Archive for the ‘コラム~一般民事関連~’ Category
契約交渉を中途で破棄した場合の損害賠償義務について
本日は契約交渉を中途で破棄した場合の損害賠償義務に関する裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。
1 最判昭59・9・18判時1137・51
本事件は、マンション売買の交渉過程で、歯科医院とするためのスペースについて注文を出す等した結果、売主側が容量増加のための設計変更および施工をすることを容認しながら、交渉開始6か月後に自らの都合により契約を結ぶに至らなかった点について、買主側の損害賠償義務が問題となったものです。
【判示の概要】
具体的な事実関係のもとにおいては、上告人の契約準備段階における信義則上の注意義務違反を由とする損害賠償責任を肯定した原審の判断は、是認することができる。
以上の裁判例の他にも、契約交渉が途中で破棄された事案において損害賠償義務が認められたものとしては、最判平成19・2・27判時1964・45等があります。
いずれの裁判例においても、契約準備交渉の段階で、自らの言動が相手方に誤解をもたらしているにもかかわらず、誤解を指摘したり、是正する等することなく、相手方の信頼を裏切るような行為をした場合が問題となっており、どの程度の信頼が惹起されていたか、それに対してどのような背信的な行為がなされたかといった点を具体的な事実関係を踏まえて検討されております。
契約の交渉を進めてみた結果、結論として交渉を破棄することももちろんあるものと思いますが、その場合でも、契約を締結する前の段階で有ることから一切責任がない等と考えるのではなく、場合によっては損害賠償義務を負うリスクがある点を認識することが重要です。
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当事務所は、契約書の作成・レビュー、商標や著作権を含む知的財産関連の問題、労働問題、輸出入トラブルへの対応をはじめ、企業法務を幅広く取り扱っております。
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改正債権法の経過措置
改正債権法は2020年4月1日から施行されております。
もっとも、施行日が到来しても、改正債権法の規定が全て一律に適用されるというわけではありません。いわゆる経過措置という規定が設けられており、一部の改正債権法の規定については、適用の範囲等に関して特別な規律が設けられておりますので注意が必要です。
本日は、このような経過措置のうち、特に注意すべき点をご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。
1 改正債権法の経過措置
基本て位には、債権の発生事典や契約の締結日が基準時となっておりますが、以下の点には注意が必要です。
①施行日前に債権が生じた場合における当該債権の消滅時効の期間については、旧民法の規定が適用されます(附則10条4項)。
②不法行為債権について20年の除斥期間が施行日に完成していない場合には、施行日前に生じていた債権についても改正後の規定が適用されますので、①とは異なる対応が必要です(附則35条1項)。
③人の生命または身体を害する不法行為債権について、主観的起算点から3年の消滅時効期間が施行日に経過していない場合には、改正民法の規定が適用され、時効期間が5年になります(附則35条2項)。
④定型約款の規定は、施行日前に締結された契約についても改正後の規定が適用されますが、施行日前に生じた効力は妨げられません(附則33条1項)。
⑤定型約款に関して、当事者の一方が施行日までに書面等によって反対の意思を表示した場合には、施行日前に締結された契約について改正後の規定は適用されません(附則33条2項)。
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改正債権法の概要
2020年4月1日に、改正債権法が執行されました。
これまで本コラムにおいて何度か改正債権法の内容をご紹介してまいりました。
債権法の内容は、会社、個人を問わず非常に重要な内容となります。
本日は、改正債権法の概要をご参照いただけますと幸いです。
1 改正債権法の概要
従前の民法からの主要な改正点は以下のとおりです。
①消滅時効の改正
従前の民法において規定されていた職業別の短期消滅時効制度(旧民法170条から174条)を削除し、原則的な消滅時効の期間を、権利行使可能時から10年としました。
②法定利率の引き下げ
法定利率を年5%から年3%に引き下げました。
③定型約款に関する規定の新設
ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部または一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものを「定型取引」と定義した上で、定型取引において契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体を「定型約款」と定義しました。
④売買の契約不適合責任の創設
従前瑕疵担保責任として存在した規定を契約不適合責任に修正しました。
瑕疵担保責任では認められていなかった追完請求権や代替物提供請求権も新たに認められることになりました。
⑤保証契約におけるルールの追加
保証人の保護の充実化を図るという観点から、個人の保証人との間で保証契約を締結する場合、一定の場合における保証人に対する情報提供義務、一定の保証契約についての公正証書による保証医師の確認義務、根保証契約における極度額の規定を盛り込むことの義務化といった新たな規律が設けられました。
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遺産分割の審判により配偶者居住権を取得するための要件
相続法改正により、配偶者の居住権を保護するために、配偶者居住権という権利が新たに創設されました(民法1028条以下)。
これは、配偶者の帰属上の一身専属権であり、配偶者が死亡した場合には当然に消滅するものですが、非常に重要な権利です。
このような配偶者居住権の概要については、先日のコラムにおいてご紹介いたしました。
本日は、遺産分割の審判により配偶者居住権を取得するための要件をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。
1 遺産分割の審判により配偶者居住権を取得するための要件
居住建物の所有者が配偶者居住権の設定に反対している場合には、審判により配偶者に居住権を取得させることとするときは、当事者間で紛争が生ずる恐れがあります。
そこで、遺産分割の請求を受けた家庭裁判所は、①共同相続人の間で配偶者に配偶者居住権を取得させることについて合意が成立しているときか、または②配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるときに限り、配偶者に配偶者居住権を取得させる旨を審判することができるものとされております(民法1029条)。
なお、被相続人が建物の共有持分を有していたにすぎない場合には、原則として配偶者居住権が成立することはないとされておりますが、例外的に居住建物が夫婦の共有となっている場合(被相続人と配偶者のみで居住建物を共有していた場合)には、配偶者居住権の成立を認めることとしていますので、注意が必要です(民法1028条1項ただし書き)。
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配偶者居住権について
相続法の改正により、配偶者の居住の権利(配偶者居住権及び配偶者短期居住権)に関する規定(民法1028条から1041条まで)については、2020年4月1日から施行されています。
この配偶者居住権に関しては、新たに創設されたものであり、よくご相談いただくことがありますので、本日は、配偶者居住権の概要についてご紹介いたします。
1 配偶者居住権の成立要件
配偶者居住権の成立要件は、①配偶者が相続開始時に、被相続人所有の建物に居住していたこと、及び②その建物について配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の遺産分割、遺贈又は死因贈与がなされたことです(民法1028条1項、554条)。
2 配偶者居住権成立のための注意点
配偶者居住権成立のための注意点をいくつかご紹介いたします。
以下の3点は、代表的な注意点ですが、これら以外にも注意点はありますので、実際に配偶者居住権の取得をご検討いただく場合には、専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
①配偶者居住権が認められる配偶者には、法律上被相続人との間で婚姻関係が成立している必要があり、内縁関係にとどまる者は含まれません。
②配偶者居住権の目的となる建物は、相続開始の時点で、被相続人の財産に属した建物である必要があります。そのため、被相続人が賃借していたに過ぎない建物に関しては、当然配偶者居住権は成立しません。
③建物が純粋に居住用建物ではなく、店舗兼住宅であった場合でも、配偶者は配偶者居住権を取得することができるものと考えられております。そしてこの場合、配偶者居住権を取得した配偶者は、居住建物の全体について使用及び収益をすることができることとなります。
3 弁護士へのご相談をご希望の方へ
配偶者居住権は、新たに創設された制度であり、実務の運用もまだまだ固まっておりません。
そのため、配偶者居住権の取得の検討は、慎重に進める必要があります。
当事務所は、配偶者居住権を含めて、相続に関するご相談もお受けしておりますので、相続に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。