Archive for the ‘コラム~通関手続、輸出入トラブル~’ Category

原産地証明書の不備でFTA適用が否認された~形式ミスが命取りに~

2025-10-18

FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を活用することで、本来かかる関税をゼロにできる。この魅力から、FTA制度を利用した輸入は年々増加していますが、その一方で「原産地証明書の不備」により特恵関税が適用されず、追徴課税されてしまったという事例も少なくありません。

今回は、形式的な記載ミスでFTA適用が否認された実例をもとに、輸入者が注意すべきポイントを解説いたします。

 

1 実例:日EU・EPAの特恵申請が否認されたケース

ある企業は、EUから輸入した繊維製品について、日EU・EPAに基づく0%関税の適用を受けようとしました。

提出した原産地証明書は、輸出者による自己申告方式の原産地声明(Statement on Origin)でしたが、以下のような形式不備がありました。

①文書に必要な定型文言が一部抜けていた

②日付欄が記入されていなかった

③商品明細と証明書の記載内容にズレがあった

この結果、税関は「証明書としての要件を満たさない」と判断し、特恵関税の適用を否認。通常税率(10.9%)が適用され、加算税付きで追徴課税が行われてしまいました。

 

2 よくある原産地証明の不備例

①日付・署名・文言が欠落している

②証明書とインボイスでHSコードや品目名が一致しない

③原産地基準が記載されていない、または間違っている

④コピーやスキャンデータが不鮮明

こうした形式不備は、「悪意がない」場合でも無効とされる可能性が高く、結果として高額な追徴課税が課される事例もあります。

 

3 輸入者が取るべき実務対応

①仕入先(輸出者)に対して、証明書の記載方法を明確に指示

②受領した証明書は、輸入前に社内での内容チェックを徹底

③商品と証明書の内容(品名・数量・価格)を照合・記録保存

④複数ロット・複数商品に共通の証明書を用いる場合の整合性確認

⑤不明点があれば、税関や専門家へ事前確認を依頼

また、定期的に原産地証明に関する社内研修やチェックリスト整備を行うことも、トラブル予防に有効です。

 

FTA/EPAの活用はコスト削減に直結しますが、原産地証明書の不備によって「制度を使ったつもりが使えていなかった」という事態は決して珍しくありません。

形式ミスひとつで大きな損失につながるからこそ、証明書の確認と社内管理体制の構築が不可欠です。

当事務所では、FTA・EPAの活用支援、原産地証明書のレビュー、税関からの指摘対応まで一貫してご支援しております。ご不安な際はお気軽にご相談ください。

 

HSコードの違いで税率が3倍に!?~分類ミスによるリスクと事前教示の活用~

2025-10-13

「同じ商品なのに、税関から『これは別の分類になる』と指摘され、関税率が3倍に引き上げられました…」

これは実際にあった、HSコード(関税分類)のミスによって大きな追徴課税を受けた事例です。

今回は、関税分類の誤りが招くリスクと、トラブルを未然に防ぐ「事前教示制度」の活用法を解説いたします。

 

1 HSコードとは?

HSコード(Harmonized System Code)は、国際的な商品の分類番号です。

日本では「関税率表」に基づき、6桁(国際共通)+3桁(国内)=合計9桁で構成され、これにより関税率・輸入規制の対象が決まります。

輸入申告の際には、正確なHSコードを付けて申告しなければなりません。

 

2 なぜ分類ミスが起きるのか?

①商品が技術的に複雑で、分類基準が曖昧

②類似商品との線引きが難しい

③過去の申告を踏襲しており、根拠の再確認がされていない

④通関業者に任せきりで、社内で分類根拠を把握していなかった

分類は、税関がインボイスやカタログだけで判断するとは限らず、実物の構造や機能に基づくため、申告者側の理解と準備が重要です。

 

3 事前教示制度の活用

税関では、申告前に「この商品はどのHSコードに該当するのか?」を確認できる事前教示制度を提供しています。

申請時には以下の情報を添付します。

①製品写真・仕様書・図面・カタログ

②用途・構成部品・販売方法等の説明

③必要に応じてサンプルの提出

教示の内容は文書で通知され、一定期間有効な税関の判断として活用可能です。これにより、申告時のリスクを大きく下げられます。

 

4 実務対応のポイント

①商品ごとに社内で分類根拠台帳(HSコード、関税率、過去申告実績)を整備

②新製品や仕様変更時には、必ず再確認を実施

③通関業者任せにせず、輸入者として自ら分類を把握・理解

④分類が不明確な場合は、早めに事前教示を依頼

⑤誤りが判明した場合は、修正申告の要否とリスクを弁護士等に相談

 

HSコードの誤りは、関税額の大幅な変動や加算税の対象となるリスクを含んでいます。

「なんとなくこれでいいだろう」という感覚的な申告ではなく、分類の根拠とルールに基づく判断を徹底することが、税関トラブルを防ぐ第一歩です。

当事務所では、HSコードの分類判断、事前教示の申請支援、税関との見解対立時の対応など、幅広くご支援しております。分類に不安がある場合は、お気軽にご相談ください。

 

インボイスの記載ミスで申告価格が否認された!

2025-10-08

ある日、税関からの連絡でこう告げられました。

「申告されたインボイスの価格が実際の支払価格と一致しておらず、課税価格として認められません」

これは、ある中小輸入業者が取引先から受け取ったインボイスの誤記に気付かないまま申告を行った結果、税関から関税評価の否認と追徴課税を受けた事例です。

今回はこの実例をもとに、インボイス記載ミスのリスクと実務対応の要点を解説します。

 

1 インボイスのどこが問題だったのか?

問題となったインボイスには、以下のような誤りが含まれていました。

①実際の契約価格よりも10%安い価格が記載されていた

②商品の型番が一部省略されており、申告品目との整合性が取れなかった

③通貨の単位(USDとHKD)の記載が混在していた

このままの内容で輸入申告を行ったため、税関は「実際の支払価格とは異なる虚偽の価格で申告された」と判断し、課税価格が否定されました。

 

2 関税評価への影響とは?

関税法上、輸入申告の評価は「実際に支払った、または支払うべき価格(現実支払価格)」を基準にします。

インボイスがその根拠資料となるため、金額や商品名、条件等の誤記があると、評価の信頼性が損なわれることになります。

 

3 なぜミスが見過ごされたのか?

①海外サプライヤーが作成したインボイスをそのまま使用

②社内での価格確認や内容チェックのフローが未整備

③輸入担当者が英語表記や通貨表示に不慣れだった

こうした体制の弱さが、結果的に重大な税関トラブルへとつながったのです。

 

4 実務での防止策

以下のような対応でリスクを軽減できます。

①インボイスの内容(価格・通貨・数量・品目)と契約書を突き合わせて確認

②通関前に、会計部門・仕入担当とのクロスチェックフローを設定

③インボイスのひな形や記載ルールについて、取引先と明文化しておく

④インボイスに疑義がある場合は、修正依頼か補足文書(サイドレター)を用意

加えて、税関とのトラブルを防ぐため、必要に応じて事前教示制度(HSコードや関税評価の照会)を活用するのも有効です。

 

インボイスは輸入取引における『生命線』ともいえる書類です。

わずかな記載ミスでも、税関からの評価否認や追徴課税につながる重大なトラブルとなりかねません。

「単純な誤記」が命取りにならないよう、社内チェック体制と仕入先との明確なルールづくりを意識しておくことが大切です。

当事務所では、税関トラブル予防のための書類チェック体制構築や、インボイストラブル対応のアドバイスも行っております。ご不安な方はお気軽にご相談ください。

 

申告価格の修正申告をすべき場合・しない方がいい場合

2025-09-28

輸入申告を行った後、「あの価格は正しかったのか?」、「ロイヤルティや無償供与を入れるべきだったのでは?」と不安になることもあるかと思います。

こうしたケースでは、修正申告(いわゆる自主的な申告訂正)を検討することになりますが、すべき場合と慎重に検討すべき場合があるため注意が必要です。

今回は、修正申告の判断基準と、実務上の対応ポイントについて解説いたします。

 

1 修正申告とは?

輸入申告後に申告内容に誤りがあったことが判明した場合、輸入者はその旨を税関に申告し、修正することができるとされています。

特に、課税価格や数量に誤りがあった場合に用いられる制度で、税関から指摘を受ける前に自ら訂正することで、加算税が軽減または免除される可能性があります。

 

2 修正申告をすべき典型的なケース

以下のような場合には、速やかに修正申告を行うことが推奨されます。

①課税価格にロイヤルティ、無償供与などの加算要素を含めていなかった

②インボイス価格の誤記や入力ミスがあった

③関税評価の基礎となる契約が事後的に変更された(値引き取消等)

④HSコードに誤りがあり、関税率が過小適用されていた

これらは明確なミスであり、事実関係が整理できる場合が多く、自主的な修正が有効です。

 

3 修正申告を慎重に検討すべきケース

一方で、以下のようなケースでは、即座に修正申告せず、専門的判断を要する場合があります。

①制度解釈に争いがある場合(例:ロイヤルティの加算該当性)

②FTA適用の有無について、原産地判断が微妙な場合

③税関との見解の相違があるまま調査中である

④間違いがあることは理解できるが、資料がそろっておらずどのような間違いか正確には把握できていない

 

4 修正申告の実務手続き

修正申告を行う際は、以下のような手順で対応します。

①関係書類(インボイス、契約書、支払記録等)を再確認

②修正内容を記載した申告書(修正申告書)を作成

③税関に提出し、追納すべき税額を計算・納付

④税関からの照会に備えて、説明文書を添付することが望ましい

 

修正申告は、制度上認められた重要なリスク回避手段です。
ただし、「すべき場合」と「慎重に検討すべき場合」があるため、内容の法的評価と実務的影響を見極めた上での判断が不可欠です。

当事務所では、修正申告の要否判断、税関との交渉支援、説明書作成、税務リスクの分析までトータルで対応しております。お困りの際は、ぜひご相談ください。

FTA/EPA活用の実務と原産地証明の落とし穴

2025-09-23

輸入ビジネスにおいて、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を活用することで、関税の減免や関税フリーの恩恵を受けることができます。

しかし、制度の内容や証明方法を正しく理解していないと、原産地証明の不備などにより関税免除が無効となり、追徴課税の対象となるリスクもあります。

今回は、FTA/EPAの活用における実務のポイントと、原産地証明に関する注意点を解説いたします。

 

1 FTA/EPAとは?

FTAやEPAは、特定の国・地域間で締結される協定であり、協定対象国からの輸入品については、一定の条件を満たせば関税が減免またはゼロになる制度です。

 

2 原産地要件を満たさないと適用不可

関税の特恵を受けるためには、原産地要件を満たす必要があります。

これは、「その商品が本当に協定対象国で生産されたものかどうか」を示す要件であり、主に以下のような方式があります。

①完全生産品(該当国ですべて生産されたもの)

②原材料の一定割合が域内産であること(原産割合基準)

③関税分類の変更(CTCルール)

④加工工程の実質的変更(付加価値基準)

原産地要件は商品ごとに異なり、HSコードや協定内容に応じた確認が不可欠です。

 

3 原産地証明書の形式と注意点

協定により、原産地証明書の取得方法が異なります。

第三者証明方式、自己申告方式等、協定に基づいた証明書が必要となります。

記載ミス、期限切れ、不備があると特恵関税は適用されません。

 

4 税関調査での指摘事例

FTA/EPAを利用した輸入については、後日、税関の事後調査により次のような指摘を受けることがあります。

①証明書の内容と実際の商品仕様が一致していない

②原産地規則に照らして条件を満たしていない

③証明書の発行者が認定されていない(偽証明)

④製造工程の説明資料がなく、原産性を証明できない

これにより、追徴課税+過少申告加算税が発生する場合もあります。

 

5 実務対応のポイント

①協定ごとの適用要件・証明書式を事前に確認

②輸出者からの製造工程表・原材料構成の入手

③原産地証明書の写し・作成経緯を保存(5年間以上)

④自己申告方式の場合は、社内での原産地判定手順を文書化

⑤不明な点は、税関で事前確認を実施する

特に、初めてFTA/EPAを活用する場合は、専門家のレビューを受けることがリスク回避に有効です。

 

FTA/EPAを活用することで、関税コストを大幅に削減できますが、適用要件や原産地証明に対する理解不足は、却って追徴リスクを招くおそれがあります。

正確な制度理解と証明書の整備を通じて、安心して制度を活用しましょう。

当事務所では、FTA/EPAの活用支援、原産地証明のレビュー、税関対応まで一括で対応可能です。ぜひご相談ください。

 

輸入販売におけるPL法リスクと回避策

2025-09-13

海外から仕入れた商品を日本国内で販売する場合、たとえ製造していなくても、輸入者が製造物責任(PL)を問われる可能性があることをご存じでしょうか?

製造物責任法(いわゆる「PL法」)により、製造者だけでなく、輸入者や販売者にも法的責任が及ぶケースがあるため、注意が必要です。

今回は、輸入販売におけるPL法のリスクと、それに対する予防策をわかりやすく解説いたします。

 

1 PL法とは?

製造物責任法は、欠陥のある製品により消費者が生命・身体・財産に被害を受けた場合に、製造業者等が損害賠償責任を負うことを定めた法律です。

「過失の有無にかかわらず責任が発生する」という点が、通常の債務不履行や不法行為責任と異なる特徴です。

 

2 輸入者にも責任が及ぶ?

PL法第2条3号では、「製造業者等」に以下のような者が含まれると規定されています。

①製造業者・加工業者

②製造業者として商品に氏名・商号・商標等を表示した者

③輸入した製造物を業として譲渡する者

つまり、輸入販売を行う企業は、外国の製造者に代わって責任を負う立場にあるのです。

被害者から見て、「誰が製造したのか分からない」場合でも、輸入者が明確であれば、その者が製造物責任を問われます。

 

3 想定されるPLリスクの事例

①海外製の電化製品が発火し、火災被害が生じた

②化粧品やサプリメントで肌荒れ・アレルギー等の健康被害が出た

③ベビー用品の破損により乳児が負傷した

④誤表示・誤組立により使用中に事故が発生した

いずれも、欠陥(設計上の問題、製造ミス、警告不足等)が認定されれば、輸入者が損害賠償を請求されることになります。

 

4 回避策:契約で責任分担を明記する

仕入先との契約書には、以下の条項を盛り込むことでリスク移転が可能です。

①製品に欠陥があった場合の損害賠償責任の負担明記

②製造者による保険加入の義務付け

③日本国内での販売に適合する品質基準や規格遵守の確認

④製造元の情報・工程・素材等の開示義務

英語での契約書でも、PL条項(Product Liability Clause)を適切に盛り込むことで、将来的なトラブルに備えることができます。

 

輸入販売においては、「製造していないから責任はない」という認識は通用しません。
万一の事故に備え、契約、検査、保険、表示の4点を柱としたPLリスク管理を徹底することが、事業継続の要となります。

当事務所では、輸入販売に関する契約書チェック、PL条項の見直し、事故発生時の対応まで幅広く対応可能です。リスク管理の強化をご検討の方は、ぜひご相談ください。

 

課税価格における『無償供与』の取り扱いと加算要素

2025-09-08

関税評価において、輸入価格(課税価格)の計算は単にインボイス金額だけでは完結しません。

特に重要な論点の一つが、輸入者が輸出者に無償または安価で提供した物品・サービス(無償供与)です。これは、関税評価において「加算要素」として申告価格に加えなければならないケースがあります。

今回は、無償供与とは何か、どのような場合に加算が必要か、具体的な実務上の取り扱いについて解説します。

 

1 無償供与とは?

無償供与とは、輸入者が輸出者に対して提供する以下のような物やサービスを指します。

①製造に必要な部品・材料

②金型・型枠・試作品

③設計図・技術資料

④技術指導・役務提供など

これらが無償または実費程度の対価で提供されたにもかかわらず、最終的な輸入品の価格に反映されていない場合、関税評価上の「取引価格」に加算しなければなりません。

 

2 なぜ加算が必要なのか?

関税評価の原則は「輸入取引における実質的な経済的価値を反映した価格」を基準にすることです。

無償供与がある場合、それを考慮しないと「安く仕入れているように見える」だけで、本来支払うべき正当な価値より低く課税されてしまうため、調整が求められるのです。

 

3 加算すべき典型例

①日本の輸入者が、海外工場に自社製の金型を送って製造させた

②図面や設計情報を無償提供して、その指示に従って製造が行われた

③無償提供した電子部品を組み込んだ完成品を輸入した

④技術者を海外に派遣して製造工程を管理・監修した(役務供与)

これらの「提供価値」が関税評価に含まれていなければ、税関から追徴対象とされる可能性があります。

 

4 評価額の算定と配分

無償供与分の加算額は、提供物・役務の実際の価額(取得価格)をベースに算定されます。

ただし、輸入品が多数にわたる場合は、個々の商品に適切に按分して評価する必要があります。

例:1,000万円の金型を使って10万個の商品を製造・輸入 → 1個あたり100円の加算

この按分方法については、税関と事前に協議・教示を受けることが推奨されます。

 

無償供与は見落とされやすい関税評価のリスク項目です。輸入者が意図せず申告価格を過少にしてしまい、税関からの追徴や加算税の対象になることもあります。

実際の提供価値を正しく反映させることで、適正な申告と法令遵守が実現されます。

当事務所では、無償供与の該当性判断、加算評価の方法、税関対応まで一貫して支援しております。評価に不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

商品の模倣品・偽物を輸入してしまった場合

2025-09-03

海外から商品を輸入したところ、実はそれが模倣品(偽物)だった、このようなトラブルは、輸入ビジネスにおける重大なリスクのひとつです。

知らずに輸入したとしても、法的責任やブランド権利者からの差止・損害賠償請求に発展する可能性があるため、迅速かつ慎重な対応が求められます。

今回は、模倣品を輸入してしまった場合の法的整理と、現実的な対処法について解説いたします。

 

1 模倣品・偽物とは何か?

模倣品とは、商標権や意匠権、著作権などの知的財産権を侵害する商品を指します。

特に以下のようなケースが典型例です。

①ブランドロゴを無断使用したバッグや衣類

②キャラクター画像を印刷したグッズ

③有名メーカー品と外観・機能が酷似した家電製品

見た目が「そっくり」でも、正式なライセンスや製造許可を得ていない場合は、権利侵害と判断される可能性が高くなります。

 

2 税関での差止とその影響

模倣品は、税関での輸入差止の対象となります。

差止が行われると、輸入者には以下の通知が届きます。

①知的財産権侵害物品の確認通知書

②意見書・証拠資料の提出依頼(期限付き)

この段階で何も対応しない場合、商品は没収または廃棄処分となり、関税・消費税も返還されない可能性があります。

 

3 「知らなかった」では済まされない

輸入者が「偽物とは思わなかった」、「海外では普通に流通していた」と主張しても、法的には通用しない場合がほとんどです。

特に、以下のような状況では、過失があったとされ、損害賠償請求や刑事罰の対象となることもあります。

①著名ブランドと酷似していることが一目で分かる

②サンプル品や画像だけで大量発注した

③異常に安価な価格設定だった

 

4 実務上の対応フロー

模倣品疑いの通知が届いた場合は、次のように対応します。

①商品の正当性の確認

契約書、インボイス、メーカーの許諾証明などを確認・収集します。

②権利者との連絡

正規品であると主張できる場合は、ブランド権利者やライセンシーと直接連絡を取り、輸入許可や和解交渉を行います。

③税関への意見書提出

弁護士等のサポートを受け、期限内に資料と主張を整えて提出します。

④廃棄・返送の決断

正規性を証明できない場合は、商品を返送または自発的に廃棄する判断も重要です。

 

模倣品を輸入してしまった場合、「知らなかった」「悪気はなかった」では済まされません。
輸入者としての責任を問われる可能性があるため、初期対応の正確さと、仕入先・契約内容の慎重な管理が極めて重要です。

当事務所では、模倣品差止対応、権利者との交渉、損害対応、契約レビューなどを専門的にサポートしております。お困りの際は、お早めにご相談ください。

詐欺業者からの仕入れと損害回収の可否

2025-08-29

輸入ビジネスでは、インターネットを通じて簡単に海外業者と取引ができるようになった反面、詐欺的な業者との取引による被害も増加しています。

「代金を支払ったのに商品が届かない」、「粗悪品や全く異なる商品が送られてきた」などのケースでは、損害回収が可能なのかどうかが大きな関心事となります。

今回は、詐欺的業者との輸入取引において、法的にどのような対応が可能か、そして損害回収の現実的な可能性について解説します。

 

1 詐欺的取引の典型例

以下のようなケースは、実務上しばしば確認される詐欺的な取引パターンです。

①海外のB2Bサイトで見つけた業者に前金を振込後、音信不通になる

②契約書を交わさず口頭やメールだけで取引開始し、商品が届かない

③正規ブランド品と信じて注文したら、粗悪な模倣品だった

④インボイスと異なる品物が届いたが、返品も交換も応じてもらえない

特に、中国・東南アジア・中東などの業者との初回取引において、このようなトラブルが多く報告されています。

 

2 詐欺被害に該当するかの判断基準

日本の刑法上の「詐欺罪」に該当するためには、以下の要件が必要です(刑法第246条)。

①相手方に虚偽の事実を述べさせるなどして錯誤に陥らせた

②その錯誤により財産的利益を得た(例:代金を騙し取った)

③故意(騙す意図)が認められる

ただし、民事上の「契約不履行」や「債務不履行」に該当する場合も多く、詐欺であることを立証するのは難しい場合もあるため、実務では損害賠償請求との併用が検討されます。

 

3 被害発生時の対応と証拠保全

被害に気づいた時点で、以下の対応を速やかに行いましょう。

①メール・チャット履歴、契約書、インボイス、支払証明書などを保存

②発送されなかった商品について、運送会社・税関への確認を行う

③海外業者との連絡内容を記録し、再交渉の試みを文書で残す

④可能であれば、現地代理人や大使館・JETRO等を通じた現地調査も検討

証拠を的確に収集しておくことが、損害回収や訴訟提起の際に極めて重要となります。

 

4 予防策:契約・調査・決済方法の工夫を

①契約書に管轄裁判所・準拠法・仲裁条項を必ず明記する

②初回取引では信用調査(過去実績、口コミ、JAPANブランド登録等)を行う

③決済は信用状(L/C)やエスクローサービス、後払条件などリスク分散を図る

④少額サンプル取引を経てから本格的な取引に進む

 

海外業者との取引で詐欺被害に遭った場合、損害回収の道は簡単ではありませんが、証拠保全と専門家の助言によって可能性を広げることはできます。

また、契約段階からのリスク管理が最大の防止策となります。

当事務所では、海外取引の契約チェック、トラブル発生時の交渉・訴訟、詐欺対応の相談まで幅広く対応しております。ご不安な点がある方は、早めにご相談ください。

 

仕入価格と申告価格の乖離が問題視される理由

2025-08-09

輸入ビジネスにおいて、商品の仕入価格と税関への申告価格が異なることは実際問題として珍しくありません。

しかし、この「乖離」があると、税関から「過少申告ではないか」、「正しい関税評価がなされていないのではないか」と疑念を持たれ、税関調査の対象や追徴課税の原因となるおそれがあります。

本記事では、仕入価格と申告価格の乖離がなぜ問題になるのか、その法的根拠と実務上のリスク、対策について解説します。

 

1 関税評価の基本ルールとは?

関税評価とは、関税を課す基礎となる価格(=課税価格)を算定する手続です。

原則として輸入取引で実際に支払ったまたは支払うべき価格が課税価格の基本となります(いわゆる現実支払価格)。

ただし、その取引価格に「加算すべき要素(ロイヤルティ、無償供与部材など)」がある場合には、それらも含めて関税評価されることになります。

 

2 「仕入価格」と「申告価格」が一致しない原因とは?

実務上、両者が乖離する原因にはいくつかのパターンがあります。

①複数のインボイスが存在する(プロフォーマと商業インボイス)

②値引きやリベートが実際に存在するが、申告価格に反映されていない

③輸送費・保険料等が申告に含まれていない

④サンプル品・無償品を有償価格と一緒に申告している

⑤グループ企業間で取引価格が調整されている

これらは意図的な不正でなくても、税関にとっては「価格の妥当性に疑義がある」対象として調査の引き金になるのです。

 

3 税関が問題視するポイント

税関は以下のような観点から乖離をチェックします。

①同種・類似品と比べて著しく価格が低い

②系列会社・関連会社間取引で価格調整が疑われる

③価格変更の理由が不明確

④過去の申告価格と継続性がない(急に下がっている)

こうした事案では、関税評価ルールに基づき「取引価格以外の方法(類似価格法、再販売価格法等)」により再評価され、追徴課税が行われる可能性があります。

 

4 問題を防ぐための社内チェックポイント

以下のような対策が、税関調査での指摘リスクを軽減します。

①インボイス・契約書と実際の送金額の整合性確認

②ロイヤルティや役務提供費用が含まれていないかのチェック

③同種品目の価格一覧の整備(平均単価管理)

④関連会社取引については移転価格文書の整備も検討

⑤変更があった場合は理由や経緯を記録・説明できるように

「なぜこの価格で輸入しているのか?」という説明責任を果たせる資料の準備が鍵になります。

 

仕入価格と申告価格が乖離していると、税関から不適正な申告と疑われ、調査や追徴課税のリスクが高まります。

申告価格の妥当性を支える証拠を日頃から整備し、取引の透明性を確保することが重要です。

当事務所では、価格評価リスクの診断、税関との交渉、修正申告や異議申立てまで、専門的に対応しております。価格関連で不安をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

 

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