税関長による関税額の訂正手続ー更正と決定

1 はじめに―相談事例

輸入実務において、自ら申告した内容に誤りがあることに気づくこともあれば、税関からの指摘によって初めて不備を認識することもあります。まずは、税関による処分の対象となり得る具体的な相談事例を想定してみましょう。

【相談者】

精密機器輸入商社 G社 物流管理担当者

【相談内容】

「当社では半年前から欧州より特殊なセンサーを輸入しております。輸入申告の際は、メーカーから提供されたインボイス価格に基づいて納税申告を行い、許可を得て国内に引き取りました。 ところが、先日実施された税関の事後調査において、当社が支払っているライセンス料の一部が関税定率法上の加算要素に該当するとの指摘を受けました。税関からは『本来納めるべき関税額が不足しているため、更正の手続きを行う』と告げられています。 これまで自主的な修正申告を行う機会はありましたが、税関側が一方的に税額を変更する更正とはどのような法的性質を持つのでしょうか。また、もし全く申告をしていなかった場合に下される決定との違いについても詳しく教えてください。あわせて、加算税などのペナルティについても知っておきたいと考えております」

このような状況は、事後調査の現場で頻繁に見られます。輸入者が自発的に訂正を行う修正申告とは異なり、税関長がその権限に基づいて行う更正や決定は、強力な行政処分としての側面を持ちます。以下、関税法に基づく詳細な仕組みを解説いたします。

2 申告納税方式と税関長の賦課権

現在の日本の通関制度は、納税義務者が自らの責任において税額を計算し申告する「申告納税方式」を基本としております。

関税法第6条の2第1項第1号(税額の確定の方式)

「申告納税方式 納税義務者がする納税申告により、納付すべき税額が確定する方式をいう」

しかし、この申告内容が客観的な事実と異なっている場合、適正な徴収を確保するために税関長にはその内容を正す権限が与えられています。具体的には更正と決定という二つの手段によって行使されます。

3 更正の手続き 納税申告がある場合の訂正

更正とは、既に行われた納税申告に対して、税関長がその内容を調査し、誤りがある場合に正しい税額へ変更する処分を指します。

(1)更正の法的根拠

関税法第7条の16第1項(更正)には、以下の規定があります。

「税関長は、納税申告があつた場合において、その申告に係る課税標準又は関税額の計算が関税に関する法律の規定に従つていなかつたとき、その他その計算が実当でなかつたと認めるときは、その調査により、当該申告に係る課税標準又は関税額を更正する」

(2)増額更正と減額更正

更正には、その結果によって二つの種類があります。

①増額更正:納付すべき税額を増加させる更正。追加の納税義務が発生する。

②減額更正:納付すべき税額を減少させる更正。過大に納めた税金が還付される。

(3)更正の通知

税関長が更正を行ったときは、関税法第7条の16第4項に基づき、更正通知書を納税義務者に送達しなければなりません。この通知書には、更正の理由を付記することが義務付けられており、輸入者はその法的根拠を確認することができます。

4 決定の手続き―納税申告がない場合の確定

決定とは、納税申告が必要であるにもかかわらず、輸入時までに申告がなされなかった場合に、税関長が自らの調査に基づいて税額を確定させる処分です。

(1)決定の法的根拠

関税法第7条の16第2項(決定)には、以下の規定があります。

「税関長は、納税申告が必要とされている貨物についてその輸入時までに納税申告がないときは、その調査により、当該貨物に係る課税標準及び関税額を決定する」

(2)決定が行われるケース

主な事例としては、密輸入の摘発時や、保税地域外での無許可消費が発覚した場合などが挙げられます。本来あるべき申告の手続きを怠ったことに対する強力な行政措置といえます。

5 更正・決定の期間制限(除斥期間)

税関長による賦課権の行使には、一定の期間制限が設けられています。これは法的安定性を確保するための仕組みです。

関税法第14条(関税の更正、決定等の期間制限)

「関税の更正、決定又は再更正は、その関税の法定納付期限等から5年を経過したときは、することができない」

ただし、偽りその他不正の行為によって関税を免れた場合などは、この期間が7年に延長されます。したがって、輸入許可から数年が経過していても、事後調査等によって過去の過誤が遡及して是正される可能性がある点に注意が必要です。

6 更正・決定に伴う加算税(ペナルティ)

税関長によって増額更正や決定が行われた場合、本来の関税額に加えて「加算税」が課されることになります。これは適正な申告を促すための行政罰的な性格を持ちます。

(1)過少申告加算税

申告はあったものの、その額が不足していた場合に課されます。原則として不足税額の10パーセント(一定額を超える部分は15パーセント)が加算されます

(2)無申告加算税

決定が行われた場合、つまり申告がなかった場合に課されます。原則として税額の15パーセント(一定額を超える部分は20パーセント)となります

(3)重加算税

事実を隠蔽または仮装したと認められる場合に、過少申告加算税や無申告加算税に代えて課される最も重いペナルティです。税率は35パーセントから40パーセントと極めて高額になります

7 実務における対応比較表

輸入者が行う訂正手続きと、税関長が行う訂正手続きの違いを整理いたしました。

【関税額の訂正手続比較一覧表】

|項目|修正申告|更正の請求|更正(増額・減額)|決定|

|主体|納税義務者|納税義務者|税関長|税関長|

|時期|税額不足時|税額過多時|調査による誤認時|無申告時|

|性質|自発的な訂正|還付の要請|行政処分|行政処分|

|不服申立|原則不可(※)|可能|可能|可能|

※修正申告は自発的行為であるため、その内容について不服を申し立てることは原則としてできません

8 税関の処分に対する不服申し立て

税関長による更正や決定の内容に納得がいかない場合、輸入者は法的な救済を求めることができます。

(1)再調査の請求または審査請求

処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に、税関長に対して「再調査の請求」を行うか、あるいは財務大臣に対して「審査請求」を行うことができます。これは行政不服審査法に基づく手続きです。

(2)取消訴訟

審査請求に対する裁決を経た後、なお納得できない場合には、裁判所に対して処分の取り消しを求める訴訟を提起することが可能です。

9 弁護士へのご相談をご希望の方へ

税関長による更正や決定の通知が届いた場合、それは貴社の通関実務に重大な法的瑕疵があることを意味します。単に不足税額を支払えば済むという問題ではなく、なぜそのような事態に至ったのかを精査し、将来的なコンプライアンス体制を再構築しなければなりません。

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を保有しております。弁護士としての高度な法的知識と、通関士としての実務的な視点を融合させ、税関の処分に対する適切なアドバイスを提供することが可能です。

「税関の指摘内容が正しいのか判断がつかない」 「重加算税を課されたが、隠蔽の意図はなかったことを主張したい」 「事後調査の段階から専門家のサポートを受けたい」

このような不安をお持ちの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。早い段階で専門家が介入することで、税関との法的な論点整理を円滑に進め、過度なペナルティを回避できる可能性が高まります。

輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。経験豊富な弁護士が、貴社の正当な権利を守るために全力を尽くします。

10 まとめ

更正と決定は、適正な関税の徴収を実現するために税関長に与えられた重要な法的権限です。申告納税方式をとる以上、まずは輸入者自身が正しい申告を行うことが大前提ですが、万が一の誤りに対しては更正という是正措置が用意されています。

一方で、これらの処分を受けることは、加算税の負担や企業イメージへの影響など、小さくないリスクを伴います。関税法第7条の16をはじめとする関係条文を正しく理解し、日頃から正確な納税申告を心がけることが、円滑な貿易ビジネスを継続するための要諦といえます。

本記事の解説が、読者の皆様の輸出入実務における法的理解を深める一助となれば幸いです。複雑な通関トラブルに直面した際は、一人で悩まずに専門家を活用することをお勧めいたします。

更正・決定に関する重要ポイントの再確認

・更正は既にある申告の誤りを税関長が正す処分 ・決定は申告がない場合に税関長が税額を定める処分 ・更正には増額と減額の二種類が存在する ・処分に不服がある場合は、法的な不服申し立てが可能である ・期間制限は原則5年、不正時は7年となる ・加算税などの附帯税リスクに十分注意を払う必要がある

適正な税務処理を通じて、企業の安定した成長を実現していきましょう

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

 

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