Author Archive

輸入ビジネスにおける注意点

2021-03-31

輸入取引をビジネスの中心とする場合、通常は、通関手続きや貨物の運送などは、フォワーダー等の専門家に依頼すればよいので、基本的には、ビジネスを行う者はそれらの手続面を気にする必要はないのが実情といえます。

 

1 輸入通関手続の適正さを日々精査することが重要です

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。
しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。
通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

というのも、税関事後調査という制度があり、貨物を輸入した後、相当程度の期間経過後に税関が貨物の輸入申告が適切に行われたかどうかを輸入者の事業所等で調査することがあります。
このような調査があることを踏まえて、具体的にどのような点に注意しておく必要があるかというと、それは、ビジネスの内容ごとに大きく異なります。

特に、輸入者側から輸出者側に対して原材料の一部を無償で提供している場合や知的財産権に絡む問題がある場合等では注意が必要です。
具体的なビジネスの内容を踏まえて、どのような内容を特に注意すべきかを把握した上で、輸入関連の法令に照らして適切となるように、日々のビジネスの内容を精査していくといった作業が必要となります。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所では、代表弁護士が、輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出入トラブルや通関トラブルに関するご相談を幅広く取り扱っております。
ご相談いただいたビジネスの内容を踏まえ、日々の業務においてどのような点を注意すべきかを整理するといったサービスもご提供しております。
日々の業務で貨物の輸入を頻繁に行っているものの、輸入・通関に関して把握できていない等ご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。。

能力不足の従業員の解雇について

2021-03-30

「業務遂行能力、営業成績等が著しく劣る従業員を解雇したい。仕事も満足にできない以上解雇しても問題ないと考えているが、このような考えで問題ないでしょうか」、というご相談をお受けすることがあります。
結論としては、必ず解雇できるというわけではなく、諸般の事情を総合的に考慮した上で解雇の可否を検討する必要があります。

以下では、参考となる裁判例をご紹介いたします。

 

1 前提としての考え方

就業規則上、解雇事由として「勤務成績又は業務能率が著しく不良で、社内での指導を経ても向上の見込みがないとき」等の規定があったとしても、会社が当該従業員を直ちに解雇することができるわけではありません。
従業員の能力不足を理由とした解雇の場合、解雇権濫用に当たるか否かは、その従業員の能力不足の内容や程度、改善の見込みの有無等の様々な状況を踏まえて総合的に判断する必要があります。

 

2 ブルームバーグ・エル・ピー事件(東京地判平24・10・5判時2172・132)

本裁判例では、「勤務能力ないし適格性の低下を理由とする解雇に「客観的に合理的な理由」(労働契約法16条)があるか否かについては、まず、当該労働契約上、当該労働者に求められている職務能力の内容を検討した上で、当該職務能力の低下が、当該労働契約の継続を期待することができない程に重大なものであるか否か、使用者側が当該労働者に改善矯正を促し、努力反省の機会を与えたのに改善がされなかったか否か、今後の指導による改善可能性の見込みの有無等の事情を総合考慮して決すべきである」、と判示しています。

この判決に従えば、①能力不足が重大であるか否か、②会社からの指導による能力改善の機会があったのか、③今後の改善の見込みがあるのかなど諸般の事情を踏まえて総合的に判断する必要があると考えられます。

以上の裁判例を踏まえますと、能力が他の従業員と比較して著しく低いというだけの事情で解雇することは困難であると考えられます。
そのため、会社としては、当該従業員に対して繰り返し粘り強く指導を行いつつ、必要に応じて会社内での配置換えや他部署への異動を行う等を通して可能な限り雇用継続の努力をする必要があるように思います。

その上で、将来的に解雇するという判断をする場合に備えて、能力不足や業務に支障が生じている点について、現段階からその状況を客観的に記録化しておくことが必須の対応となります。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っております。
従業員の解雇をはじめてとして、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたらお気軽に当事務所までご相談ください。

パワハラと安全配慮義務違反について

2021-03-29

パワハラに該当する事実が認められた場合、企業は、被害者の従業員に対して損害賠償を支払う必要が生じる場合があります。
また、パワハラに該当する事実が認められない場合でも、企業が、被害者の従業員に対して損害賠償を支払う必要が生じる場合がありますので注意が必要です。この点は、よく勘違いされるところですが、パワハラに該当する事実が認められないとしても、パワハラとまではいえないが企業として責任がある場合もありますので、十分注意する必要があります。

以下、ご説明いたしますのでご参照いただけますと幸いです。

 

1 参考となる裁判例

徳島地判平30・7・9(LLI/DB判例秘書(L07350678))が参考となる裁判例ですので、ご紹介いたします。
事案としては、ある従業員が会社の他の従業員からのパワハラで自殺したとして、亡くなった従業員の相続人が、会社側に対して、使用者責任または雇用契約上の義務違反による債務不履行責任に基づく損害賠償請求をした事案です。

判示としては、(i)パワハラを前提とする使用者責任については否定したものの、(ii)会社の安全配慮義務違反を認定して、賠償責任を認める判断を示しました。

裁判所の判断をより具体的に整理いたしますと、以下のとおりです。

①上司である従業員が、亡従業員に対し、日常的に強い口調の叱責を繰り返し、呼び捨てにするなどしたことについては、部下に対する指導として相当性に疑問があるといわざるをえない。

②もっとも、部下の書類作成のミスを指摘しその改善を求めることは、会社の社内ルールであり、主査としての従業員の業務である上、叱責が日常的に継続したことは、亡従業員が頻繁に書類作成上のミスを発生させたことによるものであって、何ら理由なく叱責したとい う事情は認められず、具体的な発言内容は人格的非難に及ぶものとまではいえない。

③①及び②を前提とすると、一連の叱責が、業務上の指導の範囲を逸脱し、社会通念上違法なものであったと認められないので、会社の使用者責任は認められない。

④一方、亡従業員の体調不良や自殺願望の原因が、上司との人間関係に起因するものであることを容易に想定できた課長や係長は、亡従業員の心身に過度の負担が生じないように、同人の異動を含めその対応を検討すべきであったところ、課長や係長は、一時期、担当業務を軽減したのみで、そのほかには何らの対応をしなかった。

⑤④を前提とすると、会社には安全配慮義務違反があったと認められる。

以上のとおり、パワハラに該当する事実が認められないとしても、企業として責任が問われる場合もあり得ますので、十分注意する必要があります。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っております。
パワハラに関する問題をはじめ、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

秘密保持契約について

2021-03-28

秘密保持契約では、秘密保持条項の定義を具体的に記載した上で、秘密保持義務の射程外、すなわち、例外的に開示が許容される場合を規定することが通常です。
例えば、開示時点で既に公知の事実や、弁護士や会計士等の法律上秘密保持義務を負う専門家への開示や、また、裁判所や官公庁からの開示要請その他法令に基づく場合等を指します。
本日は、このうち、公知の事実の該当性に関して争いとなった裁判例を紹介します。

 

1 カードシステム事件(LLI/DB 判例秘書登載)

事案の概要としては、特定の小売店へのカードシステム導入のために、原告が被告に対してカードシステムに関する技術情報を開示したところ、被告が他の小売店にも当該技術を使用したカードシステムを利用させたことが、原告と被告間の秘密保持契約に違反しているのではないかが問題となったものです。

結論としては、秘密保持契約には「相手方から開示を受けまたは知得した際にすでに公知または公用の情報」は秘密保持義務から除外される旨の規定があるところ、「公知または公用の情報」を秘密情報から除外した趣旨は、契約当事者以外の第三者が現に知りまたは容易に知り得る情報の開示を禁止しても実益がないことに加え、そのような情報まで秘密保持義務の対象とすると契約当事者に過大な負担を課すことになるためであると認定した上で、その情報が全体として公然と知られまたは公然と実施されている情報を組み合わせることによって容易に相到し得る情報も含まれる、と判断しました。

上記裁判例は、形式的には秘密保持義務違反に該当するようにも考えられるところ、当事者間の具体的な事情等を踏まえたあくまでも事例判断とは考えられますが、上記裁判例のような判断がなされることがある点には十分に注意をして秘密保持契約を作成・締結することが非常に重要です。

上記の裁判例の他にも、原価セール事件(東京高判平成16・9・29(判例タイムズ1173・68))、公共土木工事積算システム事件(東京地判平成14・2・14(LLI/DB 判例秘書登載))、メリルリンチ・インベストメント・マネージャーズ事件(東京地判平成15・9・17労判858・57)等が参考となります。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、各種契約書の作成やレビューを幅広く取り扱っております。
秘密保持契約をはじめ、各種契約書の作成や修正に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

どのような行為がパワハラに該当するか、について

2021-03-27

「パワハラ」という言葉が使われるようになって久しく、特に近年はパワハラが社会問題として認知されております。
ところが、どのような行為が「パワハラ」に該当し違法となる可能性が高いのかについては、正確に把握できていない場合も多いのではないでしょうか。
そこで、本日は、どのような行為がパワハラに該当するかをご紹介いたします。

 

1 パワハラに該当する行為について

パワハラの定義ですが、「働き方改革」の一環として設置された「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」が、平成30年3月に公表した報告書では、

①優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
②業務の適正な範囲を超えて行われること
③身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること

以上の3つの要素をすべて満たすものが職場のパワハラと定義されています。

 

2 パワハラの6つの類型について

上記1で言及した報告書では、パワハラを以下の6つの行為類型に整理しております。

(i)身体的な攻撃、(ii)精神的な攻撃、(iii)人間関係からの切り離し、(iv)過大な要求、(v)過少な要求、(ⅵ)個の侵害

報告書では、裁判例を参考に、パワハラに該当すると考えられる例と該当しないと考えられる例が具体的に示されています。
簡単にご紹介いたしますと、例えば、(ii)精神的な攻撃、に関しては、「上司が部下に対して、人格を否定するような発言をする場合は、パワハラに該当しますが、遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動・行動がみられ、再三注意してもそれが改善されない部下に対して上司が強く注意する場合は、パワハラ要素の②、③に該当しないため、パワハラには当たらない」としています。
また、(iii)人間関係からの切り離しの例では、「自身の意に沿わない社員に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりする場合は、パワハラに該当しますが、新人社員を育成するために短期間集中的に個室で研修等の教育を実施する場合は、パワハラ要素の②に該当しないため、パワハラには当たらない」としています。

以上、報告書の内容をご紹介いたしましたが、もちろん、実際にパワハラに該当するか否かは、個別事情にもよりますので、ご注意ください。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っております。
パワハラに関する問題も含め、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご相談ください。

従業員による引抜行為について

2021-03-26

「従業員が独立を企図しており、他の従業員に対して引抜行為を繰り返しているようです。うちの会社は小さな会社なのでこのような引抜行為をされてしまうと会社の業務に甚大な影響が出る可能性があります。引抜行為をしている従業員への対応はどのようにすればよいでしょうか。」、というご相談をお受けすることがあります。
そこで、本日は引抜行為をする従業員の法的責任についてご説明いたします。

 

1 引抜行為をする従業員の法的責任について

他の従業員に対する引抜行為が単なる勧誘と評価される程度にとどまるのであれば法的責任を負う可能性は低いものと考えられます。
というのも、単なる勧誘程度であれば、従業員の職業選択の自由の範囲内として憲法上保証されると考えられるからです。

他方で、例えば、独立の計画を会社に隠したまま多数の従業員を引抜くなど著しく背信的な方法で行われ、その結果、会社の業務運営に支障が生じ、損害が発生するような場合には、引抜行為を行った従業員は、雇用契約に付随する誠実義務に違反したとして債務不履行責任(民法415条)や、不法行為責任(民法709条)を負う可能性が相当程度あります(大阪地判平14・9・11労判840・62等)。

もっとも、会社の業務運営に支障が生じた結果、損害がどの程度発生したのかを客観的に把握することは非常に難しい面があります。
そこで、実際の損害賠償請求に関しては相当程度のハードルがある点には十分注意をして、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

なお、引抜行為に関して従業員が負う責任は以上のとおりですが、引抜行為に付随して、会社の営業秘密を持ち出すことも考えられます。
会社の営業秘密に関しては、他のコラムでご紹介しておりますので、ご参照ください。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っております。
引抜行為を行う従業員への対応をはじめ、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

一括加算について

2021-03-25

輸入取引をビジネスとしている方の中には、一括加算という仕組を聞いたことがある方もいらっしゃるものと思います。
一括加算は、便利な面もありますが、注意すべき点もありますので、その利用に当たっては少なくとも一通りの概要を把握しておく必要があります。
以下では、一括加算の概要について、ご紹介いたします。

 

1 一括加算の概要

一括加算とは、簡単に言うと、特定の要件を充足する場合において、複数回にわたって輸入される貨物に係る無償提供費用等の額を、特定の輸入貨物の課税価格に一括して算入する仕組のことを指します。
すなわち、複数の輸入貨物に係る加算要素としての無償提供費用等が一括して支払われる場合には、原則として、個々の輸入貨物に関連する額を案分して当該輸入貨物の課税価格に算入することとなりますが、次の①及び②に掲げる費用等の額の加算について、それぞれに掲げる要件を充足するときは、便宜特定の輸入貨物の課税価格に一括して算入することができるというものです。
継続的に輸入取引をビジネスとして行っている輸入者にとっては、非常に便利な仕組であるものといえます。

①関税定率法第4条第1項第3号に掲げる費用
「輸入者から希望する旨の申し出があり、かつ、課税上その他特に支障がないと認められるとき」に一括加算が認められます。

②上記①以外の費用等
「輸入者から希望する旨の申し出があり、かつ、課税上その他特に支障がないと認められるとき」との要件に加え、「個々の輸入貨物への按分が困難と認められるもの」に一括加算が認められます。

なお、実際に一括加算を希望する場合は、原則として、あらかじめ包括評価申告書を提出することが必要であることにはご留意ください。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸入トラブルや通関トラブル、事後調査をはじめとする税関対応まで、幅広く取り扱っております。
輸出入や通関に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

評価申告について

2021-03-24

輸入取引をビジネスとして継続的に行っている方の中には、評価申告という制度を聞いたことがある方もいらっしゃるものと思います。
評価申告は便利な面もありますが、注意すべき点もありますので、制度の内容を踏まえて慎重に対応を検討する必要があります。
以下で、評価申告の概要をご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。

 

1 評価申告の概要

評価申告とは、簡単に言うと、輸入取引に係る仕入書価格と現実支払価格とが一致しない場合等、課税価格の計算の基礎が明らかでない場合に、当該課税価格の計算に必要な事項を税関に対して申告する制度のことを指します。

関税の納税申告の一環として、当該輸入貨物の課税価格の決定のための基礎、売手と買手との間の特殊関係の有無、輸入取引に係る特別な事情等、当該輸入貨物の課税価格を決定するために必要な事項を書面に記載して輸入貨物の輸入(納税)申告の際に又はあらかじめ税関長に申告することになります。

ただし、輸入取引における売手と買手との間に特殊関係がなく、かつ、輸入取引に係る特別な事情がない場合で、輸入貨物の課税価格を仕入書、運賃明細書、保険料明細書及び包装明細書により決定できるときは、評価申告をする必要はありません(関税法7条及び同法施行令第4条)。

 

2 評価申告において申告すべき事項

評価申告において申告すべき事項は、上記1でも簡単に言及しましたが、より具体的には、関税法施行令第4条第1項又は同令第4条の2第1項の規定により次に掲げる事項とされています。

①輸入貨物の課税価格の計算につき関税定率法第4条第1項に定める原則的な方法により課税価格を決定できる場合以外の場合にあっては、課税価格の計算の基礎及びこれに関連する事項
②課税価格が異なることにより関税の額が異なることとされている輸入貨物に係る定率法第4条第2項第1号から第3号までに掲げる事情、同行第4号に規定する特殊関係及び課税価格の計算に関係がある取引上の特殊な条件の有無及びその内容

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が、輸入や輸出・通関手続きに関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出入トラブルや通関トラブルに関するご相談を幅広く取り扱っております。
輸出入トラブルや通関トラブルに関して、お悩みの方やご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

輸入取引における「売手」と「買手」について

2021-03-23

輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物の輸入取引(買手が本邦に住所、居所、事務所等に準ずるものを有しない者であるものを除く。)がされた場合において、「買手」により「売手」に対し又は「売手」のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格の総額に基づいて決定することを原則としています(関税定率法第4条第1項)。

したがって、課税価格の決定にあたっては、輸入取引に関与する者のうち、誰が「売手」であり、誰が「買手」であるかを認定することが基礎となります。
そこで、以下では「売手」及び「買手」の考え方をご紹介いたします。

 

1 「売手」及び「買手」について

輸入取引における「売手」及び「買手」とは、実質的に自己の計算と危険負担の下に輸入取引をする者をいいます。
具体的には、売手及び買手は自ら輸入取引における輸入貨物の品質、数量、価格等を取り決め、瑕疵、数量不足、事故、不良債権等の危険を負担することになります。

なお、典型的な輸入取引においては貨物の輸出者及び輸入者がそれぞれ売手及び買手となりますが、輸出者及び輸入者は単に貨物の荷送人及び荷受人であって、当該貨物を実際に販売し又は購入する者が別に存在するときは、当該販売又は購入するものがそれぞれ売手及び買手となります。

 

2 輸入申告者について

「輸入申告者」とは、一般的には「保税地域から輸入貨物を引き取る物」を意味する者であり、「輸入申告者」には、例えば「売手」又は「買手」のどちらもなることができます。
また、「課税価格」は、原則として関税定率法第4条第1項の「輸入取引」に係る取引価格に基づいて決定する者であり、連続する複数の取引がある場合には、輸入申告者にとらわれることなく、どの取引がこの「輸入取引」に当たるか判定を行い「課税価格」を決定することになります。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が、輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出入トラブルや通関トラブルに関して幅広くご相談をお受けしております。
輸出入トラブルや通関トラブルに関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

輸入申告価格の通貨の換算に用いる外国為替相場について

2021-03-22

貨物を輸入する際には、輸入する貨物の価格を輸入申告価格として税関に申告する必要があります。
税関は、申告された輸入申告価格に基づいて課税価格を算定し、関税や消費税の計算をします。そして、この一連の価格はいずれも日本円ではなく、アメリカドルなどで表示されることになります。
そこで、本日は、輸入申告価格等の通貨の換算に用いる外国為替相場に関してご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。

 

1 原則としての考え方

仕入書に表示された外国通貨で輸入貨物の代金を支払う場合には、課税価格を決定するために、外国通貨で表示された価格を本邦通貨へ換算することが必要となります。
また、通貨の換算に用いる外国為替相場について、関税定率法第4条の7において「課税価格を計算する場合において、外国通貨により表示された価格の本邦通貨への換算は、その輸入貨物の輸入申告の日における外国為替相場によるものとする」と規定されています。

具体的な取扱いに関しては、関税定率法施行規則第1条で、「輸入申告の日の属する週の前々週における実勢外国為替相場の当該週間の平均値に基づき税関長が公示する相場とする」と規定されております。
この場合の「税関長が公示する相場」を決定するための計算の基礎となる外国為替相場は、アメリカドルであれば、本邦の外国為替市場における銀行間の直物取引(翌々営業日渡し)の中心相場、アメリカドル以外の通貨であれば、ニューヨーク外国為替市場等における銀行間の直物取引の中心相場に類するアメリカドルの相場により裁定した相場となります。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出入トラブルや通関トラブルを幅広く取り扱っております。
輸出入トラブルや通関トラブルでお悩みの方や、輸出入や通関に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

« Older Entries Newer Entries »

トップへ戻る

03-5877-4099電話番号リンク 問い合わせバナー