Archive for the ‘コラム~人事労務・労使トラブル~’ Category

雇用保険における保険給付の種類

2021-05-02

本日は、雇用保険の保険給付の種類について、ご紹介いたします。
代表的な保険給付としては、大要、①求職者給付、②就業促進給付、③教育訓練給付、④雇用継続給付、⑤育児休業給付があります。
以下、ご紹介いたします。

 

1 求職者給付

被保険者が失業状態にある場合に、失業者の生活の安定化と求職活動の容易化のために支給される給付を指します。
具体的には、基本手当、技能習得手当、寄宿舎手当、傷病手当、高年齢求職者給付金等があります(雇用保険法13条から34条、36条から54条)。

 

2 就業促進給付

基本手当の受給者について、再就職が決まり、一定の要件を充足した時に支給を受けることができる給付を指します。
具体的には、就業手当、再就職手当、就業促進定着手当等です(雇用保険法56条の3第1項)。

 

3 教育訓練給付

一定の条件を満たす雇用保険の一般被保険者、又は被保険者であった者(離職後1年以内)が厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を修了した場合には、その受講料の一定の割合が支給されることになる給付を指します(雇用保険法60条の2)。

 

4 雇用継続給付

雇用を継続している被保険者に、一定の理由がある場合に支給される給付のことを指します。
具体的には、高年齢雇用継続給付(雇用保険法61条)、介護休業給付(雇用保険法61条の4)等です。

 

5 育児休業給付

1歳(一定の場合には1歳2か月又は1歳6か月又は2歳)に満たない子を養育するための育児休業を取得し、育児休業期間中の賃金が休業開始時の賃金と比べて80%未満に低下した等、一定の要件を満たした被保険者に支給されることになります(雇用保険法61条の6等)。

 

6 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

債権法改正に伴う労働基準法の改正について

2021-04-30

民法のうち債権法部分の改正が行われたこと(2020年4月1日施行)は、ニュースでも頻繁に取り上げられておりましたので、多くの方がご存知であるものと思われます。
このような債権法改正に伴い、労働基準法も一部改正となりました。

そこで、本日は、労働基準法の代表的な改正点をご紹介いたします。
ただし、以下の1から3については、いずれも当分の間、経過措置が設けられている点には注意が必要です。

 

1 賃金請求権の消滅時効期間について

賃金請求権の消滅時効期間が2年から5年に延長されました。
また、事項の起算点は、請求権を行使することができる時であることが明記されました(労働基準法115条の改正)。

 

2 付加金の請求期間について

付加金を請求できる期間(除斥期間)が2年から5年に延長されました(労働基準法114条但書の改正)。
なお、付加金とは、労基法上の割増賃金等について未払いがある場合に、労働者の請求によって、裁判所が、使用者に対して、未払金と同一額の支払いを命じることができるものである。

 

3 労働者名簿等の保存期間

労働者名簿、賃金台帳及び雇い入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類の保存期間が3年から5年に延長されました(労働基準法109条の改正)

 

4 弁護士へのご相談をご希望の方へ

債権法改正に伴う労働基準法の改正にとどまらず、昨今の働き方改革や社会全体の変化に伴い、様々労働関連法制が成立、修正されております。
労働関連法制の内容を逐一把握し、適切に対応していくことが望ましいところですが、現実的には、なかなか企業が独力で行うことは難しいといわざるを得ません。

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

業務上疾病における業務遂行性と業務起因性について

2021-04-24

労災として認定される業務上疾病といえるためには、業務と疾病との間に因果関係が認められることが必要です。
そして、この因果関係は、業務遂行性と業務起因性の2段階に分けて考えることが一般的です。
様々な論点があるトピックではありますが、本日は、業務遂行性及び業務起因性の概要をそれぞれご説明いたします。

 

1 業務遂行性について

業務上疾病の場合において、業務遂行性の判断は、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配管理下にある状態であったかどうかが分水嶺となります。
すなわち、業務上疾病は、労働者が労働の場において、業務に内在する様々な有害因子に暴露して引き起こされるものといえる必要があり、これらの有害因子を受ける危険にさらされている状態が認められる場合には、業務遂行性が認められることになります。

よく勘違いされやすいところなのですが、この業務遂行性は、労働者が事業主の支配管理下にある状態において疾病が発症することを意味しているものではなく、事業主の支配管理下にある状態において有害因子に暴露していることを意味しております。
したがって、例えば、労働者が事業主の支配管理下において心筋梗塞を発症した場合、その発症原因と認められるような業務上の理由が認められない限り、当該心筋梗塞と業務との間には業務遂行性が認められないということになります。

また、この点の裏返しの話ではありますが、事業主の支配管理下を離れた場合における発症であっても、業務上の有害因子への暴露によるものと認められる限り、当該疾病と業務との間には業務遂行性が認められる点にも注意が必要です。

 

2 業務起因性について

労働者が発症した疾病について、①労働場所における有害因子の存在、②有害因子への暴露条件、③発祥の経過及び病態、の3要件が充足される場合には、原則として業務起因性が認められることになります。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

労災申請は、申請の検討段階において専門的な判断を踏まえて慎重に行う必要がある他、申請の手続き面も相当程度の煩雑さがある等、相当程度のハードルがある作業といえます。
特に疾病と業務との間の因果関係が認められるかどうかは、労災が認定されるかどうかの中核ともいえますので、様々な資料、場合によっては類似事案の裁判例等も踏まえて詳細に検討することが必要です。
労災に関してお悩みの場合は、速やかに専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

労災認定における業務上疾病の範囲について

2021-04-23

本日は、労災認定における業務上疾病の範囲について、ご説明いたします。

 

1 労災認定における業務上疾病の範囲

労災としての業務上災害のうち、特に業務上疾病については労働基準法75条2項において、「業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める」と規定されているとおり、労基則別表第1の2の規定およびこれに基づく告示が定められ、その範囲が明確化されております。

労基則別表第1の2には、特定の有害因子を含む業務に従事するとその業務に起因して発症すると認められる疾病、および脳、心臓疾患、精神障害等が類型的に列挙されております。
加えて、範囲の柔軟な拡充を可能とするため、第10号において「厚生労働大臣が指定する疾病」との規定を設けるとともに、第11号において「その他業務に起因することの明らかな疾病」との規定を設けております。

列挙されている疾病は以下のとおりです。

①第1号 業務上の負傷に起因する疾病
②第2号 物理的因子による疾病
③第3号 身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病
④第4号 化学物質等による疾病
⑤第5号 粉塵を飛散する場所での業務によるじん肺症とじん肺合併症
⑥第6号 細菌、ウイルス等の病原体による疾病
⑦第7号 がん原性物質もしくはがん原性工程での業務による疾病
⑧第8号 長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく憎悪させる業務による脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止若しくは解離性大動脈瘤またはこれらの疾病に付随する疾病
⑨第9号 人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神および行動の障害またはこれに付随する疾病
⑩第10号 前各号に掲げるもののほか厚生労働大臣の指定する疾病
⑪第11号 その他業務に起因することの明らかな疾病

上記具体的に列挙された疾病は、業務と疾病との間に一般的に因果関係があることが医学的に確立されているものですので、業務以外の原因によって発症したものであること等の立証がされない限り、一定の要件を満たすことで、業務に起因した疾病とみなされることになります。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

労災申請は、申請の検討段階において専門的な判断を踏まえて慎重に行う必要がある他、申請の手続き面も相当程度の煩雑さがある等、相当程度のハードルがある作業といえます。
労災に関してお悩みの場合は、速やかに専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

仮眠時間における賃金の考え方について

2021-04-20

大星ビル管理事件(最判平成14.2.28民集56.2.361)の判示において、不活動仮眠時間が労働時間に該当する場合もあることが判示されました。
この点については、先日のコラムでもご紹介いたしましたので、そちらをご参照いただけますと幸いです。

上記のとおり不活動仮眠時間が労働時間に該当するとしても、通常の賃金を支給する必要があるかどうか、が問題となります。
明確な結論が出ている問題ではないのですが、以下では考え方を整理いたしました。

 

1 不活動仮眠時間において支給すべき賃金

この点については、①不活動仮眠時間中の賃金と、②不活動仮眠時間が労働基準法上の時間外労働や深夜労働に該当する部分の割増賃金、という2つの場面に分けて考える必要があります。
まず①については、上記大星ビル管理事件の判示において、

(i)労働基準法上の労働時間であるからといって、当然に労働契約所定の賃金請求権が発生するものではなく、当該労働契約において仮眠時間に対していかなる賃金を支払うものと合意されているかによって定まる。
(ii)労働契約においては、不活動仮眠時間に対しては泊り勤務手当以外には賃金を支給しないものとされていたと解釈するのが相当である。

以上のとおり判示し、どのような賃金を支給するかが労働契約においてどのように規定されていたかによって決まるものとの判断を示しました。

次に、②の割増賃金の基礎単価を、どの時間帯の賃金とするのについては、上記の裁判例を含め、これまでの裁判例の状況を踏まえても、明確な判断基準は示されておりません。
基本的には労働契約の規定内容を踏まえて個別具体的に判断していくことになるものと思われますが、明確な判断基準がないことで、予見可能性が非常に低い状態となってしまっております。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を広くお受けしております。
従業員の労働時間に関する問題も含め、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

仮眠時間の労働時間該当性について

2021-04-19

仮眠時間が労働時間に該当するか、という問題は従前から議論がありました。
普通に考えると、仮眠時間はあくまでも仮眠しており労働に従事しているとはいえないので、労働時間に該当するとは考えられないのではないか、とも考えられるところです。
しかしながら、仮眠時間も労働時間該当すると判断される可能性は十分ありますので、注意が必要です。

本日は、仮眠時間の労働時間該当性に関して参考となる裁判例をご紹介します。

 

1 大星ビル管理事件(最判平成14.2.28民集56.2.361)

この判例では、仮眠時間の労働時間該当性に関して、以下のとおり判示いたしました。

①不活動仮眠時間であっても、労働からの解放が保証されていない場合には労働基準法上の労働時間に該当するというべきである。
そして、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保証されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているのが相当である。
②本件仮眠時間中、労働契約に基づく義務として、仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けているのであり、仮眠時間は全体として労働からの解放が保証されているとはいえず、労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価することができる。

以上の判例を踏まえると、「労働からの解放」が保証されているかどうかが重要であるという点がわかります。
仮眠時間は一切労働に従事する必要がなく、またその可能性もないことが保証されていれば労働時間には該当しないものと考えられますが、仮眠時間とはいえ、何かあれば労働に従事する可能性があるということであれば労働からの解放が保証されているとはいえませんので、労働時間に該当する可能性が高まるものと考えられます。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
従業員の労働時間に関するご相談を含め、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

従業員の休憩時間について

2021-04-10

「従業員には、適宜休憩時間を取らせるようにしているが、会社として決まった休憩時間というものは設けていない。仕事の繁閑状況等を踏まえて、取れる時に休憩時間を取るようにしてもらうということが会社の慣習となっている。休憩時間については法律上規定があるということを聞いたが、どのような規定があるのか。」、というご相談をお受けすることがあります。
休憩時間については労働基準法上規定されており、この規定に反することはできませんので、会社としては十分注意する必要があります。

以下、ご説明いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。

 

1 労働基準法上の休憩時間の規定について

休憩時間とは、労働者が権利として労働から離れることを保証されている時間のことをいいます。
労働基準法34条は、休憩時間について、以下の①から③のとおり規定しております。

①労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合には1時間以上を、労働時間の途中に付与することを義務付けています。
②休憩時間は、原則として一斉に与えなければなりません。
③自由に休憩時間を利用させなければならない。

労働基準法上の労働時間の規定は上記のとおりですが、休憩時間は、労働時間と同様に使用者の拘束下にある時間であり、通達や判例上も、休憩の目的を損なわない限り、使用者の施設管理や企業の規律維持の観点からの一定限度の制約を受け得ると考えられております。

ただし、休憩時間はあくまでも労働者が権利として労働から解放されることを保証されている時間でもあるため、上記③のとおり、労働者が自由に利用できることは大前提であり、強い制約を設けるような場合には、労働時間と認定される可能性もある点には十分注意することが必要です。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は人事労務を幅広く取り扱っております。
休憩時間、労働時間に関する問題をはじめ、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

退職勧奨で提示する上乗せ退職金について

2021-04-07

退職勧奨を行う際に、上乗せ退職金を支払った上で退職合意を締結し、円満退職を図るといった対応を取ることも多くあります。
そのため、「実際にいくら程度の上乗せ退職金を支払う必要があるのか。何か基準のようなものはあるのか」、といったご相談をお受けすることがあります。
結論としては、明確な基準というものはなく、具体的事情を踏まえたケースバイケースで対応するしかないのですが、検討する上で有用な一定の視点というものがあります。

以下でご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。

 

1 上乗せ退職金を検討する際の視点

上乗せ退職金を検討するにあたっては、業界水準、会社における前例や会社の業績、従業員の勤続年数等の様々な要素を検討することになります。
また、仮に従業員を解雇をした場合、裁判で勝てる可能性はどのくらいあるか、といった視点や、裁判所では、どれくらいの額で和解が成立しそうか、といった要素まで検討する必要があり、このような経験的な視点が非常に重要です。

例えば、技術分野での専門的能力や管理職としての能力を期待して中途採用した従業員が、期待していたような能力を発揮しないため、入社後1、2年で辞めてもらうことを検討する場合、終身雇用や年功序列を前提に雇用をしたわけではないとも言えますので、解雇が法的に争われた場合、企業側としては争いやすい面があります。

その一方で、新卒で採用し、勤続年数が長く、年功序列的に昇進等が予定されている場合で、成績改善のための指導もほとんど行われておらず、また、年度末評価も他の従業員と横並びの場合であるときは、仮に問題社員であっても、なかなか解雇が有効とは認められず、上乗せ退職金として、高額を用意する必要が生じる可能性が相当程度あります。

以上のとおり、上乗せ退職金の金額は、事案によって大きく異なります。
一般的には、3か月分から18か月程度の賃金の間となることが多いとも言われておりますが、あくまでも参考程度のものにとどまりますので、注意が必要です。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は人事労務を幅広く取り扱っております。
従業員の退職に関する問題をはじめ、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。

パタハラについて

2021-04-03

セクハラやパワハラといった表現についてはニュース等で耳にし馴染みのある方も多いのではないでしょうか。
ハラスメントには色々な種類がありますが、最近ではパタハラという問題が取り上げられることが多くあります。
まだまだパタハラという表現には馴染みのない方も多いように思われますので、以下では、パタハラの概要をご紹介いたします。

 

1 パタハラの概要

パタハラとは、パタニティ・ハラスメントの略語であり、パタニティとは、英語で父性のことを指します。
一般にパタハラとは、男性労働者による育児休業制度等の利用に関して、会社・上司・同僚からの嫌がらせを指します。
具体的には、男性労働者が育児休業等を取得することを拒んだり、育児休業等を取得したことを理由に降格等の人事上不利益な取扱いを行うことが典型的な内容となります。

 

2 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「育児・介護休業法」といいます)

育児・介護休業法10条は、「事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」と規定しています。
その他にも、同法は、介護休業(16条)、子の看護休暇(16条の4)、介護休暇(16条の7)、時間外労働の制限(18条の2)、深夜業の制限(20条の2)、所定労働時間の短縮措置(23条の2)等についても同様に、これらを理由とする不利益取扱いが禁止されております。

育児・介護休業法の不利益取扱い禁止を定める各条文は、これまで女性労働者を念頭に問題となることが多かったといえますが、当然のことながら男性労働者にも適用があります。
パタハラの問題が発生した場合には、育児・介護休業法の各規定を踏まえて、法律上問題があるかどうかを判断することが重要です。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方

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パタハラに関する問題をはじめ、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

 

出向について

2021-04-02

会社の経営者の方はもちろん、会社にお勤めの方にとっても、「出向」は非常に身近な人事上の制度であるといえます。
出向は企業の人事労務において重要な制度となりますので、本日はその概要をご紹介いたします。ご参照いただけますと幸いです。

 

1 出向の概要

出向の法律関係について、どのように考えるかですが、労働者が自己の雇用先の企業(以下「出向元」といいます)に在籍したまま、他の企業(以下「出向先」といいます)の従業員となって、相当長期間にわたって当該出向先の業務に従事することを指すのが一般的です。
また、出向は、労働者が出向元に在籍している点をとらえ、在籍出向と呼ばれる場合もあります。

 

2 配転、転籍、派遣との関係

出向と類似の制度に、配転、転籍、派遣という制度があります。以下では、それぞれの内容を簡単にご紹介いたします。

まず配転とは、労働者の職種・職務内容または勤務場所を同一企業内で相当長期にわたって変更することをいう。配転は,同一の企業内における異動である点で、出向とは異なります。よく「人事異動」といわれるものがこの配転にあたります。

次に転籍とは、ある企業の従業員が、当該企業との労働契約関係を終了させ新たに他の企業との間に労働契約関係を成立させる形態を指します。元の企業との間の契約関係が終了する点が出向と異なる点です。

また、派遣とは、自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることを指します(労働者派遣法2条1号)。
出向と派遣との違いは、労働者と出向先との間に何らかの労働契約関係が発生するか、それとも労働者と派遣先との間に契約関係は存在せず、指揮命令関係のみが存在するか、という点にあるといえます。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方

当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っております。
出向、配転等の人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

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