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「うちの会社では昔からこういう風にしているから」、は非常に危険です!
「うちの会社では昔からこういう風にしているから」として、従業員に対して、労働契約や就業規則等で明示されていない取り扱いを行っていませんか。
労働慣行として認められるものであれば問題ありませんが、そうでない場合には、使用者側にとっては大きなリスクを伴う行為と言えますので、早急に取り扱いを見直す必要があります。
本日は、このような労働慣行の概要について、ご説明いたします。
そもそも、労働慣行とは、当該分野の企業一般において、又は当該企業の中で、事実上の制度や取扱いとなってそれが労使間において当然に認められ規範化している一定の事実のことをいいます。労働慣行としての規範が認められるためのハードルは高く、その運用は慎重に行う必要があります。
1 労働慣行の成立要件
具体的な労働慣行の成立のための要件は、国鉄池袋電車区事件(東京地判昭和63年2月24日)等の裁判例で判示されております。裁判例で判示された内容を整理いたしますと、以下の①から④のとおりです。
①ある事実上の取扱いや制度と思われるものが反復継続して行われており、特別なことがなければそれによるという形で定着していること。
②その取扱いや制度を一般従業員が認識していること。
③就業規則の制定変更権限のある使用者が、明示又は黙示的にその取扱いや制度を是認していること。
④労使ともにそれに従って処理・処遇をしており事実上のルール化をしていること。
2 労働慣行の代表例
裁判例上、労働慣行と認められたものの代表的な例としては、以下のものがあります。
①退職金規程はないが、従来繰り返し退職金を従業員に対して支払っていた事案で、その給付内容として、退職者に対して、基本給と諸手当に勤続年数を乗じた額を退職金として支給するという旨の労働慣行を認めた(宍戸商会事件(東京地判昭和48年2月27日(労経速807・12)))。
②55歳定年退職制を定めているが、実際には定年退職扱いとはせずに、引き続き特段の欠格事由がない限り、従業員を直ちに嘱託として再雇用することが常態となっていた事案において、当該再雇用制度を労働慣行として認めた(大栄交通事件(東京高判昭和50・7・27(判例時報798・89)))。
以上が、労働慣行の概要となります。
繰り返しとなりますが、労働慣行が認められるためのハードルは高いですので、安易に労働慣行として成立しているとして運用するのではなく、上記1の要件に照らして本当に労働慣行として認められるかどうかを慎重に検討し判断していく必要があります。
当事者の立場ではなかなか客観的に判断することが難しい場合も多いものと思われますので、労働慣行の成立に関してご不安な点や不明確な点等がある場合には、専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
労働者の育児関連の法制度は、企業にとって必須の知識です!
令和3年1月1日から、子の看護休暇、介護休暇について、すべての労働者は時間単位で取得することが出来るようになります。
そこで、本日は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(以下「育児・介護休業法」といいます。)における育児関連を中心に、育児休業や子の看護休暇、労働時間の制限等を含む主要な制度の概要をご紹介いたします。
①一定の労働者は、子が1歳に達するまでの連続した期間について、育児休業を取得することが認められております。ただし、配偶者が育児休業を取得している等一定の場合は、子が1歳2か月に達するまで、出産日と産後休業期間と育児休業期間とを合計して1年間以内の休業が可能となります。
また、子が保育園に入れない等一定の場合には、企業側に対して申し出ることによって、育児休業期間を最長2歳まで延長することが認められております。この場合、育児休業給付金の給付金も2歳までとなります。
②小学校就学の始期に達するまでの子を養育する一定の労働者は、1年に5日まで(当該子が2人以上の場合は10日まで)、病気等をした子の看護又は子に予防接種・健康診断を受けさせることを目的として、休暇を取得することができます。上記のとおり、令和3年1月1日からは、時間単位で取得することも認められております。
③3歳に満たない子を養育する一定の労働者がその子を養育することを目的として請求した場合、事業主は、当該労働者を所定労働時間を超えて労働させることはできません。
④小学校就学の始期に達するまでの子を養育する一定の労働者がその子を養育することを目的として請求した場合、事業主は、制限時間(1か月24時間、1年150時間)を超えて労働時間を延長することができません。
以上、育児・介護休業法における育児関連を中心に主要な制度の概要となりますが、この他にも様々な制度がありますので、育児中の労働者を雇用する企業としては十分注意する必要があります。
当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、育児・介護休業法に関する問題が発生した場合の対応等に関して、不安や悩みがある方、お困りのことがある方は、お気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
ご存知ですか?~過少申告加算税の考え方について~
何らかの形で輸入に関与されている方の中には、貨物を輸入する際に申告価額を実際の納付すべき税額よりも低い金額で申告してしまった結果、過少加算税が課せられてしまった、という経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、本日は、過少加算税の制度の概要をご紹介します。専門的な用語も含まれており、なかなか理解が難しい部分もあるものと思われますが、輸入に関与されている方にとっては非常に重要な考え方となりますので、ご一読いただけますと幸いです。
1 過少申告加算税の税率について
輸入者が、貨物の輸入申告時に行う納税申告の後、税関の調査によって当該納税申告額が過少であったことが発覚する等の結果修正申告を行った場合や、税関長による更正が行われた場合には、原則として、当該修正申告又は更正によって納付すべき税額(すなわち、当初申告税額との差額部分)を基礎として10%の過少申告加算税が課されます。
修正申告又は更正により納付すべき税額(以前に行われた修正申告に係る納付すべき税額がある場合には、その合計額)が、当初の納税申告に係る納付すべき税額と50万円とのいずれか多い額を超えることとなった場合には、この超える部分については通常の過少申告加算税(上記のとおり、割合は10%です)に加えて、さらに5%分が課されることになります。
ただし、修正申告又は更正により納付すべきこととなる税額のうちに、過少申告であったことについて「正当な理由」があると認められる部分がある場合には、この部分に対しては過少申告加算税は課されません。
2 過少申告加算税の税額の決定
過少申告加算税の税額の決定は、税関が賦課決定通知書を送付することによって行われます。この賦課決定通知書の送付を受けた場合には、当該通知書が発せられた日の翌日から起算して1月を経過する日までに過少申告加算税を納付書による納付する必要があります。
3 端数処理について
①過少申告加算税の額を計算する基礎となる当初申告税額との税額の差額が1万円未満の場合は、過少申告加算税は課されないことになります。
②当初申告税額との税額の差額に1万円未満の端数がある場合にはこれを切り捨てて計算します。
③計算した過少申告加算税が5000円未満の場合には過少申告加算税は課されないことになります。
④計算した過少申告加算税に100円未満の端数がある場合にはこれを切り捨てて計算します。
当事務所では、代表弁護士が通関士資格を有しており、輸入通関手続等に関して豊富な知識、経験を有しております。実際に過少申告加算税を支払う必要に迫られている方はもちろん、過少申告加算税の考え方をもう少し詳しく教えて欲しいとお考えの方等、過少申告加算税に関して知りたい点がある方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
ご注意ください!~求人票の記載と実際の労働条件が異なる場合について~
求人時の募集労働条件と実際の労働条件が異なるといった問題をニュース等で聞いたことがある方、また、実際にそのような問題に直面した方もいらっしゃるものと思います。
本日は、求人票や求人広告の記載と実際の労働条件が異なるといった問題が発生した場合、企業にはどのようなリスクがあるかをご説明いたします。
1 企業の労働条件の明示義務と労基法違反について
まず、前提として、企業が採用予定者に対して具体的な労働条件を明示する場合にをご説明いたします。
企業には、労働条件の明示義務・周知義務が課されておりますので(労働基準法15条等)、企業が、労働者に対して明示した具体的な労働条件と実際の労働条件が異なる場合には、労働基準法違反として、労働基準監督署による行政指導の対象になります。
また、労働基準法では罰則規定も設けられておりので、労働者等から刑事訴追を求める告訴などがなされた場合には、労働基準監督署等が捜査を行い、場合によっては、刑事事件化する可能性もあります。
2 求人票や求人広告の記載と実際の労働条件が異なる場合について
職業安定法5条の3及びこれに基づく指針において、求人を行う会社等に対し、労働条件の明示が義務化されております。これに企業が違反した場合、ハローワークは求人不受理の措置を取ることになります。また、同法65条は、刑事罰を規定していますが、「虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示して、職業紹介、労働者の募集」「を行った者又はこれらに従事した者」等を刑事罰の対象として規定しております。
ここで、注意すべきこととしては、求人票は、あくまでも労働契約の誘因とされるものですので、求人票の段階では、例えば賃金額については、企業における現行賃金額を記載すればよく、実際に当該労働者に対して支給する確定額までを記載することまでは求められておりません。これが、上記1とは異なる点です。上記1は、あくまでも特定の労働者に対して確定の労働条件として労働条件を明示する場合であるのに対し、2は、求人票という形で不特定多数の労働者に対して労働契約の誘因として機能しておりますので、明確に分けて考える必要があります。
もっとも、求人票に労働条件を記載した場合でも、確定の労働条件として明示した場合には、当該条件が労働契約の内容となる可能性がありますので、注意が必要です。
当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、新たに従業員を募集する際に明示すべき労働条件の内容等に関して、不安や悩みがある方、お困りのことがある方は、お気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
従業員への年休付与、きちんとできてますか?
年次有給休暇、いわゆる年休は従業員にとって極めて重要な権利です。
このような年休取得の権利は、労働基準法39条で規定されており、従業員が、その雇入れの日から起算して6か月継続して勤務し、かつ、全労働日の8割以上出勤した場合に、当該従業員に対して認められます。
ここで、「全労働日の8割」という点に関して、会社全体の労働日を指すと勘違いをしている方がいらっしゃいますので、本日は、年休所得の要件である「全労働日の8割」の出勤に関して、ご説明します。
1 全労働日とは
全労働日とは、会社全体の労働日を指すのではありません。あくまでも、年休を取得しようとする当該従業員が労働契約上本来就労すべき労働日の全体のことを指しますので、注意が必要です。
例えば、正社員の労働日が週5日であり、パート従業員の労働日が週4日である場合、パート従業員の年休取得要件の充足性を考える場合には、正社員の労働日ではなく、当該パート従業員の労働日である週4日を前提に算定する必要があります。
2 出勤率の算定方法
全労働日の8割以上の出勤であるかどうかを考える際には、従業員の出勤日数を全労働日で除して算出します。ここでは、労働義務のない休暇日等は出勤日にも労働日にも含めないこととなります。
なお、使用者の責めに帰すべき事由により休業をした場合における休業日の取扱いについて、裁判所は、八千代交通事件(最判昭和25・6・6民集67・5・1187)において、全労働日に算入するとともに、出勤したものとみなす日として取り扱う旨を判示している点には注意が必要です。
当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、従業員による年休の取得に関する問題が発生した場合の対応等に関して、不安や悩みがある方、お困りのことがある方は、お気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
「通関士」は輸出・輸入手続に不可欠な存在です!
「通関士」という資格をご存知でしょうか。
輸出や輸入経験のある方は、通関業者で働いている人、というような漠然としたイメージをお持ちかもしれません。
輸出者や輸入者に代理して通関手続等を行うことを業とする者のことを「通関業者」といいますが、通関業者が通関業務を行うためには、原則として、通関業務を行う営業所ごとに通関士を設置する必要があり(通関業法13条)、通関士が通関業者における通関業務の中核を担っております。
通関士となるためには、年に1回実施されている通関士試験という国家試験(貿易実務に関する唯一の国家試験です。)に合格する必要があります。もっとも、通関士として通関業務に従事する場合には、勤務先の通関業者の申請に基づいた財務大臣による確認を受ける必要があり、通関士試験に合格したとしても、このような確認を受けない場合には、通関業務に従事することはできません(通関業法31条)。そのため、通関士試験に合格をし、通関業務を行う場合には、必ずどこかの通関業者に所属する必要があります(通関士試験に合格しても、通関業務を行わない場合には、通関業者に所属する必要はありません。)。
以上のとおり、通関士は、輸出や輸入手続をはじめ、貿易の専門家と言えますので、輸出・輸入ビジネスの縁の下の力持ちのような存在として、今後も日本社会にとって不可欠な存在であり続け、経済のグローバル化が進む一方の現代社会においてその重要性は高まり続けることが予想されます。
なお、平成31年4月1日時点で、通関業者の営業所は全国に2092ヶ所、それらの営業所で通関業務に従事する通関士の人数は、8216人となっております(これまでの漠然としたイメージよりも人数が多いという印象をお持ちになる方が多いのではないでしょうか。)。
通関業者や通関士の業務内容、通関士試験の概要や試験問題等に関しては、今後も折に触れてご紹介していこうと思いますので、今後ともご覧いただけますと幸いです。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
金の密輸は犯罪行為です!絶対に行ってはいけません!
近年、一般旅行者が軽い気持ちで金の密輸を行い、空港で税関に摘発される、というケースが急激に増加しております。
実際、金を軽い気持ちで日本に持ち込もうとした結果、税関に摘発され現在問題となっており大変困っている、という相談をいただくことは非常に多い状況にあります。
ここで、金の密輸が増加している背景について、簡単にご紹介いたします。
例えば、海外で金地金1kgを1000万円で購入します。これを日本に輸入する際には、消費税10%分に該当する100万円を支払う必要があります。
しかし、海外で1000万円で購入した1kgの金地金を日本に密輸し、密輸した金地金を日本国内で転売した場合、日本国内では金地金1kgを1000万円+消費税100万円で売却することができるので、消費税分の差額である100万円を利益として得ることができてしまいます。この利益を狙って金の密輸が行われているのです。
このような金地金の密輸は上記のとおり年々増加しており、税関発表の統計によると、金地金密輸の摘発件数は、平成25年は12件でしたが、平成28年には811件となり、平成30年には1088件まで増加しております。このように摘発件数は5年間で91倍にも増加しております。
平成26年4月の消費税率8%への引き上げを境に急増しているとみられ、現在は更に消費税10%に引き上げられておりますので、今後ますます金の密輸が増加することが危惧されております。
税関のHP上でも金の密輸に関して繰り返し緊急対策の実施が表明されております。
例えば、平成29年11月7日付けの「「ストップ金密輸」緊急対策」として、「検査の強化」、「処罰の強化」、「情報収集・分析の充実」の3つが3本柱として説明されております。
また、税関の中長期ビジョンを表明した令和2年6月付けの「スマート税関構想2020」でも、脱税対策として金地金の密輸対策の一層の強化を図ることが表明されております。
刑罰の面でも平成30年に罰金額が大幅に引き上げられ、金の密輸犯の罰金額の上限が、1000万円又は価格の5倍となりました。
金の密輸は犯罪行為であり、絶対に行ってはいけませんが、残念ながら、上記のとおり簡単に利益を得ることができるとして、一般の方が軽い気持ちで行ってしまう場合も多いのが実情です。
軽い気持ちで金を密輸したけれども、このような大事になるとは思っておらず本当に後悔している、とお悩みの方もいらっしゃるものと思います。
当事務所では、代表弁護士が通関士資格を有しており、豊富な輸出入トラブルの対応経験を有しておりますので、少しでも不安や悩みがある方は当事務所までご遠慮なくお問い合わせください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
労働基準監督署に相談に行ったけれど・・・
「労働基準監督署に相談に行ったけれど思うような対応をしてもらえなかった」、という話を聞くことがあります。
思うような対応をしてもらえない理由としては、主に、①相談時の客観的資料の不足、②他の相談との兼ね合い、③是正勧告の強制力の無さ、といった点が考えられます。
例えば、会社側にどれだけ掛け合っても残業代を支払ってもらえないので、労働基準監督署に相談し動いてもらえば、流石に会社側も対応を改めると思っていたが、実際はそうではなかった、というようなケースを想定してみましょう。
確かに労働基準監督署は、会社の労働基準法違反行為等を監督する機関ですが、相談に行けば必ず従業員側の立場ですぐに動いてくれるとは限りません。
というのも、そもそも労働基準監督署の人員は限られておりますので、他の相談との優先順位というものがあることは避けられません。
また、客観的な資料をある程度揃えて相談に行かないと、労働基準監督署としても動き出すことが難しいとの判断になることも十分あり得ます。労働基準監督署が、相談を受けた会社すべてを調査することは不可能ですので、ある程度客観的な資料をそろえて相談に行った方が、労働基準監督署が動き出しやすくなると言えるでしょう。
さらに、労働基準監督署の調査の結果残業代未払等の労働基準法違反が認められた場合、刑事事件化される場合もありますが、通常は、会社側に対して是正勧告をすることになります。もっとも、これは強制力のない行政指導の一種ですので、必ずしも会社が応じるとは限りません。
以上のとおり、労働基準監督署に相談に行ったとしても、思うような対応をしてもらえないケースは十分考えられますが、注意すべきは、労働基準監督署は、あくまでも第三者的な立場から客観的会社の労働基準法違反等を調査監督する機関であり、労働者の味方や代理人として動く機関ではないという点です。この点は勘違いされている方もいらっしゃいますが、相談に行く際は十分に注意すべきであり、相談者の代理人として会社側と交渉等を行う弁護士等とは大きく異なる点と言えます。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
ご存知ですか?就業規則の記載事項には3種類あります
本日は、就業規則の記載事項をご紹介いたします。
就業規則の記載事項としては、絶対的必要記載事項、相対的必要記載事項、及び任意的必要記載事項の3種類があります。それぞれの概要を以下で整理しておりますので、就業規則の作成義務がある企業は、ご注意ください。
1 絶対的必要記載事項
絶対的必要記載事項とは、就業規則に必ず記載しなければならない事項のことを指します。
具体的には、以下の①から③です。
①始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する事項
②賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切及び支払の時期並びに昇給に関する事項
③退職に関する事項(解雇事由を含む)
2 相対的必要記載事項
相対的必要記載事項とは、内容を決めるかどうかは使用者の自由ですが、内容を決める場合には、必ず就業規則上に規定しなければならない事項を指します。
代表的なものは、以下の①から⑧です。
①退職手当に関する事項。例えば、適用労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法、支払時期等。
②臨時の賃金、賞与及び最低賃金額等に関する事項
③労働者の食費、作業用品その他の負担に関する事項
④安全及び衛生に関する事項
⑤職業訓練に関する事項
⑥災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
⑦表彰及び制裁に関する事項(その種類及び程度)
⑧前各号の外、当該事業場の全てに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
3 任意的記載事項
任意的記載事項とは、内容を決めるかどうか、及び就業規則に規定するかどうかを使用者が自由に判断できる事項を指します。
様々な内容が考えられますが、例えば、以下の①から⑥等が該当します。
①服務規律、指揮命令等に関する事項
②社員体系、職務区分、職制に関する事項
③施設管理、企業秩序維持等に関する事項
④競業禁止等に関する事項
⑤職務発明の取扱い等に関する事項
⑥公益通報保護その他内部コンプライアンスに関する事項
就業規則の記載事項は以上のとおりですが、就業規則の作成義務がある一定の企業は、従業員とのトラブルを避けるという観点からも、以上の内容を踏まえて適切に就業規則を作成等する必要があります。
当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、労働問題を幅広く取り扱っておりますので、就業規則の作成や内容の修正等をお考えの場合は、お気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
試用期間に関する注意点
従業員としての適格性等を判断するための期間として、試用期間を設定している企業も多いものと思われます。
この試用期間の法的性質に関して、裁判所は、通常は、解約権留保付労働契約として構成される、と考えています(最大判昭48・12・12民集27・11・1536(三菱樹脂事件))。
本日は、このような試用期間を設定する際に企業が注意する必要がある点として、①労働条件の明示、②解雇予告手当の取扱いの特殊性、及び③本採用の拒否、に関してご紹介いたします。
1 労働条件の明示
企業は、採用する者との間の労働契約の締結に際して書面による労働条件の明示が義務付けられております(労働基準法15条1項等)。
したがいまして、試用期間中の労働条件が、試用期間経過後本採用となった後の労働条件と異なる場合、企業は、当該内容を明示する義務があります。
2 解雇予告手当の取扱いの特殊性
試用期間中の従業員を解雇する場合、試用期間開始から14日以内に解雇をするときには、解雇予告手当等を支給する必要がなく、即時に解雇をすることができます(労働基準法21条)。
他方で、試用期間開始から14日経過後に解雇する場合には、通常の解雇の場合と同様に、少なくとも30日前の解雇予告、又は解雇予告を行わない場合には、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。
3 本採用の拒否
試用期間中の従業員の業務内容等を踏まえて、本採用を拒否する場合もあります。
もっとも、日本軽金属事件(東京地判昭和44・1・28労働民例集20・1・28)では、「教育によってたやすく矯正し得る言動、性癖等の欠陥を何ら矯正することなく放置して、それをとらえて解雇事由とすることは許されない」との判断が示されるなど、試用期間中に、従業員に対して適切に教育、指導等を実施しない場合には、本採用の拒否が違法と判断される場合がある点には注意が必要です。
当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、試用期間の設定や、試用期間中の従業員の解雇に関して、不安や悩みがある方、お困りのことがある方は、お気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
