パワハラと安全配慮義務違反について

パワハラに該当する事実が認められた場合、企業は、被害者の従業員に対して損害賠償を支払う必要が生じる場合があります。
また、パワハラに該当する事実が認められない場合でも、企業が、被害者の従業員に対して損害賠償を支払う必要が生じる場合がありますので注意が必要です。この点は、よく勘違いされるところですが、パワハラに該当する事実が認められないとしても、パワハラとまではいえないが企業として責任がある場合もありますので、十分注意する必要があります。

以下、ご説明いたしますのでご参照いただけますと幸いです。

 

1 参考となる裁判例

徳島地判平30・7・9(LLI/DB判例秘書(L07350678))が参考となる裁判例ですので、ご紹介いたします。
事案としては、ある従業員が会社の他の従業員からのパワハラで自殺したとして、亡くなった従業員の相続人が、会社側に対して、使用者責任または雇用契約上の義務違反による債務不履行責任に基づく損害賠償請求をした事案です。

判示としては、(i)パワハラを前提とする使用者責任については否定したものの、(ii)会社の安全配慮義務違反を認定して、賠償責任を認める判断を示しました。

裁判所の判断をより具体的に整理いたしますと、以下のとおりです。

①上司である従業員が、亡従業員に対し、日常的に強い口調の叱責を繰り返し、呼び捨てにするなどしたことについては、部下に対する指導として相当性に疑問があるといわざるをえない。

②もっとも、部下の書類作成のミスを指摘しその改善を求めることは、会社の社内ルールであり、主査としての従業員の業務である上、叱責が日常的に継続したことは、亡従業員が頻繁に書類作成上のミスを発生させたことによるものであって、何ら理由なく叱責したとい う事情は認められず、具体的な発言内容は人格的非難に及ぶものとまではいえない。

③①及び②を前提とすると、一連の叱責が、業務上の指導の範囲を逸脱し、社会通念上違法なものであったと認められないので、会社の使用者責任は認められない。

④一方、亡従業員の体調不良や自殺願望の原因が、上司との人間関係に起因するものであることを容易に想定できた課長や係長は、亡従業員の心身に過度の負担が生じないように、同人の異動を含めその対応を検討すべきであったところ、課長や係長は、一時期、担当業務を軽減したのみで、そのほかには何らの対応をしなかった。

⑤④を前提とすると、会社には安全配慮義務違反があったと認められる。

以上のとおり、パワハラに該当する事実が認められないとしても、企業として責任が問われる場合もあり得ますので、十分注意する必要があります。

 

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