試用期間に関する注意点

従業員としての適格性等を判断するための期間として、試用期間を設定している企業も多いものと思われます。
この試用期間の法的性質に関して、裁判所は、通常は、解約権留保付労働契約として構成される、と考えています(最大判昭48・12・12民集27・11・1536(三菱樹脂事件))。
本日は、このような試用期間を設定する際に企業が注意する必要がある点として、①労働条件の明示、②解雇予告手当の取扱いの特殊性、及び③本採用の拒否、に関してご紹介いたします。

 

1 労働条件の明示

企業は、採用する者との間の労働契約の締結に際して書面による労働条件の明示が義務付けられております(労働基準法15条1項等)。
したがいまして、試用期間中の労働条件が、試用期間経過後本採用となった後の労働条件と異なる場合、企業は、当該内容を明示する義務があります。

 

2 解雇予告手当の取扱いの特殊性

試用期間中の従業員を解雇する場合、試用期間開始から14日以内に解雇をするときには、解雇予告手当等を支給する必要がなく、即時に解雇をすることができます(労働基準法21条)。
他方で、試用期間開始から14日経過後に解雇する場合には、通常の解雇の場合と同様に、少なくとも30日前の解雇予告、又は解雇予告を行わない場合には、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。

 

3 本採用の拒否

試用期間中の従業員の業務内容等を踏まえて、本採用を拒否する場合もあります。
もっとも、日本軽金属事件(東京地判昭和44・1・28労働民例集20・1・28)では、「教育によってたやすく矯正し得る言動、性癖等の欠陥を何ら矯正することなく放置して、それをとらえて解雇事由とすることは許されない」との判断が示されるなど、試用期間中に、従業員に対して適切に教育、指導等を実施しない場合には、本採用の拒否が違法と判断される場合がある点には注意が必要です。

当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、試用期間の設定や、試用期間中の従業員の解雇に関して、不安や悩みがある方、お困りのことがある方は、お気軽にご相談ください。

 

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