従業員の退職に関して

「これまで企業として誠心誠意教育をして、やっと一人前になった従業員が、事前に何の相談もなく辞表を出してきた。社長は激怒しており、退職金等は一切支払わないと言っているが、そのような対応を取ることは可能でしょうか」、と言った相談を頂戴することがございます。
結論としては、法律、企業内のルールに沿った対応を取らなければ、違法ということになるので、上記相談内容のような対応を取ることは絶対に避けるべきです。

以下、従業員の退職時の注意点をご紹介いたします。

 

1 従業員の退職について

従業員は、日本国憲法で保障された職業選択の自由の一環として、退職の自由が認められています(民法627条1項)。
そのため、従業員が退職の意思を示している場合に、もちろん慰留することは可能ですが、法的に従業員の退職を妨げることはできません。
もっとも、即時の退職が認められているわけではなく、申し入れから退職までには少なくとも二週間以上の猶予を取らなければなりません(同条同項)。なお、労働契約を締結するときに、企業側から明示された労働条件が、実際の労働環境の状況と異なっていた場合には、従業員側は直ちに退職することができます(労働基準法15条2項)。

 

2 従業員の退職時の注意点

繰り返しとなりますが、上記の相談内容のように、従業員が辞表を提出して一方的に会社を退職した場合、意趣返しとして未払い分の給与や残業代、退職金の支給を行わないといった対応を取るといった対応は絶対に取るべきではありません。
労働基準法違反や最低賃金法違反として、刑事罰が科される可能性がありますし、また、行政により、企業名が公表されてしまう恐れがあります。
一度企業名が公表されてしまうと、いわゆるブラック企業等のレッテルが貼られ、企業のレピュテーション上、大きな不利益を被ることになりますので、特に注意が必要です。

 

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