適正な輸入申告価格が何かを把握するためには、まずは輸入取引がどの取引に該当するかを検討することが出発点となります。
そして、関税定率法施行令第1条の4第3号に規定する「本邦において当該輸入貨物に課される関税その他の公課」に該当する場合には、輸入貨物の課税価格に含まれません。
そのため、各費用についてどの段階で発生するものかを慎重に把握することが非常に重要です。
1 本船が輸入港に入港する際のスケジュールについて
本船が輸入港に入港する際のスケジュールの一例をご紹介いたします。
①「FREE PRATIQUE GRANTED」(検疫済み)
検疫当局により検疫審査を通過し、検疫済みを認められた時点
②「END OF SEA PASSAGE」(大洋航海終了)
大洋(外洋)航海を終了した時、又は港内航行に備えてエンジンをスタンバイとした時点 ③「NOR TENDERED」(荷役準備完了通知提出)
船側において船卸し等ができる状態になり、港に対し荷役準備完了通知を発した時点
④「COMMENCE DRIFTING」(漂泊開始)
漂泊のため、主要機関をアイドリングとした時、又はごく低速航行に移行した時点
⑤「COMMENCE PROCEEDING TOWARD PILOT STATION」(水先案内人乗船場所へ向けて航行開始)
航行のため主要機関の回転数を上げた時、又は推進が認められた時点
⑥「PILOT ON BOARD」(水先案内人乗船)
水先案内人が乗船した時点
⑦「NOR ACCEPTED」(荷役準備完了通知受理)
用船者・荷受人・荷送人・ターミナルなどによって荷役準備完了通知が受理された時点
⑧「FIRST LINE ASHORE」(着桟(着岸・着漂)開始)
最初の係船索(船舶を係留するために使う綱)が陸上に渡った時点
⑨「ALL FAST」(着桟(着岸・着漂)完了)
全ての係船索(船舶を係留するために使う綱)を取り、固縛が完了した時点
⑩「PILOT AWAY」(水先案内人下船)
水先案内人が下船した時点
⑪「SHORE GANGWAY DOWN」(陸側ギャングウェイ(人道橋)設置)
陸側ギャングウェイ(人道橋)がデッキ上に降り、固定された時点
⑫「CARGO ULLAGING INITIAL」(初期貨物アレッジ(検尺))
荷役前の検尺が終わった時点
⑬「CARGO CALUCULATIONS INITIAL」(初期貨物量計算)
荷役前の貨物量計算が終わった時点
⑭「CARGO ARMS CONNECTED」(貨油アーム結着)
貨油アームを本船マニフォールド(タンクの底から伸びたパイプの出口)に接続し、漏洩なく結 着している事が確認された時点
⑮「SAFETY MEETING/CHECKLIST」(安全ミーティング・チェックリスト)
各種チェックリストによるチェックを完了させ、荷役前会議を完了した時点
以上のスケジュールにおいては、輸入港到着の時点は「ALL FAST」の時点と判断されることになります。
2 輸入申告価格は慎重に検討することが必要です
間違った輸入申告価格を申告してしまうと、仮に意図的ではなかったとしても脱税と同じ状況となってしまいますので輸入申告価格を安易に考えてしまう事は避ける必要があります。
輸入申告価格については誤解も多い部分ですので関税定率法や基本通達の内容を正確に把握した上で、適切に対応することが重要です。
当事務所は、輸出入や貿易関連のトラブル、事前教示制度の利用や税関事後調査をはじめとする税関対応等を幅広く取り扱っておりますので、輸入申告価格を正確に把握することが難しい場合等少しでも不安がある場合には、まずはご相談ください。