争う余地がある場合があります。賦課決定の内容を鵜呑みにせず、内容を正確に把握することが重要です。

(3)帳簿保存との関係

賦課課税方式で税額が決定された貨物であっても、それがビジネス上の取引であれば、関税法第94条に基づく帳簿保存義務や書類保存義務が免除されるわけではありません。後の税関調査に備え、関連するインボイスや通知書は適切に管理しておく必要があります。

9 弁護士へのご相談をご希望の方へ

関税の賦課決定や納税告知に関する手続きは、関税法だけでなく、行政手続法や行政不服審査法といった公法上の知識が不可欠となる分野です。特に、税関による一方的な処分(賦課決定)が行われる場面では、輸入者と税関の見解が鋭く対立することも珍しくありません。

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国内唯一の国家資格である通関士資格を有しており、法律と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。弁護士に相談をすべきか迷われている段階でも、まずはお気軽にお話しください。

以下のようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

・郵便物として輸入した商品について、納得のいかない税額が賦課された場合

・税関長からの賦課決定通知書に記載された理由が不明確であり、精査したい場合

・加算税の賦課決定を受け、その不当性を主張して審査請求を行いたい場合

・申告納税方式と賦課課税方式の使い分けについて、法的なアドバイスが欲しい場合

専門的な知識を持つ弁護士が介入することで、税関の処分が適正な手続きと法的根拠に基づいているかを厳密にチェックし、貴社の正当な権利を守るための一助となることができます。

輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。経験豊富な弁護士が、貴社のビジネスを法的な側面から全力でバックアップいたします。

10 まとめ

賦課課税方式は、税関長が税額を決定するという、輸入者にとっては受け身の手続きとなります。しかし、その根底には関税法第8条や第9条の3といった厳格な法的ルールが存在しており、納税者の権利は守られています。

賦課決定の通知や納税の告知といったステップを正しく理解し、万が一の際には適切な権利救済手段を講じることができる体制を整えておくことが、安定した輸入ビジネスを継続する上でのリスク管理となります。

本記事の解説が、読者の皆様の輸出入実務における一助となれば幸いです。複雑な通関制度や行政処分に直面した際は、一人で悩まず、専門家への相談を検討することをお勧めいたします。

賦課課税方式に関する重要ポイントの再確認

・税関長が税額を決定する方式であり、郵便物等に適用される

・関税法第8条に基づく賦課決定通知により税額が確定する

・関税法第9条の3に基づく納税告知により納付を催告される

・郵便物等の一定の貨物には通知の省略等の特例がある

・不服がある場合には、審査請求などの法的な対抗手段がある

適正な通関実務を通じて、透明性の高いグローバルビジネスを実現していきましょう

【お問合せは、こちらから】

・・・・・・・・・・・

執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

税関長による関税額の訂正手続ー更正と決定

2021-09-11

1 はじめに―相談事例

輸入実務において、自ら申告した内容に誤りがあることに気づくこともあれば、税関からの指摘によって初めて不備を認識することもあります。まずは、税関による処分の対象となり得る具体的な相談事例を想定してみましょう。

【相談者】

精密機器輸入商社 G社 物流管理担当者

【相談内容】

「当社では半年前から欧州より特殊なセンサーを輸入しております。輸入申告の際は、メーカーから提供されたインボイス価格に基づいて納税申告を行い、許可を得て国内に引き取りました。 ところが、先日実施された税関の事後調査において、当社が支払っているライセンス料の一部が関税定率法上の加算要素に該当するとの指摘を受けました。税関からは『本来納めるべき関税額が不足しているため、更正の手続きを行う』と告げられています。 これまで自主的な修正申告を行う機会はありましたが、税関側が一方的に税額を変更する更正とはどのような法的性質を持つのでしょうか。また、もし全く申告をしていなかった場合に下される決定との違いについても詳しく教えてください。あわせて、加算税などのペナルティについても知っておきたいと考えております」

このような状況は、事後調査の現場で頻繁に見られます。輸入者が自発的に訂正を行う修正申告とは異なり、税関長がその権限に基づいて行う更正や決定は、強力な行政処分としての側面を持ちます。以下、関税法に基づく詳細な仕組みを解説いたします。

2 申告納税方式と税関長の賦課権

現在の日本の通関制度は、納税義務者が自らの責任において税額を計算し申告する「申告納税方式」を基本としております。

関税法第6条の2第1項第1号(税額の確定の方式)

「申告納税方式 納税義務者がする納税申告により、納付すべき税額が確定する方式をいう」

しかし、この申告内容が客観的な事実と異なっている場合、適正な徴収を確保するために税関長にはその内容を正す権限が与えられています。具体的には更正と決定という二つの手段によって行使されます。

3 更正の手続き 納税申告がある場合の訂正

更正とは、既に行われた納税申告に対して、税関長がその内容を調査し、誤りがある場合に正しい税額へ変更する処分を指します。

(1)更正の法的根拠

関税法第7条の16第1項(更正)には、以下の規定があります。

「税関長は、納税申告があつた場合において、その申告に係る課税標準又は関税額の計算が関税に関する法律の規定に従つていなかつたとき、その他その計算が実当でなかつたと認めるときは、その調査により、当該申告に係る課税標準又は関税額を更正する」

(2)増額更正と減額更正

更正には、その結果によって二つの種類があります。

①増額更正:納付すべき税額を増加させる更正。追加の納税義務が発生する。

②減額更正:納付すべき税額を減少させる更正。過大に納めた税金が還付される。

(3)更正の通知

税関長が更正を行ったときは、関税法第7条の16第4項に基づき、更正通知書を納税義務者に送達しなければなりません。この通知書には、更正の理由を付記することが義務付けられており、輸入者はその法的根拠を確認することができます。

4 決定の手続き―納税申告がない場合の確定

決定とは、納税申告が必要であるにもかかわらず、輸入時までに申告がなされなかった場合に、税関長が自らの調査に基づいて税額を確定させる処分です。

(1)決定の法的根拠

関税法第7条の16第2項(決定)には、以下の規定があります。

「税関長は、納税申告が必要とされている貨物についてその輸入時までに納税申告がないときは、その調査により、当該貨物に係る課税標準及び関税額を決定する」

(2)決定が行われるケース

主な事例としては、密輸入の摘発時や、保税地域外での無許可消費が発覚した場合などが挙げられます。本来あるべき申告の手続きを怠ったことに対する強力な行政措置といえます。

5 更正・決定の期間制限(除斥期間)

税関長による賦課権の行使には、一定の期間制限が設けられています。これは法的安定性を確保するための仕組みです。

関税法第14条(関税の更正、決定等の期間制限)

「関税の更正、決定又は再更正は、その関税の法定納付期限等から5年を経過したときは、することができない」

ただし、偽りその他不正の行為によって関税を免れた場合などは、この期間が7年に延長されます。したがって、輸入許可から数年が経過していても、事後調査等によって過去の過誤が遡及して是正される可能性がある点に注意が必要です。

6 更正・決定に伴う加算税(ペナルティ)

税関長によって増額更正や決定が行われた場合、本来の関税額に加えて「加算税」が課されることになります。これは適正な申告を促すための行政罰的な性格を持ちます。

(1)過少申告加算税

申告はあったものの、その額が不足していた場合に課されます。原則として不足税額の10パーセント(一定額を超える部分は15パーセント)が加算されます

(2)無申告加算税

決定が行われた場合、つまり申告がなかった場合に課されます。原則として税額の15パーセント(一定額を超える部分は20パーセント)となります

(3)重加算税

事実を隠蔽または仮装したと認められる場合に、過少申告加算税や無申告加算税に代えて課される最も重いペナルティです。税率は35パーセントから40パーセントと極めて高額になります

7 実務における対応比較表

輸入者が行う訂正手続きと、税関長が行う訂正手続きの違いを整理いたしました。

【関税額の訂正手続比較一覧表】

|項目|修正申告|更正の請求|更正(増額・減額)|決定|

|主体|納税義務者|納税義務者|税関長|税関長|

|時期|税額不足時|税額過多時|調査による誤認時|無申告時|

|性質|自発的な訂正|還付の要請|行政処分|行政処分|

|不服申立|原則不可(※)|可能|可能|可能|

※修正申告は自発的行為であるため、その内容について不服を申し立てることは原則としてできません

8 税関の処分に対する不服申し立て

税関長による更正や決定の内容に納得がいかない場合、輸入者は法的な救済を求めることができます。

(1)再調査の請求または審査請求

処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に、税関長に対して「再調査の請求」を行うか、あるいは財務大臣に対して「審査請求」を行うことができます。これは行政不服審査法に基づく手続きです。

(2)取消訴訟

審査請求に対する裁決を経た後、なお納得できない場合には、裁判所に対して処分の取り消しを求める訴訟を提起することが可能です。

9 弁護士へのご相談をご希望の方へ

税関長による更正や決定の通知が届いた場合、それは貴社の通関実務に重大な法的瑕疵があることを意味します。単に不足税額を支払えば済むという問題ではなく、なぜそのような事態に至ったのかを精査し、将来的なコンプライアンス体制を再構築しなければなりません。

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を保有しております。弁護士としての高度な法的知識と、通関士としての実務的な視点を融合させ、税関の処分に対する適切なアドバイスを提供することが可能です。

「税関の指摘内容が正しいのか判断がつかない」 「重加算税を課されたが、隠蔽の意図はなかったことを主張したい」 「事後調査の段階から専門家のサポートを受けたい」

このような不安をお持ちの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。早い段階で専門家が介入することで、税関との法的な論点整理を円滑に進め、過度なペナルティを回避できる可能性が高まります。

輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。経験豊富な弁護士が、貴社の正当な権利を守るために全力を尽くします。

10 まとめ

更正と決定は、適正な関税の徴収を実現するために税関長に与えられた重要な法的権限です。申告納税方式をとる以上、まずは輸入者自身が正しい申告を行うことが大前提ですが、万が一の誤りに対しては更正という是正措置が用意されています。

一方で、これらの処分を受けることは、加算税の負担や企業イメージへの影響など、小さくないリスクを伴います。関税法第7条の16をはじめとする関係条文を正しく理解し、日頃から正確な納税申告を心がけることが、円滑な貿易ビジネスを継続するための要諦といえます。

本記事の解説が、読者の皆様の輸出入実務における法的理解を深める一助となれば幸いです。複雑な通関トラブルに直面した際は、一人で悩まずに専門家を活用することをお勧めいたします。

更正・決定に関する重要ポイントの再確認

・更正は既にある申告の誤りを税関長が正す処分 ・決定は申告がない場合に税関長が税額を定める処分 ・更正には増額と減額の二種類が存在する ・処分に不服がある場合は、法的な不服申し立てが可能である ・期間制限は原則5年、不正時は7年となる ・加算税などの附帯税リスクに十分注意を払う必要がある

適正な税務処理を通じて、企業の安定した成長を実現していきましょう

【お問合せは、こちらから】

・・・・・・・・・・・

執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

関税の課税標準に関する実務的解説

2021-09-07

1 はじめに―相談事例

輸出入ビジネスを展開する企業にとって、コスト管理の根幹を成すのが関税の計算です。まずは、課税標準の理解が不足していたために混乱が生じた、ある企業の相談事例を見てみましょう。

【相談者】

輸入雑貨販売業 H社 物流課担当者

【相談内容】

「当社ではこれまで、海外から衣類や鞄を主に輸入しており、その際は仕入書(インボイス)の価格に基づいて関税が計算されていました。ところが、このたび新事業として海外のワイナリーからワインを、また東南アジアから砂糖を輸入することになりました。

税関への申告準備を進めていたところ、ワインは価格ではなく『リットル数』に基づいて税金がかかり、砂糖についても重量に応じた計算が必要だと知り、驚いています。これまでのように『価格が高いほど税金が高い』という認識だけでは不十分なのでしょうか。

商品によってなぜ計算方法が異なるのか、また、どのような法的ルールに基づいて課税の基礎が決まるのか、詳しく教えてください。あわせて、価格と数量の両方が関係するような複雑なケースについても知っておきたいと考えております」

このような疑問は、取り扱う品目が多岐にわたるほど頻繁に生じるものです。関税の計算には、貨物の「価格」を基礎とするものだけでなく、「数量」を基礎とするものなど、複数の方式が存在します。これらを総称して課税標準と呼びます。本記事では、輸出入ビジネスに不可欠な課税標準の仕組みを、法令の条文を交えて詳しく解説いたします。

2 課税標準の定義と法的根拠

関税を課すための計算の基礎となるものを、法律上「課税標準」と呼びます。この定義については、関税定率法第3条において以下のように規定されています。

関税定率法第3条(課税標準)

「関税は、輸入貨物の価格又は数量を課税標準として課する」

この条文からもわかる通り、日本の関税制度は、貨物の「価値(価格)」に着目する方式と、「量(数量)」に着目する方式の二本柱で成り立っています。

また、関税法第3条においても、関税の徴収に関する基本原則が定められており、課税標準に対して所定の税率を乗じることで、最終的な納税額が決定される仕組みとなっております。

実務上、課税標準は以下の4つの類型に分類されます。

①従価税

②従量税

③従価従量税(混合税)

④選択税

それぞれの詳細と実務上の留意点について、次節以降で解説します。

3 従価税品-価格を基礎とする方式

日本の実行関税率表に掲げられている貨物の大部分は、この従価税品に該当します。

(1)従価税の仕組み

従価税品とは、輸入貨物の「価格」を課税標準として関税を課す貨物のことです。価格が高ければ税額も高くなり、価格が下がれば税額も下がるという、市場価格に連動した合理的な方式といえます。

(2)課税価格の決定(関税評価)

従価税において最も重要かつ複雑なのが、「どの価格を課税標準とするか」という点です。これを「課税価格」と呼びます。その決定原則は、関税定率法第4条に詳細に規定されています。

「輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされたときの価格(以下「取引価格」という。)に、その輸入港に到着するまでの運賃、保険料その他当該輸入貨物の輸入取引に関し買手により負担される費用を加算した価格とする」

実務上のポイントは、仕入書価格(FOB価格等)そのものではなく、日本に到着するまでの運賃や保険料を含めた「CIF価格」が課税標準となる点です。また、買手が無償で提供した原材料の費用や、権利使用料(ロイヤリティ)なども、一定の条件のもとで加算調整が必要となる場合があります。このプロセスを「関税評価」と呼び、税関事後調査において最も厳格にチェックされるポイントの一つとなります。

4 従量税品-数量を基礎とする方式

一方で、価格ではなく物理的な量に着目して課税するのが従量税です。

(1)従量税の仕組み

従量税品とは、輸入貨物の個数、容積(リットル)、重量(キログラム)などの「数量」を課税標準として関税を課す貨物です。

(2)主な対象貨物と目的

従量税が適用される代表的な物品には、以下のものがあります。

・酒類(リットル当たりで課税)

・石油、石炭(キロリットルやトン当たりで課税)

・一部の穀物や砂糖(重量当たりで課税)

従量税のメリットは、税額の計算が極めて簡便である点にあります。価格の変動に左右されないため、政府にとっては安定した税収を確保しやすく、また輸入者にとっても、あらかじめ数量が確定していればコスト計算が容易になります。ただし、物価が上昇した場合には相対的な税負担が軽くなり、逆にデフレ下では税負担が重くなるという側面も持っております。

5 従価従量税品(混合税)-複合的な計算方式

従価従量税品とは、一つの貨物に対して「価格」と「数量」の両方を課税標準として、それぞれの税額を合計して課税する方式です。

(1)算出方法

この方式では、従価税率によって算出された額と、従量税率によって算出された額を足し合わせたものが最終的な関税額となります。

(2)採用の背景

主に、国内産業の保護を目的として、特定の農産品や繊維製品などに適用されることがあります。価格が下がっても従量税部分で最低限の税額を確保しつつ、高価な物品が入ってきた場合には従価税部分でしっかりと徴収するという、二重の網をかける仕組みとなっております。

6 従価従量選択税品(選択税)-有利な方を選択する方式

選択税とは、同一の貨物に対して「従価税」と「従量税」の両方の税率が設定されており、その結果を比較して、いずれか一方を適用する方式です。

(1)適用のルール

一般的には、「税額が高い方」を適用する形式が多く見られます。例えば、衣類(一部の靴など)や玉ねぎ等で見られる形式で、以下のような基準が設定されます。

「価格の10%、または1キログラムにつき100円のうち、いずれか高い方の税額」

(2)実務上の意義

低価格の物品が大量に輸入される際に、従量税(最低税額の保証)を適用することで国内生産者を保護する役割を果たします。逆に、高級品が輸入される際には、従価税によって価格に見合った適切な税を徴収することができます。

7 課税標準の分類表

各類型の特徴と計算式を以下の表にまとめました。ワードデータ等にそのままコピーして、社内マニュアル等にご活用いただける形式です。

【関税の課税標準と計算方式の分類】

税率の種類 課税標準(計算の基礎) 関税額の計算式 主な適用物品の例
従価税 貨物の価格(課税価格) 課税価格 × 従価税率 多くの工業製品、衣類、鞄等
従量税 貨物の数量(重量、容積等) 貨物の数量 × 従量税率 酒類、石油、砂糖等
従価従量税 価格及び数量の双方 (価格×税率)+(数量×税率) 一部の繊維製品等
選択税 価格または数量のいずれか (価格×税率)と(数量×税率)の比較 毛皮のコート、一部の靴、玉ねぎ等

8 課税標準に関連する実務上の注意点

(1)単位の正確な把握

従量税や選択税を計算する際の「数量」は、日本の計量法に基づく単位である必要があります。海外の送り状で「ポンド」や「ガロン」といった単位が使用されている場合は、正確にキログラムやリットルに換算して申告しなければなりません。

(2)申告価格の妥当性

従価税においては、価格そのものが課税標準となるため、税関は価格が過小に申告されていないかを厳しく審査します。特に、本邦の買手と外国の売手との間に特殊関係(親子会社など)がある場合、その価格が取引価格として認められるかどうかが論点となります。

(3)実行関税率表の確認

どの貨物がどの課税標準を採用しているかは、財務省が公表している「実行関税率表」によって品目ごとに細かく定められています。品目分類(HSコード)を一つ間違えるだけで、課税標準の計算方式そのものが変わり、税額に多大な影響を及ぼすリスクがあるため注意が必要です。

9 弁護士へのご相談をご希望の方へ

課税標準の決定や関税評価の問題は、単なる算数の問題ではなく、法律の解釈と事実認定が複雑に絡み合う法的な課題です。特に、以下のような場合には専門家への相談が極めて有効です。

・関税評価において、加算すべき費用(ロイヤリティや無償提供資材等)の判断が難しい場合

・税関事後調査において、過去の課税標準の算定ミスを指摘され、多額の追徴課税が見込まれる場合

・新商品のHSコード分類が不明確で、従価税か従量税かの判断がつかない場合

・自由貿易協定(EPA)を活用する際、原産地規則と課税標準の整合性を確認したい場合

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国内唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出・輸入や通関上のトラブルに関するご相談を幅広くお受けしております。弁護士として法律の専門家であると同時に、通関実務の現場を知る専門家として、多角的なアドバイスを提供することが可能です。

弁護士に相談をすべきかお悩みの方もいらっしゃるものと存じますが、早い段階でご相談いただくことで、将来的な法的リスクを最小限に抑え、適切な節税やコンプライアンス体制の構築につなげることができます。

輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。貴社のビジネスが適正な納税のもとで健やかに成長できるよう、全力を尽くしてサポートさせていただきます。

10 まとめ

関税の課税標準は、関税定率法第3条を根拠とし、貨物の価格や数量を基礎として決定されます。従価税、従量税、従価従量税、そして選択税という4つの類型を正しく理解することは、輸入コストの予測精度を高め、不必要なトラブルを回避するための第一歩です。

特に、主流である従価税における「課税価格の決定(関税定率法第4条)」や、国内産業保護の観点から設定されている「選択税」の仕組みなどは、実務担当者として押さえておくべき重要なポイントといえます。

本記事の解説が、読者の皆様の輸出入実務における一助となれば幸いです。複雑な税率設定や法解釈に直面した際は、専門家の知見を積極的に活用し、盤石な事業運営を目指してください。

課税標準に関する重要事項の再確認

・課税標準とは関税計算の基礎となる価格や数量のこと

・関税定率法第3条がその基本的な根拠規定

・日本の関税の多くは価格を基礎とする従価税方式

・酒類や石油などは数量を基礎とする従量税方式

・国内産業保護のための従価従量税や選択税も存在

・正しいHSコードの選定が適切な課税標準の把握に直結

適正な申告は、円滑な通関と企業の信頼維持に欠かせない要素であることを、改めて強調させていただきます

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

関税の納税義務者に関する法的解釈

2021-09-03

1 はじめに―相談事例

国際取引において、貨物が誰の所有物であり、誰がその輸入に伴う公租公課を負担すべきかという問題は、契約上の義務だけでなく、法的な納税義務の観点からも極めて重要です。まずは、納税義務者の特定が問題となる具体的な相談事例を想定してみましょう。

【相談内容】

「当社はドイツのメーカーから産業用ロボットを輸入する契約を締結し、仕入書(インボイス)上の荷受人として記載されていました。しかし、貨物が日本に到着し、保税地域に搬入された段階で、急遽、国内の別の取引先であるF社へ当該貨物を転売することになりました。

F社からは『自社で通関手続きを行い、国内に引き取りたい』と言われています。この場合、税関への輸入申告において、納税義務者は当初の荷受人である当社(E社)になるのでしょうか、それとも転売を受けたF社になるのでしょうか。

また、通関手続きを依頼している通関業者から『場合によっては通関業者が納税義務を負うこともある』と説明を受けたのですが、どのような場合にそのような事態が起こり得るのでしょうか。ビジネスのコスト計算に関わるため、正確なルールを知りたいと考えております」

このようなケースは、商流が複雑化する現代の貿易実務において珍しくありません。関税の納税義務者が誰であるかを正確に把握していないと、予期せぬ追徴課税や加算税のリスクを招く恐れがあります。以下、関税法に基づくルールを解説いたします。

2 関税の納税義務者に関する原則的ルール

関税を納めるべき義務を負う者(納税義務者)については、関税法第6条に基本的な規定があります。この条文を理解することがすべての基本となります。

「関税は、この法律及び関税定率法その他関税に関する法律に別段の規定がある場合を除き、貨物を輸入する者が納める義務を負う」

ここでいう「貨物を輸入する者」とは、単に物理的に貨物を運び込む者を指すのではなく、法的な意味での輸入主体を指します。実務上、この「輸入する者」が誰であるかを判断する基準は以下の通り整理されています。

(1)原則としての荷受人

通常の輸入手続きにおいて、税関に提出する仕入書(インボイス)に記載された荷受人(コンサイニー)が、原則として納税義務者となります。これは、荷受人がその貨物の実質的な所有権を有し、輸入によって経済的利益を得る主体であると推定されるためです。

(2)保税地域等での転売がある場合

相談事例のように、貨物が日本に到着した後、輸入許可を受ける前に転売が行われた場合の取り扱いについては、関税法基本通達6-1(輸入する者の意義)に指針が示されています。

同通達によれば、輸入申告の際において、その貨物を保税地域から引き取る権利を有する者が「輸入する者」に該当します。したがって、輸入許可前に適法に転売が行われ、貨物の引き取り権限が移転した場合には、その転得者(購入者)が納税義務者となります。

(3)輸入申告の代理と納税義務

輸入申告を通関業者等に委託した場合であっても、納税義務を負うのはあくまで委任元である輸入者本人です。代理人はあくまで手続きを代行する立場であり、特段の事情がない限り納税の主体にはなりません。

以下に、原則的な納税義務者の決定プロセスをまとめた図表を掲載いたします。

【取引態様別の原則的納税義務者】

取引の態様 納税義務者となる者 判断の根拠
通常の直接輸入 仕入書(インボイス)記載の荷受人 貨物の実質的輸入主体
本邦到着後の転売 貨物の転得者(買い手) 貨物を引き取る権利の所在
委託加工貿易(逆委託) 加工品の輸入者 国内へ引き取る主体
郵便物による輸入 郵便物の受取人 貨物の最終帰属先

3 例外的に特定の者が納税義務者となるケース

関税法第6条の但書きにある「別段の規定がある場合」には、輸入者以外の者が納税義務を負うことになります。これは、貨物の管理状態や特定の事実発生に基づいて、徴収の確実性を期するための規定です。

(1)保税地域からの亡失等の場合

貨物が保税地域にある間に紛失したり、許可を受けずに廃棄されたりした場合の取り扱いです。

関税法第45条(許可等を受けた貨物の亡失等の場合の関税の徴収)

「保税地域にある外国貨物(中略)が亡失し、又は滅却されたときは、当該貨物が亡失し、又は滅却された時における当該貨物の保管人から、その関税を直ちに徴収する」

この場合、輸入者ではなく、貨物を管理していた保税蔵置場の承認者や管理人が納税義務を負うことになります。ただし、天災その他やむを得ない事由による滅却であると税関長が認めた場合は除かれます。

(2)通関業者が納税義務を負う場合

実務上、非常に強力な規定として知られているのが、通関業者の補完的な納税義務です。

関税法第13条の3(通関業者の納税義務)

「輸入の許可を受けて引き取られた貨物について、納付された関税に不足額があつた場合において、当該許可若しくは承認の際当該貨物の輸入者とされた者の住所及び居所が明らかでなく、又はその者が当該貨物の輸入者でないことを申し立てた場合であつて、かつ、当該貨物の輸入に際してその通関業務を取り扱つた通関業者が、その通関業務の委託をした者を明らかにすることができなかつたときは、当該通関業者は、当該貨物の輸入者と連帯して当該関税を納める義務を負う。」

通関業者にとっては非常に重いリスクとなるため、実務上の確認作業が厳格に行われるべき理由の一つとなっています。

(3)郵便物に関する特例

郵便物については、通常の輸入申告とは異なる手続き(賦課課税方式等)がとられることがあります。

関税法第77条に基づき、郵便物についてはその受取人が納税義務者となります。また、日本郵便株式会社が税関長に代わって関税を徴収し、納付する仕組みとなっています。

4 納税義務者が拡大・変更される特殊な状況

(1)過大な払戻し等を受けた場合

本来受けるべきでない関税の払い戻しや還付を受けた場合、その利益を享受した者が、返還すべき関税の納税義務者となります。これは不当利得の返還に近い性格を持ちますが、関税法上の義務として規定されています。

(2)他法令違反等による没収に代わる追徴金

貨物が没収されるべき状況において、既に貨物が消費・転売されて没収不能である場合、その貨物の所有者等に対して没収に代わる追徴金が課されることがあります。これも広い意味での納税義務の変形と言えます。

5 実務上の留意点とトラブル回避策

(1)インボイス記載の正確性

税関はまずインボイスを見て納税義務者を判断します。BtoBの取引において、支払者と荷受人が異なる場合や、代理購入の形式をとる場合は、どちらが関税を負担する主体(輸入者)であるかを明確にし、通関業者に事前に正しく伝える必要があります。

(2)DDP(仕向地持ち込み渡し・関税込み)契約の落とし穴

インコタームズでDDP条件(輸出者が関税を負担する契約)を選択している場合でも、日本の関税法上の納税義務者は、依然として国内の荷受人(輸入者)となるのが原則です。

輸出者が関税を支払わない場合、税関は国内の輸入者に対して納税を督促します。「契約で輸出者が払うことになっている」という主張は、税関に対する対抗要件にはなりません。このため、非居住者である輸出者が税関事務管理人を選任して自ら納税するスキームをとるか、あるいは輸入者が一旦立て替えて後に清算する等の実務的な手当てが必要です。

(3)転売時の権利移転時期の明確化

相談事例のように、保税地域内で転売を行う場合は、売買契約書において「どの時点で貨物の引き取り権限が移転するか」を明文化しておくべきです。輸入申告の直前に権利が移転したことを証明できる書類(譲渡通知書等)を用意しておくことで、スムーズに納税義務者の変更が認められます。

6 図解による納税義務者の体系

以下に、納税義務者の区分を整理した図を作成いたしました。

【関税の納税義務者体系図】

1.原則:貨物を輸入する者(関税法第6条)

・通常時:インボイス記載の荷受人

・転売時:貨物の引き取り権限を有する転得者

2.例外:法令により特定された者

・保税地域での亡失等:保税蔵置場の承認者等(関税法第45条)

・郵便物:郵便物の受取人(関税法第76条)

・不正加担時:通関業者(関税法第13条)

3.特殊ケース

・過大還付:還付を受けた本人

・特例申告:特例輸入者(あらかじめ承認を受けた者)

7 弁護士へのご相談をご希望の方へ

関税の納税義務者の特定は、単に誰が税金を払うかという問題に留まらず、その後の税関事後調査において誰が調査対象となり、誰が帳簿保存義務(関税法第94条)を負うかという問題に直結します。

もし、納税義務者の判断を誤ったまま申告を続けていた場合、過少申告加算税や無申告加算税の対象となるだけでなく、悪質な場合は重加算税や刑事罰(関税ほ脱罪)の対象となるリスクも否定できません。

当事務所は、代表弁護士が通関士資格を保有しており、輸出入に関する法的な解釈と、通関実務の現場感覚を融合させたアドバイスを提供できる国内でも稀有な事務所です。

以下のような不安をお持ちの場合は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

・複雑な商流(商社、メーカー、エンドユーザー等が介在)において、誰を輸入者として申告すべきか判断に迷っている場合

・DDP契約において、海外取引先との関税負担の調整や税関への説明方法に苦慮している場合

・税関から納税義務者の誤りを指摘され、修正申告や過少申告加算税の対応が必要になった場合

・グループ会社間での在庫移動や保税転売に伴う適切な納税フローを構築したい場合

弁護士にご相談いただくことで、関税法上の解釈を確定させ、税関との交渉を有利に進めるための論理構成を構築することが可能です。また、コンプライアンスの観点から自社の輸入体制を総点検することは、企業の社会的信用を守ることにも繋がります。

「通関業者に任せているから大丈夫」という過信が、予期せぬトラブルを招くこともあります。輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。経験豊富な弁護士が、貴社のビジネスの安定を法的な側面から全力でサポートいたします。

8 まとめ

関税の納税義務者は、原則として「貨物を輸入する者(荷受人や引き取り権限者)」です。しかし、関税法には亡失時の管理人の責任や通関業者の責任など、実務上のリスクを反映した多くの例外規定が存在します。

関税法第6条、第13条、第45条といった条文を正しく理解し、自社の取引形態がどの規定に該当するのかを常に把握しておくことが、健全な貿易実務の第一歩です。

納税義務の所在を明確にすることは、コストの適正な把握だけでなく、法的なリスク管理の根幹を成すものです。不透明な点がある場合は、そのまま放置せず、専門家の知見を借りて早期に解決することをお勧めいたします。

納税義務者の特定に関するチェックリスト

・仕入書(インボイス)の荷受人は自社になっているか

・輸入許可前に他者へ転売する契約になっていないか

・保税地域での貨物管理責任は誰が負っているか

・インコタームズによる費用負担と法的な納税義務を混同していないか

・通関業者に対して取引の実態を正確に開示しているか

適正な申告と納税を通じて、貴社の国際ビジネスがより円滑に進むことを心より願っております

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(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

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税関事務管理人制度の解説

2021-08-21

1 はじめに―相談事例の紹介

近年、Eコマースの普及やビジネスのグローバル化に伴い、海外に拠点を置く企業や個人が日本国内で直接、輸出入業務を行うケースが増加しております。まずは、税関事務管理人制度の利用が必要となる典型的な相談事例を見てみましょう。

【相談者】

米国に本社を置くEコマース事業者 D社 物流担当役員

【相談内容】

「当社は米国で健康食品を販売しており、このたび日本市場へ本格参入することを決定しました。日本国内に支店や現地法人は設立せず、米国の本校から日本の顧客へ直接商品を発送するか、日本の保税倉庫に在庫を置いて販売する予定です。

日本の税関に問い合わせたところ、日本に住所がない非居住者が輸入申告を行うためには、税関事務管理人を選任しなければならないと言われました。当社には日本に身寄りがなく、どのような人物や法人を選任すべきか、また、その管理人が具体的にどのような責任を負うのかがわからず困っております。

また、管理人がいなければ輸入許可が下りないのか、法的なペナルティはあるのかについても詳しく教えてください」

このような課題は、日本への進出を検討する外資系企業にとって共通の悩みです。日本国内に拠点を置かない非居住者が、日本の関税法を遵守しながら円滑にビジネスを行うための制度が税関事務管理人です。以下、その詳細について解説してまいります。

2 非居住者による輸出入申告と法的義務

まず大前提として、貨物を輸出入する際の基本的な義務を確認します。貨物を輸入または輸出しようとする者は、原則として税関長に対して申告を行い、必要な検査を経て許可を得なければなりません。

関税法第67条(輸出又は輸入の許可)には、以下の規定があります。

「貨物を輸出し、又は輸入しようとする者は、当該貨物の品名並びに数量及び価格その他必要な事項を税関長に申告し、貨物につき必要な検査を経て、その許可を受けなければならない」

この義務は、日本国内に住所がある居住者だけでなく、海外に居住する非居住者にも同様に課されます。しかし、日本国外にいる者に対して、日本の税関が円滑に連絡を取り、あるいは書類の送達や検査の立ち会いを求めることは物理的に困難です。そこで、日本国内における窓口として、税関事務管理人の選任が義務付けられているのです。

3 税関事務管理人制度の定義と根拠条文

税関事務管理人とは、日本国内に住所や居所(法人にあっては本店または事務所)を有しない者が、日本で税関手続を行うために選任する代理人のことです。

この制度の根拠となるのは、関税法第95条(税関事務管理人)です。

同条第1項には以下のように規定されています。

「本邦に住所又は居所(法人にあつては、本店又は事務所)を有しない個人又は法人が、税関関係手続等(関税法その他の関税に関する法律の規定による税関長に対する申告、申請、請求その他の手続及び政府に対してする関税の納付、還付金の受領等をいう。以下同じ。)の事務を処理させるため、本邦に住所又は居所を有する者(法人にあつては、本店又は事務所を有するもの)のうちから税関事務管理人を選任したときは、その旨を税関長に届け出なければならない」

4 税関事務管理人が処理する事務の範囲

税関事務管理人が行う事務は、単なる書類の受け渡しに留まりません。関税法第95条、同施行令、及び関税法基本通達95-1に基づき、多岐にわたる実務を代理します。

主な事務の範囲

・輸出入申告、各種申請、請求などの税関関係手続の実施

・税関長が行う検査への立ち会い、及び内容説明

・税関長が発する更正通知、決定通知、督促状などの書類の受領

・受領した書類の非居住者(本人)への速やかな送付

・関税、消費税等の納付、並びに過誤納金の還付受領

・税関事後調査の際の窓口対応、及び資料の提示

以下に、税関事務管理人の役割を整理した比較表を掲載します。

【税関事務管理人の業務範囲と責任】

項目 具体的な事務内容 留意事項
申告事務 輸出入申告書の作成及び提出 代理人として記名捺印等を行う
検査対応 税関による貨物検査への立ち会い 貨物の内容を熟知している必要がある
文書受領 税関からの公文書(更正通知等)の受領 到達した時点で本人への送達とみなされる
金銭管理 関税・消費税の納付、還付金の受領 非居住者に代わって精算を行う
事後調査 許可後の税関調査における窓口 過去の取引記録を整理しておく義務

5 誰を選任すべきか 選任の要件と実務上の選択肢

法律上、税関事務管理人になれるのは「日本国内に住所または居所を有する個人」または「日本国内に本店または事務所を有する法人」です。特別な資格(例えば通関士や弁護士であること)は必須とされていませんが、実務上の難易度から以下の選択肢が一般的です。

(1)関連会社や取引先

日本国内に子会社や親密な取引先がある場合、その法人が管理人を引き受けるケースがあります。しかし、税関からの法的な通知を預かるという重い責任を伴うため、十分な信頼関係が必要です。

(2)通関業者

輸入申告の実務を行う通関業者が、附帯サービスとして税関事務管理人を兼ねる場合があります。実務に精通しているため、申告ミスが少ないという利点があります。ただし、すべての通関業者がこの役割を引き受けているわけではありません。

(3)専門のコンサルティング会社や法律事務所

貿易実務や税法に精通した専門家が管理人となるケースです。特に、高額な関税が発生する物品や、知的財産権、他法令の規制が絡む複雑な案件では、法的な防御力を備えた専門家を選任することが、長期的なリスクヘッジにつながります。

6 選任の手続きと届出の流れ

税関事務管理人を選任した後は、遅滞なく所轄の税関長へ届け出なければなりません。

(1)届出書類

「税関事務管理人届出書」(関税法第95条第1項に基づく様式)を提出します。この書類には、非居住者の情報、選任する管理人の情報、及び委任する事務の範囲を正確に記載します。

(2)届出先

原則として、輸出入申告を行う場所を所轄する税関に提出します。複数の税関(例えば成田、横浜、大阪など)で申告を行う場合は、主たる申告地、または複数の税関を統括する形式での届出が検討されます。

【税関事務管理人の選任フロー】

1.非居住者による管理人の選定

(適格性の確認、委任内容の合意)

2.委任契約の締結

(責任範囲、費用、期間等の明文化)

3.税関事務管理人届出書の作成

(所定の様式に記入)

4.税関への届出

(輸入申告の前に完了させる必要がある)

5.税関事務管理人の登録完了

(税関システムへの登録)

6.輸入申告の開始

(管理人の名義を含めた申告の実施)

7 税関事務管理人を選任しない場合のリスク

非居住者が管理人を選任せずに輸出入を強行しようとした場合、あるいは選任命令に従わない場合には、以下のような不利益が生じます。

(1)輸入許可の遅延・却下

税関長は、管理人の届出がないことを理由に、申告を保留したり、審査をストップさせたりすることが可能です。その結果、貨物が保税地域に留まり続け、多額の保管料が発生する恐れがあります。

(2)書類が届かないことによる不利益

税関からの修正申告の勧奨や更正通知が、日本国内の受領者不在により適切に処理されない場合、非居住者側が異議申し立てを行う機会を逸したり、延滞税が累増したりするリスクがあります。

(3)コンプライアンス上の懸念

税関事務管理人の不在は、日本の法令を軽視しているとの印象を与えかねません。これは、将来的な事後調査の対象に選ばれやすくなる、あるいは検査頻度が上がるといったマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

8 消費税法における納税管理人との関係

注意が必要なのは、関税法上の「税関事務管理人」と、消費税法上の「納税管理人」は異なる概念であるという点です。

日本の消費税法でも、日本に拠点を置かない事業者が納税義務を負う場合、納税管理人を選任する必要があります。輸入時の消費税については税関事務管理人が対応しますが、国内販売後の消費税の確定申告については納税管理人が担当します。実務上、これら二つの役割を一箇所の専門家に委ねることで、情報の食い違いを防ぎ、一貫した税務対応が可能となります。

9 弁護士へのご相談をご希望の方へ

税関事務管理人制度は、単なる手続代行ではありません。日本国内での法的責任を非居住者に代わって引き受けるという、高度な法的リスク管理が求められる業務です。特に、海外企業が日本でビジネスを展開する際には、関税法のみならず、会社法、税法、民法といった日本の法律体系全体を俯瞰した対応が不可欠です。

当事務所は、代表弁護士が通関士資格を併せ持っており、輸出入に関わる法的トラブルや制度運用に関する唯一無二の専門性を有しております。弁護士に相談すべきかどうか、迷われる状況こそが、法的なリスクが潜んでいるサインかもしれません。

以下のようなケースでお困りの際は、ぜひ当事務所までお問い合わせください。

・日本でのビジネス開始にあたり、信頼できる税関事務管理人を探している

・管理人の業務範囲や契約内容について、法的なアドバイスが欲しい

・非居住者として輸入を行った後、税関から指摘を受け、対応に苦慮している

・関税の評価申告や、ロイヤリティの加算額について税関と見解が分かれている

当事務所にご相談いただくことで、不慣れな日本の法体系の中でも、安心して事業を推進できる環境を整えるお手伝いをいたします。お悩みをご相談いただくことで、解決への糸口が見つかるだけでなく、将来的な法的リスクを未然に防ぐことが可能です。

輸出・輸入や通関に関するトラブル、さらには税関事後調査への備えや税関対応等でお困りの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。貴社のグローバル展開を、法的な側面から全力でバックアップいたします。

10 まとめ

税関事務管理人制度は、非居住者が日本で健全な貿易活動を行うための架け橋となる制度です。関税法第95条の規定を遵守し、適切な管理人を選任することは、ビジネスの成功に向けた不可欠なステップといえます。

管理人には、申告から検査立ち会い、書類受領、納税まで、多岐にわたる重責が課せられます。単なる代行業者ではなく、日本の法令を熟知し、貴社のパートナーとして機能する専門家を選ぶことが、安定した輸入ビジネスの鍵となります。

本記事で解説した内容が、海外企業の皆様や、そのサポートを行う担当者の皆様にとって、一助となれば幸いです。貿易実務の壁に直面した際は、専門家への相談を検討することを強くお勧めいたします。

税関事務管理人制度のポイント再確認

・非居住者が日本で輸出入を行う際に選任が必要な代理人

・関税法第95条を法的根拠とする制度

・選任した旨を所轄税関長に届け出なければならない

・税務、検査立ち会い、書類受領等の広範な事務を代理する

・適切な選任は、円滑な通関とリスク回避に直結する

適正な制度運用を通じて、透明性の高い国際貿易を実現していきましょう

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