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1 はじめに―相談事例
輸入実務において、貨物の本体価格だけでなく、それを収める容器や包装の費用をどのように取り扱うかは、課税価格(関税を計算する際の基礎となる価格)を正しく算出する上で極めて重要な論点となります。まずは、当事務所に寄せられる具体的な相談事例をみていきましょう。
【相談者】
輸入化粧品販売業 P社 物流管理担当者
【相談内容】
「当社では、フランスのメーカーから高級な香水を輸入しております。これまでは、香水が瓶に詰められた状態で輸入していましたが、このたびコスト削減のため、香水本体をドラム缶のような大型容器(バルク)で輸入し、同時に、国内で詰め替えるための専用のデザイナーズガラスボトルを別途同じ船で輸入することになりました。
メーカーからの請求書(インボイス)では、香水液体の代金と、空のガラスボトルの代金が別々に記載されています。税関に申告を行う際、このガラスボトルの費用は、香水液体の課税価格に加算しなければならないのでしょうか。それとも、液体は液体、ボトルはボトルとして別々に申告すればよいのでしょうか。
また、輸送時に使用する再利用可能なパレットやコンテナの費用についても、どのように申告に含めるべきか迷っております。正しい法的な判断基準を教えてください」
このようなケースでは、関税定率法における「加算要素」の規定と、関税率表の解釈に関する「通則」の理解が不可欠です。本記事では、輸入貨物の容器と課税価格の考え方について、専門的な視点から詳しく解説いたします。
2 関税評価の基本原則と加算要素の体系
輸入貨物の関税を計算するための基礎となる「課税価格」は、原則として、その貨物の輸入取引において実際に支払われた、または支払われるべき「現実支払価格」に、運賃や保険料などの「加算要素」を加えた価格(取引価格)によって決定されます。
関税定率法第4条第1項(輸入貨物の課税価格の決定の原則)では、以下のように規定されています。
「輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされたときの価格(以下「取引価格」という。)による。この場合において、取引価格とは、当該輸入貨物の輸入取引に関し買手により売手に対し又は売手の利益のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において次に掲げる運賃等の額を加えた価格をいう」
同項第2号ロにおいて、容器に関する加算要素が以下のように明記されています。
「輸入貨物に係る輸入取引に関し買手により負担される当該輸入貨物の容器の費用」
つまり、ある貨物を輸入する際、その貨物を収める容器の費用を買手が負担している場合、その費用は貨物本体の価格に加算され、一体として課税されることになります。
3 関税法及び関税定率法における容器の定義
ここで重要となるのが、どのようなものが法的な「容器」に該当するかという点です。関税評価の実務において、この「容器」の範囲は、関税率表の解釈に関する通則5の規定に基づいて判断されます。
通則5(ケースその他これに類する容器並びに包装材料及び包装容器の取扱い)
(a)写真機用ケース、楽器用ケース、銃用ケース、製図機用ケース、首飾り用ケースその他これらに類する容器で、特定の物品又は物品のセットを収納するために特に製作し又は適合させたものであつて、長期間の使用に適し、当該容器に収納される物品とともに提示され、かつ、通常当該物品とともに販売されるものは、当該物品に含まれるものとしてその所属を決定する。
(b)(a)の規定に従うことを条件として、物品とともに提示し、かつ、当該物品の包装に通常使用する包装材料及び包装容器は、当該物品に含まれるものとしてその所属を決定する。
関税定率法第4条第1項第2号ロにいう「容器」とは、この通則5によって「当該物品に含まれる」とされるものを指します。これには、製品の個装箱、香水の瓶、薬品のアルミ包装などが含まれます。
4 容器の費用を加算する場合としない場合の判断基準
容器の費用を課税価格に加算するかどうかの分かれ目は、輸入申告の時点で「その容器が貨物を収納しているか」という点にあります。
(1)貨物を収納した状態で輸入される場合
輸入時に、貨物が容器に入っている(あるいは包装されている)場合、その容器の費用は関税定率法第4条第1項第2号ロの規定により、貨物の課税価格に加算されます。
例えば、瓶入りのワインを輸入する場合、ワインの液体の価格に、瓶の費用を加算します。これが基本的な加算要素の考え方です。
(2)貨物と容器が別々に輸入される場合
冒頭の相談事例のように、飲料水や香水などの「中身」と、それを詰めるための「空のペットボトルやガラス瓶」をそれぞれ別々の貨物として輸入する場合、その空容器は輸入申告の時点で貨物を収納していません。
この場合、空容器は「容器」としての加算要素ではなく、それ自体が独立した一つの「貨物(物品)」として取り扱われます。
したがって、中身(液体)の価格に容器の費用を加算する必要はなく、それぞれの物品に対して、それぞれの税番(HSコード)を適用して申告を行うことになります。
5 容器の種類と関税評価の取り扱い比較
実務において混同しやすい容器や包装の取り扱いについて、以下の表にまとめました。ワードデータ等にコピーして社内マニュアルとして活用できる形式で作成いたします。
【容器・包装の形態別関税評価の取り扱い一覧】
| 容器・包装の形態 | 関税評価上の取り扱い | 加算要素の該否 |
| 輸入時に貨物を収納している個装容器(瓶、缶、箱等) | 貨物の現実支払価格にその費用を加算する | 該当する |
| 輸入時に貨物を収納している外装用包装材料 | 貨物の現実支払価格にその費用を加算する | 該当する |
| 国内での詰め替え用に、空の状態で輸入される容器 | 独立した別の貨物として申告する(中身への加算は不要) | 該当しない |
| 反復使用される輸送用コンテナやタンク | 原則として独立した貨物(または免税物品)として扱う | 該当しない |
| 買手が無償で提供した容器(いわゆる無償供与資材) | 買手の取得費用または製作費用を課税価格に加算する | 該当する |
6 特殊なケースにおける実務上の留意点
(1)無償供与される容器の費用
買手が国内または第三国で容器を調達し、それを海外の売手(製造者)に無償で送付して、中身を詰めてもらった後に輸入する場合、買手が負担した容器の調達費用は加算要素となります。
関税定率法第4条第1項第3号イにおいて、買手が無償または軽減した価格で提供した材料の費用を加算することが規定されていますが、容器についても同様に、買手が負担したコストは課税価格に含まれなければなりません。
(2)反復使用される容器(リターナブル容器)
ガスシリンダーや化学品のドラム缶など、繰り返し使用される容器については、通常の使い捨て容器とは異なる取り扱いが必要となる場合があります。
通則5(b)のただし書きでは、「反復使用に適することが明らかな包装材料及び包装容器については、この規定は適用しない」とされており、これらは中身の物品に含まれず、独立した貨物として扱われるのが原則です。
関税評価上も、これらが輸入取引の一部として費用負担されているのか、あるいは貸与されているのかによって、加算すべきかどうかの慎重な判断が求められます。
(3)パレットの費用
貨物を固定し、輸送を容易にするためのパレットも、輸入取引において買手がその費用を負担している場合は、包装の費用(関税定率法第4条第1項第2号ハ)として課税価格に加算されます。
ただし、パレット自体が後日返却される仕組み(プールパレット等)である場合や、一時免税の規定を適用する場合などは、複雑な法解釈を伴うことがあります。
7 現実支払価格にすでに含まれている場合
多くの取引では、インボイス価格(CIF価格等)にすでに容器や包装の代金が含まれています。この場合、さらなる加算は不要です。
しかし、メーカーが容器の代金を別途請求してきたり、買手が第三者から容器を購入してメーカーに送り届けたりしている場合には、加算漏れが発生しやすくなります。
加算漏れは、税関の事後調査において最も厳しく指摘されるポイントの一つであり、過少申告加算税や延滞税の対象となるリスクがあります。
8 図解による課税価格の計算構成
以下に、容器の費用を含む課税価格の計算構造を視覚化します。
【輸入貨物の課税価格の構成図】
1.現実支払価格(仕入書価格)
(貨物本体の代金として売手に支払う金額)
+
2.加算要素(買手が負担するものに限る)
(イ)仲介手数料及び口銭(買付手数料を除く)
(ロ)容器の費用(関税率表の通則5に規定するもの)
(ハ)包装の費用(梱包資材費や労働費)
(ニ)買手による無償供与資材(材料、工具、金型、技術等)
(ホ)特許権等の使用料(ロイヤリティ)
(ヘ)売手への帰属収益
+
3.輸入港までの運賃・保険料
(日本に到着するまでの輸送コスト)
=
4.課税価格(この金額に関税率をかけて税額を算出)
9 弁護士へのご相談をご希望の方へ
関税評価における容器の取り扱いや加算要素の判断は、取引の形態が多様化する中で、非常に複雑なものとなっています。単に「瓶に入っているから足す」といった単純な判断だけでは、不必要な関税の過払い、あるいは深刻な過少申告を招く恐れがあります。
当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、関税法や関税定率法に関する専門的な知見に基づき、輸入・通関上のトラブルに関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと存じますが、お悩みをご相談いただくことで、以下のようなメリットを提供し、お悩み解消の一助となることができます。
・最新の関税定率法及び関税評価技術的注釈に基づいた、適正な課税価格の算定支援。
・税関事後調査において容器や包装の加算漏れを指摘された際の、法的な反論及び交渉。
・複雑なリターナブル容器や無償供与資材が絡む取引における、契約書のリーガルチェックとアドバイス。
・事前教示制度を活用した、税関との見解の事前確認。
輸入取引のコスト計算に不安がある場合や、税関との見解の相違が生じている場合には、どうぞご遠慮なく当事務所までご相談ください。
10 まとめ
本日は、輸入貨物とともに輸入される容器の関税評価について解説いたしました。
容器の費用を貨物の価格に加算するかどうかの判断基準は、輸入申告の時点でその容器が貨物を収納しているか、そしてその費用を買手が負担しているかという点に集約されます。
国内での詰め替えを目的として空の状態で輸入される容器については、加算要素ではなく独立した貨物として扱うというルールは、実務上非常に重要なポイントです。
関税定率法第4条第1項の規定を正しく理解し、現実支払価格と加算要素を適切に区分して申告することは、企業のコンプライアンス維持と、適正な納税コストの把握に直結いたします。
本記事の解説が、皆様の輸入実務における正確な課税価格の決定に寄与すれば幸いです。もし、自社の取引形態における判断が難しい場合や、過去の申告内容に不安がある場合には、専門家への相談を検討することをお勧めいたします。
容器と課税価格に関する重要事項の再確認
・輸入時に貨物を収納している容器の費用は加算要素となること
・空の状態で別途輸入される容器は、独立した別の貨物として扱うこと
・容器の定義は関税率表の解釈に関する通則5に準ずること
・買手が無償で提供した容器のコストも課税価格に含まれること
・リターナブル容器は、その性質や取引形態により個別の判断が必要であること
適正な申告と納税を通じて、健全で透明性の高い貿易ビジネスを実現していきましょう。
【お問合せは、こちらから】
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。

