Archive for the ‘コラム~通関手続、輸出入トラブル~’ Category

原産地証明書と実務上の留意点について

2021-02-17

0 はじめに

まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。

「私は都内で輸入卸売業を営んでおりますが、この度、東南アジアのEPA締約国から加工食品を輸入することになりました。基本税率よりも低いEPA税率の適用を受けたいと考えておりますが、相手国の輸出者から送られてきた原産地証明書の有効期限や、日本の税関への提出要件が複雑で困惑しております。特に、どのような場合に提出が免除されるのか、また、自己証明制度と第三者証明制度の違いが実務にどう影響するのかを専門的な視点から教えていただけないでしょうか」

このようなご相談は、非常に多く見受けられます。

原産地証明書は、単なる書類の一つではなく、コスト削減やコンプライアンスに直結する重要な文書です。本日は、原産地証明書の概要から実務上の注意点まで、解説いたします。

1 原産地証明書の内容と役割

原産地証明書とは、最も典型的なものとしては、輸出入貨物について一国の政府や公的機関が、その国が原産地であることを証明して発行する文書を指します。

輸出入をビジネスで行っている方にとっては、避けては通れない書類といえます。もっとも、名称は知っていても、具体的な法的根拠や効果までは十分に把握していないケースも少なくありません。原産地証明書の主な役割は、輸入国における関税の譲許(減免)を受けるための資格を証明することにあります。

2 輸出貨物における原産地証明書の手続

日本では、輸出通関の際に原産地証明書を必ず提出しなければならないという法的義務はありません。しかし、輸入国側の法令や輸入者からの契約上の要請に基づき、発行が必要となる場面が多々あります。日本からの輸出貨物に関する原産地証明書の発行主体については、商工会議所法第9条第6号において、商工会議所が「輸出品の原産地証明を行うこと」と規定されています。

ただし、一般的にEPA関連においては原産地証明の発行の形式には大きく分けて二つの制度が存在します。

【表1 証明制度の比較と特徴】

制度の名称 証明の主体 主な適用協定
第三者証明制度 商工会議所等の公定機関 多くのEPA(日アセアン、日インド等)
自己証明制度 輸出者、生産者または輸入者 CPTPP、日豪EPA、日EUEPA、RCEP

上記のように、第三者が証明を行う形式だけでなく、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)などのように、自ら原産品であることを証明する自己証明制度も採用されている協定が増えております。この場合、作成者の責任や税関の審査がより重くなるため、根拠資料の保管義務を含めた厳格な管理が求められます。

3 輸入貨物における原産地証明書と関税の減免

輸入者が税関に対して原産地証明書を提出する必要があるのは、主に優遇税率の適用を受ける場合です。

【EPA税率の適用】

EPA(経済連携協定)税率の適用を受ける場合、関係法令及び各協定に基づき、適切な証明書を提出する必要があります。

具体的には、

①各締約国の権限ある機関が発給したものであること

②原則として発給日から一年を経過していないものであること

といった条件がありますが、以下の要件を満たす場合は、原産地証明書の提出が免除される場合があります。

(i)貨物の種類や形状により、原産地が明らかであると税関長が認めるもの

(ii)一つの輸入申告における課税価格の総額が二十万円以下であるもの

4 輸入通関の流れ

輸入時に原産地証明書を使用する際の大まかな流れは以下の通りです。

【表2 輸入通関における原産地証明書の処理フロー】

手順/実施内容/留意事項

1 輸出者から証明書を入手 有効期限(一年)を確認

2 適用税率の確認 実行関税率表で確認

3 輸入申告時に提示 二十万円以下は省略可

4 税関による審査 形式不備は否認のリスクあり

5 実務上のトラブル事例と対策

原産地証明書を巡っては、以下のようなトラブルが発生しがちです。

第一に、書類上の記載ミスです。インボイスに記載された品名や数量と、原産地証明書の記載が一致しない場合、税関での審査が滞り、最悪の場合は優遇税率の適用が認められない可能性もあります。

第二に、直接運送原則の違反です。原産国から日本へ直送されず、第三国を経由して積み替えられた場合、その第三国で加工が施されていないことを証明する「通し船荷証券」等の追加書類が必要になることがあります。

6 弁護士へのご相談のメリット

当事務所の代表弁護士は、法律の専門家であると同時に、輸出入や通関手続きに関する国家資格である通関士試験に合格し通関士の資格を保有しております。一般的な法律事務所では対応が難しい、以下のような領域についてもサポートが可能です。

①税関による事後調査への対応

②実行関税率の適用区分に関する不服申立て

③EPA原産地規則の解釈と該非判定の助言

④通関業者との連携によるスムーズな手続きの構築

原産地証明書は、貿易コストの最適化を図る上で欠かせないツールです。しかし、その運用には緻密な法令理解と実務知識が求められます。複雑な制度を正しく活用し、ビジネスの競争力を高めるために、ぜひ専門家の知見をご活用ください。

輸出入や通関上のトラブル、あるいは税関との見解の相違に関してご不安な点があれば、お気軽に当事務所までご相談ください。

【お問合せは、こちらから】

・・・・・・・・・・・

執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

特殊関係と課税価格への影響

2021-02-10

0 はじめに:相談事例

まずは、親子会社間や関連会社間の取引において、多くの企業が直面する具体的な相談事例をご紹介いたします。

【相談者:海外ブランド日本法人 F社 サプライチェーンマネージャー】

「当社はフランスにある親会社から香水や化粧品を輸入し、国内で販売しております。親会社からの仕入価格はグループ内価格として設定されており、一般的な卸売価格よりも低く設定されています。先日、税関から『売手と買手の間に特殊関係があるため、現在の申告価格が妥当かどうか精査が必要である』との指摘を受けました。長年この価格で輸入してきましたが、親子会社であるという理由だけで、インボイスの価格が否定されてしまうのでしょうか。また、どのような関係があれば『特殊関係』に該当し、どのような基準で価格の妥当性を証明すればよいのでしょうか。」

輸入取引において、売手と買手の間に密接な関係がある場合、その価格が恣意的に操作されているのではないかという疑念が税関側に生じます。以下では、関税評価における「特殊関係」の法的定義とその影響について詳細に解説いたします。

1 特殊関係が課税価格に与える法的影響

原則として、輸入貨物の課税価格は「取引価格」に基づき決定されます。しかし、売手と買手の間に「特殊関係」があり、その関係が取引価格に影響を及ぼしていると判断される場合には、その価格を課税価格として採用することができません。

【根拠法令】

関税定率法第4条第2項第4号

「買手と売手との間に特殊関係(…中略…)がある場合において、その特殊関係が当該輸入貨物の取引価格に影響を与えていると認められるときは、第1項の規定(取引価格による決定)は適用しない。」

この規定の目的は、関連企業間での不当な低価格申告による関税逃れを防止することにあります。特殊関係があること自体は違法ではありませんが、その価格が「独立した第三者間での取引価格」と同等であることを輸入者側が立証できなければ、例外的な決定方法(同種貨物の価格や国内販売価格からの逆算など)に移行することになります。

2 「特殊関係」の具体的な定義と範囲

「特殊関係」の範囲については、関税定率法施行令および基本通達によって厳格に定められています。以下の9つの項目のいずれかに該当する場合、法的な特殊関係が存在するものとみなされます。

「法第4条第2項第4号に規定する政令で定める特殊な関係がある場合は、次に掲げる場合とする。」

以下に、その具体的な内容を整理した一覧表を掲載いたします。

【表:関税法上の特殊関係に該当する9つの類型】

特殊関係の内容(定義) 具体的な詳細・補足説明
相互の役員兼任 一方の役員が他方の役員(取締役、監査役、理事等)を兼ねる場合
共同経営者 法令上認められた形態で、出資や労務を共にし事業を営む関係
使用者と被用者 いわゆる雇主と従業員の関係にある場合
5%以上の株式所有 一方が他方の議決権付株式の5%以上を直接・間接に所有する場合
直接又は間接の支配 一方が他方を法律上又は事実上、拘束し指示する立場にある場合
同一第三者による所有 同一の第三者が、売手・買手双方の株式を5%以上所有する場合
同一第三者による支配 売手と買手の双方が、同一の第三者から直接又は間接に支配されている
共同による第三者支配 売手と買手が共同して、同一の第三者を直接又は間接に支配している
親族関係 配偶者、6親等内の血族、及び3親等内の姻族

3 特殊関係の各項目に関する専門的解説

3-1 「支配」の概念

ここでいう「支配」とは、必ずしも株式の過半数を所有している必要はありません。例えば、主要な取引先であり、その指示に従わなければ事業継続が困難であるような「事実上の支配」も含まれます。また、技術提携や独占販売権の付与に伴い、経営上の重要な意思決定が他方によって左右される場合も慎重な判断が求められます。

3-2 親族関係の範囲

関税法における親族の範囲は非常に広く設定されています。「6親等内の血族」には、従兄弟の子供や孫までが含まれます。個人輸入や小規模な家族経営企業間の取引において、この規定を見落とし、事後調査で指摘を受けるケースが散見されます。

4 「価格に影響を与えている」かどうかの判断基準

特殊関係に該当した場合でも、直ちに取引価格が否定されるわけではありません。関税定率法基本通達4-19では、以下の要素などを加味して、その価格が妥当かどうかを審査されます。

4-1 取引状況の検討(事情の精査)

売手と買手との間の取引が、特殊関係のない通常の顧客に対する販売価格の決定方法と同一である場合、あるいはその価格が当該業界の通常の価格形成慣行と一致している場合などは、「影響を与えていない」と判断されます。

4-2 標準価格との比較

輸入者が、その取引価格が以下のいずれかの価格(標準価格)に近いものであることを証明した場合です。

①同種又は類似の貨物に係る取引価格(特殊関係のない者間のもの)

②国内販売価格から逆算した課税価格

③製造原価から積み上げた課税価格

5 実務上の対策:輸入事後調査への備え

税関の輸入事後調査において、特殊関係間の取引価格は重点的な確認項目となります。企業としては、あらかじめ以下の資料を準備しておくことが重要です。

①価格決定プロセスを説明する書類:価格表(プライスリスト)、原価計算書、グループ内の移転価格ポリシー

②第三者向け価格との比較表:親会社が他国の非関連企業に販売している価格との差異説明

③移転価格税制との整合性:法人税法上の移転価格文書(ローカルファイル等)との整合性。ただし、税務上の「独立企業間価格」と関税上の「課税価格」は必ずしも一致しない点に注意が必要です。

6 特殊関係の未申告によるリスク

輸入申告において事実があるにもかかわらず特殊関係が存在しないものとして申告し、後の調査で発覚した場合には、意図的な隠蔽とみなされ、重加算税が課されるリスクが高くなります。

また、一度価格が否認されると、過去数年分に遡って更正(追徴課税)が行われるため、多額のキャッシュアウトが発生し、経営に深刻なダメージを与える可能性があります。

7 おわりに:当事務所のサポート

輸入貨物の課税価格、特に特殊関係が絡む事案は、関税法の中でも最も技巧的で専門性の高い領域です。税関当局との見解の相違が生じた際、論理的な証拠を持って対抗するためには、深い法知識と実務経験が不可欠です。

当事務所では、代表弁護士が通関士資格を保有しており、輸出入や通関に関する豊富な知見を有しております。

①特殊関係の該当性診断:貴社の取引構造を精査し、法的なリスクを洗い出します。

②価格妥当性の立証支援:税関に対し、現在の取引価格が正当であることを証明するための法的意見書を作成いたします。

③事後調査の立会と交渉:不当な価格否認が行われないよう、現場での適切な主張と交渉を代行します。

「親子会社間の取引価格に不安がある」、「税関から説明を求められているが、どう答えればよいかわからない」といったお悩みがあれば、まずは当事務所までお気軽にお問い合わせください。貴社の適正な輸入申告と、円滑な国際ビジネスを全力でバックアップさせていただきます。

【お問合せは、こちらから】

・・・・・・・・・・・

執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入申告における現実支払価格の判断基準

2021-02-06

0 はじめに:相談事例

まずは、輸入価格の申告において多くの企業が直面する、具体的な相談事例をご紹介いたします。

【相談者:工作機械輸入商社 E社 経理部長】

「当社はドイツのメーカーから大型の工作機械を輸入しています。契約では、機械本体の代金のほかに、日本到着後の据付け費用や、輸入後の半年間にわたる技術指導料も含まれており、一括して送金しています。仕入書(インボイス)にはこれらの内訳が記載されていますが、税関への申告にあたっては、送金した全額を『現実支払価格』として申告すべきなのでしょうか。また、当社が独自に行っている国内での広告宣伝費が、売手への間接的な支払いとみなされることはないのでしょうか。正しく申告価格を算定するための法的根拠を教えてください。」

輸入申告における価格決定は、単に「支払った総額」を記載すればよいというものではありません。何を含め、何を差し引くべきかというルールを正しく理解していないと、税金の過払い、あるいは過少申告によるペナルティを招く恐れがあります。以下では、関税評価の核となる「現実支払価格」について詳細に解説いたします。

1 「現実支払価格」の法的定義と原則

関税の課税標準となる課税価格を算出する際、その基礎となるのが「現実支払価格」です。これは、売買契約に基づいて実際に動く金銭の総体を指します。

【根拠法令】

関税定率法第4条第1項

「輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされた場合において、当該輸入取引につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において次に掲げる費用(加算要素)の額を加えた価格とする。」

【専門的な意義の解説】

現実支払価格とは、買手が売手に対し、または売手のために、輸入貨物の対価として直接的または間接的に支払った、あるいは支払うべき総額をいいます。ここでの「間接的な支払い」とは、例えば買手が売手の債務を肩代わりして第三者に支払った金額なども含まれるため、注意が必要です。

通常、この価格は輸入取引の仕入書(インボイス)に基づき認定されます。ただし、仕入書に記載された金額が、取引の真実の対価を正当に表示していないと判断される場合には、税関から厳格な調査を受けることになります。

2 「現実支払価格」に含まれない費用の特定

実務上非常に重要なのが、支払総額の中から「課税価格に算入しなくてよい費用」を正しく切り分けることです。これらは、輸入港に到着した後の活動に関連するものが主となります。

控除が認められる主な費用(関税定率法基本通達等の規定)

以下の費用が仕入書等において明確に区分されている場合は、現実支払価格から除外して申告することが可能です。

①据付け・技術指導費:輸入許可後に行われる機械の組み立てや整備、技術指導の対価。

②国内運賃・保険料:日本国内の港から保税倉庫、あるいは納品先までの輸送費用。

③公課:日本国内で課される関税、消費税、その他の公的負担。

④延払金利:代金の支払いを猶予してもらうことに対する利息(一定の条件を満たす場合)。

⑤輸出国の還付税:輸出国側で免除または払い戻されるべき関税等。

これらの費用を誤って含めて申告してしまうと、本来支払う必要のない関税を納めることになり、企業のコストを不必要に押し上げる要因となります。

3 現実支払価格の構成要素一覧表

実務における判断を円滑にするため、算入すべきものと算入不要なものを整理した比較表を作成いたしました。

【表:現実支払価格への算入・非算入の判断基準】

費用の項目 算入の可否 判断の法的根拠と留意点
貨物そのものの代金 算入(必須) 割引がある場合はその正当性の立証が必要。
売手の債務の弁済額 算入(原則) 買手が売手に代わって第三者へ支払う額。
輸入港までの運賃 算入(必須) 加算要素として現実支払価格に加える。
到着後の据付け工賃 非算入 仕入書で金額が明確に区分されていること。
買手による広告宣伝費 非算入 買手が自己のために行う活動は算入不要。
配当金・融資金利 非算入 輸入貨物との直接的な関連がない支払。

4 間接的な支払いと自己活動の区別

「売手のために行われた支払い」の解釈は非常にテクニカルです。

特に、買手が行うマーケティング活動については、以下の点に注意が必要です。

【買手が自己のために行う活動】

買手が日本国内での販売を促進するために支出する広告宣伝費、販売促進費、アフターサービス費用などは、例えその結果として海外の売手(メーカー)のブランドイメージが向上し、売手の利益になったとしても、原則として売手に対する「間接的な支払い」とはみなされません。したがって、これらは現実支払価格には含まれません。

【金額を区別し明らかにできない場合の不利益】

ここで注意すべきは、控除できるはずの費用であっても、仕入書等でその額を客観的に明らかにできない場合には、それを含んだ総額を現実支払価格として申告しなければならないという点です。不明朗な一括契約は、結果として高い税負担を招くリスクを孕んでいます。

5 実務上の対策:契約書の作成と資料保存

正確な「現実支払価格」を認定し、適切な納税を行うためには、事前の準備が欠かせません。

①費用の区分明記:契約段階において、貨物代金と、据付け費や技術指導料、国内運賃などを明確に分けて見積書や仕入書に記載させる。

②支払いルートの透明化:第三者への支払いがある場合は、それが「貨物の対価」なのか「他のサービスの対価」なのかを明確にする。

③輸入税関事後調査への備え:税関の事後調査では、銀行の送金記録と仕入書の照合が行われます。差額がある場合は、その理由を法的に説明できる資料(価格調整に関する合意書など)を保管しておく必要があります。

6 過少申告および過大申告のリスク

現実支払価格の解釈を誤ると、二つの大きなリスクが生じます。

①過少申告リスク:含めるべき金額を除外して申告した場合。事後調査で指摘を受けると、不足税額に加えて「過少申告加算税」が課されます。悪質な場合は「重加算税」の対象となり、社会的信用を失墜させます。

②過大申告リスク:除外できる費用を含めて申告した場合。税金を多く払いすぎることになります。これを更正の請求によって取り戻すには、多大な労力と時間が必要となります。

適正な価格での申告は、企業のキャッシュフロー最適化とコンプライアンス維持の両面において極めて重要です。

7 おわりに:当事務所の強み

輸入申告価格の決定、特に「現実支払価格」の算定は、関税評価における最も基礎的かつ複雑な領域です。単なる会計知識だけでは不十分であり、関税法および関係諸法令、さらには国際的な評価基準に精通している必要があります。

当事務所では、代表弁護士が通関士資格を有しており、輸入実務と法律実務の橋渡しを行うことが可能です。

①申告価格のリーガルチェック:複雑な取引形態において、どの費用が現実支払価格に該当するかを法的に診断します。

②税関調査への完全対応:事後調査において、税関の主張する「間接的な支払い」の認定に対し、法的な反論を行い、不当な加算税を回避します。

③契約スキームの構築:将来的な関税リスクを低減するための、売買契約書や価格決定メカニズムの整備を支援します。

「インボイスの価格が本当に正しいのか確信が持てない」、「税関から価格の妥当性を疑われている」といったお悩みがあれば、まずは当事務所までお気軽にお問い合わせください。貴社の貿易業務の安全性と透明性を高めるため、全力でバックアップいたします。

【お問合せは、こちらから】

・・・・・・・・・・・

執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入貨物の課税価格の決定原則とその例外

2021-02-01

0 はじめに:相談事例

まずは、輸入実務において課税価格の判断に迷われた企業様からの、典型的な相談事例をご紹介いたします。

【相談者:海外サプリメント輸入販売会社 D社 貿易事務担当】

「当社は米国メーカーから健康食品を輸入しておりますが、今回、メーカー側から販売促進費用の一部を日本側で負担することを条件に、仕入価格の大幅な値引きを受けました。インボイス価格は安くなりましたが、税関からは『この値引き後の価格はそのまま課税価格として認められない可能性がある』と指摘を受けてしまいました。輸入時の関税はインボイスの金額にかかるものだと思っていましたが、実際にはどのようなルールで計算されるのでしょうか。また、運賃や保険料以外にも加算しなければならない費用があるのでしょうか。正しく申告しないと加算税のリスクもあると聞き、不安に感じております。」

輸入貨物の「課税価格」は、単に相手方に支払う商品代金(インボイス価格)とイコールであるとは限りません。以下では、関税定率法に基づいた課税価格の決定原則と、実務上の留意点について詳しく解説いたします。

1 課税価格の決定方法の原則(取引価格による決定)

輸入関税の計算基礎となる課税価格の決定については、関税定率法第4条から第4条の9までの規定に詳細なルールが定められています。その基本となるのが「取引価格」による決定方法です。

「輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされた場合において、当該輸入取引につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において次に掲げる費用(加算要素)の額を加えた価格(取引価格)とする。」

ここでいう「現実に支払われた又は支払われるべき価格」とは、買手が売手に対して、または売手のために、輸入貨物の対価として直接または間接に支払った(支払うべき)総額を指します。

【重要な加算要素(輸入港までの費用等)】

インボイス価格に含まれていない場合、以下の費用などを加算しなければなりません。

①輸入港までの運賃及び保険料:日本に到着するまでの輸送コスト

②仲介手数料等:買手が支払う手数料(買付手数料を除く)

③容器及び包装の費用:当該貨物と一体として取り扱われるもの

④無償提供物品等の費用:輸入貨物の生産のために買手が無償または安価で提供した材料や金型等の費用

⑤ロイヤリティ等:輸入貨物に係る知的所有権の使用の対価

2 原則的な方法が適用できない「特別な事情」

インボイス価格を基礎とできないケースが法律で定められています。

これに該当する場合、税関は取引価格を否認し、後述する「例外的な決定方法」へと移行します。

次に掲げる事情がある場合には、第1項の規定(取引価格による決定)は適用されません。

①処分又は使用の制限:買手による貨物の転売先や使用方法に、売手による強い制限がかかっている場合

②条件又は対価の付帯:取引価格が、輸入貨物以外の要素(例:他の商品の抱き合わせ購入等)によって決定されており、その影響を金額換算できない場合

③特殊関係の影響:親子会社間などの取引において、その特殊な関係が価格形成に影響を及ぼしていると認められる場合

3 課税価格決定の優先順位と体系表

原則的な方法が使えない場合、法律が定める順番(第4条の2から第4条の4)に従って評価を行います。この順番を飛ばすことは、納税者が製造原価による計算を希望する場合などの一部の例外を除き、認められません。

【表:課税価格決定方法の優先順位と内容一覧】

順位 根拠条文 決定方法の名称 概要説明
第1 関税定率法第4条 取引価格による決定 現実支払価格に運賃等の加算要素を加えた額
第2 関税定率法第4条の2 同種又は類似貨物法 本来の貨物と同一または酷似した他貨物の取引実績価格
第3 関税定率法第4条の3第1項 国内販売価格逆算法 輸入後の国内販売価格から国内経費や利益を差し引いて逆算
第4 関税定率法第4条の3第2項 製造原価積算法 製造原価に通常の利益や輸入港までの費用を積み上げて計算
第5 関税定率法第4条の4 特殊な決定方法 上記いずれも不可能な場合、合理的な基準により決定

※第3順位と第4順位については、輸入者の要請に基づき税関長が認めた場合に限り、順序を入れ替えることが可能です。

4 各例外規定の専門的解説

4-1 同種又は類似の貨物に係る取引価格による決定(第4条の2)

輸入貨物そのものの取引価格が使えない場合、ほぼ同時期に日本へ輸入された「同種」または「類似」の貨物の価格を基準にします。ここでいう同種とは、物理的特性や品質、社会的評価がすべての点で同一であることを指します。類似とは、すべての点で同一ではないものの、同一の機能を果たし、商業的に交換可能なものを指します。

4-2 国内販売価格又は製造原価に基づく決定(第4条の3)

日本国内での卸売価格から、国内での通常の利益や一般経費、関税、国内運賃などを差し引いて算出します。もし国内販売の実績がない場合は、製造元から提供された製造原価、材料費、利益等のデータを積み上げて算出します。ただし、海外メーカーが企業秘密を理由に原価開示を拒否するケースも多く、実務上のハードルは高いといえます。

4-3 特殊な輸入貨物に係る決定(第4条の4)

中古品、無償見本、寄贈品、あるいはリース貨物など、通常の売買契約に基づかない輸入の場合に適用されます。航空機や船舶、故障による返品、変質・損傷した貨物などもこの規定の対象となり、個別の合理的な基準によって評価されます。

5 実務上の落とし穴:見落としがちな加算要素

冒頭の相談事例のように、一見「値引き」に見えるものであっても、それが「輸入貨物の対価を他の形で支払っている」とみなされると、加算が必要になります。

5-1 買手負担の広告宣伝費や開発費

輸入者が海外メーカーに代わって広告宣伝を行い、その分だけ仕入価格を安くしてもらっている場合、その宣伝費は「間接的な支払い」として課税価格に含まれる可能性があります。

5-2 金型の無償提供(アシスト費用)

日本側で製作した金型を海外工場へ無償で送り、それを使って製品を製造させている場合、その金型の製作費用や輸送費用を、輸入する個々の製品の価格に按分して加算しなければなりません。これは「物品及び役務の無償提供」として、事後調査で最も指摘されやすい項目の一つです。

6 正確な申告に向けた対応策

課税価格の決定は、税関の「評価申告」という手続きを伴うこともあり、非常に高度な専門知識が要求されます。

①契約書の精査:売買契約書に「価格調整条項」や「別途費用の負担」が明記されていないか確認する。

②会計記録との照合:インボイスによる支払い以外に、海外の取引先に対して別名目で送金していないか確認する。

③評価申告の検討:課税価格が確定しない状態で輸入する場合や、特殊な加算要素がある場合は、事前に評価申告を行い、税関の承認を得ておくことがリスク回避につながります。

7 不適切な申告によるペナルティ

課税価格を誤って過少に申告した場合、不足していた関税および消費税の徴収に加え、過少申告加算税が課されます。さらに、事実を隠蔽したり仮装したりしたと判断されれば、重加算税(35%または40%)という極めて重い制裁金が課されるだけでなく、以後の輸入申告において税関の検査が厳しくなるなど、事業運営に多大な支障をきたします。

8 おわりに:当事務所のサポート

関税定率法における課税価格の決定ロジックは、国際的な評価協定に基づいた複雑な体系となっており、一般の企業が自力ですべてを正確に把握することは容易ではありません。

当事務所では、代表弁護士が通関士資格を保有しており、法的な解釈と実務的な運用の両面から、貴社の輸入申告を強力にサポートいたします。

①課税価格の適正診断:現在の輸入取引が関税定率法に適合しているか、加算漏れがないかを精査します。

②税関への評価申告相談:複雑な取引形態について、税関から適正な回答を引き出すための書面作成を行います。

③事後調査への立会:税関の主張に対して法的な観点から反論し、適正な課税を確保します。

「この手数料は加算すべきなのか」、「親子会社間の取引価格は認められるのか」といった疑問をお持ちの方は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。

貴社の円滑かつ適法な貿易実務のために、最良の対応方法を提示させていただきます。

【お問合せは、こちらから】

・・・・・・・・・・・

執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

過少申告加算税と「正当な理由」

2021-01-24

0 はじめに:相談事例

まずは、当事務所に多く寄せられる、加算税の免除に関する具体的な相談事例をご紹介いたします。

【相談者:海外アパレル輸入代理店 B社 代表取締役】

「当社は欧州から新作の衣類を定期的に輸入しております。先日、税関の事後調査を受け、過去の輸入申告におけるHSコード(関税分類)の選択に誤りがあったと指摘されました。しかし、その分類については、輸入を開始する前に税関の窓口で対面による相談を行い、担当官から示された見解に基づいて申告を行ってきたものです。税関からは不足税額の納付と共に過少申告加算税を課すと告げられましたが、税関のアドバイスに従った結果であるにもかかわらず、ペナルティを支払わなければならないのでしょうか。このようなケースで『正当な理由』として免除される可能性はないのでしょうか。」

輸入実務において、良かれと思って確認した内容が後に覆されることは、企業にとって大きな負担となります。以下では、過少申告加算税が免除される「正当な理由」の法的定義とその具体的な適用範囲について、解説いたします。

1 過少申告加算税制度の基本原則

貨物の輸入時に納税申告を行った後、その税額が不足していたことが判明し、修正申告や更正が行われた場合、原則として不足税額の10パーセント(一定額を超える場合は15パーセント)の過少申告加算税が課されます。これは、申告納税制度の適正な運用を担保するための行政罰的な性格を持つものです。

しかし、納税者に過失がない場合や、客観的に見て申告を正しく行うことが困難であった場合にまで一律に制裁を科すことは、公平性の観点から妥当ではありません。そのため、関税法では一定の救済措置を設けています。

2 「正当な理由」の根拠条文と専門的定義

加算税が課されない例外規定として、関税法第12条の2第4項第1号において「正当な理由」について触れられています。

「第1項又は第2項に規定する場合において、修正申告又は更正により納付すべき税額(…中略…)が、過少申告であったことについて正当な理由があると認められるものであるときは、当該税額を基礎として計算した金額を、これらの規定により徴収すべき過少申告加算税の額から控除する。」

【正当な理由の法的意義】

ここでいう「正当な理由」とは、単に「うっかり間違えた」といった主観的な事情を指すのではありません。判例や行政実務においては、「真に納税者の責めに帰すべきではない事由があり、加算税を課すことが不当または酷であると認められる客観的な事情」を指すと解釈されています。

具体的には、輸入者が法令を十分に調査し、善意かつ無過失で申告を行ったものの、外部的な要因や不可抗力によって結果的に過少申告となってしまった場合が該当します。輸入者の知識不足や、委託先である通関業者の単純なミスは、残念ながらこの「正当な理由」には含まれないのが原則です。

3 「正当な理由」に該当する具体的基準

関税法基本通達等に基づき、具体的にどのような事情が認められるのかを整理します。以下の表は、実務上の判断基準としてワードデータ等にコピーしてご活用いただけます。

【表:正当な理由として認められる可能性がある具体的なケース】

区分 具体的な状況の内容 判断のポイント
税関の教示 税関職員に対し十分な資料を提出して相談し、その誤った教示に従って申告した場合。 相談の記録や提出資料の正確性が重要。
公的判断の変更 以前の更正や決定、あるいは事前教示回答書の内容が、後に税関によって変更された場合。 輸入者が公的な公表を信頼したことに正当性があるか。
課税価格の確定 輸入許可後に、契約に基づく事後的な価格調整が行われ、速やかに修正申告をした場合。 遅滞なく申告が行われたかという迅速性が問われる。
特殊な事情 震災や火災、あるいは通信回線の故障など、物理的に正確な申告が不可能であった場合。 納税者側の努力では回避できない不可抗力であるか。

4 実務における「正当な理由」の適用範囲

上記のようなケースであっても、自動的に免除されるわけではありません。

各項目の詳細な留意点は以下の通りです。

4-1 税関職員の教示に従った場合

冒頭の相談事例のようなケースです。

重要なのは、輸入者が「正しい情報」をすべて開示した上で税関の判断を仰いだかどうかです。情報の一部を隠していたり、口頭での曖昧なやり取りだけであったりする場合は、正当な理由として認められない可能性が高くなります。書面による事前教示制度を利用している場合は、より強い証明力を持ちます。

4-2 新規商品の分類困難性

技術革新が激しい分野や、既存の関税分類(HSコード)に当てはめることが極めて困難な特殊な商品については、その分類を誤ったとしても、輸入者が最大限の調査を尽くしていたのであれば、免除の対象となることがあります。

ただし、これも「専門家に相談したか」「過去の類似事例を精査したか」といったプロセスが厳しく問われます。

4-3 価格調整金による修正申告

例えば、海外の親会社との間で行われる移転価格調整に基づき、輸入から数ヶ月後に課税価格が確定する場合などです。この場合、価格が確定したことを知った日から速やかに修正申告を行えば、過少申告加算税は課されない運用となっています。

5 一部免除の仕組みに関する注意点

非常に重要な点として、「正当な理由」は申告全体に対して適用されるとは限らないという事実があります。

例えば、一つの輸入申告において、A商品の税率ミスとB商品の数量入力ミスの両方があったとします。A商品については税関の誤った指導に従ったものとして「正当な理由」が認められても、B商品の入力ミスについては認められません。

この場合、A商品に起因する不足税額分に対する加算税のみが控除され、B商品の分については通常通り課税されます。

このように、加算税の計算は項目ごとに精緻に行われるため、どの部分に正当な理由があるのかを法的に整理して主張する必要があります。

6 不当な加算税への対応と不服申し立て

税関から加算税の賦課決定通知を受けた際、その内容に不服がある場合には、「再調査の請求」や「審査請求」といった行政不服審査の手続きを取ることが可能です。

行政不服審査法に基づき、通知を受けた日の翌日から起算して3か月以内に申し立てを行う必要があります。ここで「正当な理由」が存在することを立証できれば、加算税の決定を取り消すことができます。しかし、税関側の判断を覆すには、単なる感情的な反論ではなく、過去の裁決例や具体的な証拠資料に基づいた論理的な主張が不可欠です。

7 「正当な理由」を確保するための事前対策

将来的に「正当な理由」を主張できるようにするためには、日頃の通関実務において以下の記録を保管しておくことが推奨されます。

1.税関等への相談記録:日時、場所、担当者名、相談内容、および提示した資料の控え

2.事前教示回答書:有効期限内の正式な書面

3.契約書の詳細:価格調整条項やロイヤリティの支払い条件が明記されたもの

4.専門家の助言書:弁護士や通関士による関税評価や分類に関する見解書

これらの資料が揃っていることで、万が一の調査時に「輸入者として尽くすべき義務を果たしていた」という証明が可能になります。

8 おわりに:専門家によるサポートの重要性

過少申告加算税における「正当な理由」の認定は、関税実務の中でも特に専門性が高く、難解な分野です。税関当局との見解の相違が生じた際、企業が単独で交渉を行うことは容易ではありません。

当事務所の代表弁護士は通関士資格を保有しており、関税法という専門的な法律の知識と、実際の通関現場での実務感覚の両方を兼ね備えております。

「税関の指摘に納得がいかない」、「正当な理由があるはずなのに認められない」とお困りの方は、ぜひ当事務所までご相談ください。貴社の主張を法的に構成し、正当な権利を守るためのアドバイスを提供いたします。また、加算税を課されないための社内コンプライアンス体制の構築についても、包括的にサポートさせていただきます。

輸入業務におけるリスクを最小限に抑え、安心できる貿易経営を実現するために、当事務所が力になります。どうぞお気軽にお問い合わせください。

【お問合せは、こちらから】

・・・・・・・・・・・

執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入通関における加算税制度

2021-01-22

0 はじめに:相談事例

まずは、当事務所に寄せられる典型的な相談事例をご紹介いたします。

【相談者:機械部品輸入販売会社 A社 物流担当課長】

「当社は長年、海外から工作機械の部品を輸入しております。先日、税関による事後調査が行われ、過去2年分の輸入申告において、インボイス価格に含めるべき海上運賃の一部が漏れていたとの指摘を受けました。意図的な隠蔽ではなく単純な計算ミスだったのですが、税関からは多額の不足税額に加えて『加算税』を課すと言われてしまいました。加算税とはどのような基準で課されるのでしょうか。また、一度課されてしまうと争うことは難しいのでしょうか。今後の対応を含めて専門的な視点からアドバイスをいただきたいです。」

このようなお悩みは、輸入業務に携わる企業にとって決して他人事ではありません。

以下では、加算税制度の仕組みと、根拠となる法令の条文を解説いたします。

1 加算税制度の目的と体系

加算税とは、関税法に基づき、適正な申告義務の履行を確保するために課される行政上の制裁措置です。本来納めるべき税金を正しく申告しなかったことに対するペナルティとしての性格を持ちます。

関税法における加算税は、申告の状況や悪質性の程度に応じて、主に「過少申告加算税」、「無申告加算税」、「重加算税」の3種類に分類されます(関税法第12条の2以下)。それぞれの定義や算定基準を理解することは、リスク管理において極めて重要です。

2 過少申告加算税の詳細

貨物を輸入する際に行った納税申告について、後日、税額が不足していたことが判明し、修正申告や更正が行われた場合に課されるのが過少申告加算税です(関税法第12条の2)。

この制度は、以下のように規定されています。

「申告納税方式が適用される貨物につき、納税申告があった場合において、修正申告があったとき、又は更正があったときは、税関長は、当該納税申告に関し、当該修正申告又は更正により納付すべき税額に百分の十の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を徴収する。」

【算定基準と注意点】

原則として、不足税額の10パーセントが課されます。ただし、修正申告により納付すべき税額が、当初の税額と50万円のいずれか多い金額を超える場合には、その超える部分については15パーセントの割合となります。

また、税関による調査の通知を受ける前に、自主的に間違いに気づいて修正申告を行った場合には、この過少申告加算税は課されません。このため、社内チェックにより誤りを発見した際は、速やかに自主申告を行うことがコストを抑える鍵となります。

3 無申告加算税の詳細

納税申告が必要な貨物であるにもかかわらず、輸入時に申告を行わず、税関の調査によって税額が決定された場合などに課されるのが無申告加算税です(関税法第12条の3)。

「申告納税方式が適用される貨物につき、その輸入時までに納税申告がなかった場合において、決定があったとき、又はその決定があった後に修正申告若しくは更正があったときは、税関長は、当該決定等により納付すべき税額に百分の十五の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を徴収する。」

【算定基準と加重】

原則として、納付すべき税額の15パーセントが課されます。ただし、納付すべき税額が50万円を超え300万円以下の場合には、その超える部分については20パーセントとなります。また、300万円を超える部分については30%となります。

期限内に申告を行わなかったことに対する責任は重く、過少申告加算税よりも高い税率が設定されています。

4 重加算税の詳細

重加算税は、過少申告や無申告の状態が、単なる過失ではなく「隠蔽」や「仮装」といった悪質な行為に基づいている場合に課される、最も重い制裁金です(関税法第12条の4)。

「第12条第1項の規定に該当する場合において、納税義務者がその関税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告をしていたときは、税関長は、過少申告加算税に代え、当該不足税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を徴収する。」

【算定基準】

過少申告の場合には35パーセント、無申告の場合には40パーセントという極めて高い割合が適用されます。さらに、過去5年以内に同じ税目において無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合には、税率がさらに10パーセント加算されます。

「隠蔽」とは、二重帳簿の作成や書類の破棄などを指し、「仮装」とは、虚偽のインボイスを作成することなどを指します。これらは脱税行為とみなされ、厳しい社会的信用の失墜にもつながります。

5 加算税の比較一覧表

各加算税の違いを理解しやすくするために、以下の表にまとめました(一部説明を簡略化しております)。

【表:加算税の種類と賦課割合の比較】

加算税の種類 根拠条文 原則的な賦課割合 加重される場合の割合 自主申告時の免除
過少申告加算税 関税法第12条の2 10% 規定超過分は15% 調査通知前なら免除
無申告加算税 関税法第12条の3 15% 50万円超300万円以下は20%

300万円超は30%

5パーセントに軽減
重加算税(過少) 関税法第12条の4 35% 短期間の反復時は45% 免除なし
重加算税(無申告) 関税法第12条の4 40% 短期間の反復時は50% 免除なし

6 「正当な理由」による免除の可能性

過少申告加算税や無申告加算税には、例外的に課されないケースがあります。

条文上、「正当な理由があると認められる」場合です。

しかし、実務上、この「正当な理由」が認められるハードルは非常に高いのが現状です。単なる計算間違い、法令の不知、事務担当者の交代などは正当な理由には含まれません。天災地変や、税関による公的な誤指導など、納税者の責めに帰すことができない客観的な事情が必要です。

また、加算税の基礎となる税額や、計算した加算税の額によっては、端数処理等の関係で徴収されない仕組みとなっています(関税法第13条の4)。

7 実務上の対策:事後調査への備え

税関の事後調査は、通常5年に一度の頻度で行われます。加算税のリスクを最小限に抑えるためには、日頃からの内部統制が不可欠です。

①インボイスの精査:発送元から提供された価格が、実際の支払い価格と一致しているか、加算要素(運賃、保険料、ロイヤリティ等)が漏れていないかを再確認する。

②関税分類の再点検:実行関税率表に基づき、適切なHSコードが選択されているか。

③修正申告の迅速な実施:誤りを発見した際は、税関の指摘を待たずに自ら修正申告を行う。

8 おわりに:当事務所の強み

関税や通関に関する法制度は非常に複雑であり、一度のミスが大きな経営リスクに直結します。加算税が課されるという通知を受けた場合や、過去の申告に不安がある場合には、法的な専門知識を持つ弁護士への相談が有効です。

当事務所では、代表弁護士が通関士資格を有しており、貿易実務と法律の両面に精通しております。税関との交渉や、不服申し立ての手続き、さらには再発防止に向けた社内規定の整備など、多角的なサポートを提供することが可能です。

「加算税の通知が届いてしまったが、計算根拠が納得できない」、「自主申告をしたいが、どのように進めればよいかわからない」といったお悩みがあれば、まずは当事務所までお気軽にお問い合わせください。貴社の円滑な輸出入業務を全力でバックアップいたします。

【お問合せは、こちらから】

・・・・・・・・・・・

執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

過少申告加算税の考え方について

2021-01-18

0 はじめに:具体的な相談事例

まずは、輸入業務において多く寄せられる相談事例をご紹介します。

【相談事例】

食品輸入業を営む株式会社A社の担当者Bさんは、海外の取引先から原材料を輸入する際、インボイス(仕入書)の金額確認を誤り、実際の取引価格よりも低い金額で税関に納税申告を行ってしまいました。輸入許可から2年後、税関による事後調査が行われ、申告価格の誤りを指摘されました。Bさんはすぐに修正申告を行いましたが、税関から「過少加算税」を課すとの通知を受けました。Bさんは「故意に隠したわけではなく、単純な確認不足だった。それなのに重い罰金のような税金がかかるのは納得がいかないし、計算方法も複雑でよくわからない」と頭を悩ませています。

このようなケースは、決して他人事ではありません。輸入貨物の申告において、意図せず納税額を少なく申告してしまった場合に課される追徴税について、詳しく解説していきます。

1 過少申告加算税の概要と課税の根拠

過少申告加算税とは、納税者が当初行った納税申告の額が本来納めるべき税額よりも少なかった場合に、その差額に対して課される行政罰的な性格を持つ税金です。申告納税制度の適正な運用を確保することを目的としています。

この制度の根拠となるのは、「関税法第12条の2」(過少申告加算税)です。

【参考:関税法第12条の2第1項(要約)】

納税申告があった場合において、修正申告が行われ、又は更正があったときは、税関長は、当該納税申告に関し、当該修正申告又は更正により納付すべき税額に百分の十の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。

輸入者が自ら誤りに気づいて修正申告を行った場合には税額の割合は変わる(関税法第12条の2第5項)。

2 過少申告加算税の税率と加重される条件

過少申告加算税の基本的な税率は、不足していた税額に対して10%です。しかし、不足額が大きい場合には、さらに税率が上乗せされる仕組みになっています。具体的には、以下のいずれか多い方の金額を超える部分については、税率が15%(基本の10%に5%を加算)となります。

①当初の申告税額

②50万円

これをわかりやすく図解すると、以下のようになります。

【図表1:過少申告加算税の税率構造イメージ】

項目 / 計算対象となる不足税額の範囲 / 適用される加算税の税率

基本税率分 / 当初申告額と50万円のいずれか多い額に達するまでの額 / 10パーセント

加重税率分 / 当初申告額と50万円のいずれか多い額を超える部分の額 / 15パーセント

※ただし、税関の調査の通知を受ける前に、自発的に修正申告を行った場合には、この過少申告加算税は課されません(無利子での延滞税が発生する場合等はあります)。また、申告漏れについて「正当な理由」があると認められる場合も課税対象外となりますが、実務上、単純な事務ミスや法令の不知は正当な理由として認められにくい傾向にあります。

3 過少申告加算税の税額計算と端数処理

過少申告加算税を計算する際には、端数処理のルールが厳密に定められています。

これは「国税通則法」の規定が準用されます(関税法第13条の4)。

①基礎となる税額の切り捨て(国税通則法第118条第3項

過少申告加算税を計算する際の基礎となる不足税額が1万円未満であるときは、過少申告加算税は課されません。また、1万円以上の場合は、1万円未満の端数を切り捨てて計算します。

②確定した加算税額の切り捨て(国税通則法第119条第4項

算出された過少申告加算税の額が5000円未満であるときは、その全額を切り捨てます(つまり課されません)。また、5000円以上の場合は、100円未満の端数を切り捨てます。

【図表2:端数処理の具体的プロセス】

ステップ番号 / 処理の内容 / 具体的な計算ルール
第1段階 / 不足税額の確定 / 当初申告税額と適正税額の差額を算出する
第2段階 / 基礎額の端数処理 / 不足税額が1万円未満なら終了。以上なら1万円未満を切り捨てる
第3段階 / 税率の乗算 / 第2段階の額に10パーセント(又は15パーセント)を乗じる
第4段階 / 最終税額の確定 / 算出額が5000円未満なら0円。以上なら100円未満を切り捨てる

4 賦課決定と納付の期限

過少申告加算税の額は、税関が調査結果に基づき「賦課決定通知書」を送付することによって確定します。

この通知を受けた輸入者は、通知書記載の金額の加算税を納付する必要があります。

5 おわりに:専門家への相談の重要性

輸入通関における納税申告は、関税率の適用判断や加算要素の有無など、非常に高度な専門性が求められるプロセスです。一度「過少申告」として指摘を受けると、加算税という金銭的な負担だけでなく、税関からのコンプライアンス評価にも影響を及ぼす可能性があります。

当事務所の代表弁護士は、法律の専門家である弁護士でありますが、「通関士」試験に合格しており、通関士の国家資格も有しております。輸出入実務と法律の両面から、事後調査への対応や、不当な賦課決定に対する異議申し立て、またミスを未然に防ぐための社内体制構築に関するアドバイスが可能です。

「今回の加算税の計算は正しいのか」、「正当な理由を主張できる余地はないか」といった疑問をお持ちの方は、ぜひ一度当事務所までお気軽にご相談ください。

複雑な税関手続を、確かな知見でサポートいたします。

【お問合せは、こちらから】

・・・・・・・・・・・

執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

委託加工貿易と仲介貿易の法的リスク

2021-01-12

【相談事例】海外での加工委託と三国間取引の落とし穴

相談者:国内のアパレルメーカーB社・物流担当責任者

お悩み:「当社では現在、日本から生地を輸出し、ベトナムの工場で縫製させた製品を日本に再輸入する『委託加工』を検討しています。また、将来的にその製品をベトナムから直接、アメリカの顧客へ転売する『仲介貿易(三国間貿易)』への拡張も視野に入れています。しかし、税関への申告価格(関税評価)の計算や、日本を介さない取引での代金回収、さらに契約書に盛り込むべき法的な防衛策が分からず、立ち往生しています。実務家として、どのような点に注意すべきでしょうか?」

1 結論:貿易スキームの成否は「事前のコスト試算」と「法令遵守」にあり

海外との取引を構築する際、単に「人件費が安いから」という理由だけでスキームを決定するのは極めて危険です。

2026年現在の検索エンジン技術や税関の監視能力は飛躍的に進化しており、小手先のテクニックは通用しません。結論から申し上げますと、委託加工貿易においては「再輸入時の関税減税制度の適用可否」が、仲介貿易においては「貨物と書類の不一致の防止」が、ビジネスの収益性を左右する決定的な要因となります。

本記事では、通関士資格を有する弁護士の視点から、これら2つの典型的な貿易類型について、実務上のポイントを解説いたします。

2 委託加工貿易:原材料提供と再輸入のメカニズム

委託加工貿易とは、日本の委託者が海外の受託者に対して原材料や部品等を提供し、加工や組み立てを行わせた後、完成した製品を日本へ輸入する形態を指します。

(1)順委託と逆委託の視点

①順委託加工貿易:加工の受託者(海外側)から見た呼称です。

②逆委託加工貿易:加工を依頼する委託者(日本側)から見た呼称です。

(2)実務上の最重要課題:関税定率法の活用

委託加工において最も留意すべきは、日本から輸出した原材料の価値に対する二重課税をいかに防ぐかという点です。ここで重要となるのが、関税定率法第11条(加工又は修繕のため輸出された貨物の減税)です。

関税定率法第11条

「加工又は修繕のため本邦から輸出され、その輸出の許可の日から一年(一年を超えることがやむを得ないと認められる理由がある場合において、政令で定めるところにより税関長の承認を受けたときは、一年を超え税関長が指定する期間)以内に輸入される貨物(加工のためのものについては、本邦においてその加工をすることが困難であると認められるものに限る。)については、政令で定めるところにより、当該輸入貨物の関税の額に、当該貨物が輸出の許可の際の性質及び形状により輸入されるものとした場合の課税価格の当該輸入貨物の課税価格に対する割合を乗じて算出した額の範囲内において、その関税を軽減することができる。」

この規定を適用するためには、輸出時に「加工・修繕輸出申告」を正しく行い、輸入時に輸出時の書類との同一性を証明しなければなりません。この手続きを怠ると、せっかく日本から送った原材料の価格分にも関税が課されてしまい、コストメリットが消失してしまいます。

(3)委託加工貿易のメリット・デメリット比較

委託加工貿易を導入する際は、以下の要素を総合的に判断する必要があります。

①人件費抑制のメリット:海外の安価な労働力を活用し、製造原価を低減できる点

②品質管理の難易度:現場での指導が不十分な場合、歩留まりが悪化し、かえってコスト増となるリスク

③関税コストの試算:加工賃にかかる関税だけでなく、輸入時の消費税負担も含めたシミュレーションの重要性

3 仲介貿易:三国間取引の複雑な書類フロー

仲介貿易(三国間貿易)とは、海外の輸出者と海外の輸入者の間の売買契約を、日本の仲介者が介在して成立させる取引です。貨物は日本を通過せず、輸出路から輸入国へ直接送られます。

(1)基本的な取引構造

例えば、輸出者(A国)、仲介者(日本)、輸入者(B国)のケースを想定します。

①日本の仲介者は、A国の輸出者から商品を購入する契約を結びます。

②同時に、B国の輸入者へその商品を販売する契約を結びます。

③貨物はA国からB国へ直送されます。

④代金はB国から日本へ支払われ、日本からA国へ支払われます。その差額が日本の会社の利益となります。

(2)実務上の急所:スイッチ・インボイス

仲介貿易で最大の問題となるのが、「仕入先(A国)の情報を販売先(B国)に知られたくない」という点です。これを解決するために、仲介者は船会社に対して、荷送人を日本側に差し替えた「スイッチ・インボイス」の発行を依頼することが一般的です。しかし、この書類の差し替えミスや、パッキングリストにA国の情報が残ってしまう事態が発生すると、B国での輸入通関が止まり、様々なトラブルが発生するリスクがあります。

(3)外国為替及び外国貿易法(外為法)の遵守

日本を貨物が通過しない場合でも、日本の居住者が取引を仲介する以上、外為法第25条(役務取引等)や輸出貿易管理令の規制対象となる場合があります。特に、戦略物資や大量破壊兵器への転用が疑われる貨物(リスト規制対象品)の場合、経済産業大臣の許可が必要となるケースがあるため、貨物のスペック確認(該非判定)を怠ってはいけません。

4 通関士資格を持つ弁護士による「伴走型サポート」

貿易実務は、法律の条文解釈(デスクワーク)と、現場の通関実務(フィールドワーク)が密接にリンクしています。

当事務所では、代表弁護士が通関士資格を保有しており、以下の専門的なアプローチが可能です。

(1)貿易スキームのリーガル診断

「そもそもこの取引は関税定率法の減税対象か」、「仲介貿易において、どのインコタームズ(貿易条件)を選択すべきか」といった質問に対し、条文に基づいた正確な回答を提供します。

(2)税関事後調査を見据えた関係資料の管理

税関は輸入の数年後に「事後調査」にやってきます。

関税法第94条(帳簿の備付け等)に基づき、適切な資料を保存していなければ、不測のペナルティを課される恐れがあります。当事務所では、将来の調査に耐えうる管理体制の構築を支援します。

(3)相談者への実践的な回答

当事務所では、断片的な情報ではなく、一次情報(法令・通達)と実務経験(現場でのトラブル対応)を掛け合わせたアドバイスを行います。「教科書的な解説」ではなく、貴社のビジネスが「実際に回るか」という視点を最優先いたします。

5 まとめ:不安を解消し、グローバル展開を加速させる

委託加工貿易も仲介貿易も、正しく運用すれば貴社の利益を大きく押し上げる強力なツールとなります。しかし、知識不足による一歩の踏み外しが、大きな法的デメリットや損失を招くことも事実です。

「このビジネスモデルで法的に問題はないか?」「税関手続きで注意すべき点はどこか?」 少しでも不安や悩み、気になる点がある方は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。通関士の知見を持つ弁護士が、貴社の羅針盤となり、誠実かつ迅速にサポートさせていただきます。

【お問合せは、こちらから】

・・・・・・・・・・・

執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

海外取引における直接取引と間接取引

2021-01-10

【相談事例】「海外の画期的な製品を輸入したいが、英語も通関も不安……」

相談者: 国内で輸入雑貨の販売を検討しているA社・代表取締役

お悩み:「海外の展示会で見つけた素晴らしい製品を自社で扱いたいと考えています。しかし、相手企業とは英語でのやり取りが必要ですし、何より『輸入通関』や『関税』といった専門的な手続きが全く分かりません。自社で直接輸入すべきなのか、それとも間に専門業者を入れるべきなのか……。リスクを最小限に抑えてビジネスを始めるにはどうすれば良いでしょうか?」

1 結論―取引形態の選択がビジネスの成否を分ける

海外企業とのビジネスを検討する際、多くの企業が「言葉の壁」や「通関手続の複雑さ」を理由に二の足を踏んでしまいます。しかし、海外取引は必ずしも自社で全てを完結させる必要はありません。

結論から申し上げますと、利益率を最大化したいなら「直接取引」、初期リスクと実務負担を軽減したいなら商社等を介した「間接取引」を選択する方法が定石です。

どちらの方法を選ぶにせよ、関税法や輸入規制といった「専門的な知見」を踏まえた論点をあらかじめ整理しておくことが、不測の事態(貨物の差し止めや過少申告罰則)を防ぐ有効な手段となります 。

2 海外企業との「直接取引」:メリットと見えないリスク

日本のメーカーや販売店が、海外の会社との間に第三者を挟まずに契約を結ぶ形態です。

(1)直接取引のメリット

①中間コストの削減

仲介者に支払う手数料が発生しないため、仕入れ価格を抑え、利益率を高く保つことが可能です。

②意思決定のスピード

取引条件や価格交渉を直接行えるため、市場の変化に応じた迅速な対応が期待できます。

③情報の透明性

相手方と直接繋がることで、製品の改良要望やトラブル時の確認がスムーズ(正しく伝われば)になります。

(2)潜むデメリットと実務の壁

一方で、全ての責任は自社に帰属してしまいます。

①通関実務の負担

輸入申告や関税の支払い、他法令(食品衛生法や薬機法など)の確認を自社で管理しなければなりません。

②為替・物流リスク

輸送中の事故や為替変動による損失を直接被ることになります。

③専門知識の欠如による罰則

悪意がなくとも、関税法に抵触すれば「事後調査」などで厳しいペナルティを課されるリスクがあります。

3 海外企業との「間接取引」―商社活用の戦略的意義

間接取引とは、主に商社などの専門業者を介して行う取引を指します。多くの場合、輸出入の名義は商社側となります。

(1)間接取引のメリット

①専門知見の活用

商社が蓄積してきた「通関のノウハウ」や「現地情勢」を利用できます 。自社に専門部署を置く必要がありません。

②交渉力の代行

取引条件を有利にするための交渉をプロに任せられるため、言語の壁を気にする必要がありません。

③リスクの分散

代金回収リスクや物流トラブルの一部を商社が担保してくれるケースが多いと言えます。

(2)慎重に検討すべきコスト

最大の懸念点は、当然ながら「コスト」です。商社への手数料を差し引いても、自社でビジネスを継続するだけの利益が残るのかを精緻にシミュレーションしなければなりません。

4 専門家の知見を加えることの重要性

海外取引を検討する際、多くの企業が「契約書の言語」や「相手企業の信用」ばかりに目を向けがちです。しかし、通関実務の視点から見れば、真のリスクは「貨物が日本の港に届いた後」にも多数存在しています。

(1)実行前に必ず行うべき「関税分類(HSコード)」の特定

直接取引を選択する場合、自社で輸入申告を行う(または通関業者に指示を出す)ことになります。ここで最も重要なのが、商品の「住所」とも言えるHSコードの特定です。

①関税率の確定

コードの選択一つで関税率が0%から10%以上まで変動します。

②他法令の非該当証明

食品衛生法や薬機法に該当するか否かは、このコードに基づき判断されます。

実務上、自己判断で輸入を進め、税関から「区分が違う」と指摘されれば、過去数年分に遡って追徴課税を課されるリスク(事後調査リスク)もあります。

そのため、検討段階で、税関への「事前教示制度」を活用する等の対策が不可欠です。

(2)商社(間接取引)を利用する際の「手数料」以外のチェックポイント

間接取引は「楽」ですが、丸投げは危険です。商社を利用する際は、以下の実務的視点を持ってください。

①物流ルートの透明性

どの船会社を使い、どこに保管されているか。トラブル時に商社が迅速に回答できる体制かを確認してください。

②該非判定書の入手

将来的に自社での直接取引に切り替える可能性を見据え、商社が取得した法令上の許可証や判定書のコピーを共有してもらえる契約にしておくべきです。

(3)逆ピラミッド型で考える「トラブル発生時」の初動

万が一、貨物が税関で止まった、あるいは事後調査の通知が来た場合、小説のような「起承転結」で経緯を説明することが必ずしも適しているとは言えません。税関職員が求めているのは、以下の3点に集約された「結論」です。

①何が起きているか(事実)

「輸入申告に対して、評価(価格)の妥当性が問われている」など。

②根拠は何か(証拠)

「メーカーとの基本合意書および送金控えに基づいている」など。

③どう対応するか(方針)

「指摘箇所を精査し、速やかに修正申告または疎明資料を提出する」など。この順序で誠実に対応することが、税関からの信用を獲得し、調査や手続を早期に終了させる鍵となります。

5 まとめ:最初の一歩を「確信」に変えるために

直接取引であっても間接取引であっても、海外ビジネスを成功させる鍵は「事前の制度把握」にあります。「会社設立の資本金はいくらが妥当か?」、「この製品の関税率は?」、「事後調査に備えた帳簿の書き方は?」といった「よくある質問」の中にこそ、成功のヒントが隠されています 。

「海外取引に興味はあるが、何から手をつければいいか分からない」、「今の提携商社との関係が最適か不安」とお悩みの方は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください 。

法務と実務の両面から強力にサポートさせていただきます。

【お問合せは、こちらから】

・・・・・・・・・・・

執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

荷物が税関で止まる原因と解決策

2021-01-08

1 貨物が届かない時は「どこで止まっているか」の特定が最優先

「海外の業者に注文した荷物が、予定日を過ぎても届かない……」

このような状況に陥った際、まず行うべきはパニックになることではなく、「貨物が現在、どこのプロセスの、誰の手元にあるのか」を正確に特定することです。

貨物が日本に届かない理由は、大きく分けて「海外での発送・通関トラブル」か「日本国内での通関トラブル」のいずれかです。

特に税関で止まっている場合、適切な法的知識を持って対応しなければ、最悪の場合は貨物の没収や、輸入者としての法的責任を問われるリスクもあります。

本記事では、通関士資格を有する弁護士の視点から、貨物が届かない原因の切り分け方と、具体的かつ誠実な解決策をみていきます。

2 貨物が手元に届くまでの法的プロセス(一般的な輸入の流れ)

まず、私たちが海外から物品を取り寄せる際、水面下でどのような法的続きが行われているのかを理解することが出発点となります。

(1)輸入申告と輸入許可

国際郵便や特定の国際宅配便を除き、原則として貨物を日本国内に引き取る(輸入する)ためには、税関に対して「輸入申告」を行い、「輸入許可」を得る必要があります。

この申告は、通常は輸入者本人、または輸入者から委託を受けた「通関業者」が代行します。税関は申告内容を精査し、関税・消費税の納税を確認した上で、初めて許可を出します。

(2)他法令(関税法以外の規制)への注意

注意が必要なのは、関税法以外の法律(他法令)による規制です。

例えば、食品であれば「食品衛生法」、化粧品や医薬品であれば「医薬品医療機器等法(薬機法)」、植物であれば「植物防疫法」といった具合に、税関以外の関係省庁からあらかじめ「許可」や「承認」を得ていなければ、輸入申告そのものが受理されない、あるいは許可が下りないケースが多々あります。

例えば、医薬品であっても個人輸入であれば特段事前の許可・承認の取得は不要という間違った知識をお持ちの方もおりますが、個人輸入の場合には輸入量等が厳密に規定されており、その量を超える場合には実際に個人輸入の場合にも個人輸入とは認められませんので注意が必要です。

3 貨物が届かない場合に考えられる「3つの主要な原因」

貨物が届かない原因は、これまでのご相談対応の経験上、大きく以下の3つに集約されます。

①そもそも日本に到着していない(海外側の問題)

発送元が送り忘れている、現地での輸出通関が止まっている、あるいは輸送ルート上のトラブル(経由地での滞留など)です。この場合、海外ベンダーとの交渉が必要になります。

②他法令の確認に時間がかかっている(国内の行政手続き)

貨物は日本に到着しているものの、前述した「他法令」の許可申請に通関業者が手間取っているケースです。例えば、成分分析が必要な貨物や、輸入実績のない物品の場合、厚生労働省や農林水産省とのやり取りに数週間を要することもあります。

③税関検査による留めおき(税関側の判断)

税関が「申告内容が疑わしい」「禁制品が含まれている可能性がある」と判断した場合、貨物を開梱して検査を行います(税関検査)。検査対象に選ばれると、検査の実施と判断待ちのために、貨物は税関の保税区域に数日間留め置かれることになります。

4 なぜ個人や一般企業での対応は難しいのか?

トラブルの原因が判明しても、そこからの解決には高いハードルが存在します。

①専門用語の壁:通関業者や税関との会話では「インボイス」「評価申告」「他法令の確認」「保税」といった専門用語が飛び交います。これらの意味を正確に理解していないと、的外れな回答をしてしまい、さらに時間をロスする原因となります。

②心理的負担:自分の大切な荷物が「止まっている」という不安な状態で、役所や専門業者と対等に交渉するのは、精神的にも非常に大きなストレスとなります。

③不利益のリスク:良かれと思って出した追加資料が、実は関税法上の過少申告を裏付ける証拠になってしまうといった、法的な落とし穴も存在します。

5 専門家のサポートを得た解決方法

当事務所で 代表弁護士が通関士の国家資格を有しており、輸出入実務と法律の両面に精通した現場を把握した「実務家」としての強みを持っています。

(1)迅速な状況把握と代理交渉

代表弁護士が依頼者の代理人として、通関業者や税関、関係省庁に対して直接問い合わせを行います。専門用語を駆使して状況を正確に把握し、何がボトルネックになっているのかを即座に特定します。

(2)誠実なリーガルアドバイス

もし貨物が「輸入できないもの」であった場合、あるいは追加の納税が必要な場合、当事務所は耳の痛い事実であっても誠実にお伝えします。無理な主張で事態を悪化させるのではなく、法的に最も「正しい解決策」を提示することが、最終的な依頼者の利益に繋がると確信しているからです。

(3)再発防止のコンプライアンス構築

一度トラブルを解決した後は、二度と同じことが起きないよう、輸入フローの見直しや、契約書の整備、他法令の事前確認体制の構築など、長期的なサポートも提供可能です。

6 まとめ:不安を解消し、確実な輸入を実現するために

海外からの荷物が届かないという問題は、時間が経過するほど保管料が発生したり、賞味期限が切れたりと、デメリットが増大していきます。

「もう少し待てば届くはず」という楽観視は、時として大きな損失を招きます。

当事務所では、輸入事後調査への対応経験も含め、税関とのやり取りにおいて豊富な経験を有しています。貨物が届かずにお困りの方、通関業者との意思疎通がうまくいかず不安を感じている方は、お早めにご相談ください。

7 お問い合わせ方法

輸入トラブルに関するご相談は、下記のお問い合わせフォーム、またはお電話にて承っております。

【お問合せは、こちらから】

・・・・・・・・・・・

執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

« Older Entries Newer Entries »

トップへ戻る

03-5877-4099電話番号リンク 問い合わせバナー