退職勧奨を行う際に、上乗せ退職金を支払った上で退職合意を締結し、円満退職を図るといった対応を取ることも多くあります。
そのため、「実際にいくら程度の上乗せ退職金を支払う必要があるのか。何か基準のようなものはあるのか」、といったご相談をお受けすることがあります。
結論としては、明確な基準というものはなく、具体的事情を踏まえたケースバイケースで対応するしかないのですが、検討する上で有用な一定の視点というものがあります。
以下でご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。
1 上乗せ退職金を検討する際の視点
上乗せ退職金を検討するにあたっては、業界水準、会社における前例や会社の業績、従業員の勤続年数等の様々な要素を検討することになります。
また、仮に従業員を解雇をした場合、裁判で勝てる可能性はどのくらいあるか、といった視点や、裁判所では、どれくらいの額で和解が成立しそうか、といった要素まで検討する必要があり、このような経験的な視点が非常に重要です。
例えば、技術分野での専門的能力や管理職としての能力を期待して中途採用した従業員が、期待していたような能力を発揮しないため、入社後1、2年で辞めてもらうことを検討する場合、終身雇用や年功序列を前提に雇用をしたわけではないとも言えますので、解雇が法的に争われた場合、企業側としては争いやすい面があります。
その一方で、新卒で採用し、勤続年数が長く、年功序列的に昇進等が予定されている場合で、成績改善のための指導もほとんど行われておらず、また、年度末評価も他の従業員と横並びの場合であるときは、仮に問題社員であっても、なかなか解雇が有効とは認められず、上乗せ退職金として、高額を用意する必要が生じる可能性が相当程度あります。
以上のとおり、上乗せ退職金の金額は、事案によって大きく異なります。
一般的には、3か月分から18か月程度の賃金の間となることが多いとも言われておりますが、あくまでも参考程度のものにとどまりますので、注意が必要です。
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