従業員にとって賃金は非常に重要なものであり、賃金を得るために仕事を行っていると言っても過言ではありません(もちろん、賃金は副次的なものであり、自分の夢や目標を実現するために仕事をしている方もいらっしゃいますが、賃金が必要不可欠なものという点は異論はないでしょう。)。
また、会社にとっても、賃金は、労働の対価として従業員に対して支払うものであり、人件費は会社の経営上大きな比重を占めるものですので、非常に重要なものと言えます。
もっとも、法律上、賃金が何を指すのかについて、正確に理解できていない場合も多いのではないでしょうか。
そこで、本日は、賃金の考え方をご紹介いたします。
1 賃金の意義
まず、賃金の意義についてですが、労働基準法11条において、「賃金」とは、「賃金、給料、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定義されています。
ここでいう「労働の対償」とは、労働の対価のことを指しますが、直接的に提供した労働時間や出来高に応じて支払われる場合のみを指すわけではありません。労働者の生活の維持等のために使用者が従業員に対して支給するものであって、かつ、支給条件の明白なものであれば、支給する際の名称の如何に関わらず、すべて労働基準法11条でいう「賃金」に該当すると考えられておりますので、注意が必要です。
2 よく問題となる論点
「賃金」への該当性に関してよく問題となる論点として、会社法上のストック・オプション制度(会社法236条以下)から得られる利益が労働基準法11条における「賃金」に該当するか、という問題があります。結論としては、基本的には、当該利益は労働の対償ではなく、労働基準法11条における「賃金」には該当しないと考えられております。
また、弔慰金についても賃金該当性に関して同様の問題がありますが、弔慰金は使用者が遺族に対して支払うものであり、労働者に対して支払うものではないので、労働基準法11条における「賃金」には該当しないものと考えられております。
当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、賃金の考え方等に関してご不明な点やご不安な点がある場合は、お気軽にご相談ください。