先日のコラムにおいて、従業員が、会社側からの人事異動命令を拒否することができる代表的な場合について、ご紹介いたしました。
本日は、先日ご紹介した事項以外で、人事異動の拒否が認められる場合についてご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです
なお、前提として、会社には、人事異動を命じる権限が包括的に認められておりが、無制限に認められるわけではなく、命令権の行使が合理性がなく、配転・転勤命令権限の濫用に該当する場合には、無効となります。
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1 不当労働行為に該当するもの
労働組合の組合員や組合活動家、役員であることを理由とする不利益取扱い、組合活動に打撃を与え、弱体化を意図するものなど組合の運営への支配・介入に該当するものは無効(労働組合法7条1号、3号)と判断されます。
裁判例でも、同様の理由から人事異動命令を無効としたものがあります(平成3・9・26大阪高判 朝日火災海上保険事件)。
2 思想・信条その他の差別的待遇に該当するもの
会社が、社員の国籍、信条又は社会的身分を理由とする差別的取り扱いをすることは禁止されているので、これに該当する人事異動命令は無効となります(労働基準法3条)。
裁判例(昭和40・4・22大阪地判 近江絹糸事件)でも以下のように判示されています。
【判示内容】
相当重大な勤務条件の不利益な変更であるにかかわらず、適正な配慮のもとになされなかったものであり、右転勤命令はいずれも、申請人らの主張するとおり申請人らが共産党の指示する思想を信奉することを理由としてなされた差別的取扱であることが一応推測できる。そうすると本件転勤命令は、いずれも労働基準法3条に違反して無効であるから、申請人両名がこれに従わなかったのは正当な理由がある。
3 弁護士へのご相談をご希望の方へ
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