会社の貸与PCを社員が私的利用していた場合について

「昨年からテレワークを導入しており、その関係で、社員に対して業務用にPCを貸与しております。ところが、ある社員が、当該PCを業務とは関係なく私的に利用していることが判明しました。当社としてはこのような行為は、会社に対する背信行為であると考えており、厳しく対応することを検討しております。例えば、懲戒解雇まですることはさすがにやりすぎでしょうか。」、というご相談があった場合、どのように回答するかは難しい側面があります。
というのも、懲戒を行うことは可能と考えられますが、重い懲戒処分をすることは事後的に違法と判断される可能性が高いからです。

以下では、参考となる裁判例をご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。

 

1 会社の貸与PCを社員が私的利用していた場合について

裁判例を前提としますと、会社の貸与PCの私的利用は、社員の職務専念義務違反に該当するものと考えられます。
しかしながら、当該事実だけをもって、重い懲戒処分を行うことができるということにはならず、会社においてPCの取扱い規定を設けているかどうかや、PCの私的利用の頻度やその内容を踏まえて、処分の相当性を判断することになります。

例えば、裁判例(札幌地判平成17.5.26)においては、会社にPCの取扱規程がないことや使用の頻度も多くはないこと、注意や警告が十分にされていなかったこと等を理由に、会社が社員に対して行った減給処分が重すぎるとして無効であるとの判断をしたものがあります。

また、他の裁判例(福岡高判平成17.9.14)は、社員が出会い系サイト関連と思われるメールのやり取りをしていた事案において、頻度、やり取りの内容を踏まえて、パソコンの取扱規程がない場合でも、到底認められない場合に当たるとして、懲戒解雇を有効と判示したものがあります。

以上の裁判例はあくまでも個別具体的な判断に基づくものといえますが、社員への対応に関して参考となる裁判例といえます。

 

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