Archive for the ‘コラム~人事労務・労使トラブル~’ Category

ご存知ですか?~企業には従業員に対する安全配慮義務が課される場合があります!~

2021-02-02

企業側がその従業員に対して負う安全配慮義務というものをご存知でしょうか。
なんとなく聞いたことはある方もいらっしゃるものと思われますが、企業にとっては重要な義務となっておりますので、本日は、安全配慮義務の概要をご紹介いたします。ご参照いただけますと幸いです。

 

1 安全配慮義務の概要

企業側は、従業員が生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務を負っています(労働契約法5条)。
当該義務を安全配慮義務といいますが、最高裁判所も、「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が 過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務」を負うと判示しています(最判平成12・3・24民集54・3・1155)。

 

2 安全配慮義務が問題となった事案の例

より具体的には、安全配慮義務に関して、以下のような裁判例があります。
①神戸地判(姫路支部)平成7・7・31判タ958・200
従業員が健康を害した場合において、当該従業員が当該業務にそのまま従事すると健康を保持する上で問題がある、又は健康を悪化させるおそれがあると認められるときは、企業側は、従業員からの申出の有無に関係なく、当該業務から離脱させて休養させるか、他の業務に配転させるなどの措置を取る契約上の義務を負うと判示しました。

②東京地判平成10・3・19判時1641・54
従業員が高血圧に罹患している事案において、企業側は、持続的な精神的緊張を伴う過重な業務に就かせないようにすることや、業務を軽減するなどの配慮をするべき義務があると判示しました。

以上、本日は、安全配慮義務の概要をご紹介いたしました。
安全配慮義務の具体的な内容は、あくまでも、企業と労働者の個別具体的な事情を踏まえて判断されるべきものですが、企業にとっては、常に企業側がどのような安全配慮義務を負うかを認識しておくことが非常に重要です。
当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っておりますので、安全配慮義務に関して、ご不安な点やご不明な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

従業員による兼業(副業)の禁止・制限には注意が必要です!

2021-01-31

昨今の社会情勢の下、副業を行っている方も増加していると言われていますが、企業によっては、そのような兼業を禁止・制限している場合もあります。
そこで、本日は、従業員による兼業の禁止・制限に関してご説明いたします。

1 従業員による兼業の禁止・制限

まず、前提として、私企業の労働者が行う兼業を直接規制する法令はありません。
また、厚生労働省は、平成30年1月に、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の策定および兼業(副業)を原則容認するモデル就業規則改正を行っており、社会一般的にも兼業を許容する流れができつつあるとも言えます。
しかしながら、企業は、従業員の自社での労務提供への支障等を懸念して、従業員の兼業を就業規則等で明確に禁止・制限し、その違反を懲戒事由としている場合も多くあるのが実情です。

2 裁判例の動向

こうした従業員による兼業の禁止・制限の可否に関して、裁判で争った場合に、裁判所は、職場外・就業時間外は従業員の私生活上の自由や職業選択の自由があることを踏まえ、兼業を全面的に禁止する就業規則は合理性(労働契約法7条)を欠くと判断する傾向にあります。
しかしながら、長時間の兼業等で自社での労務提供に具体的な支障が生じたり、兼業の内容により自社の信用等が損なわれると考えられる場合等には、兼業を禁止することも許容されるとの判断を示した裁判例もあります(小川建設事件(東京地決昭和57・11・19労判397・30)。
また、兼業が競業に該当する場合等に備えて許可制とすることには合理性があるとの判断を示した裁判例もあります(橋元運輸事件(名古屋地判昭和47・4・28判時680・88等)。
このように、裁判例を踏まえますと、兼業を一律に全面的に禁止することは合理性を欠くと判断される可能性があるものの、企業側が合理的な理由に基づき、兼業を禁止、制限することは認められる場合も十分あるものと考えられます。

以上のご説明のとおり、兼業の禁止・制限の可否に関しては、各企業毎の個別の事情等も踏まえて具体的に判断されるものですので、実際に、兼業の禁止や制限を新たに設けることを検討されている場合や、既に存在する兼業の禁止や制限に関して従業員との間で紛争が発生したという場合には、専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っておりますので、従業員による兼業の禁止・制限に関してご不安な点等ありましたらお気軽にご相談ください。

ご注意ください!~就業規則を従業員に対して正しく周知できていますか?~

2021-01-29

本日は、従業員の労働条件と職場規律を統一的・画一的に規定した成文の規範である【就業規則】の従業員への周知に関して、ご説明いたします。
就業規則は、企業にとって最も重要なルールの一つですので、是非ご理解いただき、仮に従業員への周知に不備がある場合には、至急改善いただく必要がありますので、ご注意ください。

1 就業規則の従業員への周知について

使用者は、就業規則を所轄の労働基準監督署に提出後、確定した就業規則の内容を従業員に対して周知することが必要です。
すなわち、労働基準法106条は、「使用者は、この法律及びこの法律に基づく命令の要旨並びに就業規則」「を、常時各作業場の見やすい場所へ提示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない」と規定しております。

2 就業規則の具体的な周知方法について

同法施行規則52条の2では、就業規則の具体的な周知方法について、以下の3つの方法を規定しております。
①常時各作業場の見やすい場所へ提示し、又は備え付けること
②書面を労働者に交付すること
③磁気テープ、磁気ディスク、その他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を乗じ確認できる機器を設置すること

なお、③の方法によって周知を行う場合には、「法令等の内容を磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、当該記録の内容を電子的データとして取り出し乗じ確認できるよう、各作業場にパーソナルコンピューター等の機器を設置し、かつ、労働者に当該機器の操作の権限を与えること」(平成11年1月29日基発45号)が必要であるものと考えられております。

就業規則は、一定の企業には作成義務が課されるなど、企業の人事労務の中心となる規定と言えますが、細かなルールを正確に把握し遵守することができていないケースも見られます。
このような状況は企業にとって好ましいものではありませんので、早急に適切な運用に軌道修正する必要があります。
当事務所は、企業の人事労務を幅広く取り扱っておりますので、就業規則に関してご不明な点や気になる点等がございましたら、お気軽にご相談ください。

従業員に対する賃金の支払方法にはルールがありますのでご注意ください!

2021-01-28

労働基準法24条1項は、賃金の支払いに関して、賃金の①通貨払い、②直接払い、③全額払い、④毎月一回以上払い、⑤一定期日払い、の5つの原則を規定しております。
賃金は非常に重要な概念であり、企業の経営者、従業員を問わず、正確に理解していただきたい概念となりますので、本日は、上記の原則のうち、③、④及び⑤の原則の概要をご紹介いたします。

 

1 全額払いの原則

使用者は、従業員に対して賃金を全額支払う必要があります。これは常識として当然と思われるかもしれませんが、税金や社会保険料など法令で定められた一定のものは、逆に使用者に源泉控除義務があり、賃金から控除することは当然に適法となります。
また、法令上の規定がないものについても、従業員の過半数組合や過半数代表者と「賃金控除協定」等を書面で締結してそれに定められた項目に該当するもの、例えば、組合費、給食券代等を控除する場合には、適法と考えられております。

 

2 毎月払いの原則

賃金は、毎月一回以上支払わなければならず、年俸契約の場合も労働基準法上の労働者であるときは、先払い又は毎月分割払いをしなければなりません。
なお、賞与や臨時の賃金には当該原則の適用はありませんので、ご注意ください。

 

3 一定期日払いの原則

賃金は、毎月一定の期日に支払わなければなりません。
もっとも、繰り上げ払いや一回払いを二回に繰り上げ分割することは臨時的措置の場合ならば可能な場合もあります。

 

以上、労働基準法24条1項が規定する賃金に関する諸原則の内、③全額払い、④毎月一回以上払い、⑤一定期日払い、の各原則の概要をご紹介いたしました。
それぞれの原則については、例外的な取扱いがある等実際の運用に関しては上記の内容に加えご注意いただきたい点が多数ございます。
賃金は、使用者側、従業員側のいずれにとっても非常に重要な概念であることを踏まえますと、可能な限り正確にご理解いただき運用いただくことが使用者側にとっては不可欠となりますので、ご不安な点等ありましたら、専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

ご存知ですか?~従業員に対する賃金の支払い方にはルールがあります!~

2021-01-25

労働基準法は、賃金の支払いに関して、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」(同24条1項)、「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」(同条2項)と定めております。
要約すると、賃金の①通貨払い、②直接払い、③全額払い、④毎月一回以上払い、⑤一定期日払い、の五つの原則が規定されていると言えます。
賃金は非常に重要な概念ですので、企業の経営者、従業員を問わず、正確に理解していただきたい概念となりますので、本日は、上記の原則のうち、①及び②の原則の概要をご紹介いたします。

 

1 通貨払いの原則

賃金は、原則として現金で支払わなければなりません。
そのため、小切手や現物で賃金を支払う場合、事前に労働協約等の規定を設けておかないときには違法となりますので、注意が必要です。
なお、以前は給与袋に現金をいれ、直接従業員に対して給与を支給するといった取扱いが一般的でしたが、現在は、本人の同意など一定の要件の下、賃金を本人名義の銀行口座に振り込むことは通貨払いの原則の例外として適法であるものと取り扱われております。

 

2 直接払いの原則

賃金は、直接従業員本人に支払う必要があります。
そのため、従業員の代理人に対して支払う場合も違法として無効であると判断され得るので、従業員本人から再度賃金支払の請求がなされた場合は、使用者側は当該従業員に対して改めて賃金を支給する必要が生じるといったリスクがある点には注意が必要です。
なお、従業員本人の支配下にあると認められる妻や子が、従業員本人の印鑑を持参し、従業員本人名義で受領した場合には、従業員本人の代理人ではなく、使者への支払いとして適法と判断される場合もありますが、実際の取扱いには十分注意する必要がある点も併せてご留意ください。

当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、賃金の考え方や賃金の支払いに関する諸原則等に関してご不明な点やご不安な点がある場合は、お気軽にご相談ください。

ご注意ください!~自宅学習時間も労働時間に該当する可能性があります!~

2021-01-23

従業員の行為が労働時間に該当する場合には、当該時間に対して、企業としては残業代の支払いをはじめ様々な規制を受けることになります。
そのため、従業員の行為が労働時間に該当するかどうかについては、慎重に判断する必要があります。昨今の社会情勢のもと、従業員に自宅学習時間を設ける企業も増えてきており、そのような自宅学習時間が労働時間に該当するかどうかに関してご相談いただく場合もございます。
そこで、本日は、自宅学習時間が労働時間に該当するかどうかについてご説明いたします。
結論としては、該当する場合もございますので、自宅学習時間の設定には十分注意する必要があります。

 

1 自宅学習時間の労働時間該当性に関する2つの考え方 

そもそも労働時間は、「使用者の指揮命令下に置かれていた」ものと客観的に評価される時間のことを指すところ、自宅学習は、通常、場所的にも時間的にも拘束されているわけではないものと思われます。
そのため、企業の指揮命令下に従業員が置かれている状況とはいえず、自宅学習時間について、労働時間には一切該当しない、という考え方もあります。
他方で、場所的な拘束を受けていないとしても、企業側の指示により自宅学習を行うという点で時間的には拘束されていると考えるべきであるとして、自宅学習時間であってもその拘束の具体的な態様次第では、労働時間として扱う必要がある場合もある、との考え方もあります。

 

2 自宅学習時間の労働時間該当性をどのように考えるべきか?

参考となる事例として、労災認定に関する事案ですが、業務命令で受験することになった資格取得のための自宅での学習時間について、あくまでも業務命令で受験することになった以上、当該受験のための学習は業務命令に基づくものであるとして、自宅での学習時間も企業側の指揮命令下での業務に該当する、と判示した裁判例があります(大阪地判平成21・4・20労判984・35)。

上記裁判例も踏まえますと、自宅学習時間というだけで形式的に労働時間には該当しないと判断すべきでなく、あくまでも、その学習時間がどのような経緯で企業側が従業員に対して求めたものなのか、また、実際の学習時間において企業側の指揮命令下にあったと言えるか、等といった点を具体的に検討、判断する必要があり、その結果、自宅学習時間が労働時間に該当すると判断される場合も十分考えられるものと思われます。

自宅学習時間が労働時間に該当すると判断される場合、残業規制等の様々な規制が発生することになりますので、企業としては慎重に判断する必要があります。
もっとも、労働時間該当性は客観的に判断する必要があり、当事者では判断が難しい場合も多いのが実情です。
そのような場合には専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

ご存知ですか?~「賃金」の意義を正確に理解する必要があります!~

2021-01-21

従業員にとって賃金は非常に重要なものであり、賃金を得るために仕事を行っていると言っても過言ではありません(もちろん、賃金は副次的なものであり、自分の夢や目標を実現するために仕事をしている方もいらっしゃいますが、賃金が必要不可欠なものという点は異論はないでしょう。)。
また、会社にとっても、賃金は、労働の対価として従業員に対して支払うものであり、人件費は会社の経営上大きな比重を占めるものですので、非常に重要なものと言えます。
もっとも、法律上、賃金が何を指すのかについて、正確に理解できていない場合も多いのではないでしょうか。
そこで、本日は、賃金の考え方をご紹介いたします。

 

1 賃金の意義

まず、賃金の意義についてですが、労働基準法11条において、「賃金」とは、「賃金、給料、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定義されています。
ここでいう「労働の対償」とは、労働の対価のことを指しますが、直接的に提供した労働時間や出来高に応じて支払われる場合のみを指すわけではありません。労働者の生活の維持等のために使用者が従業員に対して支給するものであって、かつ、支給条件の明白なものであれば、支給する際の名称の如何に関わらず、すべて労働基準法11条でいう「賃金」に該当すると考えられておりますので、注意が必要です。

 

2 よく問題となる論点

「賃金」への該当性に関してよく問題となる論点として、会社法上のストック・オプション制度(会社法236条以下)から得られる利益が労働基準法11条における「賃金」に該当するか、という問題があります。結論としては、基本的には、当該利益は労働の対償ではなく、労働基準法11条における「賃金」には該当しないと考えられております。

また、弔慰金についても賃金該当性に関して同様の問題がありますが、弔慰金は使用者が遺族に対して支払うものであり、労働者に対して支払うものではないので、労働基準法11条における「賃金」には該当しないものと考えられております。

 

当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、賃金の考え方等に関してご不明な点やご不安な点がある場合は、お気軽にご相談ください。

「うちの会社では昔からこういう風にしているから」、は非常に危険です!

2021-01-20

「うちの会社では昔からこういう風にしているから」として、従業員に対して、労働契約や就業規則等で明示されていない取り扱いを行っていませんか。
労働慣行として認められるものであれば問題ありませんが、そうでない場合には、使用者側にとっては大きなリスクを伴う行為と言えますので、早急に取り扱いを見直す必要があります。

本日は、このような労働慣行の概要について、ご説明いたします。
そもそも、労働慣行とは、当該分野の企業一般において、又は当該企業の中で、事実上の制度や取扱いとなってそれが労使間において当然に認められ規範化している一定の事実のことをいいます。労働慣行としての規範が認められるためのハードルは高く、その運用は慎重に行う必要があります。

 

1 労働慣行の成立要件

具体的な労働慣行の成立のための要件は、国鉄池袋電車区事件(東京地判昭和63年2月24日)等の裁判例で判示されております。裁判例で判示された内容を整理いたしますと、以下の①から④のとおりです。
①ある事実上の取扱いや制度と思われるものが反復継続して行われており、特別なことがなければそれによるという形で定着していること。
②その取扱いや制度を一般従業員が認識していること。
③就業規則の制定変更権限のある使用者が、明示又は黙示的にその取扱いや制度を是認していること。
④労使ともにそれに従って処理・処遇をしており事実上のルール化をしていること。

 

2 労働慣行の代表例

裁判例上、労働慣行と認められたものの代表的な例としては、以下のものがあります。
①退職金規程はないが、従来繰り返し退職金を従業員に対して支払っていた事案で、その給付内容として、退職者に対して、基本給と諸手当に勤続年数を乗じた額を退職金として支給するという旨の労働慣行を認めた(宍戸商会事件(東京地判昭和48年2月27日(労経速807・12)))。
②55歳定年退職制を定めているが、実際には定年退職扱いとはせずに、引き続き特段の欠格事由がない限り、従業員を直ちに嘱託として再雇用することが常態となっていた事案において、当該再雇用制度を労働慣行として認めた(大栄交通事件(東京高判昭和50・7・27(判例時報798・89)))。

 

以上が、労働慣行の概要となります。
繰り返しとなりますが、労働慣行が認められるためのハードルは高いですので、安易に労働慣行として成立しているとして運用するのではなく、上記1の要件に照らして本当に労働慣行として認められるかどうかを慎重に検討し判断していく必要があります。
当事者の立場ではなかなか客観的に判断することが難しい場合も多いものと思われますので、労働慣行の成立に関してご不安な点や不明確な点等がある場合には、専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

労働者の育児関連の法制度は、企業にとって必須の知識です!

2021-01-19

令和3年1月1日から、子の看護休暇、介護休暇について、すべての労働者は時間単位で取得することが出来るようになります。
そこで、本日は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(以下「育児・介護休業法」といいます。)における育児関連を中心に、育児休業や子の看護休暇、労働時間の制限等を含む主要な制度の概要をご紹介いたします。

①一定の労働者は、子が1歳に達するまでの連続した期間について、育児休業を取得することが認められております。ただし、配偶者が育児休業を取得している等一定の場合は、子が1歳2か月に達するまで、出産日と産後休業期間と育児休業期間とを合計して1年間以内の休業が可能となります。
また、子が保育園に入れない等一定の場合には、企業側に対して申し出ることによって、育児休業期間を最長2歳まで延長することが認められております。この場合、育児休業給付金の給付金も2歳までとなります。

②小学校就学の始期に達するまでの子を養育する一定の労働者は、1年に5日まで(当該子が2人以上の場合は10日まで)、病気等をした子の看護又は子に予防接種・健康診断を受けさせることを目的として、休暇を取得することができます。上記のとおり、令和3年1月1日からは、時間単位で取得することも認められております。

③3歳に満たない子を養育する一定の労働者がその子を養育することを目的として請求した場合、事業主は、当該労働者を所定労働時間を超えて労働させることはできません。

④小学校就学の始期に達するまでの子を養育する一定の労働者がその子を養育することを目的として請求した場合、事業主は、制限時間(1か月24時間、1年150時間)を超えて労働時間を延長することができません。

 

以上、育児・介護休業法における育児関連を中心に主要な制度の概要となりますが、この他にも様々な制度がありますので、育児中の労働者を雇用する企業としては十分注意する必要があります。
当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、育児・介護休業法に関する問題が発生した場合の対応等に関して、不安や悩みがある方、お困りのことがある方は、お気軽にご相談ください。

ご注意ください!~求人票の記載と実際の労働条件が異なる場合について~

2021-01-17

求人時の募集労働条件と実際の労働条件が異なるといった問題をニュース等で聞いたことがある方、また、実際にそのような問題に直面した方もいらっしゃるものと思います。
本日は、求人票や求人広告の記載と実際の労働条件が異なるといった問題が発生した場合、企業にはどのようなリスクがあるかをご説明いたします。

 

1 企業の労働条件の明示義務と労基法違反について

まず、前提として、企業が採用予定者に対して具体的な労働条件を明示する場合にをご説明いたします。
企業には、労働条件の明示義務・周知義務が課されておりますので(労働基準法15条等)、企業が、労働者に対して明示した具体的な労働条件と実際の労働条件が異なる場合には、労働基準法違反として、労働基準監督署による行政指導の対象になります。
また、労働基準法では罰則規定も設けられておりので、労働者等から刑事訴追を求める告訴などがなされた場合には、労働基準監督署等が捜査を行い、場合によっては、刑事事件化する可能性もあります。

 

2 求人票や求人広告の記載と実際の労働条件が異なる場合について

職業安定法5条の3及びこれに基づく指針において、求人を行う会社等に対し、労働条件の明示が義務化されております。これに企業が違反した場合、ハローワークは求人不受理の措置を取ることになります。また、同法65条は、刑事罰を規定していますが、「虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集」「を行った者又はこれらに従事した者」等を刑事罰の対象として規定しております。
ここで、注意すべきこととしては、求人票は、あくまでも労働契約の誘因とされるものですので、求人票の段階では、例えば賃金額については、企業における現行賃金額を記載すればよく、実際に当該労働者に対して支給する確定額までを記載することまでは求められておりません。これが、上記1とは異なる点です。上記1は、あくまでも特定の労働者に対して確定の労働条件として労働条件を明示する場合であるのに対し、2は、求人票という形で不特定多数の労働者に対して労働契約の誘因として機能しておりますので、明確に分けて考える必要があります。
もっとも、求人票に労働条件を記載した場合でも、確定の労働条件として明示した場合には、当該条件が労働契約の内容となる可能性がありますので、注意が必要です。

当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、新たに従業員を募集する際に明示すべき労働条件の内容等に関して、不安や悩みがある方、お困りのことがある方は、お気軽にご相談ください。

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