Archive for the ‘コラム~通関手続、輸出入トラブル~’ Category
最新の裁判例その3
ECサイトの利用の拡大や副業の推進等により、輸入や輸出に関わる個人、法人は増加傾向にあります。
そこで、本日は、輸入トラブルによって裁判まで発展した事案である、東京地判令和2年9月9日(LLI/DB 判例秘書登載)をご紹介いたします。
1 事案の概要
冷凍肉の米国から日本までの海上運送の荷受人であるXが、運送人であるYに対し、①Yはコンテナ内の温度を華氏0度に設定すべき義務を負っていたにもかかわらず、これを懈怠し5日間にわたり摂氏0度に設定したため、積荷である冷凍肉が損傷したこと、及び②Xとの間で損傷した冷凍肉を米国に返送する旨の合意が成立したにもかかわらず、これに反して当該冷凍肉をXに無断で処分したこと等ろ理由として、不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
①約款上、本件コンテナのような冷凍冷蔵コンテナの温度設定については荷主がその危険及び責任を負担することと定められており、本件船荷証券の表面に特定の温度が記載されている場合であっても、また、運送人又は荷主のいずれが温度設定をしたかにかかわらず、運送人は冷凍冷蔵コンテナ内の温度の維持について保証するものではないとされていたことが認められる。
②そうすると、本件コンテナ内の温度の設定については、荷送人又は荷受人であるXがその危険及び責任を負担しており、Yが本件コンテナ内の温度の設定、維持及び管理をすべき義務を負っていたということはできない。
③Xは、本件コンテナ内の温度の設定に誤りがあったことを受けて、本件コンテナを米国まで返送することを検討していたものと認められるが、X又はBとYとの間において、返送の時期や費用の負担について具体的な協議がされていたことを認めるに足りる証拠はないことなどからすれば、XとYとの間において、本件コンテナの返送に関して具体的な合意がされていたと認めるには足りない。
3 輸出や輸入のトラブルにはご注意ください
輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。
輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。
最新の裁判例その2
ECサイトの利用の拡大や副業の推進等により、輸入や輸出に関わる個人、法人は増加傾向にあります。
そこで、本日は、輸入トラブルによって裁判まで発展した事案である、東京地判令和5年4月27日(LLI/DB 判例秘書登載)をご紹介いたします。
1 事案の概要
Xが、自身が権利を有する商標に関して、Yが類似する商標を付したバックパック、肩掛けかばん、ブリーフケース、旅行かばん、カジュアルバッグ等を輸入、販売し、又は販売のために展示する行為を行っているとして、商標権侵害を理由に損害賠償請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
①商標法38条は、商標権侵害の際に商標権者が請求し得る最低限度の損害額を法定した規定であり、その損害額は、原則として、侵害品の売上高を基準として、実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。
②実施に対し受けるべき料率は、(i)当該商標の実際の実施許諾契約における実施料率や、それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ、(ii)当該商標に蓄積された信用や顧客吸引力の程度、(iii)当該商標を当該商品に使用した場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、(iv)商標権者と侵害者との競業関係や商標権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して、合理的な料率を定めるべきである(知的財産高等裁判所平成30年(ネ)第10063号令和元年6月7日特別部判決参照)
③本件訴訟の審理経過や証拠関係に鑑みると、弁論の全趣旨に照らし、本件における侵害品の売上高は、損益計算書の売上高に、売上高に占める侵害品の割合を乗じて算定することが相当であり、上記売上高に占める侵害品の割合は、被告作成に係る納品書等から算定するのが相当である。
3 輸出や輸入のトラブルにはご注意ください
輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。
輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。
最新の裁判例その1
ECサイトの利用の拡大や副業の推進等により、輸入や輸出に関わる個人、法人は増加傾向にあります。
そこで、本日は、輸入トラブルによって裁判まで発展した事案である、東京地判令和4年9月30日(LLI/DB 判例秘書登載)をご紹介いたします。
1 事案の概要
Xが、海外の企業Aからアルコールジェル製品を購入し、化粧品製造販売業許可を有するYを輸入代行業者として、当該製品を化粧品として輸入した。その後、①同製品には「除菌」と表示されたラベルが添付されているものの、薬機法上化粧品に「除菌」の表示をすることは違法であること、及び②同製品のラベルに表示されたアルコール濃度より実際のアルコール濃度が低いことが発覚したこと。そこで、Xは、Yが薬機法上の義務及び民法の信義則上の義務に違反し、その結果、Xが同製品を販売予定であった顧客からのキャンセルや値引き等の要求に対応しなければならなくなり、損害を生じたとして損害賠償請求を行った。
2 裁判所の判断
①薬機法はあくまで取締法規上の行為規範であって、直ちに不法行為法上の行為義務ないし注意義務を意味するものではない。したがって、薬機法上の義務違反が、直ちに医薬品等を購入した業者に対する不法行為法上の行為義務違反となるものではないというべきである。
②本件商品の瑕疵の内容を見ると、法令上許されない「除菌」という効能の表示がなされた、あるいはアルコール濃度が実際の数値よりも高い表示がなされたということにとどまり、それを使用する者に保健衛生上の危害を及ぼすような、基本的な安全性を欠くものでもなく、その瑕疵の程度は軽微であるうえ、Xの主張する被侵害利益は、結局のところ、法令上あるいは品質上の瑕疵のない商品の引渡しを受ける権利その他の契約上の利益にすぎないのであって、薬機法が想定する保護法益ではない。したがって、Xの主張するYによる薬機法上の義務違反行為は、それ自体あるいは信義則上の義務違反のいずれとしても、不法行為責任を基礎づけるものとは認められない。
3 輸出や輸入のトラブルにはご注意ください
輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。
輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。
知的財産権侵害物品の具体的な差止実績その2
知的財産権の侵害は、独創的な技術やアイデアの発展を損なうものですので、幅広く規制が行われていますが、輸入品が知的財産権を侵害しているとして問題になる場合も多くあります。
本日は、税関が公表した令和5年上半期における知的財産権侵害物品の差止状況についてご紹介いたします。
1 令和5年上半期における知的財産権侵害物品の具体的な差止実績について
税関(財務省)から公表された令和5年上半期における知的財産権侵害物品の具体的な差止実績のうち、どのような製品が実際に差止となっているか、その概要は、以下の通りです。
①輸入差止件数としては、衣類が5,041件(構成比28.1%、前年同期比50.3%増)と最も多く、次に、財布やハンドバッグなどのバッグ類が4,292件(同23.9%、同3.8%増)、携帯電話及び付属品が2,618件(同14.6%、同200.9%増)、靴類が1,931件(同10.8%、同5.7%減)となりました。
②輸入差止点数としては、煙草及び喫煙用具が78,064点(構成比16.7%、前年同期比約758倍)と最も多く、次いで医薬品が62,587点(同13.4%、同10.8%増)、イヤホンなどの電気製品が38,123点(同8.2%、同33.5%減)、衣類が37,474点(同8.0%、同1.4%減となりました。
権利者側としては、自身の権利を侵害する貨物が出回っていないかを常に注意するとともに、もしそのような疑いがある場合には速やかに税関に相談する、差止の申し立てを行う等適切な対応を取り、権利を守っていく姿勢を示すことが重要です。
2 輸出、輸入に関しては様々な法規制がありますのでご注意ください
日本は貿易大国ですが、輸出や輸入に関しては様々な法規制が存在します。
輸出に関しては、外為法を中心に厳格な規制が存在しており、それに反する輸出をすると刑事事件等に発展するリスクがあります。
また、輸入に関しては、基本的には申告納税方式が採用されておりますが、輸入後には輸入事後調査等が存在しておりますので、安易に間違った申告をすることは絶対に避ける必要があります(場合によっては脱税等に該当するリスクもあります。)。
事業として輸出や輸入に従事している以上は、知らなかったでは済まされませんので、自社の事業に関する輸出や輸入に関連した法規制については十分注意する必要があります。
これらの法規制は変更になることも多いので、定期的に自社に関連する法規制を確認いただく必要があることは改めてご留意ください。
なかなか自社で法規制を確認することが難しい場合には、適宜専門家を含めてご相談等いただくことを強くお勧めいたします。
知的財産権侵害物品の具体的な差止実績
知的財産権の侵害は、独創的な技術やアイデアの発展を損なうものですので、幅広く規制が行われていますが、輸入品が知的財産権を侵害しているとして問題になる場合も多くあります。
本日は、税関が公表した令和5年上半期における知的財産権侵害物品の差止状況についてご紹介いたします。
1 令和5年上半期における知的財産権侵害物品の具体的な差止実績について
税関(財務省)から公表された令和5年上半期における知的財産権侵害物品の具体的な差止実績の概要は、以下の通りです。
①輸入差止件数は、偽ブランド品などの商標権侵害物品が14,991件(構成比95.8%、前年同期比25.1%増)で、引き続き全体の大半を占めました。次に、偽キャラクターグッズなどの著作権侵害物品が374件(同2.4%、同5.1%減)でした。
②輸入差止点数は、商標権侵害物品が238,004点(構成比51.0%、前年同期比11.0%減)で、次いで意匠権侵害物品が178,916点(同38.4%、同295.4%増)、著作権侵害物品が41,112点(同8.8%、同44.9%減)でした。
知的財産権侵害物品の差止状況ですが、全体としては年々増加傾向にあるといえます。
知的財産権侵害については、権利者にとっては回復できない損害を与えるものですので、税関としても検査や摘発を厳しく行っているといえますが、問題のある輸入はなかなか減らない現状です。
権利者側としては、自身の権利を侵害する貨物が出回っていないかを常に注意するとともに、もしそのような疑いがある場合には速やかに税関に相談する、差止の申し立てを行う等適切な対応を取り、権利を守っていく姿勢を示すことが重要です。
2 輸出、輸入に関しては様々な法規制がありますのでご注意ください
日本は貿易大国ですが、輸出や輸入に関しては様々な法規制が存在します。
輸出に関しては、外為法を中心に厳格な規制が存在しており、それに反する輸出をすると刑事事件等に発展するリスクがあります。
また、輸入に関しては、基本的には申告納税方式が採用されておりますが、輸入後には輸入事後調査等が存在しておりますので、安易に間違った申告をすることは絶対に避ける必要があります(場合によっては脱税等に該当するリスクもあります。)。
事業として輸出や輸入に従事している以上は、知らなかったでは済まされませんので、自社の事業に関する輸出や輸入に関連した法規制については十分注意する必要があります。
これらの法規制は変更になることも多いので、定期的に自社に関連する法規制を確認いただく必要があることは改めてご留意ください。
なかなか自社で法規制を確認することが難しい場合には、適宜専門家を含めてご相談等いただくことを強くお勧めいたします。
リスト規制と該非判定について
様々な技術革新によって、現代社会は人やモノの行き来がこれまでになく自由に行われている状況です。
しかしながら、そのような中でも国際平和及び安全の観点から、国際的な輸出管理レジームが存在します。
日本ではそのような国際輸出管理レジームを踏まえて独自の安全保障貿易管理制度を設けております。
本日は、その内のリスト規制をご紹介いたします。
1 リスト規制と該非判定の重要性について
リスト規制とは、国際的な合意を踏まえ、武器並びに大量破壊兵器等及び通常兵器の開発等に用いられるおそれの高いものを法令等でリスト化して、そのリストに該当する貨物や技術を輸出や提供する場合には、経済産業大臣の許可が必要になる制度です。
・規制対象の貨物は、「輸出令・別表第1」の 1 項~15 項、
・規制対象の技術は、「外為令・別表」の 1 項~15 項にリスト化され、
・規制対象の貨物や技術の機能や仕様(スペック)は、「貨物等省令」に規定されています。
その為、実務上はリスト規制に該当する貨物や技術に該当するかどうかを判断するために該非判定が非常に重要となります。
この該非判定を慎重にかつ厳格に行わずに間違った対応を取ってしまった場合には、無許可輸出等の違法行為に該当することになってしまいますので十分ご注意ください(該非判定を行う際には、仕入元等にも協力してもらう必要がありますので、輸出の前の製品の製造、購入の段階から適切な取り扱いを行うことが重要です。)。
2 輸出、輸入に関しては様々な法規制がありますのでご注意ください
日本は貿易大国ですが、輸出や輸入に関しては様々な法規制が存在します。
輸出に関しては、外為法を中心に厳格な規制が存在しており、それに反する輸出をすると刑事事件等に発展するリスクがあります。
また、輸入に関しては、基本的には申告納税方式が採用されておりますが、輸入後には輸入事後調査等が存在しておりますので、安易に間違った申告をすることは絶対に避ける必要があります(場合によっては脱税等に該当するリスクもあります。)。
事業として輸出や輸入に従事している以上は、知らなかったでは済まされませんので、自社の事業に関する輸出や輸入に関連した法規制については十分注意する必要があります。
これらの法規制は変更になることも多いので、定期的に自社に関連する法規制を確認いただく必要があることは改めてご留意ください。
なかなか自社で法規制を確認することが難しい場合には、適宜専門家を含めてご相談等いただくことを強くお勧めいたします。
安全保障貿易管理制度
様々な技術革新によって、現代社会は人やモノの行き来がこれまでになく自由に行われている状況です。
しかしながら、そのような中でも国際平和及び安全の観点から、国際的な輸出管理レジームが存在します。
日本ではそのような国際輸出管理レジームを踏まえて独自の安全保障貿易管理制度を設けております。
1 日本における安全保障貿易管理制度について
我が国の安全保障貿易管理制度は、国際輸出管理レジームでの合意を受けて、外為法を含む以下の法令等に基づき実施しています。
①外為法:貨物の輸出と技術の提供の規制を規定。なお、外為法に基づく規制は、『リスト規制』と『キャッチオール規制』から構成されており、これらの規制に該当する貨物の輸出や技術の提供は、経済産業大臣の許可が必要になる点に特徴があります。
②輸出令:規制対象の貨物を規定
③外為令:規制対象の技術を規定
④貨物等省令:規制対象の貨物や技術の機能や仕様を規定
なお、たまにご質問いただくことがありますが、これらの輸出規制は、「輸出しようとする者」が対象となりますので、個人(自然人)についても当然規制は及びます。
たまにこれらの大規模な規制は法人が対象であり、単なる個人に対しては規制が免除されると誤解されている方もおりますので、改めて個人であっても規制対象となる点には十分ご注意ください。
2 輸出、輸入に関しては様々な法規制がありますのでご注意ください
日本は貿易大国ですが、輸出や輸入に関しては様々な法規制が存在します。
輸出に関しては、外為法を中心に厳格な規制が存在しており、それに反する輸出をすると刑事事件等に発展するリスクがあります。
また、輸入に関しては、基本的には申告納税方式が採用されておりますが、輸入後には輸入事後調査等が存在しておりますので、安易に間違った申告をすることは絶対に避ける必要があります(場合によっては脱税等に該当するリスクもあります。)。
事業として輸出や輸入に従事している以上は、知らなかったでは済まされませんので、自社の事業に関する輸出や輸入に関連した法規制については十分注意する必要があります。
これらの法規制は変更になることも多いので、定期的に自社に関連する法規制を確認いただく必要があることは改めてご留意ください。
なかなか自社で法規制を確認することが難しい場合には、適宜専門家を含めてご相談等いただくことを強くお勧めいたします。
国際輸出管理レジーム
様々な技術革新によって、現代社会は人やモノの行き来がこれまでになく自由に行われている状況です。
しかしながら、そのような中でも国際平和及び安全の観点から、国際的な輸出管理レジームが存在します。
このような国際輸出管理レジームの中で主要なものが4つあります。
1 主要な国際輸出管理レジームについて
①NSG(Nuclear Suppliers Group)
核兵器の製造等に使用される可能性のある原材料や技術等の輸出規制を主たる内容としています(輸出令別表第1・外為令別表2の項)。
②オーストラリア・グループ(Australia Group)
核兵器や生物兵器の原材料や技術等の輸出規制を主たる内容としています(輸出令別表第1・外為令別表3の項・3の2の項)。
③MTCR(Missile Technology Control Regime)
大量破壊兵器の運搬に寄与できるミサイルやその他の部分品等の輸出規制を主たる内容としています(輸出令別表第1・外為令別表4の項)。
④ワッセナー・アレンジメント(WA)
地域の安定を損なう通常兵器の過剰な蓄積を防止する目的に原材料等の輸出規制を主たる内容としています(輸出令別表第1・外為令別表5から15の項)。
以上の主要な国際輸出管理レジームについて、日本は全てに参加しておりますが、全く参加していな国、一部にのみ参加している国等も多数存在しておりますので、世界で共通のレジームとなってまではいないというのが実情です。
2 輸出、輸入に関しては様々な法規制がありますのでご注意ください
日本は貿易大国ですが、輸出や輸入に関しては様々な法規制が存在します。
輸出に関しては、外為法を中心に厳格な規制が存在しており、それに反する輸出をすると刑事事件等に発展するリスクがあります。
また、輸入に関しては、基本的には申告納税方式が採用されておりますが、輸入後には輸入事後調査等が存在しておりますので、安易に間違った申告をすることは絶対に避ける必要があります(場合によっては脱税等に該当するリスクもあります。)。
事業として輸出や輸入に従事している以上は、知らなかったでは済まされませんので、自社の事業に関する輸出や輸入に関連した法規制については十分注意する必要があります。
これらの法規制は変更になることも多いので、定期的に自社に関連する法規制を確認いただく必要があることは改めてご留意ください。
なかなか自社で法規制を確認することが難しい場合には、適宜専門家を含めてご相談等いただくことを強くお勧めいたします。
前払金と輸入申告価格の考え方について
1 前払金と輸入申告価格について
輸入業を行う場合、売買代金の送金等に時間が掛かることから、一定額を前払金(デポジット等という場合もあります)として送金しておき、実際の売買代金に充当するという対応を取る場合も相当程度ございます。
例えば、前払金として100万円を送金しておいて、実際の商品価格が150万円である場合、取引の際には、前払金100万円を充当し、商品代金として50万円のみを新たに支払った場合、輸入申告価格としては、150万円と50万円のいずれとして取り扱う必要があるでしょうか。
関税定率法等の法令上は、「現実支払価格」といった専門的な用語がでてきますので、なかなか理解が難しい面もありますが、要するに、輸入する商品のために買手側がいくら支出することになったのか、ということをベースに考えることになります。
そうしますと、実際に商品のために買手が支払った金額として前払金100万円と商品代金としての50万円の合計150万円となりますので、適正な輸入申告価格としては150万円をベースに考えることが必要となります。
インボイスに商品代金としていくらと記載されているかどうかということは、輸入申告価格を検討する際には重要な要素の一つとはなりますが、あくまでも要素の一つであり、インボイスにいくらと記載されているから輸入申告価格もインボイス上の価格と同じはずだということには必ずしもなりませんので、十分注意が必要です。
2 輸入申告価格の算定にはご注意ください
貨物の輸入や輸出に関するルールは、関税法や関税定率法、これらの通達等に詳細に規定されておりますが、なかなか一般的には理解が難しい点も多く、知らずに輸出入を行うと追徴課税を含む様々なペナルティを課されてしますリスクがございます。
無事に輸出入できているのだから問題ないだろうと考え、これらのルールを軽視することは非常に危険であり、中長期的には大きなしっぺ返しを受けるリスクが非常に高いと言わざるを得ません。
例えば、輸入する貨物のライセンス料を輸出者側等に支払っている場合には、当該ライセンス料については、課税価格に加算しなければならず、加算せずに輸入申告を行う場合には、過少申告となり、事後的に追徴課税が行われることとなります。
他にも、輸出入特有の規制は多数ありますので、可能であれば、輸出入を継続的に行う最初の段階で事業計画が法的に問題ないかどうかをリーガルチェックすることをお勧めいたします。
最初の段階できちんとした体制を整備しておくことで、事業を中長期的に円滑に進めることが可能となります。
弊事務所は、税関事後調査を含む税関対応や輸出入トラブルを中心に企業法務を幅広く扱っておりますので、お困りの点等ございましたら、まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
買手が売手の債務の一部を肩代わりした場合の輸入申告価格について
1 買手が売手の債務の一部を肩代わりした場合の輸入申告価格
継続的な取引関係がある場合にはたまにあることではありますが、迅速、円滑な取引のために債権債務を相殺等して実際にやり取りする代金を増減させるという対応が行われております。
例えば、売買代金としては100万円だが、売主が買主に対して有するその他の債務40万円分を相殺させ、60万円のみを売買代金として買主が売主に対して支払うということが行われることがあります。
このような場合、買主が売主に対して支払う金額は60万円にとどまることから、輸入申告価格としては60万円として申告して問題ないでしょうか、それとも実際の売買代金は100万円である以上、100万円を輸入申告価格として取り扱うべきでしょうか。
結論としては、実際の売買代金が100万円である以上は、100万円を輸入申告価格として取り扱うことが必要です。
仮に、インボイス等の書類上の数字を調整したとしても、実際の商品の価値が100万円である場合には100万円を商品価格として取り扱う必要がある点には十分ご注意ください。
2 輸入を継続的に(業として)行う場合には、様々な規制にご注意ください
貨物の輸入に関する規制は、主として関税法や関税定率法等に規定されておりますが、なかなか通常の感覚では理解できない部分も多いといえます。
上記1の説明内容についても、通常の感覚では、輸入申告価格は、単に商品価格を申告すればよいのではないか、と考えるところですが、なかなか正確な理解はむずかしいといえます。
この他にも、例えば、貨物の輸入の際に、何らかのロイヤリティを売手や第三者に対して支払う場合、当該ロイヤリティについては、輸入申告価格に加算しなければならないというのが原則であり、加算せずに輸入申告を行う場合には、過少申告となり、事後的に刑事罰や追徴課税が行われることとなります。
他にも、輸入特有の規制は多数ありますので、可能であれば、輸入を継続的に行う最初の段階で事業計画が法的に問題ないかどうかを事前にリーガルチェックすることをお勧めいたします。
また、もし既に輸入を開始しているという場合には、一度ビジネスの仕組みが問題ないかどうかを確認いただくことをお勧めします。
弊事務所は、税関事後調査を含む税関対応や輸出入トラブル、広告関連法務を中心に企業法務を幅広く扱っておりますので、お困りの点等ございましたら、まずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
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