Archive for the ‘コラム~人事労務・労使トラブル~’ Category

従業員への年休付与、きちんとできてますか?

2021-01-16

年次有給休暇、いわゆる年休は従業員にとって極めて重要な権利です。
このような年休取得の権利は、労働基準法39条で規定されており、従業員が、その雇入れの日から起算して6か月継続して勤務し、かつ、全労働日の8割以上出勤した場合に、当該従業員に対して認められます。
ここで、「全労働日の8割」という点に関して、会社全体の労働日を指すと勘違いをしている方がいらっしゃいますので、本日は、年休所得の要件である「全労働日の8割」の出勤に関して、ご説明します。

 

1 全労働日とは

全労働日とは、会社全体の労働日を指すのではありません。あくまでも、年休を取得しようとする当該従業員が労働契約上本来就労すべき労働日の全体のことを指しますので、注意が必要です。
例えば、正社員の労働日が週5日であり、パート従業員の労働日が週4日である場合、パート従業員の年休取得要件の充足性を考える場合には、正社員の労働日ではなく、当該パート従業員の労働日である週4日を前提に算定する必要があります。

 

2 出勤率の算定方法

全労働日の8割以上の出勤であるかどうかを考える際には、従業員の出勤日数を全労働日で除して算出します。ここでは、労働義務のない休暇日等は出勤日にも労働日にも含めないこととなります。
なお、使用者の責めに帰すべき事由により休業をした場合における休業日の取扱いについて、裁判所は、八千代交通事件(最判昭和25・6・6民集67・5・1187)において、全労働日に算入するとともに、出勤したものとみなす日として取り扱う旨を判示している点には注意が必要です。

当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、従業員による年休の取得に関する問題が発生した場合の対応等に関して、不安や悩みがある方、お困りのことがある方は、お気軽にご相談ください。

ご存知ですか?就業規則の記載事項には3種類あります

2021-01-14

本日は、就業規則の記載事項をご紹介いたします。
就業規則の記載事項としては、絶対的必要記載事項、相対的必要記載事項、及び任意的必要記載事項の3種類があります。それぞれの概要を以下で整理しておりますので、就業規則の作成義務がある企業は、ご注意ください。

1 絶対的必要記載事項

絶対的必要記載事項とは、就業規則に必ず記載しなければならない事項のことを指します。
具体的には、以下の①から③です。
①始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する事項
②賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切及び支払の時期並びに昇給に関する事項
③退職に関する事項(解雇事由を含む)

 

2 相対的必要記載事項

相対的必要記載事項とは、内容を決めるかどうかは使用者の自由ですが、内容を決める場合には、必ず就業規則上に規定しなければならない事項を指します。
代表的なものは、以下の①から⑧です。
①退職手当に関する事項。例えば、適用労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法、支払時期等。
②臨時の賃金、賞与及び最低賃金額等に関する事項
③労働者の食費、作業用品その他の負担に関する事項
④安全及び衛生に関する事項
⑤職業訓練に関する事項
⑥災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
⑦表彰及び制裁に関する事項(その種類及び程度)
⑧前各号の外、当該事業場の全てに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

 

3 任意的記載事項

任意的記載事項とは、内容を決めるかどうか、及び就業規則に規定するかどうかを使用者が自由に判断できる事項を指します。
様々な内容が考えられますが、例えば、以下の①から⑥等が該当します。
①服務規律、指揮命令等に関する事項
②社員体系、職務区分、職制に関する事項
③施設管理、企業秩序維持等に関する事項
④競業禁止等に関する事項
⑤職務発明の取扱い等に関する事項
⑥公益通報保護その他内部コンプライアンスに関する事項

就業規則の記載事項は以上のとおりですが、就業規則の作成義務がある一定の企業は、従業員とのトラブルを避けるという観点からも、以上の内容を踏まえて適切に就業規則を作成等する必要があります。
当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、労働問題を幅広く取り扱っておりますので、就業規則の作成や内容の修正等をお考えの場合は、お気軽にご相談ください。

試用期間に関する注意点

2021-01-13

従業員としての適格性等を判断するための期間として、試用期間を設定している企業も多いものと思われます。
この試用期間の法的性質に関して、裁判所は、通常は、解約権留保付労働契約として構成される、と考えています(最大判昭48・12・12民集27・11・1536(三菱樹脂事件))。
本日は、このような試用期間を設定する際に企業が注意する必要がある点として、①労働条件の明示、②解雇予告手当の取扱いの特殊性、及び③本採用の拒否、に関してご紹介いたします。

 

1 労働条件の明示

企業は、採用する者との間の労働契約の締結に際して書面による労働条件の明示が義務付けられております(労働基準法15条1項等)。
したがいまして、試用期間中の労働条件が、試用期間経過後本採用となった後の労働条件と異なる場合、企業は、当該内容を明示する義務があります。

 

2 解雇予告手当の取扱いの特殊性

試用期間中の従業員を解雇する場合、試用期間開始から14日以内に解雇をするときには、解雇予告手当等を支給する必要がなく、即時に解雇をすることができます(労働基準法21条)。
他方で、試用期間開始から14日経過後に解雇する場合には、通常の解雇の場合と同様に、少なくとも30日前の解雇予告、又は解雇予告を行わない場合には、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。

 

3 本採用の拒否

試用期間中の従業員の業務内容等を踏まえて、本採用を拒否する場合もあります。
もっとも、日本軽金属事件(東京地判昭和44・1・28労働民例集20・1・28)では、「教育によってたやすく矯正し得る言動、性癖等の欠陥を何ら矯正することなく放置して、それをとらえて解雇事由とすることは許されない」との判断が示されるなど、試用期間中に、従業員に対して適切に教育、指導等を実施しない場合には、本採用の拒否が違法と判断される場合がある点には注意が必要です。

当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、試用期間の設定や、試用期間中の従業員の解雇に関して、不安や悩みがある方、お困りのことがある方は、お気軽にご相談ください。

ご存知ですか?~セクシュアルハラスメントには2つの類型があります~

2021-01-11

セクシュアルハラスメントについては、男女雇用機会均等法において定義が設けられております。
そこでは、「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したり抵抗したりすることによって解雇、降格、減給などの不利益を受けることや、性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じること」と規定しております。
以上の定義のとおり、セクシュアルハラスメントは2つの類型に分けて考えられておりますので、以下では、それぞれの類型の概要をご紹介いたします。

 

1 対価型セクシュアルハラスメントについて

対価型セクシュアルハラスメントとは、労働者の意に反する性的な言動に対する従業員の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給、労働契約更新を拒否される、昇進・昇格の対象から除外される、客観的にみて不利益な配置転換をされる等の不利益を受けることを指します。
具体的には、
①性的な関係を要求したが拒否されたので解雇するケース
②人事考課などを条件に性的な関係を求めるケース
③職場内での性的な発言に対し抗議した者を配置転換するケース
等です。

 

2 環境型セクシュアルハラスメントについて

環境型セクシュアルハラスメントとは、従業員の意思に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどその労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
具体的には、
①性的な話題をしばしば口にするケース
②恋愛経験を執ように尋ねるケース
等です。

セクシュアルハラスメントが許されない行為であることは言うまでもないことですが、セクシュアルハラスメントは、企業の社会的な評判に大きな影響を与える可能性がある問題であり、また、そもそも、企業がセクシュアルハラスメントについて適切な対応を取らない場合には、民法715条に基づく使用者責任、職場環境配慮義務違反の債務不履行責任、安全配慮義務違反に基づく債務不履行責任等によって、企業についても従業員から損害賠償請求を受ける可能性があります。
そのため、セクシュアルハラスメントの問題が企業内で発生した場合には、適切な対応を取ることは企業にとって必須となっております。

当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、セクシュアルハラスメントに関する問題が発生した場合の対応等に関して、不安や悩みがある方、お困りのことがある方は、お気軽にご相談ください。

労働条件明示義務の例外的な取扱いには要注意です!

2021-01-10

本日は、企業が、採用予定者と労働契約を締結する際の労働条件明示義務の例外的な場合について、ご紹介いたします。

労働契約を締結するにあたって、企業は、採用予定者に対して、書面による労働条件明示義務を負っております(労働基準法15条1項)。そして、明示義務が課されているのは、原則として同法施行規則5条1号に列挙されている14項目(労働契約の期間に関する事項や期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項等)となります。

もっとも、従業員の就業形態等を踏まえて、明示すべき労働条件が当該14項目とは異なる場合がありますので、注意が必要です。
具体的には、①短時間労働者及び有期雇用労働者、②建設労働者、③派遣労働者に関しては、以下のとおり規定されております。

 

1 短時間労働者及び有期雇用労働者

短時間・有期雇用労働者法において、上記14項目に加えて、昇給、退職手当および賞与の有無についても明示を義務付けております(短時間・有期雇用労働者法6条1項等)。

 

2 建設労働者

建設労働者の雇用の改善等に関する法律において、事業主の氏名又は名称、雇入れに係る事業所の名称及び所在地、雇用期間、従事すべき業務の内容の明示を義務付けております(建設労働者の雇用の改善等に関する法律7条)。

 

3 派遣労働者

労働者派遣法において、派遣元事業主は、派遣就業の諸条件の明示が義務付けられております(労働者派遣法34条等)。

当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、新たに従業員を募集する際に明示すべき労働条件の内容等に関して、不安や悩みがある方、お困りのことがある方は、お気軽にご相談ください。

ご存知ですか?~企業には労働条件明示義務があります~

2021-01-09

本日は、企業が、採用予定者と労働契約を締結する際の労働条件明示義務について、ご紹介いたします。

労働契約を締結するにあたって、企業は、採用予定者に対して、書面による労働条件明示義務を負っております(労働基準法15条1項)。そして、当該明示義務が課されているのは、原則として以下1及び2記載の14項目です(同法施行規則5条各号)。
また、労働基準法5条2項では「明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる」と規定されておりますので、労働条件明示義務の実施に関して、企業は、細心の注意を払う必要があります。

なお、以下の各項目はあくまでも原則として企業に明示義務が課されているものであり、①短時間労働者及び有期雇用労働者、②建設労働者、③派遣労働者等については、明示すべき労働条件が以下の各項目とは異なりますので、注意が必要です。

 

1 書面で必ず明示しなければならない事項(必要的明示事項)

①労働契約の期間に関する事項
②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
③就業場所、従事すべき業務に関する事項
④始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇等に関する事項
⑤賃金(退職手当等を除く)の決定、計算、支払方法、締切り、支払時期、昇給に関する事項
⑥退職に関する事項(解雇の事由を含む)

 

2 制度がある場合に明示しなければならない事項(相対的明示事項)

⑦退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算、支払いの方法、支払い時期に関する事項
⑧臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、貸与およびこれに準じるもの、最低賃金額等に関する事項
⑨労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
⑩安全衛生に案する事項
⑪職業訓練に関する事項
⑫災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
⑬表彰、制度に関する事項
⑭休職に関する事項

以上、労働条件明示義務の概要をご紹介いたしました。
企業としては、上記①から⑭の内容を明示したつもりでも、労働条件の明示としては不十分であると考えられてしまうケースもありますので、具体的にどのような内容を明示するのか、という点は慎重に検討、対応していただく必要があります。

当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、新たに従業員を採用する際に明示すべき労働条件の内容等に関して、不安や悩みがある方、お困りのことがある方は、お気軽にご相談ください。

採用内定の取消しの注意点

2021-01-09

昨今の社会情勢の下、企業から、経営悪化に伴い採用内定を取消さざるを得ない状況にあるが、どのような場合に採用内定の取消しを行うことができるのか、といった相談をいただくことがあります。
そこで、本日は、採用内定の取消しに関して、ご説明いたします。

 

1 採用内定の法的性質

採用内定は、通常は始期付解約権留保付の労働契約と考えられますが、企業は無制約に解約権を行使することができるわけではなく、内定を取消す場合には、解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的で社会通念上相当として是認できるものであることが必要であると考えられております。

 

2 採用内定の取消し

企業による解約権行使が適法であるか否かについて、裁判所は、企業による採用内定の取消しを厳格に判断する傾向にあります。
例えば、裁判例を見ますと、経営悪化を理由とする採用内定取消しに関しては、単に経営状態が悪化したというだけでは足りず、企業の経営悪化が新規採用を困難とするような状態であり、かつ、内定当時予測できなかった要因によるものであることまで求められる場合もあります。また、このような経営悪化を理由とする採用内定の取消しの場合は、整理解雇に準じたものと捉えられ、整理解雇の有効性を判断するための4要素(人員整理の必要性、解雇回避努力義務の履行、人選の合理性、及び手続の妥当性)が判断基準として採用されることとなります。

 

3 採用内定取消しに対する行政の取組

職業安定法施行規則では、企業は、採用内定取消しを実施した場合に、ハローワークに一定の事項を通知する必要がある他、2年以上連続して内定取消しを行ったなど厚生労働大臣が指定する一定の内容に該当した企業名を公表することができる、と規定されております(同17条の4、35条2項)。
そのため、企業が採用内定を取消す場合には、このような行政側の取組に関しても注意をする必要があります。

以上、採用内定の取消しの概要をご紹介いたしました。
内定段階であれば、簡単に取消すことができると考えている方もいらっしゃいますが、上記のとおり、採用内定取消しには高いハードルがありますので、安易に考えるのは非常に危険であり、採用内定取消しを実施する場合には、専門家への相談も含めて慎重に検討、対応する必要があります。

当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、採用内定の取消しに関して、不安や悩みがある方、お困りのことがある方は、お気軽にご相談ください。

採用内定の注意点~安易に採用内定を行うことの落とし穴~

2021-01-08

本日は、採用内定の法的性質及びそれに付随して採用内々定の法的性質をご紹介いたします。

1 採用内定について

採用内定とは、一般的に、新規学卒者を在学中に採用し卒業後入社させる、という採用方法のことを指します。そして、この在学中に採用され、正式入社前の者は一般に採用内定者と呼ばれております。
企業と採用内定者との法律関係については、通常、始期付、かつ解約権留保付の(試用)労働契約が成立しているものと考えられております(最判昭54・7・20労判323・19(大日本印刷事件)等)。
また、企業は、解約権を留保しておりますが、無制約に解約権を行使することができるわけではなく、採用内定を取消す場合には、解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的で社会通念上相当として是認できるものであることが必要であると考えられております。

 

2 採用内々定について

これに対して、採用内々定という仕組みが利用される場合もあります。
これは、採用内定の前段階と位置づけられるものですので、通常は始期付解約権留保付の労働契約の成立までは認められません。
もっとも、企業が無制約に採用内々定を解消することが出来るわけではないので注意が必要です。例えば、コーセーアールイー事件(福岡高判平成23・3・10)においては、採用内々定について、「正式な内定までの間、企業が新卒者をできるだけ囲い込んで、他の企業に流れることを防ごうとする事実上の活動の域を出るものではないというべきであり」、「始期付解約権留保付労働契約が成立したとはいえない」が、内定通知を出すと説明しながら数日前になって内々定の取消しをしたことについて、他の就職先を断ったこと等の事情から50万円の慰謝料の支払いが認められた例があります。

以上、採用内定及び採用内々定の概要に関してご紹介いたしました。
採用内定や採用内々定は、広く利用されている仕組みであるため、その法的性質を十分理解しないまま利用している場合もありますが、そのような対応は、採用の前後を問わず(採用予定)従業員との間で思わぬ紛争・トラブルを発生させる可能性がありますので、企業としては注意する必要があります。

当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、採用内定や採用内々定に関して、不安や悩みがある方、お困りのことがある方は、お気軽にご相談ください。

退職代行サービス利用の危険性

2021-01-07

昨今、退職代行サービスの利用が広がっているとニュース等で報じられております。
当事務所では、退職代行サービスを利用した従業員から退職の意思表示があった場合に会社はどのように対応すべきか、といったご相談をいただくこともあります。
そこで、本日は、退職代行サービスの概要及び問題点等について、ご紹介いたします。

 

1 退職代行サービスについて

改めてご説明いたしますと、退職代行サービスとは、退職代行業者が従業員に代わって会社に対して退職の意思を伝えるというものです。
このような退職代行サービスについては、弁護士法違反ではないか、という指摘があります。
弁護士法72条では、弁護士または弁護士法人でない者が有償で法律事務を行うことを原則として禁止しております。これに違反する場合には、2年以下の懲役または300万円以下の罰金という刑事罰の対象となります。
弁護士資格を有している者が退職代行を行うことは基本的には問題ないのですが、弁護士資格を有さない者が退職代行サービスを行うことには問題がある可能性が高いと考えられております。
このような問題点について、弁護士資格を有さない退職代行業者としては、単に退職希望者の退職の意思を会社に対して伝える「使者」に過ぎないので法的には問題ないと主張する場合があるようです。
しかしながら、弁護士法72条が非弁活動として禁止する法律事務とは、法律上の効果を発生、変更する事項の処理、保全、明確化するための処理を指すものと考えられております。
退職代行とは、従業員の退職の意思表示を会社に伝えるということで、まさにこの法律事務に該当する結果、弁護士法72条に違反する可能性が高いものと考えられます。

 

2 弁護士資格を有さない退職代行業者からの退職の連絡への対応について

対応方針としてはいくつか考えられますが、現実的には、退職代行業者から退職の連絡があった場合でも、本人に対して退職の意思の確認をせざるを得ないのではないかと考えております。
本人の署名捺印のある委任状があれば本人の意思の確認とすることもできるのですが、あくまでも退職代行業者は単なる使者に過ぎませんので、このような委任状を有してはおりません(そもそも、委任状を有している場合には、非弁活動として違法となる可能性が高いと考えられます。)。
本人の意思を明確に確認せずに退職代行業者からの連絡のみで従業員を退職扱いとすることにはリスクが高いものと言わざるをえません。

当事務所では、労働問題を幅広く取り扱っておりますので、「退職代行業者から従業員の退職の意思が伝えられたがどのように対応すればよいか困っている」等、退職代行サービスへの対応に関してお悩みのことがありましたら、ご遠慮なくご相談ください。

懲戒処分の7類型について

2021-01-06

会社が従業員に対して行う懲戒処分としては、減給や懲戒解雇が有名です。
もっとも、懲戒処分の具体的な分類としては、分類方法にもよりますが、以下の7種類に分類することができます。
以下では、各類型の概要をご紹介いたしますので、懲戒処分を検討いただく際の参考となれば幸いです。

 

1 戒告

従業員に対して口頭で注意をすることを指します。
もっとも、懲戒処分としてではなく、事実上の注意として行われることも多くあります。

 

2 けん責

従業員に対して、書面((経緯)報告書、始末書、顛末書等)を提出させて、反省を促すことを指します。

 

3 減給

従業員に対して、本来の給与の一部を差引いて支給することを指します。
ただし、減給の割合は労働基準法で規定されておりますので、注意が必要です。具体的には、労働基準法91条で、「一回の額は平均賃金の一日の半額分を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」と規定されております。

 

4 出勤停止

従業員に対して、一定期間の出勤を禁止することを指します。

 

5 降格

従業員に対して、役職、職能資格等を引き下げることを指します。

 

6 諭旨解雇

会社が従業員を一方的に解雇するのではなく、会社と従業員の両者が話し合い、従業員が納得した上で解雇処分を進めることを指します。

 

7 懲戒解雇

懲戒処分としては最も重い処分になりますが、会社が従業員を一方的に解雇することを指します。
ただし、懲戒解雇については、労働基準法19条において「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。」と規定している他、労働基準法20条では、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」と規定している等、一定の制限がありますので、注意する必要があります。

以上、懲戒処分の各類型についてご紹介いたしました。
懲戒処分の実施は会社が自由にできるわけではなく、恣意的な懲戒処分や、従業員の行為に対して過大な懲戒処分等を実施する場合、当該懲戒処分は無効となり、反対に、従業員から会社に対して損害賠償請求等を行われることにもつながるリスクがあります。
そのため、会社が従業員に対して懲戒処分を実施する場合には、慎重に検討する必要があるものといえます。

当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、従業員に対する懲戒処分に関して、不安や悩みがある方、お困りのことがある方は、お気軽にご相談ください。

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