関税法が定める輸出入禁止物品の規制

0 はじめに:具体的な相談事例の紹介

本日は、関税法で規定されている犯罪に関する規定の内、輸出入をしてはならない貨物を輸出入する等の罪についてご紹介いたします。まずは、当事務所に寄せられた、輸出入禁止物品にまつわる架空の相談事例をご紹介いたします。輸出入をビジネスとして行っている方にとっては、決して他人事ではない深刻な内容となっております。

【相談者】

都内で輸入雑貨のオンラインショップを運営している株式会社A 代表取締役 B氏

【相談内容】

「当社は、海外の取引先から、有名ブランドのデザインに酷似したスマートフォンケースを安価に仕入れ、国内で販売する計画を立てました。B氏は、ロゴが微妙に異なっているので知的財産権の侵害には当たらないだろうと自己判断し、輸入申告を行いました。ところが、税関の検査で、商標権を侵害する物品として貨物が没収されただけでなく、警察や税関の捜査官による事情聴取を受けることになってしまいました。 さらに、捜査の過程で、過去に輸入した別の商品に、本人の知らないうちにワシントン条約で規制されている動物の皮が使用されていた疑いも浮上しています。意図的ではなかったとしても、逮捕や多額の罰金を受ける可能性があると聞き、目の前が真っ暗になっています。これからどのような法的対応を取るべきでしょうか」

このような事例は、輸入ビジネスにおけるリスク管理の甘さが招く典型的なトラブルです。

輸出入をしてはならない貨物を正確に把握しておかなければ、意図せず犯罪行為を行ってしまっているということにもなりかねません。本記事では、経営者が知っておくべき法律の条文と、その罰則の重さについて詳しく解説いたします。

1 輸出してはならない貨物を輸出する罪

輸出をビジネスとして行う際、まず念頭に置くべきは関税法第69条の2の規定です。この条文では、日本の国益や国際的な信頼を損なうような物品の輸出を厳格に禁止しています。

①麻薬、向精神薬、大麻、あへん及びけしがら並びに覚醒剤(中略)並びにあへん吸食器具

②児童ポルノ

③特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権又は育成者権を侵害する物品 ④不正競争防止法第2条第1項第1号から第3号まで、第10号、第17号又は第18号(不正競争)に掲げる行為を組成する物品

これらの物品を輸出しようとした場合、10年以下の懲役又は3000万円以下の罰金といった厳しい処罰に科されるリスクがあります。

ビジネスにおいて特に注意すべきは、③の知的財産権を侵害する物品です。自社製品の海外進出を急ぐあまり、他社の商標権を侵害していることに気づかずに輸出申告を行ってしまうと、高額な罰金だけでなく、国内外での信用を失墜させることになります。

2 輸入してはならない貨物を輸入する罪

輸入取引においては、さらに広範な物品が制限の対象となります。

関税法第69条の11では、輸入禁止物品が詳細にリストアップされています。

①麻薬、向精神薬、大麻、あへん及びけしがら並びに覚醒剤(中略)並びにあへん吸食器具

②指定薬物(中略)

③けん銃、小銃、機関銃及び砲並びにこれらの銃砲弾並びにけん銃部品

④爆発物

⑤火薬類

⑥化学兵器禁止法に規定する特定物質

⑦貨幣、紙幣若しくは銀行券、印紙、郵便切手(中略)又は有価証券の偽造品、変造品及び模造品

⑧公安又は風俗を害すべき物品(児童ポルノを含む)

⑨特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品

⑩不正競争防止法第2条第1項第1号から第3号まで、第10号、第17号又は第18号に掲げる行為を組成する物品

これらの輸入禁止物品を輸入した際の罰則も、輸出と同様に非常に重いものとなります(関税法109条1項等)。

輸入ビジネスで特にリスクが高いのは、知的財産侵害物品です。海外のマーケットプレイスや卸業者から仕入れた製品が、実はブランド品のコピー商品であったり、他社の特許技術を無断で使用していたりする場合、輸入者はその事実を知らなかったとしても、輸入申告の責任を問われることになります。

3 両罰規定による企業への深刻なダメージ

関税法における犯罪規定で特に経営者が注目すべきは、関税法第117条に定められた両罰規定です。これは、従業員や代理人が業務に関して違反行為を行った場合、その本人だけでなく、その法人(会社)に対しても多額の罰金刑を科すというものです。

例えば、輸入担当者が功り焦ってコピー商品を輸入した場合、担当者個人が懲役や罰金を受けるだけでなく、会社自体に対しても数千万円単位の罰金が科される可能性があります。これは、企業の存続を危うくするほどの重大な法的リスクです。

4 実務で活用できる輸出入禁止物品の自主点検表

企業として、取り扱う貨物が禁止物品に該当しないかを確認するためのチェック項目は以下の通りとなります。

【輸出入禁止物品の該否確認チェックリスト】

確認カテゴリー|具体的なチェック内容(関税法69条の11

薬物・銃器類|原材料に大麻成分や向精神薬が含まれていないか

知的財産権|他社のロゴ、デザイン、特許を侵害していないか

通貨・証券|偽造紙幣や偽造郵便切手、有価証券の模造品ではないか

風俗・公安|児童ポルノや公安を害する図書、映像が含まれていないか

不正競争行為|他社の著名な商品表示と混同を生じさせるものではないか

他法令との整合性|ワシントン条約や家畜伝染病予防法等に抵触しないか

これらの項目について、取引開始前、さらには毎回の発注時に確認を徹底することが、犯罪に巻き込まれないための最善の防御策となります。

5 知らなかったでは済まされない過失犯の可能性

関税法における輸出入禁止物品の規制において、最も恐ろしいのは、故意(わざと行うこと)だけでなく、注意義務を怠ったことによる過失についても責任を問われる可能性がある点です。

ビジネスとして継続的に輸出入を行っている者は、取り扱う貨物について詳細に調査する義務があるとみなされます。海外の業者が「本物だ」と言ったから、あるいは「禁止されているとは知らなかった」という弁解は、プロの輸入者としては通用しないことが多いのが実情です。

特に知的財産権侵害物品については、権利者からの申立てに基づき税関が「認定手続」を行います。この手続において侵害が認められると、貨物は没収・廃棄されるだけでなく、その後の法的処分が待っています。具体的なビジネスの内容を踏まえて、どのような内容を特に注意すべきかを把握した上で、輸入関連の法令に照らして適切となるように、日々のビジネスの内容を精査していくといった作業が必要となります。

6 税関調査や捜査を受けた際の対応

万が一、自社の貨物が禁止物品の疑いをかけられた場合、冷静かつ迅速な法的対応が求められます。税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、以下の点に留意してください。

①事実関係の正確な把握。どの製品が、どの条文に抵触しているのかを明確にする。

②証拠書類の保全。海外取引先との契約書、注文書、メールの履歴、製品の成分表や鑑定書などを全て整理する。

③弁護士を通じた窓口の一本化。不用意な発言が後の刑事手続で不利に働くことを防ぐため、専門家を介して対応を行う。

税関は、単なる行政機関であるだけでなく、特別司法警察職員としての権限を持つ職員も在籍しています。安易な対応は、事態を悪化させるだけであることを肝に銘じなければなりません。

7 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出・輸入や通関上のトラブルに関するご相談を幅広くお受けしております。

弁護士でありながら通関士の専門知識を持つことで、輸出入禁止物品の該否判断や、万が一トラブルが発生した際の税関当局、さらには捜査機関との折衝において、他の法律事務所にはない強力なサポートを提供することが可能です。

弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。 具体的には、以下のようなサポートを提供しております。

①輸出入禁止物品の該当性に関する法的意見書の作成

②知的財産権侵害の疑いを受けた際のカモフラージュ認定への抗弁

③両罰規定を回避するための社内コンプライアンス体制の構築

④刑事事件化した際の弁護人としての活動および税関交渉

輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

8 まとめ:クリーンな貿易が持続可能な成長を実現する

輸出入禁止物品の規制は、単なる手続の壁ではなく、企業の社会的責任そのものです。法を犯して得た一時的な利益は、その後の刑事罰や社会的制裁によって何十倍もの損失となって返ってきます。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

正しい法的知識を武器に、クリーンで誠実な貿易実務を継続すること。それが、グローバル市場で貴社が信頼を勝ち取り、長期的な発展を遂げるための唯一の道です。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

 

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