人事異動の拒否が認められる場合について

企業は人材の効率的な利用の観点から、人事異動を自由に行うことができるとお考えの方が多くいらっしゃいます。
しかしながら、一定の場合には従業員による人事異動の拒否が認められる場合もありますので注意が必要です。
そこで、本日は、人事異動の拒否が認められる場合をご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです

 

1 人事異動の拒否が認められる場合について

まず、前提として、企業には、人事異動を命じる権限が包括的に認められております。
もっとも、無制限に認められるわけではなく、命令権の行使に合理性がなく、配転・転勤命令権限の濫用に該当する場合には、無効となります。
代表的な例をご紹介いたします。

①業務上の必要性がない命令である場合
業務上の必要性がない人事異動の命令は、労働契約上の法的根拠を欠くこととなるので、無効なる可能性が高いといえます。
裁判例においても、配転命令の業務上の必要性が不明確で、経営に批判的な立場にある労働者を遠ざけ、配転拒否により退職を期待する等不当な動機や目的を有する場合については権利濫用であり無効との判断がなされています(東京地決平成7・3・31 マリンクロメットメディカル事件)。

②労働条件が著しく低下する場合
従業員の日常生活に影響を及ぼす賃金の相当な減収となるものなどは、配転命令権の濫用(昭和34・3・1和歌山地決、和歌山バイル織物事件)と判断される可能性があります。

③職務・勤務の場所について社員の合理的な予想範囲を著しくこえるもの
労働契約締結の際の事情、従来の慣行、当該は移転における新旧職務間の差等を総合的に判断して、合理的であると考えられる範囲を超える著しい職務内容の変更等は無効となる可能性があります(昭和48.12.18大阪地判 名村造船所事件)。

 

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