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変形労働時間制について

2021-03-11

「従業員の労働時間は、1日8時間、週40時間」が法定労働時間であり、これを超えて労働をさせる場合には、36協定の締結や割増賃金の支払等、様々な規制の対象となることは皆さまご存知であるものと思います。
確かに、通常の労働の形態が、上記の法定労働時間であることは間違いないのですが、職種や業務内容によっては、このような法定労働時間での労働というものにそもそも適していないものがあることは間違いなく、そのような場合に、それぞれ適した就業をすることができるように、変形労働時間制という制度が設けられております。

そこで、本日は、このような変形労働時間制の概要をご紹介いたします。

 

1 変形労働時間制の概要

変形労働時間制とは、一定期間内の労働時間が法定労働時間の範囲内とすることを前提に、忙しい日や忙しい週の所定労働時間を長くし、忙しくない日や忙しくない週の所定労働時間を短くすることにより、一定期間内の労働時間を弾力的に決めることができる制度のことを指します。
すなわち、変形労働時間制においては、一定期間内の所定労働時間を平均し、1週間当たりの労働時間が週の法定労働時間を超えなければ、その範囲内の特定の日や週において、法定労働時間を超えて労働させることができます。

 

2 変形労働時間制の類型

変形労働時間制には、以下の4種類の類型があります。

(1)1ヶ月単位の変形労働時間制(労働基準法(以下略す)32条の2)
1ヶ月の中に、忙しい時期と忙しくない時期がある場合には、1ヶ月単位の変形労働時間制を採用することで、期間内の繁閑の差に応じた労働時間を配分することが出来るます。

(2)1年単位の変形労働時間制(32条の4)
基本的には、1ヶ月単位の変形労働時間制と同様に考えることが出来ますが、閑散期に休日を増やし、その分を繁忙期に充てるといった形で適用することが出来ます。

(3)1週間単位の変形労働時間制(32条の5)
日ごとの仕事に繁閑の差が生じ、かつ、仕事の繁閑が定期的には決まっていない事業のための変形労働時間制のことを指します。

(4)フレックスタイム制(32条の3)
働く方々が、自分で、1日ごとの労働時間を決めることが出来る制度のことを指します。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

変形労働時間制を採用する場合には、規定を設ける必要がある等手続き面においても注意すべき点がありますので、採用に当たっては専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
当事務所は人事労務を幅広く取り扱っておりますので、変形労働時間制の利用を含め、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

法定労働時間と所定労働時間について

2021-03-10

「労働時間は、1日8時間までと法律で決められている。」、「決められた労働時間を超えた労働を強要するのはブラック企業の特徴である」等、「労働時間」という表現は、社会一般で、当たり前のように使用されています。
もっとも、このような「労働時間」については、法定労働時間と所定労働時間の2種類が存在することまでは認識されていないように思います。

そこで、本日は、当該法定労働時間と所定労働時間の概要について、ご紹介いたします。

 

1 法定労働時間について

法定労働時間とは、法律に定められている労働時間であり、原則として、1週40時間、1日8時間の定めのことを指します(労働基準法32条)。

 

2 所定労働時間について

これに対して、所定労働時間とは各企業において就業規則等で定めるその事業場の始業時刻から終業時刻までの労働契約上の労働時間のことを指します。
所定労働時間は、原則として就業規則その他の規程において明確に規定する必要があり、これが規定されていない場合、労働者は何時に出勤し、何時に退勤すべきか分からず、適切な労務の提供をすることが出来ない事態に陥ってしまいます。

また、所定労働時間は、時間外割増賃金の算定にも利用されております。
すなわち、法律上、日、週、月等による賃金をその期間の所定労働時間で除した金額を時間外割増賃金の算定の基準として利用することとされております(労働基準法施行規則19条)。

 

3 割増賃金の算定の例

例えば、所定労働時間を、1日7時間と規定している会社において、それを超えて労働したとしても法定労働時間である1日8時間を超えない場合、法律上の一日単位の時間外労働にはならず、会社側は割増賃金の支払義務を負いません。

しかしながら、会社側は、この法定労働時間に至るオーバータイム分(7時間を超えた部分)について、賃金をどのように支給するかを明確に決めておく必要があります。
これを決めておかないと、そもそもの賃金は所定労働時間に対応した7時間分についてしか支給されておらず、オーバータイム分についての賃金が支給されていない状況ですので、オーバータイム分の賃金の算定について別途問題が発生してしまうためです。

 

4 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っております。
労働時間に関する問題も含め、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

ECサイトにおける著作権侵害について

2021-03-09

以前は、企業が消費者に対して商品を販売するという形が商取引の中心でしたが、現在ではECサイトの発展、社会への浸透によって、消費者が消費者に対して商品を販売するといったことが日常的に行われるようになっております。
実際、何らかの形で、そのような消費者間での取引に関与したことがある方も多いのではないでしょうか。

このように消費者間での取引が盛んになることは、ECサイト全体の隆盛につながりますので、望ましいことではありますが、その一方で、安易に著作権侵害をしてしまっているケースも見られます。
そこで、本日は、ECサイトに出品される商品の著作権侵害に関してご紹介いたします。

 

1 ECサイトにおいて物品を出品する場合において著作権侵害となる場合

以下のような著作権侵害には十分注意する必要があります。

①ECサイトを通じて侵害品を販売する場合
譲渡権(著作権法(以下略す。)26条の2、28条)侵害、映画の著作物については頒布権(26条、28条)侵害

②他人が著作権を有する写真(商品画像等)を、無断で、ECサイト上で販売する商品を紹介するための画像として商品ページに掲載する場合
複製権(著作権法21条)侵害、翻案権(27条)侵害、公衆送信権(23条、28条)侵害

 

2 いわゆる「消尽」理論について

他人が著作権を有する商品を公衆に譲渡する場合であっても、その著作権者がいったん販売した真正商品を再販売する行為等については、通常、譲渡権侵害は成立しません(いわゆる「消尽」理論。26条の2第2項)。

他方、著作権者以外の第三者から買い取った著作権侵害品を他へ再販売する行為は譲渡権侵害となりますので注意が必要です。
もっとも、買い取った時点で、その商品について譲渡権が消尽していなかったこと(例えば、当該商品が侵害品であること等)を知らず、かつ、知らないことにつき過失がなかった場合には、その商品を販売する行為は譲渡権侵害とはならないと考えられております(113条の2)。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

ECサイトにおいて消費者間の取引を行うことは非常に簡単で、かつ有益なものですが、その一方で安易な著作権侵害は、想像もしていないトラブルに巻き込まれてしまうことにつながりますので、絶対に行ってはいけません。
仮に、自身が販売した商品または自身が購入した商品が、著作権侵害の疑いがあるのではないかとの疑念がある場合には、まずは、速やかに専門家にご相談いただくことを強くお勧めいたします。

同種又は類似の貨物が存在する輸入貨物における例外的な課税価格の決定方法

2021-03-08

現実支払価格をベースとした原則的な課税価格の決定方法(別のコラムで特集しておりますので、ご参照ください。)により課税価格を決定することができない輸入貨物については、まず、当該輸入貨物と同種又は類似の貨物に係る取引価格による課税価格の決定方法による評価を試みることとなります。
そこで、本日は、同種又は類似の貨物に係る取引価格による課税価格の決定方法について、ご紹介いたします。

 

1 「同種の貨物」の意義

「同種の貨物」とは、次の全ての条件を満たす貨物をいいます。

①輸入貨物の本邦への輸出の日又はこれに近似する日に本邦へ向けて輸出されたものであること

②輸入貨物の生産国で生産されたものであること

③形状、品質及び社会的評価を含む全ての点で輸入貨物と同一であること(外見上微細な差異があるものであっても、他の点で同一であるものを含む。)

 

2 「類似の貨物」の意義

「類似の貨物」とは、次の全ての条件を満たす貨物をいいます。

①上記1の①及び②の二つの条件を満たすものであること

②輸入貨物と全ての点で同一ではないが、同様の形状及び材質の貨物であって当該輸入貨物と同一の機能を有し、かつ、当該輸入貨物との商業上の交換が可能なもの

 

3 同種の貨物又は類似の貨物に係る取引価格の優先順位

同種の貨物又は類似の貨物に係る取引価格による課税価格の決定方法により課税価格を決定する場合における「同種の貨物に係る取引価格」又は「類似の貨物に係る取引価格」の適用についての優先順位は、次のとおりです。

①同種の貨物に係る取引価格と類似の貨物に係る取引価格との双方があるときは、同種の貨物に係る取引価格が優先します。

②輸入貨物の生産者が生産した同種の貨物に係る取引価格とそれ以外の生産者が生産した同種の貨物に係る取引価格の双方があるときは、輸入貨物の生産者が生産した同種の貨物に係る取引価格が優先します。この優先関係は、類似の貨物に係る取引価格についても応用です。

③上記①及び②によっても、なお競合する同種又は類似の貨物に係る取引価格が二つ以上あるときは、それらの取引価格のうち、最小のものが優先します。

 

4 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が、輸入・通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、輸入・通関のトラブルに関するご相談を幅広く受けております。
輸入貨物の課税価格の決定方法を含め、輸入・通関に関するトラブルでご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

ノーワーク・ノーペイの原則について

2021-03-07

「ノーワーク・ノーペイの原則、というものがあると聞いたのだが、どういった内容の原則なのか?概要だけでも教えてくれないか?」といったご相談をお受けすることがあります。

このような場合、ノーワーク・ノーペイの原則は、会社内における就業規則や労働協約をはじめとする各種の規程の存在や、労働契約の具体的内容によっては適用されることがない原則であるということを伝えた上で、あくまでも概念としての当該原則の内容のご説明を行うにとどまることが通常です。
もっとも、労使関係においては前提ともいえる原則であり、理解しておくことは重要といえますので、以下では、ノーワーク・ノーペイの原則の概要をご紹介いたします。

 

1 ノーワーク・ノーペイの原則について

労働契約は、労務を提供し、賃金を支払うという有償、双務契約です。
そのため、労務の提供がない以上は、賃金請求権は発生しないのが原則であり、このことを指して、ノーワーク・ノーペイの原則といいます。

以上を踏まえ、労働契約で労働すべきことが定められている日である所定労働日に欠勤、遅刻、早退などで従業員が労働できなかった場合には、一般に従業員の都合による労働契約の不履行に該当しますので、ノーワーク・ノーペイの原則に従い、使用者の賃金支払義務がなくなることになります。

具体的には、従業員が遅刻、早退、私用外出などにより提供すべき労務を提供しなかった時間がある場合にその時間に応じて賃金を減額することは、基本的には、ノーワーク・ノーペイの原則から適法ということになります(ただし、上記のとおり、各種の規程等の内容によってはその限りではありません。)。

 

2 ノーワーク・ノーペイの原則の例外

ノーワーク・ノーペイの原則をそのまま適用することで、従業員に対して過度な負担を強いることになると認められる場合には、具体的な事情を踏まえて、例外的に当該原則が適用されないケースも考えられます。
もっとも、これはあくまでも非常に例外的な場合にとどまり、一般的な話ではないという点には十分注意する必要があります。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っております。
賃金に関するご相談を含め、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

会社内の慣行は、絶対のものではありません!

2021-03-06

「うちの会社では昔からこのような取り扱いをしており、従業員も含めて会社全体がそのことを認識している。そのため法律の規定とは異なるかもしれないが、特段このまま取り扱いを変更しなくてよいものと考えているが、問題はないか。」という相談をお受けすることがあります。
この相談内容は、一面では正しいといえなくはないのですが、明確に誤っている部分がありますので、注意が必要です。
以下、ご説明いたします。

 

1 事実たる慣習と強行法規の関係性 

上記のご相談内容は、要するに、企業や職場の一般的な従業員ならば誰でもそのような事実上の制度や取扱いがあることを知り、その上で異議を述べず、使用者側も承諾しているという、いわば労使ともに従っているという状況に至っているものと思われます。
このような状況は、「事実たる慣習」が成立している状況にあるといえますが、このような慣習が強行法規に違反する場合には、法的な効力は発生しないことになるので、注意が必要です。

では、どのようなものが強行法規に該当するかが問題となりますが、労働基準法や労働安全衛生法等、労働条件に関する規定については、ほとんどが強行法規に該当し、これらの法令に反する「事実たる慣習」は効力を有しません。

 

2 参考となる裁判例

静岡県教祖事件判決(最判昭和47年4月6日(判タ277・143)は、公立学校の教職員に関する事件ですが、「職員会議の続行による時間外勤務に対しては、時間外勤務手当を支払わない」、という慣習について、仮に「事実たる慣習」になり得る状況であったとしても、労働条件の基準を定める労働基準法の規定が強行法規であることは、同法13条の規定によって明らかであるから、時間外労働に対する割増賃金支払い義務を定める労働基準法に違反する以上、その効力は生じない、との判断を示しました。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っておりますので、労働慣行をはじめとして、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

原則的な方法で課税価格を決定できない場合

2021-03-05

本日は、課税価格の決定の原則により課税価格を決定することができない輸入貨物について、ご紹介いたします。
輸入取引によらないで輸入された貨物あるいは、輸入取引に基づいて輸入される貨物であっても、関税定率法第4条第2項に掲げる「特別な事情」がある場合には、原則的な課税価格の決定方法を適用することはできず、関税定率法第4条の2以下の規定により課税価格を決定することとなります。
具体的には、次のような貨物が、原則的な課税価格の決定方法により課税価格を決定することができない輸入貨物に該当します(関税定率法第4条第1項及び同条第2項、関税定率法基本通達4-1(1)、同4-1の2)。

 

1 輸入取引によらない輸入貨物

①無償貨物

②委託販売のために輸入される貨物

③売手の代理人により輸入され、その後売手の計算と危険負担によって輸入国で販売される貨物

④賃貸借契約に基づき輸入される貨物

⑤送り人の所有権が存続する貨物

⑥同一の法人格を有する本支店間の取引により輸入される貨物

⑦本邦で滅却するために、輸出者が輸入者に滅却費用を支払うことにより輸入される貨物

 

2 特別な事情がある輸入貨物

①買手による輸入貨物の処分又は使用について、制限がある場合

②輸入貨物の課税価格の決定を困難とする条件が輸入取引に付されている輸入貨物

③売手に帰属する収益があり、その額が明らかでない輸入貨物

④特殊関係による取引価格への影響がある輸入貨物(この場合については、別のコラムで具体的に整理しておりますので、ご参照ください。)

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

輸入貨物の課税価格の考え方は、非常に技巧的な面があり、なかなか理解することが難しいといえます。
当事務所は、代表弁護士が、輸入・通関に関する国家資格である通関士資格を保有しており、輸入・通関に関するトラブルを幅広く取り扱っております。
輸入貨物の課税価格に関する問題をはじめ、輸入・通関に関するトラブルでお悩みの方は、お気軽に当事務所までご相談ください。

従業員の退職に関して

2021-03-04

「これまで企業として誠心誠意教育をして、やっと一人前になった従業員が、事前に何の相談もなく辞表を出してきた。社長は激怒しており、退職金等は一切支払わないと言っているが、そのような対応を取ることは可能でしょうか」、と言った相談を頂戴することがございます。
結論としては、法律、企業内のルールに沿った対応を取らなければ、違法ということになるので、上記相談内容のような対応を取ることは絶対に避けるべきです。

以下、従業員の退職時の注意点をご紹介いたします。

 

1 従業員の退職について

従業員は、日本国憲法で保障された職業選択の自由の一環として、退職の自由が認められています(民法627条1項)。
そのため、従業員が退職の意思を示している場合に、もちろん慰留することは可能ですが、法的に従業員の退職を妨げることはできません。
もっとも、即時の退職が認められているわけではなく、申し入れから退職までには少なくとも二週間以上の猶予を取らなければなりません(同条同項)。なお、労働契約を締結するときに、企業側から明示された労働条件が、実際の労働環境の状況と異なっていた場合には、従業員側は直ちに退職することができます(労働基準法15条2項)。

 

2 従業員の退職時の注意点

繰り返しとなりますが、上記の相談内容のように、従業員が辞表を提出して一方的に会社を退職した場合、意趣返しとして未払い分の給与や残業代、退職金の支給を行わないといった対応を取るといった対応は絶対に取るべきではありません。
労働基準法違反や最低賃金法違反として、刑事罰が科される可能性がありますし、また、行政により、企業名が公表されてしまう恐れがあります。
一度企業名が公表されてしまうと、いわゆるブラック企業等のレッテルが貼られ、企業のレピュテーション上、大きな不利益を被ることになりますので、特に注意が必要です。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っておりますので、従業員の退職に関する問題をはじめ、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

従業員の定年後の継続雇用について

2021-03-03

これまで日本社会における企業は、新卒採用、年功序列、定年制等の仕組を踏襲してきました。
このうち、定年制は、従業員が55歳や60歳等になると(能力やそれまでの企業への貢献等に関わらず)、退職金を支給した上で一律に定年退職とし、人材の新陳代謝を図ってきた仕組といえます。

もっとも、現代の日本社会では、少子高齢化が進み、また、定年とされる年齢を超えても、仕事をする意欲・能力が十分ある従業員も非常に多いという事情を踏まえて、定年制の仕組自体の見直しが進んでおります。
このような定年制の見直しの方向性は、各企業毎の取組にとどまらず、社会全体の動きといえます。

そこで、本日は、このような動きのうち、定年後の従業員の再雇用に関するルールをご紹介いたします。

 

1 定年後の継続雇用について

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年法」といいます)は、少なくとも定年(おおむね60歳)から、年金受給開始年齢(おおむね65歳以上)までの間は、企業が従業員を引き続き雇用するよう「継続雇用制度」を定めています。
また、高年法9条3項が定める「指針」によれば、「継続雇用制度を導入する場合における継続雇用後の賃金については、継続雇用されている高年齢者の就業の実態、生活の安定等を考慮し、適切なものとなるよう努めること」と言及されています。

他方で、企業が従業員の定年退職後の再雇用において、従業員が定年退職前とほぼ同様の勤務内容と責任が課されているにもかかわらず、再雇用ということで賃金のみを大幅に下げるケースが多くみられており、このような取扱いの合理性について疑問も生じております。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

従業員の定年後の再雇用に関する規制やルールは多岐にわたり、今後も増加することが予想されます。
従業員の定年後の再雇用という論点は、企業にとっては、人材の適切な利用という面で非常に重要な論点となりますので、専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っておりますので、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ありましたら、お気軽にご連絡ください。

技術やノウハウを適切に保護することの重要性

2021-03-02

技術やノウハウ等の情報は会社の存続に関わる重要な資産であり、会社にとって、当該情報を保護することは非常に重要です。
このような技術やノウハウ等の情報を法的に保護するため、不正競争防止法では、「営業秘密」に該当する場合には法的に保護する旨規定しております。
本日は、この「営業秘密」についてご紹介いたします。

 

1 「営業秘密」の概要

不正競争防止法第2条第6項において、「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの、と規定されております。
そして、この「営業秘密」に該当し法的に保護されるためには、①秘密管理性、②有用性、③非公知性の3つの要件を全てを充足することが必要です。
この3要件については、経済産業省が公表している「営業秘密管理指針」で詳細に説明されておりますので、以下では概要をご紹介します。

なお、もっとも、重要な要件は①秘密管理性と考えられております。

 

2 ①秘密管理性について

「営業秘密」に該当するものが何であるのかが、従業員にとって明確である必要があり、会社が秘密として管理している情報のみが法的に保護される「営業秘密」に該当し得ることとなります。
ここでは、従業員にとっての明確性や予見可能性といった視点が重要です。
各会社が、自社の規模、業態、情報の性質等の事情を踏まえて、従業員が、容易に営業秘密と認識することができるような管理体制を構築しておくことが必要です。

例えば、以下のような秘密管理措置が、代表的な例としてよく示されます。

(i)紙媒体

・文書やファイルに「マル秘」等と表示する
・施錠可能なキャビネットや金庫等に保管する

(ii)電子媒体

・記録媒体や電子ファイル名等に「マル秘」等と表示する
・閲覧するためのパスワードを設定する

 

3 ②有用性

会社が営業秘密として保護した情報が、客観的にみて、事業活動にとって有用であることが必要です。
①秘密管理性、及び③非公知性を充足する場合、②有用性も認められやすいものと考えられています。

 

4 ③非公知性

会社が営業秘密として保護したい情報が、「一般的に知られた状態になっていない状態」、又は「容易に知ることができない状態」であることが必要です。

 

5 弁護士へのご相談をご希望の方へ

繰り返しとなりますが、技術やノウハウ等の情報は会社の存続に関わる重要な資産であり、法的に保護されるために必要な取扱いを適切に行うことが必要となります。
専門家を交えずに行う場合、必要な取扱いの漏れがある等のリスクが伴いますので、ご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

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