採用内定の注意点~安易に採用内定を行うことの落とし穴~

本日は、採用内定の法的性質及びそれに付随して採用内々定の法的性質をご紹介いたします。

1 採用内定について

採用内定とは、一般的に、新規学卒者を在学中に採用し卒業後入社させる、という採用方法のことを指します。そして、この在学中に採用され、正式入社前の者は一般に採用内定者と呼ばれております。
企業と採用内定者との法律関係については、通常、始期付、かつ解約権留保付の(試用)労働契約が成立しているものと考えられております(最判昭54・7・20労判323・19(大日本印刷事件)等)。
また、企業は、解約権を留保しておりますが、無制約に解約権を行使することができるわけではなく、採用内定を取消す場合には、解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的で社会通念上相当として是認できるものであることが必要であると考えられております。

 

2 採用内々定について

これに対して、採用内々定という仕組みが利用される場合もあります。
これは、採用内定の前段階と位置づけられるものですので、通常は始期付解約権留保付の労働契約の成立までは認められません。
もっとも、企業が無制約に採用内々定を解消することが出来るわけではないので注意が必要です。例えば、コーセーアールイー事件(福岡高判平成23・3・10)においては、採用内々定について、「正式な内定までの間、企業が新卒者をできるだけ囲い込んで、他の企業に流れることを防ごうとする事実上の活動の域を出るものではないというべきであり」、「始期付解約権留保付労働契約が成立したとはいえない」が、内定通知を出すと説明しながら数日前になって内々定の取消しをしたことについて、他の就職先を断ったこと等の事情から50万円の慰謝料の支払いが認められた例があります。

以上、採用内定及び採用内々定の概要に関してご紹介いたしました。
採用内定や採用内々定は、広く利用されている仕組みであるため、その法的性質を十分理解しないまま利用している場合もありますが、そのような対応は、採用の前後を問わず(採用予定)従業員との間で思わぬ紛争・トラブルを発生させる可能性がありますので、企業としては注意する必要があります。

当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、採用内定や採用内々定に関して、不安や悩みがある方、お困りのことがある方は、お気軽にご相談ください。

 

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