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犯則調査にご注意ください

2023-05-07

はじめに:仮の相談事例

輸入・輸出をビジネスとして継続的に行われている方であれば、税関による「犯則調査」という言葉を一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。知り合いの会社が突然の立ち入り調査を受け、大変な事態に陥ったといった話を聞き、不安を感じている方も少なくありません。まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談内容を模した、架空の事例をご紹介いたします。

【相談者】

東京都内でブランド時計や高級雑貨の輸入卸売を営む株式会社デイ 代表取締役 シー氏。

【相談内容】

「当社は海外のブローカーを通じて、欧州の高級時計を定期的に輸入しています。これまでは通関業者に書類を任せ、特に大きなトラブルもなく事業を進めてきました。ところが先日、突然税関の職員が数名で事務所に現れ、『犯則事件の調査』だと言って書類やパソコン、スマートフォンの提出を求められました。以前受けたことがある事後調査とは全く雰囲気が異なり、高圧的で、まるで犯罪者扱いをされているような恐怖を感じました。

聞けば、過去の輸入申告において価格を低く書き換えたインボイスを使用し、消費税を免れた疑いがあるとのことです。当社としては、現地のブローカーから送られてきた書類をそのまま出していただけで、脱税の意図はありませんでした。しかし、このままでは逮捕されるのではないか、会社が潰れてしまうのではないかと夜も眠れません。刑事事件としての対応が必要なのでしょうか、それとも行政処分で済むのでしょうか」

このような事態は、輸入実務に携わる者にとって最大の危機の一つといえます。犯則調査は、通常の「事後調査」とは法的性質が根本的に異なり、最終的には刑事罰に直結する可能性を秘めた厳格な手続きです。本記事では、犯則調査の概要から最新の動向、そして万が一対象となった場合の法的対応について詳しく解説いたします。

1 犯則調査の定義と法的性質

税関の公式な見解によれば、犯則調査とは「犯則事件について、証拠を発見・収集し、犯則事実の有無及び犯則者を確定させるための手続きであり、告発又は通告処分を終局の目標として行う調査」と定義されています。

簡単にいうと、犯則事件とは税金に関する犯罪を指しますが、税関の調査対象は主として関税及び内国消費税となります。

犯則調査の法的根拠は、関税法第11章「犯則事件の調査及び処分」に規定されています。特に関税法第119条から第149条にかけて、税関職員による質問、検査、領置(差し押さえ)などの強大な権限が明文化されています。

(関税法第119条 質問、検査又は領置)

税関職員は、犯則事件の調査をするため必要があるときは、犯則嫌疑者若しくは参考人に対して出頭を求め、若しくは質問し、若しくはこれらの者が所持し、若しくは置き去つた物件を検査し、又はこれらの者が任意に提出し、若しくは置き去つた物件を領置することができる。

(関税法第124条 臨検、捜索又は差押え)

税関職員は、犯則事件の調査をするため必要があるときは、その所属する税関の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状により、臨検、捜索又は差押えをすることができる。

このように、裁判所の許可状に基づく強制捜査が行われることもあり、「任意の協力」とは一線を画す強制力を持った調査であることがわかります。

2 近年の犯則調査の動向と具体的な事例

税関が公表しているデータによれば、近年の犯則調査は、金地金(ゴールド)の密輸入や、ブランド品・時計の過少申告(アンダーバリュー)に対して非常に厳格化しています。

最新の傾向としては、税関長が処分(通告処分)又は告発を行った件数は相当数に上り、脱税額も数億円規模に達する事例が報告されています。

(1)金地金の密輸入事件

金の輸入には10パーセントの消費税がかかります。海外で金を購入し、税関に申告せずに密輸入して国内で転売すれば、その消費税分が不当な利益となります。これまでは旅行者を装った個人による「運び屋」が中心でしたが、最近では貨物に巧妙に隠し、組織的に脱税を図る法人の犯則事件が目立っています。

(2)高級ブランド品の過少申告事件

冒頭の相談事例のように、実際の購入価格よりも低い金額をインボイスに記載し、関税や消費税を免れる手口です。最近の事例では、海外の売手と共謀して二重のインボイスを作成し、税関には低い価格のものを提出していた法人が、電子メールの履歴から偽装が発覚し、重加算税の賦課とともに検察庁へ告発されたケースがあります。

(3)知的財産侵害物品の輸入事件

コピー商品や偽ブランド品を輸入する行為も、関税法上の犯罪(輸出入禁止物品の輸入)となります。これらは単純な脱税だけでなく、商標法違反等とも重なり、非常に重い刑事罰の対象となります。

3 犯則調査と事後調査の違い

多くの経営者が混同しやすいのが、定期的に行われる「事後調査」と、この「犯則調査」の違いです。実務上の混乱を避けるため、以下の比較表にまとめました。

【事後調査と犯則調査の比較一覧表】

項目|事後調査(税務調査)|犯則調査(犯罪捜査)

法的根拠|関税法第105条等|関税法第119条等

主な目的|申告の適正性の確認|犯罪の証拠収集と確定

調査の性質|行政上の任意調査|刑事手続に準ずる調査

強制力の有無|事実上の強制(受忍義務)|許可状に基づく強制捜査あり

終局の目標|修正申告・更正処分|告発・通告処分

事後調査は「間違っていたら直してください」というスタンスですが、犯則調査は「法を犯した証拠を固めます」というスタンスです。犯則調査の対象となった場合、非常に動転される方も多い一方で、刑事事件ではないから大丈夫だろうと高を括ってしまう方もいらっしゃいますが、これは大きな間違いです。

4 通告処分という独自の制度

犯則調査の結果、税関長が行う「通告処分」という言葉について補足いたします。

通告処分とは、税関による犯則調査の結果、その情状が罰金刑に相当すると判断された場合において、税関長がその罰金に相当する金額の納付を求める処分のことを指します。

(関税法第146条 通告処分)

税関長は、犯則事件の調査の結果、犯則の確信を得たときは、その理由を明示し、罰金に相当する金額、没収に該当する物件、追徴金に相当する金額及び書類の送達に要する費用(中略)を税関に納付すべき旨を通告しなければならない。

通告処分の特色は、刑事処分ではなくあくまでも行政処分であるという点にあります。この通告に従って金額を納付すれば、刑事訴追(裁判)を免れることができます。一種の「司法取引」に近い性格を持っており、前科がつかないというメリットがあります。しかし、通告に従わない場合や、悪質性が極めて高いと判断された場合は、即座に検察官へ告発され、通常の刑事裁判の手続きへと移行することになります。

5 犯則調査の対象となった場合の対応指針

犯則調査の対象となった場合、安易な対応は非常に危険であると言わざるを得ません。ただその一方で、恐怖のあまり早く事件を解決させようと虚偽の主張や自白をしてしまおうとされる方もおりますが、このような対応は絶対にとってはいけません。一度事実と異なる供述をしてしまうと、後から訂正することは極めて困難です。

以下の点に留意して冷静に対応することが求められます。

(1)黙秘権の理解

刑事手続に準ずる調査である以上、自分に不利な供述を強要されることはありません。しかし、税関側の質問を無視し続けることは、情状を悪くする可能性もあります。どの範囲で回答すべきかは、専門家の助言が不可欠です。

(2)証拠の任意提出と押収

パソコンや書類が差し押さえられると、業務が停止してしまいます。どの資料が調査に必要で、どの資料が返還されるべきか、法的な観点からのチェックが必要です。

(3)反省と改善姿勢の提示

意図的でないミスであったとしても、管理体制の不備は認めざるを得ません。調査には協力的な姿勢を見せつつ、再発防止策を提示することで、告発ではなく通告処分での解決を目指す戦略が重要となります。

冷静に対応しつつ、税関側の調査に協力し、自分が行ってしまったことの反省をしていただくことが重要ではありますが、なかなか一般の方で突然このような対応を取ることは至難の業といえるでしょう。

6 専門家による支援の重要性

まずは、冷静に落ち着いて状況を確認し、その後の流れを確認する意味でも、万一犯則調査の対象となってしまった場合には、速やかに弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

輸入・輸出に関連する法律は、関税法だけでなく、消費税法、外為法、知的財産法など多岐にわたります。特に課税価格の決定(関税評価)に関する専門知識がないまま税関と交渉することは、自ら不利な状況を作り出すことに他なりません。

具体的なビジネスの内容を踏まえて、どのような内容を特に注意すべきかを把握した上で、輸入関連の法令に照らして適切となるように、日々のビジネスの内容を精査していくといった作業が必要となります。

7 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、輸出入や貿易関連のトラブル、税関事後調査をはじめとする税関対応等を幅広く取り扱っております。代表弁護士は、輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。

弁護士でありながら通関実務の知識を持つことで、税関職員の主張が法的に妥当であるか、不当な権利侵害が行われていないかを的確に判断し、依頼者の正当な権利を守ります。

当事務所が提供できる主なサポート

一 犯則調査への立ち会いおよび質問回答のアドバイス

二 押収された書類やデータの返還交渉

三 税関長による通告処分への誘導、および検察官への告発回避のための交渉

四 不当な課税処分や重加算税に対する不服申立て

犯則調査の対象となった場合には、まずはご相談ください。一人で悩まず、早期に専門家の介入を受けることが、ビジネスの継続と個人の自由を守るための唯一の道です。

結びに代えて:適正な通関こそがビジネスの安定を支える

犯則調査という深刻な事態に直面したとき、最も重要なのは「透明性のある対応」と「法的な防御」の両立です。脱税の意図がなかったとしても、客観的な証拠が揃っていれば、税関は淡々と手続きを進めます。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、その法的基盤を盤石にするためのパートナーとして、常に最善の助言を提示いたします。

適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

前払金と輸入申告価格の考え方について

2023-04-30

はじめに:具体的な相談事例の紹介

本日は、輸入取引において頻繁に活用される前払金、いわゆるデポジットや頭金と、輸入申告価格(課税価格)の決定に関する重要な論点について解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。輸入実務に携わる企業様にとって、非常に示唆に富む内容となっております。

【相談者】

千葉県内で海外製のスポーツ用品の輸入販売を営む株式会社サクセス 代表取締役 佐藤氏

【相談内容】

「当社は3年前から、アメリカのメーカーであるエー社から、新型のトレーニング機器を輸入しています。取引の形態としては、まず契約時に代金の7割にあたる100万円を「前払金(デポジット)」として送金し、残りの3割の30万円については、製品が完成して日本へ発送される際に支払うことになっています。

製品が発送される際、エー社からは残金の「30万円」が記載されたインボイス(仕入書)が送られてきます。佐藤氏は、通関業者に対してこの30万円のインボイスを提出し、そのまま30万円を輸入申告価格として申告してきました。

ところが先日、税関から事後調査の通知が届きました。調査官からは、この前払金100万円が申告価格に含まれていないのではないかという指摘を受けています。佐藤氏は、前払金はあくまで予約金のようなもので、最終的な商品の請求書(インボイス)の金額こそが申告価格であると考えていました。もしこれが過少申告と判断された場合、過去3年分に遡って追徴課税を受けるのでしょうか。また、法的に正しい申告価格の算出方法を教えてください。」

このような事例は、輸入実務に慣れていない企業において非常に多く見受けられます。輸入者は意図的な脱税のつもりはなくても、法的な理解不足から結果として過少申告となってしまうケースが後を絶ちません。本記事では、専門的な知見に基づき、前払金が輸入申告価格に与える影響とその適切な処理方法を解説いたします。

1 前払金と輸入申告価格の基本的な考え方

輸入業を行う場合、売買代金の送金等に時間が掛かることから、一定額を前払金(デポジット等という場合もあります)として送金しておき、実際の売買代金に充当するという対応を取る場合も相当程度ございます。

例えば、前払金として100万円を送金しておいて、実際の商品価格が150万円である場合、取引の際には、前払金100万円を充当し、商品代金として50万円のみを新たに支払った場合、輸入申告価格としては、150万円と50万円のいずれとして取り扱う必要があるでしょうか。

結論から申し上げますと、適正な輸入申告価格としては、前払金を含めた総額である150万円をベースに考えることが必要となります。

関税定率法等の法令上は、「現実支払価格」といった専門的な用語がでてきます。なかなか理解が難しい面もありますが、要するに、輸入する商品のために買手側がいくら支出することになったのか、ということをベースに考えることになります。

実際に商品のために買手が支払った金額として、前払金100万円と残金の商品代金としての50万円の合計150万円となります。したがって、課税価格(輸入申告価格)はこの合計額となります。

インボイスに商品代金としていくらと記載されているかどうかということは、輸入申告価格を検討する際には重要な要素の一つとはなります。しかし、あくまでも要素の一つであり、インボイスにいくらと記載されているから輸入申告価格もインボイス上の価格と同じはずだということには必ずしもなりませんので、十分注意が必要です。

2 現実支払価格の定義と法的根拠

輸入申告価格(課税価格)を決定するための原則は、関税定率法第4条に規定されています。この条文は、輸入取引における「価格」とは何かを定義する極めて重要なものです。

関税定率法第4条(課税価格の決定の原則)

第1項 輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされたときに別表の規定により計算される価格(以下取引価格という。)とする。ただし、その取引価格が次に掲げる費用を含んでいないときは、その含まれていない限度において、当該費用をこれに加算するものとする。

さらに、この取引価格の基礎となる「現実支払価格」については、関税定率法基本通達において詳細に説明されています。

関税定率法基本通達4-2(現実支払価格)

(1) 法第4条第1項に規定する現実支払価格とは、輸入貨物に係る輸入取引につき、買手が売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物の対価として直接又は間接に現実に支払った又は支払うべき総額をいう。

この「直接又は間接に現実に支払った又は支払うべき総額」という文言が鍵となります。前払金は、輸入貨物の対価として「直接」あるいは「現実に」支払われた金額の一部であり、当然にこの総額に含まれるべきものです。残金の支払いの際、便宜上インボイスに未決済分のみが記載されていたとしても、法的な課税対象は商品の「対価としての総額」であるという点を忘れてはなりません。

3 前払金(デポジット)が関税評価に与える実務的影響

実務上、前払金が申告漏れとなる原因の多くは、書類の管理体制にあります。インボイスと送金記録の紐付けができていないことが、税関事後調査での指摘に直結します。

【前払金がある場合の申告価格算定フロー】

一 契約書(プロフォーマインボイス等)にて総額を確認する。

二 前払金の送金時期と金額を記録する。

三 最終インボイスに前払金が差し引かれた額が記載されている場合、その控除額を「加算」して申告する。

四 通関業者に対し、前払金の存在と総額を明確に伝える。

インボイス上に「Deposit Paid(支払い済みデポジット)」といった記載があれば、通関業者も気づくことができます。しかし、そのような記載がなく、単に「30万円」とだけ書かれたインボイスでは、通関業者はその裏にある100万円の前払金を把握することができません。最終的な納税責任は輸入者自身に帰属するため、正しい情報を開示する義務があります。

4 輸入者が活用すべき実務チェックリスト

以下に、前払金や加算要素の漏れを防ぐためのチェックリストを作成いたしました。社内のコンプライアンス管理にご活用ください。

【前払金および加算要素に関する法的適合性確認表】

確認項目|具体的な確認内容|

前払金の有無|契約時に内金やデポジットを送金していないか|

インボイスの総額|インボイス記載額は前払金差引後の金額ではないか|

送金記録の整合性|銀行の送金総額と輸入申告価格は一致しているか|

ライセンス料の支払|商標権等の対価を別途権利者に支払っていないか|

無償提供物品の有無|製造用の金型や原材料を無償で提供していないか|

仲介手数料の支払|売手と買手を仲介する者に報酬を支払っていないか|

5 輸入申告価格の算定を誤った場合のペナルティ

貨物の輸入や輸出に関するルールは、関税法や関税定率法、これらの通達等に詳細に規定されております。なかなか一般的には理解が難しい点も多く、知らずに輸出入を行うと追徴課税を含む様々なペナルティを課されてしまうリスクがございます。

無事に輸出入できているのだから問題ないだろうと考え、これらのルールを軽視することは非常に危険であり、中長期的に大きなしっぺ返しを受けるリスクが非常に高いと言わざるを得ません。

(1)過少申告加算税の賦課

事後調査により申告漏れが発覚した場合、不足税額に加えて過少申告加算税が課されます。

関税法第12条の2(過少申告加算税)

税関長は、更正(中略)があった場合には、当該納税義務者に対し、不足税額に100分の10(一定額を超える部分は100分の15)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。

(2)重加算税の適用リスク

意図的に前払金を隠蔽し、安価なインボイスのみで申告を繰り返していたと判断された場合、さらに強力な重加算税が課されます。

関税法第12条の4(重加算税)

事実を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告をしていたときは、過少申告加算税に代え、不足税額に100分の35(一定の場合は40)を乗じた重加算税を課する。

(3)延滞税の徴収

本来の納期限から修正申告の日までの期間に応じて、利息相当の延滞税が徴収されます。

6 ライセンス料やその他の加算要素に関する留意点

輸入申告価格の算定において、前払金以外にも注意すべき項目は多岐にわたります。特に「ライセンス料」は、税関が最も注視する項目の一つです。

例えば、輸入する貨物のライセンス料を輸出者側等に支払っている場合には、当該ライセンス料については、課税価格に加算しなければなりません。加算せずに輸入申告を行う場合には、過少申告となり、事後的に追徴課税が行われることとなります。

【ライセンス料(ロイヤリティ)が加算される条件】

一 当該輸入貨物に関連していること。

二 当該輸入貨物の輸入取引の条件として買手により支払われるものであること。

これらは、商品の仕入れ価格とは別の名目で支払われることが多いため、前払金と同様に申告漏れが発生しやすい項目です。他にも、輸入港までの運賃、保険料、仲介手数料、そして製造に関わる原材料や金型の無償提供費用(アシスト費用)などが挙げられます。

7 専門家による事前リーガルチェックの重要性

他にも、輸出入特有の規制は多数あります。可能であれば、輸出入を継続的に行う最初の段階で事業計画が法的に問題ないかどうかをリーガルチェックすることをお勧めいたします。

最初の段階できちんとした体制を整備しておくことで、事業を中長期的に円滑に進めることが可能となります。

【専門家によるチェックを受けるメリット】

一 適切な課税価格の算定根拠を構築できる点。

二 税関事後調査における否認リスクを最小限に抑えられる点。

三 不必要な追徴課税や過少申告加算税の支払いを回避できる点。

四 法令遵守体制を整えることで、税関からの信頼性を向上させられる点。

特に、新しい取引先と契約する際や、新しい商品カテゴリーを扱う際には、契約書の文言一つが将来の関税負担に大きく影響することがあります。

8 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出・輸入や通関上のトラブルを中心に企業法務を幅広く扱っております。

弁護士でありながら通関士の専門知識を併せ持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、税関当局がどのような視点で調査を行い、どのような証拠書類を重視するかといった実践的なアドバイスを提供することが可能です。

【当事務所が提供できる主なサポート】

一 輸入取引における現実支払価格の適正性診断。

二 前払金、ロイヤリティ、アシスト費用等の加算要素に関する法的整理。

三 税関事後調査への立ち会いおよび当局との法的な交渉。

四 不当な課税処分に対する不服申立てや税関訴訟の代理。

輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

債務の相殺と輸入申告価格

2023-04-23

はじめに:仮の相談者からの相談事例

本日は、輸入取引における課税価格の決定において、買手が売手の債務を肩代わりしたり、相殺を行ったりした場合の法的な取り扱いについて解説いたします。まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。輸入実務において、継続的な取引がある企業様にとっては、非常に重要かつ見落としやすい内容となっております

【相談者】

大阪府内で海外ブランドの輸入卸売業を営む株式会社ライト 代表取締役 A氏

【相談内容】

「当社は、イタリアの家具メーカーであるB社から定期的に製品を輸入しております。前回の取引において、B社から届いた貨物の一部に破損があり、B社に対して40万円の損害賠償債権が発生いたしました。B社はその支払いを認めたものの、送金の手間を省くため、今回の取引代金100万円からその40万円を差し引き、残りの60万円だけを支払ってほしいと提案してきました。

当社はこの提案を受け入れ、実際に60万円を海外送金いたしました。通関業者には、B社から送られてきた60万円のインボイス(仕入書)を提出し、そのまま60万円を輸入申告価格として申告いたしました。しかし、佐藤氏は、本来の商品の価値は100万円であることを知っており、この申告方法で問題がないのか不安に感じています。もし税関の事後調査で指摘を受けた場合、どのような責任を問われるのでしょうか。また、正しい申告価格はどのように算出されるべきなのか、専門的な見地からのアドバイスを求めています。」

このような事例は、国際ビジネスの現場では珍しくありません。迅速、円滑な取引のために債権債務を相殺等して実際にやり取りする代金を増減させるという対応が行われております。しかし、関税法および関税定率法の観点からは、実際に送金した金額だけを申告することは、重大な過少申告に該当する可能性が極めて高いといえます。本記事では、専門的な知見に基づき、買手が売手の債務の一部を肩代わりした場合の輸入申告価格の考え方を詳しく解説いたします。

1 買手が売手の債務の一部を肩代わりした場合の輸入申告価格

結論から申し上げますと、実際の売買代金が100万円である以上は、100万円を輸入申告価格として取り扱うことが必要です。たとえ実際に送金した金額が相殺後の60万円であっても、関税の課税対象となる貨物の価値は、相殺前の総額(100万円)に基づかなければなりません。

【現実支払価格の定義と法的根拠】

輸入申告価格の決定にあたっては、関税定率法第4条第1項に規定される「現実支払価格」を正しく理解する必要があります。

関税定率法第4条(課税価格の決定の原則)

第1項 輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされたときに別表の規定により計算される価格(以下取引価格という。)とする。ただし、その取引価格が次に掲げる費用を含んでいないときは、その含まれていない限度において、当該費用をこれに加算するものとする。

ここで言う取引価格の基礎となるのが現実支払価格ですが、これについては関税定率法基本通達4-2(現実支払価格)において詳細に規定されています。

関税定率法基本通達4-2(現実支払価格)

(1) 法第4条第1項に規定する現実支払価格とは、輸入貨物に係る輸入取引につき、買手が売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物の対価として直接又は間接に現実に支払った又は支払うべき総額をいう。

直接の支払いだけでなく、間接的な支払いも含まれるという点が極めて重要です。売買代金としては100万円だが、売主が買主に対して有するその他の債務40万円分を相殺させ、60万円のみを売買代金として買主が売主に対して支払うということが行われることがありますが、この相殺された40万円分は、売手のために買手が債務を免除した、あるいは肩代わりした「間接的な支払い」に該当いたします。

仮に、インボイス等の書類上の数字を調整したとしても、実際の商品の価値が100万円である場合には100万円を商品価格として取り扱う必要がある点には十分ご注意ください。

2 相殺取引と課税価格の関係性を整理した実務表

実務において混乱しやすい相殺取引の構成を以下の表にまとめました。社内でのチェックリストとしてご活用ください。

【債務相殺がある場合の課税価格算定表】

項目名|金額の内容|課税価格への算入要否

契約上の総額|商品の本来の売買価格|全額算入する

直接支払額|実際に海外送金した金額|算入する

相殺・肩代わり額|債務の免除や相殺分|算入する(間接支払)

値引き額|純粋な商慣習上の値引き|算入しない

課税価格(申告額)|上記直接及び間接支払の合計|合計額を申告する

このように、送金額イコール申告価格ではないという事実を、実務担当者は正しく認識しなければなりません。単に帳簿上の数字を追うだけでは、知らず知らずのうちに脱税行為に加担してしまうリスクがあります。

3 輸入を継続的に行う場合に留意すべき様々な規制

貨物の輸入に関する規制は、主として関税法や関税定率法等に規定されておりますが、なかなか通常の感覚では理解できない部分も多いといえます。

上記1の説明内容についても、通常の感覚では、輸入申告価格は、単に商品価格を申告すればよいのではないか、と考えるところですが、正確な理解はむずかしいといえます。

この他にも、例えば、貨物の輸入の際に、何らかのロイヤリティを売手や第三者に対して支払う場合、当該ロイヤリティについては、輸入申告価格に加算しなければならないというのが原則です。

【ロイヤリティ加算の法的根拠】

(関税定率法第4条第1項第4号)

四 当該輸入貨物に係る特許権、実用新案権、意匠権、商標権その他これらに類するもの(中略)の使用の対価として買手により直接又は間接に支払われる費用であつて、当該輸入貨物に関連し、かつ、当該輸入貨物の輸入取引の条件として買手により直接又は間接に支払われるもの。

加算せずに輸入申告を行う場合には、過少申告となり、事後的に刑事罰や追徴課税が行われることとなります。特に、商品の代金とは別ルートで国内の権利会社や海外の親会社に支払っているロイヤリティは、税関の事後調査において最も厳しく追及される項目の一つです。

他にも、買手が負担する容器の費用や包装の費用、あるいは製造のために無償提供した金型の費用なども、課税価格に算入しなければなりません。これらを知らずに放置することは、企業にとって極めて大きな法的リスクを抱え込むことを意味いたします。

4 不適切な輸入申告に伴う厳格なペナルティ

正しい価格で申告を行わなかった場合、関税法に基づく厳しい制裁が待っています。特に相殺によって申告価格を低く見せる行為は、悪質な「アンダーバリュー」とみなされる危険性があります。

(1)追徴課税および加算税の賦課

税関の事後調査で過少申告が発覚した場合、不足税額の徴収に加え、過少申告加算税が課されます。

関税法第12条の2(過少申告加算税)

税関長は、更正(中略)があった場合には、当該納税義務者に対し、不足税額に100分の10(一定額を超える部分は100分の15)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。

(2)重加算税の適用リスク

意図的に相殺後の金額で申告書類を作成し、本来の取引総額を隠蔽したと判断された場合、さらに強力な重加算税が課されます。

関税法第12条の4(重加算税)

事実を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告をしていたときは、過少申告加算税に代え、不足税額に100分の35(一定の場合は40)を乗じた重加算税を課する。

(3)刑事罰の可能性

偽りその他不正の行為により関税を免れた場合、懲役や罰金が科される可能性もあります(関税法第110条)

一度、税関のブラックリストに掲載されると、その後の輸入において全件検査の対象となるなど、ビジネスのスピードが著しく低下し、企業の社会的信用も大きく毀損されることとなります。

5 専門家による事前リーガルチェックの重要性

他にも、輸入特有の規制は多数ありますので、可能であれば、輸入を継続的に行う最初の段階で事業計画が法的に問題ないかどうかを事前にリーガルチェックすることをお勧めいたします。また、もし既に輸入を開始しているという場合には、一度ビジネスの仕組みが問題ないかどうかを確認いただくことをお勧めします。

専門家の視点を入れることによる具体的なメリットは、以下の通りです。

一 契約書の不備の発見

売買契約書において、債務の相殺やロイヤリティの支払いがどのように規定されているかを精査し、関税評価上のリスクを事前に排除いたします。

二 適切な申告フローの構築

通関業者に対し、どのような証拠書類(相殺前のインボイスや送金証明書)を提出すべきか、適正な実務手順を指導いたします。

三 事後調査への備え

税関が事後調査に来た際、どのように説明すれば法的整合性が保たれるかを準備しておくことで、不当な加算税の賦課を防ぎます。

四 節税とコンプライアンスの両立

法令の範囲内で、加算する必要のない費用を適切に切り分け、無駄な納税を抑えつつ完璧なコンプライアンスを実現いたします。

6 弁護士へのご相談をご希望の方へ

弊事務所は、税関事後調査を含む税関対応や輸出入トラブル、広告関連法務を中心に企業法務を幅広く扱っております。代表弁護士は、輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。

弁護士でありながら通関士の専門知識を併せ持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、税関当局がどのような視点で調査を行い、どのような書類を重視するかといった実践的なアドバイスを提供することが可能です。

【当事務所が提供できる主なサポート】

一 輸入取引における課税価格算定のリーガルアドバイス

二 税関事後調査への立ち会いおよび当局との法的な交渉

三 ロイヤリティ契約や代理店契約のリーガルチェック

四 不当な更正処分に対する不服申立てや税関訴訟の代理

お困りの点等ございましたら、まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。不必要なペナルティを回避し、貴社の輸入ビジネスをより強固なものにするお手伝いをいたします。

7 まとめ:適正な関税評価がビジネスの安定を支える鍵

輸入ビジネスにおけるコンプライアンスは、単なる守りではありません。正しい法的知識に基づき、適正な申告を継続することは、税関からの信頼を獲得し、ひいては円滑な物流を実現することに繋がります。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な作業こそが、グローバルビジネスを安定させ、企業の成長を守る唯一の道です。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮してサポートを継続してまいります。

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入取引における金型代の取扱い

2023-04-16

はじめに:具体的な相談事例の紹介

本日は、工業用機械やプラスチック製品の製造委託に関連して頻繁に発生する金型代と、輸入申告価格(課税価格)の関係について詳しく解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。輸入実務において、製造を海外に委託している企業様にとっては、非常に重要かつ見落としやすい内容となっております

【相談者】

埼玉県内でプラスチック製品の製造販売を行う株式会社パーツ 代表取締役 佐藤氏

【相談内容】

「当社は数年前から、中国の提携工場に製品の製造を委託し、そのための専用金型を現地で製作してもらっています。金型代としての500万円については、量産開始前に別途海外送金で支払いを済ませております。その後、完成した製品を順次輸入しており、通関業者には製品の仕入単価が記載されたインボイスを提出して申告を依頼しています。

佐藤氏は、金型はあくまで製造のための道具であり、輸入する製品そのものの代金ではないため、製品のインボイス価格だけで申告すればよいと考えていました。ところが先日、税関から事後調査の通知が届き、金型代の支払いについて確認したいと言われました。もし金型代を申告に含めなければならなかった場合、どのようなペナルティがあるのでしょうか。また、過去に遡ってどのように修正すべきなのか、専門的な見地からのアドバイスを求めています。」

このような事例は、製造を海外に委託している企業において非常に多く見受けられます。輸入者は意図的な脱税のつもりはなくても、法的な理解不足から結果として過少申告となってしまうケースが後を絶ちません。本記事では、専門的な知見に基づき、金型代が輸入申告価格に与える影響とその適切な処理方法を詳しく解説いたします。

1 金型代と輸入申告価格の決定原則

工業機械を海外の工場に製作してもらった上で購入し、日本に輸入する場合、当該工業機械や製品の製造のために金型を作成してもらうことが一般的です。

このように金型代を輸入者側から海外の工場に対して支払っていた場合、工業機械等を輸入する際の輸入申告価格はどのように考えるべきでしょうか。

工業機械を輸入する以上は、工業機械の購入代金を輸入申告価格とすればよいのではないか、とお考えの方も多く、実際に購入代金のみを輸入申告価格としている方も多いのが実情です。

しかし、このような輸入申告は誤りですので注意が必要です。

(1)課税価格決定の原則と法的根拠

具体的には、輸入申告価格の基本的な考え方は、商品の売買価格を基礎として、当該価格に含まれていない限りで、関税定率法等に規定されている一定の加算要素を加算するというものです。

関税定率法第4条(課税価格の決定の原則)

第1項 輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされたときに別表の規定により計算される価格(以下取引価格という。)とする。ただし、その取引価格が次に掲げる費用を含んでいないときは、その含まれていない限度において、当該費用をこれに加算するものとする。

この考え方の基礎にあるものは、輸入する商品の価値を適切に申告してもらい、当該価値について関税等を課すという点にあります。輸入申告価格とは、単にインボイスに記載された数字を転記するものではなく、日本に到着した時点での貨物の真実の価値を反映していなければなりません。

(2)金型代の加算要否

したがいまして、金型がなければ当該製品を製造することはできなかった以上、金型代として輸入者が海外の工場側に対して支払ったものについては、輸入申告価格に加算することが必要となります。

これは、関税定率法第4条第1項第3号に規定される「買手により無償で提供された物品の費用(アシスト)」に該当するためです。

関税定率法第4条第1項第3号

三 当該輸入貨物の生産及び輸入取引に関連して、買手により直接又は間接に、無償で又は値引きして提供された次に掲げる物品又は役務の費用(中略)

ロ 当該輸入貨物の生産に使用された工具、金型その他これらに類するもの

たとえ金型が日本から送られたものではなく、現地の工場で製作されたものであっても、その費用を輸入者が負担している以上、それは輸入貨物の価値の一部を構成するものとみなされます。この点について、多くの輸入者が「現地で決済が終わっているから関係ない」と誤解していますが、送金実態と貨物の結びつきが重視されるのが関税評価の原則です。

2 金型代の加算方法と実務上の計算手法

金型代をどのように申告価格に反映させるかについては、主に二つの実務的な手法が認められています。これを適切に選択しなければ、過大申告や過少申告を招く恐れがあります。

(1)一括加算方式

金型の全額を、その金型を使用して製造された貨物の最初の輸入申告の際にすべて加算する方法。この方法は、管理が一度で済むというメリットがありますが、初回輸入時の納税額が非常に高額になるため、キャッシュフローへの影響を考慮する必要があります。

(2)分割加算方式(按分計算)

金型を使用して製造される予定の総数量で金型代を割り、一個あたりの製品価格に上乗せして申告する方法。

関税定率法基本通達4-12(買手により提供された物品等の費用)

買手により提供された金型等の費用を輸入貨物の課税価格に加算する場合において、当該費用をどのように配分するかについては、輸入者の申告に基づき、妥当と認められる方法(例えば、最初に輸入される貨物の価格に全額を加算する方法、予定される総生産数量に按分する方法等)によって計算して差し支えない。

按分計算を選択する場合、将来の生産予定数量を合理的に証明する書類(契約書や製造計画書など)が必要となります。生産予定が変わった場合には、修正申告等の対応が必要になることもあるため、慎重な帳簿管理が求められる点に注意が必要です。

3 実務で活用できる関税評価チェックリスト

輸入取引において、金型代以外にも加算漏れが生じやすい項目を以下の表にまとめました。ワードデータ等に貼り付けて、社内のコンプライアンス点検にご活用ください。

【輸入価格(課税価格)の算入判断基準一覧表】

確認項目|具体的な内容|算入の要否

金型・工具費|製造用の金型の製作費や償却費|算入する

原材料・部品|日本から無償提供した部品等の代金|算入する

設計・図面代|日本以外で作成された設計図等の費用|算入する

ロイヤリティ|特許権や商標権の使用料|算入する

仲介手数料|売手と買手を仲介する者への報酬|算入する

買付手数料|専ら買手のために動く代理人への報酬|算入しない

輸入港までの運賃|日本に到着するまでの海上・航空運賃|算入する

このように、貨物の純粋な仕入価格以外にも、多くの要素が課税価格に含まれる点に留意が必要です。特に買付手数料については、非常に厳格な要件があるため、自己判断は禁物となります。

4 輸出入をめぐるルール違反に対する厳格なペナルティ

貨物の輸入や輸出に関するルールは、関税法や関税定率法、これらの通達等に規定されておりますが、なかなか一般的には理解が難しい点も多く、知らずに輸出入を行うと刑事罰や追徴課税などの様々なペナルティを課されてしまうリスクがございます。

(1)アンダーバリューと脱税の罪

例えば、アンダーバリュー、すなわち、輸入する貨物の輸入申告価格を実際の貨物の購入価格よりも低額に申告した場合には脱税となりますので、刑事罰や追徴課税などのペナルティがあります。

金型代を意図的に除外して申告することは、税関の視点からはアンダーバリューの一種とみなされる可能性があります。

関税法第110条(関税を免れる罪)

第1項 偽りその他不正の行為により、関税(中略)を免れ、又は関税の還付を受けた者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

(2)行政罰としての加算税

また、意図的な隠蔽や仮装が認められない場合でも、不正確な申告に対しては行政罰としての加算税が課されます。

関税法第12条の2(過少申告加算税)

税関長は、更正(中略)があった場合には、当該納税義務者に対し、不足税額に100分の10(一定額を超える部分は100分の15)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。

関税法第12条の4(重加算税)

事実を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告をしていたときは、過少申告加算税に代え、不足税額に100分の35(一定の場合は40)を乗じた重加算税を課する。

金型代の送金記録は銀行に確実に残るため、税関事後調査において最も指摘されやすい項目の一つです。指摘を受けた場合、過去数年分の全輸入取引について遡及して追徴されることとなり、企業の経営に甚大なダメージを与える結果となります。

5 専門家による事前リーガルチェックの重要性

他にも、輸出入特有の規制は多数ありますので、可能であれば、輸出入を事前に事業計画が法的に問題ないかどうかをリーガルチェックすることをお勧めいたします。最初の段階できちんとした体制を整備しておくことで、事業を円滑に進めることが可能となります。

輸入申告価格は単に貨物の仕入価格と考えればよいわけではなく、前述した通り様々な加算要素がありますので、慎重に検討することが非常に重要です。

特に以下の点については、自社だけで判断せず、専門家の視点を入れるべきです。

一 金型代の按分計算が妥当であるか。

二 金型を無償提供する際の資産価値の算定が正しいか。

三 金型の修理費用やメンテナンス費用をどちらが負担しているか。

四 ロイヤリティ契約が輸入の条件となっているか。

これらは、関税評価上の極めてデリケートな論点であり、税関との見解の相違が生まれやすい部分です。事前に法的な根拠に基づいた整理を行っておくことで、事後調査におけるリスクを最小限に抑えることができます。

6 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出・輸入や通関上のトラブルを中心に企業法務を幅広く扱っております。お困りの点等ございましたら、まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

弁護士でありながら通関実務の深い知識を併せ持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、税関当局がどのような視点で調査を行い、どのような書類を重視するかといった実践的なアドバイスを提供することが可能です。

当事務所が提供できる主なサポート

一 輸入取引における課税価格算定のリーガルアドバイス

二 税関事後調査への立ち会いおよび当局との法的な交渉

三 修正申告や更正請求の手続代行

四 不当な課税処分に対する不服申立てや税関訴訟の代理

通関業者に申告を任せているから安心だ、と考える輸入者も多いですが、通関業者はあくまで輸入者から提供された書類に基づいて申告を行います。金型代の別途支払いのようなインボイスに載っていない情報については、輸入者自身が自覚を持って管理し、適切に伝えなければなりません。

7 まとめ:適正な関税評価がビジネスの安定を支える

輸入ビジネスにおけるコンプライアンスは、単なる守りではありません。正しい法的知識に基づき、適正な申告を継続することは、税関からの信頼を獲得し、ひいては円滑な物流を実現することに繋がります。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な作業こそが、グローバルビジネスを安定させ、企業の成長を守る唯一の道です。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮してサポートを継続してまいります。

適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です

8 補足:金型代に関する具体的な計算例

理解を深めるために、数値を用いた具体例を挙げます。

【前提条件】

一 工業機械の単価:1000万円

二 金型の製作費用:500万円(別途支払い済み)

三 予定輸入数量:10台

(1)一括加算を選択した場合

最初の1台目を輸入する際、申告価格は1000万円プラス500万円で1500万円となります。残りの9台は各1000万円で申告します。早期に納税を完了させたい場合に有効な手法。

(2)按分計算を選択した場合

500万円を10台で割り、一台につき50万円を加算します。毎回の申告価格は1000万円プラス50万円で1050万円となります。コストを平準化したい場合に適した手法。

このように、どちらの方法をとるかによって一回あたりの納税額が変わります。キャッシュフローや管理の手間に合わせて最適な方法を選択する必要があります。

9 税関事後調査への具体的な備え

税関事後調査では、過去3年から5年分の会計帳簿、銀行の送金記録、仕入先との契約書、さらには電子メールのやり取りなどが精査されることとなります。金型代の支払いがモールドフィーやツーリングコストといった名目で送金されている場合、それがどの輸入申告に対応しているかが明確でなければなりません。

【適切な管理体制の構築】

一 金型ごとの管理台帳の作成

二 送金記録と輸入申告書の紐付け

三 按分計算の根拠となる生産計画資料の保管

四 金型使用後の処置(廃棄、他社転用等)の記録

もし、これらの管理に不安がある場合は、早急に体制を見直すべきです。当事務所では、事後調査が入る前の自主点検(プリ・オーディット)も実施しております。事前の自主的な修正申告であれば、過少申告加算税が免除される可能性もあります。

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入貨物の仕様変更に伴う追加費用の取扱い

2023-04-09

はじめに:具体的な相談事例の紹介

本日は、海外メーカーに対して商品の仕様変更を依頼し、それに伴う追加費用(アレンジ費用)が発生した場合の輸入申告価格(課税価格)の決定方法について解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられた相談内容に基づいた、以下の事例をご覧ください。

【相談者】

東京都内でアウトドア用品の輸入販売を営む株式会社マウンテン 代表取締役 A氏

【相談内容】

「当社は、海外のメーカーが既製品として販売しているテントを輸入する計画を立てました。しかし、日本のキャンプ事情に合わせて、テントの入り口部分にメッシュパネルを追加し、さらに耐水性能を高めるための素材変更を依頼しました。メーカーからは、この仕様変更のために一型あたり50万円の『仕様変更アレンジ費用』を別途請求されました。商品の単価自体は変わりませんが、この50万円の費用を商品の代金とは別に海外送金で支払いました。

通関業者に相談したところ、この費用は商品の代金とは別物だから輸入申告価格に含めなくてよいのではないかと言われましたが、確信が持てません。もし事後調査で指摘を受けると、過去の輸入分すべてに影響するため、法的な根拠に基づいた正確な取扱いを知りたいと考えております」

このような事例は、日本の市場ニーズに合わせたカスタマイズを積極的に行う企業において非常に多く見受けられます。商品の仕様変更に要した費用が、関税法上の「課税価格」にどのように影響するのか、専門的な見地から解説いたします。

1 商品の仕様の修正を求めた場合の輸入申告価格

ある商品を海外から輸入する場合、輸入申告価格は仕入れ代金が基礎となり、関税定率法等を踏まえ、加算する必要がある費用について加算することになります。

では、海外のメーカーが販売する商品の仕様の修正を求め、修正後の商品を輸入する場合、輸入申告価格はどのように考えるべきでしょうか。商品の仕様の修正に一定額の費用が発生し、当該アレンジ費用を日本に拠点を有する輸入者側が負担したとします。

輸入申告価格の基本的な考え方は、商品の売買価格を基礎として、当該価格に含まれていない限りで、関税定率法等に規定されている一定の加算要素を加算するというものです。この原則は関税定率法第4条第1項に規定されています。

(関税定率法第4条 課税価格の決定の原則)

第1項 輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされたときに別表の規定により計算される価格(以下取引価格という。)とする。ただし、その取引価格が次に掲げる費用を含んでいないときは、その含まれていない限度において、当該費用をこれに加算するものとする。

この考え方の基礎にあるものは、輸入する商品の価値を申告してもらい、当該価値について関税等を課すという点にあります。輸入申告価格とは、単にインボイスに記載された数字を転記するものではなく、輸入される貨物が日本に到着した時点での「真実の価値」を反映していなければなりません。

設例の場合ですと、商品の仕様の修正に一定額の費用が発生し、それを輸入者側が負担したとのことですので、当該費用も輸入申告価格に加算する必要があるものと考えられます。たとえインボイス上の単価が変わっていなくても、その商品が完成するために不可欠な開発費や変更費用を輸入者が負担している場合、それは「現実支払価格」の一部、あるいは「算入すべき費用」として扱われます。

通常の感覚では、開発費やアレンジ費用は「一度限りの経費」であり、個々の商品の価格とは別物だと捉えがちですが、関税評価上はそれらを含めて一つの「貨物の価値」を構成するとみなされます。あくまでも輸入申告価格とは、商品の仕入れ代金を申告するものではなく、当該商品の価値を適切に申告するという視点に焦点が当たっていると考えることが重要です。

ここで、参考となる通達を確認しましょう。

(関税定率法基本通達4-2 現実支払価格)

(1) 法第4条第1項に規定する現実支払価格とは、輸入貨物に係る輸入取引につき、買手が売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物の対価として直接又は間接に現実に支払った又は支払うべき総額をいう。

メーカーに対して支払った仕様変更の費用は、まさに「売手に対し、当該輸入貨物の対価として直接支払った総額」に含まれるべきものです。したがって、これを申告から除外することは過少申告に該当いたします。

2 輸入申告価格における実務的な加算項目の整理

輸入申告価格を算出する際、どのような費用を加算すべきかを体系的に理解するために、以下の表を作成いたしました。社内でのチェックリストとしてご活用ください。

【輸入申告価格(課税価格)における加算要素の判定表】

項目 | 内容の具体例 | 課税価格への算入要否 |

仕様変更費用 | デザイン変更、素材変更に伴う追加代金 | 算入する |

金型・工具費 | 買手が無償提供した金型の製作費や償却費 | 算入する |

原材料のアシスト | 日本から無償提供したボタンやファスナーの代金 | 算入する |

仲介手数料 | 売手と買手の間を仲介する者に支払う手数料 | 算入する |

ロイヤリティ | 商標権や特許権の使用料(輸入条件である場合) | 算入する |

買付手数料 | 専ら買手のために動く代理人に支払う手数料 | 算入しない |

輸入港までの運賃 | 日本に到着するまでの海上運賃や航空運賃 | 算入する |

この表からもわかる通り、買付手数料を除き、輸入取引に関連して発生した費用の多くは課税価格に算入する必要があります。少し乱暴な言い方をすると、輸入取引の過程で当該商品のために発生した費用は基本的には輸入申告価格に加算する必要があると考えておいた方が安心といえます。

3 買付手数料と仲介手数料の峻別

輸入申告価格にはご注意ください。貨物の輸入や輸出に関する規制は、関税法や関税定率法、それらの通達等に規定されておりますが、なかなか通常の感覚では理解できない部分も多く、また、あまり知られていないものの重要なルールも相当程度ございます。

例えば、貨物の輸入のために現地の人にサポートしてもらう場合、当該サポーターに支払う委託料については、例外的に買付代理人に対して手数料と構成できる場合は除き、輸入申告価格に加算しなければならない場合も多く、加算せずに輸入申告を行う場合には、過少申告となり、事後的に追徴課税が行われることとなります。

ここで言う「買付代理人」とは、輸入者のために、輸出者を探し、注文を伝え、検品や船積みの手配などを輸入者の計算と責任において行う者のことを指します。

これに対し、売手と買手の間に入って取引を成立させる「仲介人」に支払う手数料は、算入対象となります。実務上、このパートナーが「買付代理人」に該当するかどうかは、単に名称がエージェントであるかどうかではなく、契約の実態やリスクの負担関係によって厳格に判断されます。もし実態が仲介人であるにもかかわらず買付手数料として非課税で申告していると、税関事後調査において重いペナルティを課されることになります。

4 不適切な輸入申告に伴う法的リスクとペナルティ

正しい価格で申告を行わなかった場合、関税法に基づく厳しい制裁が待っています。

一 追徴課税の発生

不足していた関税および輸入消費税の徴収

二 過少申告加算税

不足税額の10パーセント(一定額を超える部分は15パーセント)の徴収

三 重加算税

事実を隠蔽または仮装したとみなされた場合、35パーセントという極めて重い罰則的加算税

四 刑事罰

偽りその他不正の行為により関税を免れた場合、懲役や罰金が科される可能性もあります(関税法第110条)

仕様変更のアレンジ費用などは、送金記録が銀行に残るため、税関事後調査において最も指摘を受けやすい項目の一つです。「知らなかった」という言い訳は通用せず、過去3年から5年分の取引すべてを遡って追徴されることがあり、企業の経営に多大な影響を及ぼします。

5 専門家による事前リーガルチェックの重要性

他にも、輸出入特有の規制は多数ありますので、可能であれば、事前に事業計画が法的に問題ないかどうかをリーガルチェックすることをお勧めいたします。

特に以下のような場合には、専門的な検討が不可欠です。

一 今回のように商品の仕様を特別に変更し、別途費用を支払う場合

二 現地のエージェントに対して、買付手数料の名目で多額の支払いがある場合

三 輸入貨物に係るロイヤリティを、売手以外の第三者(権利会社)に支払っている場合

四 製造に必要な金型や材料を無償提供(アシスト)している場合

これらはすべて、関税評価上の「落とし穴」になりやすい論点です。輸入申告を行う通関業者は、輸入者から渡された書類に基づいて申告を行いますが、その書類の元となる契約の実態や、別途の海外送金の内容まで把握しているわけではありません。最終的な納税責任を負うのは輸入者自身であることを忘れてはなりません。

6 弁護士へのご相談をご希望の方へ

弊事務所は、税関事後調査を含む税関対応や輸出入トラブル、広告関連法務を中心に企業法務を幅広く扱っております。代表弁護士は、輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。

事後調査が来てから慌てるのではなく、輸入を開始する前の段階で正しい申告フローを構築しておくことこそが、最も効果的なリスクマネジメントとなります。

当事務所では、具体的に以下のサービスを提供しております。

一 輸入取引スキームの適法性診断および関税評価のアドバイス

二 買付委託契約や売買契約書の作成およびリーガルチェック

三 税関事後調査における立ち会い、および指摘事項に対する抗弁

四 不当な課税処分に対する不服申立て手続きの代理

お困りの点等ございましたら、まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

7 まとめ:適正な関税評価がビジネスの安定を支える

輸入ビジネスにおけるコンプライアンスは、単なる守りではありません。正しい法的知識に基づき、適正な申告を継続することは、税関からの信頼を獲得し、ひいては円滑な物流を実現することに繋がります。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な作業こそが、グローバルビジネスを安定させ、企業の成長を守る唯一の道です。当事務所は、その法的基盤を盤石にするためのパートナーとして、常に最善の助言を提示いたします。

適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

保税地域における貨物転売と輸入取引の特定

2023-03-27

はじめに:具体的な相談事例の紹介

本日は、貨物を日本の保税倉庫に搬入した後に転売が行われた場合の、関税法および関税定率法上の取り扱いについて詳しく解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。

【相談者】

東京都内で海外製の精密機器を輸入販売している株式会社サクラ 代表取締役 A氏

【相談内容】

「当社は先日、ドイツの製造メーカーであるB社から、新型の産業用センサーを20台購入いたしました。貨物はすでに成田空港の保税蔵置場に搬入されており、輸入申告の手続きを進めようとしていたところです。しかし、輸入許可が下りる直前のタイミングで、以前から商談を進めていた国内の取引先である株式会社ヒマワリから、このセンサーを至急ですべて買い取りたいという強い要望がありました。

当社としては、保税地域にある外国貨物の状態のまま、株式会社ヒマワリに対して当該製品を転売することを検討しております。この場合、税関へ申告する際の課税価格は、当社がドイツのB社から購入した際の価格でよいのでしょうか。それとも、株式会社ヒマワリへ販売する際の転売価格で申告しなければならないのでしょうか。もし申告価格を誤った場合、後から大きなペナルティを受ける可能性があると聞き、法的な根拠に基づいた適切な対応を知りたいと考えております。」

このような事例は、国際物流の現場ではしばしば発生いたします。特に、船便や航空便の到着後に国内での需要が急増した場合や、在庫の最適化を図る際に保税地域内での権利移転が行われることがあります。この際、誰が実質的な買手であり、どの契約が輸入取引に該当するのかを正確に判断することが、適正な関税申告の第一歩となります。

1 保税倉庫で保管中の売買と輸入取引の考え方について

貨物を日本の保税倉庫に搬入後、輸入許可が下りる前に、当該貨物の売買が行われた場合の輸入取引の考え方はどのように整理されるでしょうか。

ここで重要となるのが、関税定率法上の輸入取引という概念の定義です。輸入申告価格、すなわち課税価格を決定するためには、まず現実に日本に貨物が到着することとなった直接の原因を特定しなければなりません。

【輸入取引の法的定義と根拠法令】

輸入取引の定義については、関税定率法第4条第1項、および同法基本通達4-1(1)において、次のように明確に規定されています。

(関税定率法基本通達4-1 輸入取引の意義)

法第4条第1項に規定する輸入取引とは、本邦に拠点を有する者が買手として、当該輸入貨物を本邦に到着させることを目的として、売手との間で行った売買をいい、現実に当該貨物が本邦に到着することとなった原因としての取引を指す。

この定義に基づき、冒頭の事例における二つの取引を法的に分析してみましょう。

(1)ドイツのB社と株式会社サクラとの取引

この取引は、日本に拠点を有する株式会社サクラが買手となり、センサーを日本に到着させることを目的としてドイツの売手と行った売買です。現実に貨物がドイツから日本へ発送され、保税地域に到着した直接の原因は、紛れもなくこの取引にあります。

(2)株式会社サクラと株式会社ヒマワリとの取引

この取引は、貨物がすでに日本の保税地域に到着した後に、国内に拠点を持つ当事者間で行われた売買です。株式会社ヒマワリとの契約があったから貨物が日本に到着したわけではなく、到着後に単に所有権が移転したに過ぎません。したがって、この取引はあくまでも日本国内における国内取引という性質を持ちます。

以上のような法的な構成を前提に考えますと、たとえ輸入許可前に転売が行われたとしても、当該貨物に係る輸入取引は(1)のB社とサクラ社との間の取引に該当することとなります。

したがって、輸入申告における課税価格の基礎となるのは、当初のドイツメーカーからの仕入れ価格であると考えて問題ないでしょう。

実際に輸入許可が下りるまでの間に複数の取引が行われている場合には、貨物が日本に到着することとなった直接の取引が何であるかを特定することが重要です。

2 保税地域と外国貨物の法的性質に関する理解

保税地域とは、関税の徴収を保留したまま外国貨物を置くことができる場所として税関長が許可した場所です。関税法上、貨物は輸入許可を受けるまでは外国貨物として厳格に管理されます。

(関税法第2条第1項第3号 外国貨物の定義)

外国から本邦に到着した貨物(輸出の許可を受けた貨物を含む)で、輸入の許可がされる前のものをいう。

(関税法第30条 外国貨物を置く場所の制限)

外国貨物は、原則として保税地域以外の場所に置いてはならない。

保税地域内で外国貨物の転売を行うこと自体は、商慣習として認められており、直ちに違法となるものではありません。しかし、輸入申告を行う段階では、誰が納税義務者としての買手であるかを確定させる必要があります。もし、転売価格(利益が上乗せされた価格)を基礎として申告すべきケースであるにもかかわらず、低い仕入れ価格で申告を続けていると、脱税行為とみなされる危険性があります。

3 輸入申告価格の決定と加算要素の精査

輸入申告価格は、単に貨物の仕入れ価格と考えればよいわけではありません。関税定率法第4条第1項に基づき、取引価格に一定の費用が含まれていない場合には、それらを加算して課税価格を算出する必要があります。

主な加算要素の例

一 輸入港までの運賃および保険料

二 買手により負担される仲介手数料その他の手数料(買付手数料を除く)

三 輸入貨物の生産に関連して、買手により無償で提供された金型や原材料の費用

四 輸入貨物に係る特許権や商標権の使用の対価(ロイヤリティ)

保税地域での転売が絡む場合、当初の輸入取引に関連して別途発生しているコストがないかを慎重に検討しなければなりません。例えば、サクラ社がドイツのメーカーに対して製造用の資材を無償提供していた場合、その費用は当初の仕入れ価格に加算して申告する必要があります。

4 実務で活用できる輸入取引判定および課税価格チェック表

以下に、チェック表を作成いたしました。社内のコンプライアンス維持や、通関業者との情報共有にご活用ください。

| 確認項目 | 具体的な確認内容 |

|輸入取引の特定|日本に到着する直接の原因となった契約はどれか|

|当事者の認定|実質的に自己の計算と責任で輸入を行う者は誰か|

|取引価格の妥当性|インボイスの価格は真実の取引に基づいているか|

|加算要素の有無|運賃や保険料が申告価格に含まれているか|

|       |仲介料やロイヤリティの支払いを別途行っていないか|

|       |金型等の無償提供(アシスト)をしていないか|

|書類の保存管理|インボイス、契約書、送金記録を保管しているか|

|他法令の適合性|食品衛生法や薬機法等の輸入許可は得ているか|

5 輸出入をめぐるルール違反に対する厳格なペナルティ

貨物の輸入や輸出に関するルールは、関税法や関税定率法、これらの通達等に規定されておりますが、なかなか一般的には理解が難しい点も多く、知らずに輸出入を行うと刑事罰や追徴課税などの様々なペナルティを課されてしまうリスクがございます。

(1)過少申告加算税と延滞税の徴収

税関事後調査等により、申告価格の誤りや加算要素の漏れが指摘された場合、不足していた税額に加えて過少申告加算税が課されます。原則として不足税額の10パーセント、あるいは15パーセントという重い負担となります。さらに、本来の納期限からの期間に応じて延滞税も徴収されることとなります。

(2)重加算税の賦課

輸入申告価格を実際の貨物の価格よりも低額に申告した場合など、事実を隠蔽し、又は仮装したと判断された場合には、さらに強力な重加算税が課されることとなります。

(3)刑事罰の適用

悪質な脱税行為や禁止物品の輸入等とみなされた場合には、刑事罰の対象となる可能性も否定できません。

(関税法第110条 関税を免れる罪)

偽りその他不正の行為により、関税を免れ、又は関税の還付を受けた者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

輸入申告価格は、単に貨物の仕入れ価格と考えればよいわけではなく、様々な加算要素がありますので、慎重に検討することが非常に重要です。

6 専門家によるリーガルチェックの重要性と具体的なメリット

他にも、輸出入特有の規制は多数ありますので、可能であれば、輸出入を継続的に行う最初の段階で事業計画が法的に問題ないかどうかをリーガルチェックすることをお勧めいたします。最初の段階できちんとした体制を整備しておくことで、事業を円滑に進めることが可能となります。

特に保税地域内での転売が絡むケースでは、取引価格の妥当性だけでなく、誰が名実ともに輸入者として法的責任を果たすべきかという点が複雑になりがちです。税関による事後調査では、こうした当事者間の契約関係や資金の流れ、さらには社内のメールのやり取りまでが徹底的に調査されることとなります。

当事務所が提供できる主なサポート内容

一 輸入取引スキームの適法性診断

二 関税評価(課税価格算定)の妥当性に関するリーガルアドバイス

三 輸入代行契約や保税転売に関する売買契約書の作成および精査

四 税関事後調査への立ち会いおよび当局との交渉支援

7 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出・輸入や通関上のトラブルに関するご相談を幅広くお受けしております。

弁護士でありながら通関実務の深い知識を持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、税関当局がどのような視点で調査を行い、どのような書類を重視するかといった実践的なアドバイスを提供することが可能です。

輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。お悩みをご相談いただくことで、不必要なペナルティを回避し、事業の健全な発展を支える一助となります。

結びに代えて:適正な申告がビジネスの安定を支える鍵

輸入ビジネスにおけるコンプライアンスは、単なる守りではありません。正しい法的知識に基づき、適正な申告を継続することは、税関からの信頼を獲得し、ひいては円滑な物流を実現することに繋がります。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

もし、現在の取引体制や申告価格の算定方法に少しでも不安を感じていらっしゃるのであれば、あるいは新しい商流の構築を検討されているのであれば、大きな問題に発展する前に、ぜひ一度専門家のリーガルチェックを受けられることを強くお勧めいたします。

適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

第三国を経由する輸入取引の課税価格決定

2023-03-20

はじめに:具体的な相談事例のご紹介

本日は、海外から貨物を輸入する際、直行便ではなく第三国を経由して日本に到着する場合の輸入申告価格の決定方法について解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容に基づいた、架空の事例をご紹介いたします。輸入実務に携わる企業様にとって、非常に示唆に富む内容となっております

【相談者】

東京都内で精密機器の輸入卸売業を営む株式会社オーシャン 代表取締役 山田氏

【相談内容】

「当社は今回、ドイツのメーカーであるB社から高性能なセンサーユニットを輸入することになりました。売買契約は当社(A)とドイツのB社との間で締結されています。しかし、物流の効率化のため、貨物は一旦シンガポールにあるB社の物流拠点(C国)に送られ、そこで他の製品と混載された後、日本に向けて発送される予定です。

この場合、日本への直接的な発送元はシンガポールとなりますが、輸入申告の際の価格は、ドイツのB社と契約した際の価格で良いのでしょうか。それとも、シンガポールを経由しているため、何か特別な計算や別の中継料を考慮しなければならないのでしょうか。税関の事後調査で指摘を受けるのが不安で、法的な根拠に基づいたアドバイスをいただきたいと考えています」

このような事例は、近年のグローバルサプライチェーンの複雑化に伴い、非常に多く見受けられます。貨物が第三国を経由した場合、誰が売手であり、どの取引が輸入取引に該当するのかを正確に特定することは、適正な関税申告の第一歩となります。本記事では、専門的な知見に基づき、その判断基準を詳しく解説いたします

1 貨物が第三国を経由した場合の輸入取引の特定

海外から貨物を輸入する際、例えば、日本に所在するA氏が海外のB氏から商品を輸入するとしましょう。この場合、海外から日本に商品を輸送する過程で、第三国であるC国を経由して日本に届いた場合、輸入申告価格の前提となる輸入取引はA氏とB氏との間で発生した売買であると考えて良いのでしょうか。それとも、直接的な商品の輸出国がC国となりますので、輸入取引は存在せず、例外的な取引に該当するとして輸入申告価格を考える必要があるでしょうか。

ここで、そもそもの輸入取引の定義にさかのぼって考えてみます。輸入取引とは、日本に拠点を有するものが買手として貨物を日本に到着させることを目的として売手との間で行った売買のことを指し、現実に当該貨物が日本に到着することとなった原因とした取引のことを指します。これについては、以下の法令及び通達に規定があります。

(関税定率法第4条第1項 課税価格の決定の原則)

輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされたときに別表の規定により計算される価格(以下取引価格という。)とする。

(関税定率法基本通達4-1(1) 輸入取引の意義)

法第4条第1項に規定する輸入取引とは、本邦に拠点を有する者(中略)が買手として、当該輸入貨物を本邦に到着させることを目的として、売手との間で行った売買をいい、現実に当該貨物が本邦に到着することとなった原因としての取引をいう。

そうしますと、確かに直接的な輸出国は第三国であるC国となりますが、輸入取引該当性を判断する上では、直接的な輸出国がどこかということは必ずしも重要ではなく、あくまで実際に日本に商品が到着することとなった原因である売買取引は何かということが中心となることがわかります。したがって、A氏とB氏との間の売買取引が輸入取引に該当すると考えて問題ないものと考えられます。

たとえシンガポールで貨物の積み替えや一時的な保管が行われたとしても、当初のドイツB社と日本A氏との契約において、その貨物の最終目的地が日本であることが明確であれば、そのドイツB社との契約こそが本邦に到着することとなった原因としての取引に他なりません。この判断を誤り、中継地の業者との事務的なやり取りを取引と誤認してしまうと、課税価格の算定根拠そのものが崩れてしまうため、細心の注意が必要です。

2 輸入申告価格の算定と実務上の確認ポイント

貨物の輸入取引を特定した後は、その取引価格に加算すべき要素や除外すべき要素を精査しなければなりません。特に第三国を経由する場合、積み替え費用や保管料が誰によって負担され、それがインボイス価格に含まれているのか、あるいは別途支払われているのかを確認することが重要となります。

実務において判断を誤りやすいポイントを以下の表にまとめました。

【輸入取引の特定と課税価格の判断基準表】

取引の類型|輸入取引の該当性|課税価格の基礎となる価格|留意すべき法的事項|

--------|--------|--------|--------|

直接貿易(BからA)|該当する|BとAの売買価格|加算要素の有無を確認|

第三国経由(BからC経由A)|該当する(原因取引)|BとAの売買価格|C国での付加価値の有無|

第三国での転売(BからC,CからA)|CからAが該当|CとAの売買価格|BとCの価格は不採用|

輸入代行利用|実質的買手との取引|実質的当事者の売買価格|代行手数料の加算要否|

上記の通り、第三国を経由していても、単なる運送上の都合であれば当初の売買価格が採用されます。しかし、C国において貨物に実質的な加工が施されたり、C国の業者との間で新たな売買契約(転売)が締結されたりした場合には、その新たな取引が輸入取引となる可能性があります。具体的なビジネスの内容を踏まえて、どのような内容を特に注意すべきかを把握した上で、輸入関連の法令に照らして適切となるように、日々のビジネスの内容を精査していくといった作業が必要となります。

3 買付手数料と課税価格の加算リスク

輸入や輸出を継続的に業として行う場合には、ご注意ください。貨物の輸入や輸出に関する規制は、関税法や関税定率法等に規定されておりますが、なかなか通常の感覚では理解できない部分も多く、また、あまり知られていないものの重要なルールも相当程度ございます。

例えば、貨物の輸入のために現地でパートナーに動いてもらう場合、パートナーに支払う委託料については、例外的に買付代理人に対して手数料と構成できる場合は除き、課税価格に加算しなければならない場合も多く、加算せずに輸入申告を行う場合には、過少申告となり、事後的に追徴課税が行われることとなります。ここで、買付手数料として加算が不要となるための考え方としては、関税定率法基本通達を踏まえますと。買付けに関し買手を代理する者に対し、当該買付けに係る業務の対価として支払われる手数料(以下買付手数料という。)は、当該買付けを代理する者が自己の計算と危険負担において当該業務を行っていないと認められる場合に限り、課税価格に算入しない、と解されております。

より具体的には、そのパートナーが売手(B社)からも利益を得ていないか、買手(A氏)の指示に従って動いているか、独立した計算で動いていないかといった実態が問われます。契約書の名称が手数料となっていても、実態が仲介料(売手と買手の双方を媒介するもの)と判断されれば、課税価格に算入しなければなりません。この判定は税関の事後調査において非常に厳しくチェックされる項目の一つです。

4 税関事後調査のリスクと事前対策の重要性

税関事後調査とは、貨物の輸入許可から一定期間が経過した後に、税関が輸入者の事業所などを訪れ、申告が正しかったかを確認する調査のことです。輸入申告の際には通関業者に任せきりであっても、事後調査で責任を問われるのは輸入者本人です

不適切な申告が発覚した場合のペナルティは以下のようなものがあります

一 追徴課税の発生

不足していた関税及び輸入消費税の徴収

二 過少申告加算税

不足税額の10パーセント(一定額を超える部分は15パーセント)の賦課

三 延滞税

納期限からの日数に応じた利息相当額の徴収

四 重加算税

事実を隠蔽または仮装したと判断された場合、35パーセントという極めて重い税率の適用

他にも、輸出入特有の規制は多数ありますので、可能であれば、輸出入を継続的に行う最初の段階で事業計画が法的に問題ないかどうかを事前にリーガルチェックすることをお勧めいたします。特に、第三国を経由するような複雑な物流スキームや、現地エージェントを利用する形態では、一度誤った申告方法が定着してしまうと、過去数年分の全取引が追徴対象となる恐れがあるため、早期の改善が不可欠です。

5 弁護士による専門的サポートのご案内

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。輸出入トラブルや通関トラブル、広告関連法務を中心に企業法務を幅広く扱っておりますので、お困りの点等ございましたら、まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです

【当事務所が提供できる主なサービスのご紹介】

(1)事業計画のリーガルチェック

これから輸出入ビジネスを開始される企業様、または新しい取引スキームを構築される企業様に対し、関税法及び関税定率法の観点からリスク診断を行います。

(2)税関事後調査への対応支援

実際に税関から事後調査の通知が来た際、調査への立ち会いや、税関当局との法的な交渉、意見書の作成などを行います。

(3)関税評価(課税価格算定)の妥当性精査

買付手数料、ロイヤリティ、無償提供物品(アシスト)など、判断が難しい加算要素について、適切な申告ができるよう指導いたします。

(4)不服申立て及び訴訟代理

税関による更正処分や過少申告加算税の賦課に対し、納得がいかない場合の不服申立て(審査請求)や税関訴訟の手続きを行います。

6 まとめ:適正な通関こそがビジネスを安定させる唯一の道

輸入ビジネスにおいて、貨物が無事に届くことは当然の目的ですが、その背後にある税務・法務的な適正性を疎かにしては、企業の継続的な発展は望めません。特に今回解説した第三国経由の取引や、現地パートナーへの支払いといった論点は、専門的な法的判断を要する部分です。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

正しい法令知識に基づき、透明性の高い取引体制を構築すること。それが、税関からの信頼を獲得し、ひいては円滑な物流を実現することに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。

適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

日本在住の当事者間の売買取引と輸入通関

2023-03-13

はじめに:相談事例

本日は、日本国内に拠点を置く当事者同士で行われる売買契約に基づき、海外から貨物を引き取る際の法的な取扱いについて解説いたします。まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談内容を模した、架空の事例をご紹介いたします。

【相談者】

東京都内で電子部品の卸売業を営む株式会社エー 代表取締役 B氏

【相談内容】

「当社は今回、大阪に本社がある株式会社シーから、産業用ロボットのパーツを100セット購入する契約を締結しました。株式会社シーは、その在庫をベトナムの提携倉庫で保管しており、今回の契約に基づき、ベトナムから日本の当社指定の倉庫へ直接配送されることになっています。

代金の支払いは日本円で株式会社シーの国内口座へ振り込みます。この取引は日本国内の法人同士の売買であり、決済も国内で行われるため、通常の国内取引として処理すればよいと考えていました。しかし、通関業者から『これは関税法上の輸入取引に該当するため、適切な課税価格の申告が必要だ』と指摘されました。国内企業同士の売買であっても、輸入通関において特別な注意が必要なのでしょうか。また、どのような価格を税関に申告すべきなのでしょうか」

このような事例は、サプライチェーンがグローバル化した現代において、中小企業や個人事業主の間でも非常に多く見受けられます。一見すると国内取引に思える場合でも、貨物の物理的な移動が国境を越える場合、そこには「輸入取引」としての法的性質が宿ります。本記事では、専門的な知見に基づき、その判断基準を詳しく解説いたします。

1 日本在住の当事者間での売買に基づく輸入の法的性質

輸入というと、通常のイメージでは、日本在住の法人又は個人が、海外の法人又は個人から商品を仕入れることを指します。では、日本在住の当事者間での売買に基づき輸入する場合、何か異なる対応が必要になるのでしょうか。

例えば、日本に所在する法人Aが、同じく日本に所在する法人Bから、法人Bが海外で保管している商品を購入した場合を想定しましょう。このような場合には、そもそも日本に所在する法人同士の取引である以上、通常の輸入とは考えられないのではないか、というイメージをお持ちになる方もいるかもしれません。

【輸入取引の定義と法的根拠】

ここで、そもそもの輸入取引の定義にさかのぼって考えてみます。関税定率法第4条第1項、および同法基本通達4-1(1)によれば、輸入取引の定義は以下のように定められています。

【関税定率法基本通達4-1 輸入取引の意義】

本邦に拠点を有する者が買手として、当該輸入貨物を本邦に到着させることを目的として、売手との間で行った売買をいい、現実に当該貨物が本邦に到着することとなった原因としての取引を指す。

この定義を前提に考えますと、買手は日本(本邦)に拠点を有することが必要ですが、売手は必ずしも日本国外に拠点を有する必要はありません。つまり、売手が日本国内の法人であっても、その売買が原因となって貨物が海外から日本へ到着するのであれば、それは法的な輸入取引に該当することとなります。

そのため、買手のみではなく、売手も日本に所在するような日本国内での通常の取引に思われる場合でも、輸入取引には問題なく該当することとなります。この辺りは、なかなか通常のイメージとは乖離する部分でもありますが、基本的な定義やルールを出発点に考えていくことが肝要です。

2 日本国内当事者間の取引における買手の認定と責任

輸入申告において誰が「輸入者(買手)」となるかは、納税義務の所在を決める極めて重要な問題です。関税法上、輸入者とは「貨物を輸入する者」を指しますが、実務的には「自己の計算と責任において貨物を輸入する者」と解釈されます。

(関税法第2条 定義)

第1項第1号 輸入 外国貨物を本邦に(保税地域を経由するものについては、保税地域を経由して本邦に)引き取ること(本邦において使用し、又は消費することを含む。)をいう。

日本国内の法人Bから商品を買った法人Aが、自らの名義で輸入申告を行い、関税を支払う場合、法人Aが買手となります。この際、税関に申告する価格は、海外の製造業者から法人Bが仕入れた価格ではなく、法人Aと法人Bとの間で合意された国内売買価格が基礎となります。なぜなら、貨物が日本に到着する直接の原因となったのは、AとBの間の契約だからです。

3 輸入申告価格(課税価格)の算定における注意点

輸入申告価格の算定にはご注意ください。貨物の輸入や輸出に関するルールは、関税法や関税定率法、これらの通達等に規定されておりますが、なかなか一般的には理解が難しい点も多く、知らずに輸出入を行うと追徴課税を含む様々なペナルティを課されてしまうリスクがございます。

(関税定率法第4条 課税価格の決定の原則)

第1項 輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされたときに別表の規定により計算される価格(以下、取引価格という。)とする。ただし、その取引価格が次に掲げる費用を含んでいないときは、その含まれていない限度において、当該費用をこれに加算するものとする。

ここで特に見落とされやすいのが、ライセンス料(ロイヤリティ)の扱いです。

例えば、輸入する貨物のライセンス料を輸出者側等に支払っている場合には、当該ライセンス料については、課税価格に加算しなければならず、加算せずに輸入申告を行う場合には、過少申告となり、事後的に追徴課税が行われることとなります。

【ライセンス料加算の条件】

関税定率法第4条第1項第4号によれば、以下の条件を満たすロイヤリティは加算対象となります。

一 当該輸入貨物に関連していること。

二 当該輸入貨物の輸入取引の条件として買手により直接又は間接に支払われること。

日本国内の当事者間取引であっても、買手Aが海外の権利者に対して別途ロイヤリティを支払っている場合、その額を国内売買価格に上乗せして申告しなければなりません。

4 実務で活用できる輸入申告時のチェック表

以下に、日本国内当事者間での取引において、輸入者が確認すべきポイントを整理した表を掲載いたします。ワードデータとしてそのままコピーして、社内のコンプライアンス管理にご活用ください。

【日本国内当事者間取引における輸入申告確認事項一覧表】

確認カテゴリー|具体的な確認内容|

--------|--------|

輸入取引の該否|貨物が海外から日本へ到着する原因となった契約か|

買手の特定|自己の計算と責任で貨物を引き取る者は誰か。|

申告価格の基礎|当事者間で合意された売買価格(決済価格)か。|

ライセンス料|商標権や特許権の対価を別途支払っていないか。|

無償提供物品|製造用の金型や材料を無償で提供していないか。|

運賃・保険料|輸入港までの費用が売買価格に含まれているか。|

このような表を用いて、一つひとつの項目を精査していくことが、不備のない申告への近道となります。

5 加算要素としての「買手による無償提供費用」

日本国内の法人Bが海外の工場に製造を委託し、それを法人Aが購入する場合、Aが製造に必要な材料や金型をB経由、あるいは直接工場へ無償提供することがあります。これを「アシスト費用」と呼び、課税価格への加算が必要です。

(関税定率法第4条 第1項第3号)

三 当該輸入貨物の生産及び輸入取引に関連して、買手により直接又は間接に、無償で又は値引きして提供された次に掲げる物品又は役務の費用(中略)

ロ 当該輸入貨物の生産に使用された工具、金型その他これらに類するもの。

国内取引の感覚では「材料を渡して作ってもらった」という単純な話に思えますが、関税評価上は、その材料の価値も「貨物の価値」の一部として構成されるため、申告価格に反映させなければなりません。これを知らずに製品価格のみで申告すると、税関事後調査で過少申告を指摘される主たる原因となります。

6 税関事後調査とペナルティのリスク

他にも、輸出入特有の規制は多数ありますので、可能であれば、輸出入を継続的に行う最初の段階で事業計画が法的に問題ないかどうかをリーガルチェックすることをお勧めいたします。最初の段階できちんとした体制を整備しておくことで、事業を円滑に進めることが可能となります。

不適切な申告が発覚した場合のペナルティには、以下のようなものがあります。

【過少申告加算税】

税関による更正(税額の訂正)が行われた場合、不足税額に加えて過少申告加算税が課されます。原則として不足税額の10パーセント(一定額を超える部分は15パーセント)という重い負担となります。

【重加算税】

納税義務者がその税額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告をしていたときは、当該納税義務者に対し、過少申告加算税に代え、その額の計算の基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。

一度、重加算税を課されると、その後の輸入通関において全件検査の対象となるなど、ビジネスのスピードに甚大な悪影響を及ぼすことになります。また、法令遵守体制に疑義を持たれることで、企業の社会的信用も大きく毀損されることとなります。

7 専門家によるリーガルチェックの有用性

日本国内の当事者間取引だからといって、安易な判断を下すことは極めて危険です。特に、以下のような場合には、専門家による事前のチェックを受けることを強く推奨いたします。

一 取引価格が市場価格と著しく乖離している場合

二 ライセンス料の支払先が、売手ではない第三者である場合

三 製造用の資材や金型を日本から送っている場合

四 輸出入代行業者を利用しており、責任の所在が不明確な場合

これらは、関税評価上の「落とし穴」になりやすいポイントです。事前に法的な精査を行うことで、予期せぬ追徴課税のリスクを最小限に抑えることが可能となります。

8 弁護士へのご相談をご希望の方へ

弊事務所は、税関事後調査を含む税関対応や輸出入トラブルを中心に企業法務を幅広く扱っております。代表弁護士は、輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。

弁護士でありながら通関士の専門知識を併せ持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、税関当局がどのような視点で調査を行い、どのような書類を重視するかという実務的なアドバイスが可能です。

具体的には、以下のようなサポートを提供しております。

一 輸入取引スキームの適法性診断

二 関税評価(課税価格の算定)の妥当性に関する法的意見書の作成

三 税関事後調査への立ち会いおよび当局との折衝

四 不当な課税処分に対する不服申立て

お困りの点等ございましたら、まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

9 まとめ:適正な通関こそがビジネスを安定させる鍵

本日は、日本国内の当事者間取引における輸入の法的性質と、申告価格算定上の注意点について解説いたしました。グローバルな取引環境において、国内取引と輸入取引の境界線は非常に曖昧になりやすいのが実情です。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

正しい法令知識に基づき、透明性の高い取引体制を構築すること。それが、税関からの信頼を獲得し、ひいては円滑な物流を実現することに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。

適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入申告価格の決定と転売取引の取扱い

2023-03-06

はじめに:具体的な相談事例の紹介

本日は、輸出国から貨物が発送された後、日本に到着するまでの間に転売が行われた場合の輸入申告価格(課税価格)の決定方法について解説いたします。まずは、当事務所に寄せられた、いわゆる洋上転売をめぐる架空の相談事例をご紹介いたします。貿易実務において、長距離の船便輸送を利用する企業様にとって重要な論点となっております。

【相談者】

大阪市内で海外製機械部品の商社を営む株式会社ガンマ 代表取締役 デルタ氏

【相談内容】

当社は、ドイツのメーカーから産業用ベアリングを輸入し、国内の製造業者に販売する取引を継続的に行っています。通常は当社が輸入者となりますが、今回の取引では、貨物がドイツの港を出港して船で日本に向かっている途中で、国内の顧客である株式会社エックスから至急で当該貨物を購入したいという強い要望がありました。

検討の結果、当社は貨物が洋上にある状態で、株式会社エックスに対して当該貨物を転売することに合意しました。この場合、当初の当社とドイツメーカーとの売買価格である売買Aと、当社と株式会社エックスとの転売価格である売買Bの二つが存在することになります。

デルタ氏は、貨物の発送原因は売買Aであるから、売買Aの価格で輸入申告を行えばよいと考えていました。しかし、通関業者からは、実態に合わせて売買Bの価格で申告すべきではないかとの指摘を受けました。輸入申告価格は、売買Aと売買Bのどちらの価格を基礎とすべきでしょうか。また、誤った申告をした場合の法的なリスクについても詳しく教えてください。

このような事例は、船便輸送に数週間から一ヶ月以上の時間を要する長距離貿易においては、決して珍しいことではありません。輸入申告価格は、関税の納税額を左右する極めて重要な数値であり、その算定根拠となる取引の特定は、法的に厳格に定められています。本記事では、専門的な見地から、このような転売取引における輸入申告価格の決定基準を詳しく解説いたします。

1 輸出国からの発送後、輸入国に到着前に売買された貨物の取扱いについて

輸入申告価格は、通常、輸入取引における売買価格が基礎となります。ここで、輸入取引とはどのような取引を指すのか、その法的な定義を正しく把握することが不可欠です。

【輸入取引の法的定義と根拠条文】

関税定率法第4条第1項および同法基本通達4-1(1)によれば、輸入取引とは、日本に拠点を有するものが買手として貨物を日本に到着させることを目的として売手との間で行った売買のことを指し、現実に当該貨物が日本に到着することとなった原因としての取引のことを指します。

(関税定率法基本通達4-1 輸入取引の意義)

(1)法第4条第1項に規定する輸入取引とは、本邦に拠点を有する者(中略)が買手として、当該輸入貨物を本邦に到着させることを目的として、売手との間で行った売買(中略)をいい、現実に当該貨物が本邦に到着することとなった原因としての取引をいう。

では、相談事例のように、売買Aを原因として輸出国から日本に発送された後、日本に到着する前に改めて同じ貨物について売買Bが行われ、結果として売買Bを原因として日本に到着した貨物の場合、輸入申告価格はどちらになるでしょうか。

結論としては、最終的には売買Bを原因として日本に到着し、輸入申告を行うことになっている以上、売買Bにおける貨物の取引価格を基礎として輸入申告を行う必要があります。実際に輸入申告を行う原因となったのは、最終的には売買Bとなりますので、輸入取引に該当する取引は売買Bとなります。

中国や韓国など日本の近隣の国から航空便で輸送することに慣れている方にとっては教室事例のように思える事案ですが、実際に船便等輸送に一定の時間が掛かる取引の場合には、このような問題が発生することも十分あり得るところです。

ただ、実際問題としては、輸入申告の際に利用するインボイスなどが売買Aのものと間違えてしまったり、通関業者への差し替えの依頼が間に合わない等の手続上の問題が発生する可能性は十分考えられますので、手続は慎重に行うことが非常に重要です。

2 洋上転売における価格決定の判断基準

実務上、どの売買を輸入取引として認定すべきかを整理した比較表を作成いたしました。ワードデータ等に貼り付けて、社内での取引検討や通関業者との打ち合わせにご活用ください。

【転売取引における輸入申告価格の判定表】

項目|売買A(当初の売買)|売買B(洋上での転売)|

--------|----------|----------|

取引の発生時期|貨物の出港前|貨物の出港後、日本到着前|

日本到着の最終原因|当初の原因であるが、上書きされる。|現実に到着を確定させた最終原因|

インボイスの発行者|海外の製造業者等|国内の転売者(株式会社ガンマ等)|

輸入申告価格の基礎|採用されない(原則)|採用される(原則)|

主な留意事項|発送のきっかけ|実際の国内引取価格|

このように、貨物が日本に到着する直前の売買が、関税法上の輸入取引として優先されます。これは、関税の課税対象が「日本国内に引き取られる際の価値」を基準としているためです。売買Bにより価格が上昇している場合、その上昇後の価格(転売価格)に対して関税および消費税が課されることになります。

3 輸入申告価格の算定におけるその他の重要留意事項

貨物の輸入や輸出に関する規制は、関税法や関税定率法、これらの通達等に規定されておりますが、なかなか理解が難しい部分も多く、知らずに輸出入を行うと追徴課税がなされる等予想外の対応を事後的に強いられる場合もございます。転売価格を採用する場合であっても、そこに含まれる加算要素には細心の注意を払わなければなりません。

(1)無償提供物の加算

例えば、輸入するために、タグ等の備品を無償提供物として輸出者側に提供していた場合、当該無償提供物の費用については、課税価格に加算しなければならず、加算せずに輸入申告を行う場合には、過少申告となり、事後的に追徴課税が行われることとなります。これは関税定率法第4条第1項第3号に規定されています。

(2)ロイヤリティや権利使用料の支払い

輸入貨物の製造や販売に関連して、買手が売手以外の第三者(ブランド権利者等)に対してロイヤリティを支払っている場合、その費用も原則として輸入申告価格に加算する必要があります。転売により買手が変更された場合でも、その支払義務が誰に帰属しているかを精査しなければなりません。

(3)仲介手数料と買付手数料の区別

輸入取引において、パートナーや代理店に支払う手数料の取扱いも極めて重要です。

仲介手数料(売手と買手を仲介する者への報酬)は、原則として課税価格に加算しなければなりません。一方で、専ら買手を代理して業務を行う者への買付手数料は、一定の要件を満たせば加算不要とされます。

洋上転売のような複雑な取引形態では、誰が誰の代理人として動いているのかが不透明になりやすいため、実態に基づいた法的な整理が不可欠です。

4 不適切な輸入申告に伴う法的リスクとペナルティ

誤って売買Aの価格(通常は売買Bより低い価格)で申告を行ってしまった場合、税関事後調査において以下のような厳しい処分を受けるリスクがあります。

一 過少申告加算税の賦課

不足税額の10パーセント(一定額を超える部分は15パーセント)の加算税が課されます。

二 重加算税の適用

売買Bが存在することを知りながら、意図的に売買Aのインボイスを使用して安く申告したとみなされた場合、隠蔽又は仮装の事実に基づき、35パーセントという極めて重い重加算税が課されます。

三 延滞税の発生

本来の納期限から修正申告の日までの期間に応じて、利息相当の延滞税が徴収されます。

四 社会的信用の失墜

重加算税の対象となった企業は、税関のコンプライアンス評価が低下し、その後の輸入通関において全件検査の対象となるなど、実務上の不利益が長期間継続することになります。

5 専門家によるリーガルチェックの重要性

他にも、輸出入特有の規制は多数ありますので、可能であれば、輸出入を継続的に行う最初の段階で事業計画が法的に問題ないかどうかをリーガルチェックすることをお勧めいたします。

特に、洋上転売のようにイレギュラーな事態が発生した際には、以下の3点を実施すべきです。

第一に、インボイスの差し替えと書類の整合性確認です。売買Bに基づくインボイスを作成し、パッキングリストや船荷証券(B/L)との整合性を保った上で申告を行う必要があります。

第二に、通関業者への正確な情報伝達です。単に書類を渡すだけでなく、取引の経緯(転売があった事実)を明確に伝え、関税評価上の懸念事項を共有しなければなりません。

第三に、根拠資料の整備です。売買Aおよび売買Bの各契約書、送金記録、そしてなぜ売買Bが輸入取引に該当すると判断したのかの記録を、後の事後調査に備えて7年間適切に保管しておく必要があります。

6 弁護士へのご相談をご希望の方へ

弊事務所は、税関事後調査を含む税関対応や輸出入トラブルを中心に企業法務を幅広く扱っております。代表弁護士は、輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。

輸出入の実務においては、法律の条文のみならず、税関の運用や通達を熟知していなければ、適切なリスク管理は不可能です。弁護士でありながら通関士の専門知識を持つことで、貴社のビジネスモデルに潜む死角を事前に指摘し、安全な海外取引の実現をお手伝いいたします。

具体的なサポート内容の一例

一 洋上転売等の特殊な取引スキームにおける輸入申告価格の事前適正化診断

二 売買契約書および輸入代行・仲介契約書のリーガルチェック

三 税関事後調査に対する事前模擬調査および立ち会い、交渉

四 不当な更正処分や過少申告加算税の賦課に対する不服申立て

お困りの点等ございましたら、まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

結びに代えて:適正な関税評価が企業の未来を守る

輸入ビジネスにおいて、物流のスピードや商品の仕入れ価格を追求することは重要ですが、その根底にあるコンプライアンスを疎かにしては、持続的な成長は望めません。特に関税評価は、一度のミスが過去数年分に及ぶ追徴課税という形で跳ね返ってくる恐れがある、極めて経営リスクの高い分野です。

正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な作業こそが、税関からの信頼を獲得し、ひいては円滑な国際物流を実現することに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安心できる貿易体制の構築をサポートし続けます。

適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入代行取引における売手及び買手の認定

2023-02-27

はじめに:相談事例

本日は、輸入代行業者や輸出代行業者を利用する場合の、関税法上の売手及び買手の特定という重要な論点について解説いたします。まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談内容を模した事例をご紹介いたします。

【相談者】

地方都市で輸入雑貨のセレクトショップを営む株式会社C 代表取締役 D氏

【相談内容】

「当社は、中国の仕入先から商品を輸入する際、現地の買い付けや日本への配送手配をすべて輸入代行業者であるE社に依頼しています。インボイスの作成や税関への申告手続もE社が提携する通関業者が行っており、インボイス上の買手欄にはE社の名前が記載されています。私は、代行業者にすべて任せているので、自分は関税法上の輸入者ではないと考えていました。

ところが先日、税関から事後調査の連絡がありました。調査官からは、輸入代行業者は単なる代行であり、実質的な買手は株式会社Cではないかと問われています。もし当社が買手と認定された場合、代行業者に支払った手数料などが課税価格に含まれていないとして、過去の輸入分について追徴課税を受ける可能性があると聞き、大変困惑しています。代行業者を利用していても、当社が法的責任を負う買手になるのでしょうか」

このような事例は、近年の海外取引の活発化に伴い、中小企業や個人事業主の方々の間で非常に多く見受けられます。輸出入を代行業者に一任しているからといって、法的責任から免れるわけではないという点について、専門的な見地から詳しく解説いたします。

1 輸出入代行取引における売手及び買手の定義

従来、輸出入といえば、商社や規模の大きな会社が中心になって行うものと考えられていました。しかしながら、インターネットを利用すれば世界中とつながることが可能であるため現在では、中小企業や、ひいては一個人までが幅広く輸出入を業として行うことが日常となっております。

ここで、貨物を輸出入する際には、貨物の課税価格の決定のために売手及び買手を特定することが必須ですが、輸出代行業者や輸入代行業者を利用する場合には、誰が売手、買手に該当するのかわからない、というご質問をいただくことがあります。

【売手、買手の法的定義】

売手、買手とは、実質的に自己の計算と危険負担に基づいて輸入取引を行う者のことを指します。より具体的には、輸入貨物の品質、数量、価格等を自らの責任により決定し、貨物の欠陥や数量不足等の取引上の危険を負担する者のことを指します。

根拠となる法令及び通達は以下の通りです。

(関税定率法基本通達4-1(3) 輸入取引の当事者)

輸入取引の売手及び買手とは、当該輸入取引において、実質的に自己の計算と危険負担(貨物の滅失、損傷、品質不良等の危険及び価格の変動等の危険をいう。)に基づいて当該輸入取引を行う者をいう。

輸出代行業者や輸入代行業者については、形式的な名称だけで判断することは難しいですが、通常は、単に輸出や輸入の手続の代行業務を行うだけであり、実質的に自己の計算と危険負担に基づいて輸入取引を行うことはありません。

そのため、売手、買手はそれぞれ売買契約の当事者が該当することとなります。

2 実質的な買手と認定されるための具体的な判断基準

代行業者を利用している場合でも、以下の要素を総合的に考慮し、誰が実質的な買手であるかが判断されます。単に契約書上の名義が代行業者であっても、実態が伴わなければ、依頼主が買手とみなされます。

(1)価格の決定権

代行業者が提示した価格をそのまま受け入れているのか、それとも依頼主が海外の仕入先と直接、あるいは代行業者を通じて価格交渉を行い、最終的な価格を決定しているかという点。

(2)品質・数量の指定

どのような仕様の貨物を、どれだけの数量輸入するかを最終的に誰が指示しているかという点。代行業者が自らの在庫として確保したものを販売しているのではなく、依頼主の注文に応じて動いている場合は、依頼主が買手となります。

(3)リスクの帰属

貨物が輸送途中で破損した場合や、届いた商品に不具合があった場合、その損失を誰が最終的に負担するかという点。代行業者が全額を保証し、依頼主には一切の損失が及ばないような特殊な契約でない限り、実質的なリスクは依頼主が負っていると判断されます。

(4)利益の帰属

貨物を国内で販売した際に得られる利益、あるいは販売できなかった際の損失が誰の会計に計上されるかという点。

3 買手認定に関する実務的確認表

以下の表は、輸入取引における当事者の役割を整理したものです。ワードデータにコピーして、自社の取引形態が代行に該当するか、あるいは直接の売買に該当するかを確認する際の参考にしてください。

【代行業者利用時における実質的当事者の判定基準表】

確認事項|代行業者の役割|依頼主(貴社)の役割|実質的な買手|

--------|--------|--------|--------|

注文の決定|依頼を伝達するのみ|品目、数量、時期を決定|依頼主|

価格の交渉|指示に基づき交渉代行|予算を決定し合意する|依頼主|

支払の流れ|資金を中継するのみ|原資を全額負担する|依頼主|

不良品の責任|仕入先への交渉を代行|最終的な損失を負担する|依頼主|

販売後の利益|手数料のみを受け取る|転売利益のすべてを得る|依頼主|

4 代行業者利用時における課税価格の注意点

輸入代行業者を利用している場合、買手の認定に伴って最も問題となるのが「代行手数料」の扱いです。

輸入や輸出を継続的に業として行う場合には、ご注意ください。貨物の輸入や輸出に関する規制は、関税法や関税定率法等に規定されておりますが、なかなか通常の感覚では理解できない部分も多く、知らずに輸出入を行うと予想外の対応を事後的に強いられる場合もございます。

例えば、貨物の輸入のために現地でパートナーに動いてもらう場合、パートナーに支払う委託料については、課税価格に加算しなければならない場合も多く、加算せずに輸入申告を行う場合には、過少申告となり、事後的に追徴課税が行われることとなります。

具体的には、以下の点に留意が必要です。

(1)買付手数料の非加算

依頼主の代理人として動く代行業者に支払われる「買付手数料」は、一定の要件を満たせば課税価格に算入する必要はありません。しかし、これが実質的に売手の代理人としての性格を持つ場合や、仲介料とみなされる場合は加算対象となります。

(2)費用の計上漏れ

代行業者が現地で負担した保管料、検査費用、ラベル貼り費用などを、依頼主が別途精算している場合、これらが「現実支払価格」の一部、あるいは「加算要素」として申告に含まれていなければなりません。

5 法的責任の所在と罰則のリスク

個人で副業として輸出入を行う方も増えておりますが、輸出入の代行業者を利用したとしても、一切輸出入に関係ないということにはなりませんのでご注意ください。税関が最終的な法的責任を問うのは、実質的な輸入者である依頼主です。

不適切な申告が行われた場合の主なリスクは以下の通りです。

一 追徴課税および加算税の発生

事後調査により過少申告が発覚した場合、不足税額の徴収に加え、過少申告加算税が課されます。仮に意図的な隠蔽や仮装があるとみなされれば、35パーセントから40パーセントという極めて重い重加算税が課されることになります。

二 社会的信用の失墜

一度、重加算税の対象となると、その後の輸入申告において全件検査の対象となるなど、ビジネスのリードタイムに大きな悪影響を及ぼします。また、法令遵守体制に疑義を持たれることで、金融機関等からの評価にも影響しかねません。

三 輸入禁止や差止めのリスク

原産地表示の偽装や知的財産権の侵害、他法令への抵触などが代行業者の不手際によって生じた場合でも、その責任は輸入者が負います。貨物の没収や廃棄、さらには刑事罰の対象となる可能性も否定できません。

6 専門家によるリーガルチェックの重要性

輸出入特有の規制は多数ありますので、可能であれば、輸出入を継続的に行う最初の段階で事業計画が法的に問題ないかどうかをリーガルチェックすることをお勧めいたします。

特に以下のタイミングでのご相談が効果的です。

(1)新しい代行業者と契約する際

契約書の内容が、関税法上の売手・買手の定義と整合しているか。また、責任の分担が明確になっているかを確認する必要があります。

(2)取引規模が拡大した際

個人の趣味の範囲を超え、ビジネスとして本格的に展開する場合、過去の申告漏れが累積して巨額の追徴リスクとなっている可能性があります。事後調査が入る前に、自主的な点検を行うべきです。

(3)税関から問い合わせがあった際

税関からお尋ねが届いたり、事後調査の通知があったりした場合は、独断で回答せず、専門家の助言を仰ぐべきです。最初の回答がその後の調査の方向性を決定づけます。

7 弁護士へのご相談をご希望の方へ

弊事務所は、税関事後調査を含む税関対応や輸出入トラブルを中心に企業法務を幅広く扱っております。代表弁護士は、輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。

当事務所が提供できる主なサービスは以下の通りです。

一 輸入代行・輸出代行契約書のリーガルチェックおよび作成

二 関税課税価格の適正性診断(プリ・オーディット)

三 税関事後調査における立ち会いおよび交渉

四 不当な課税処分や貨物差止めに対する不服申立て

代行業者を利用しているから自分は安全だという思い込みは、グローバルビジネスにおいては非常に危険な落とし穴となります。実質的な当事者としての自覚を持ち、法的な備えを万全にすることが、貴社のビジネスを長期的に守る唯一の道です。

お困りの点等ございましたら、まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

結びに代えて:適正な通関こそがビジネスを安定させる

輸入取引における売手及び買手の特定は、単なる手続の問題ではなく、貴社のビジネスの根幹に関わる法的判断です。複雑な代行取引のスキームを正確に分析し、将来的なリスクを摘み取っておくことは、成長を続ける企業にとって不可欠な投資といえます。

正しい法令知識に基づき、透明性の高い取引体制を構築すること。それが、税関からの信頼を獲得し、ひいては円滑な物流を実現することに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮してサポートを継続してまいります。

適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

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