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輸入時における知的財産権侵害トラブルへの対応方法
海外で販売されている商品を日本に輸入する際、商標権・著作権・意匠権・特許権などの知的財産権を侵害していないかどうかは、重要なチェックポイントです。
仮に侵害があった場合、税関で差止を受けたり、正規の権利者から訴訟提起されたりするおそれがあります。
本日は、輸入時に知的財産権の問題が生じた場合の具体的な対応方法と、事前に取るべき予防策を解説します。
1 税関での通知に対する対応
輸入手続きの途中で、税関から知的財産権侵害に関する通知が届いた場合、それは「権利侵害の疑いがある」と判断されたことを意味します。
この段階で取るべき対応は以下の通りです。
①税関からの通知内容を正確に読み取る
②対象となっている知的財産権(商標、意匠など)を確認する
③商品の正規性を証明する資料(契約書、インボイス、ブランドオーナーからの許諾書など)を準備する
④意見書を提出する期限を確認し極力遵守するように努める
期限内に意見や証拠を提出しない場合、自動的に差止処分がなされる可能性が高くなりますので、仮に期限内に間に合わない場合には税関側に連絡をする必要があります。
2 並行輸入が認められるかどうかの検討
輸入品が「正規品」であっても、商標権侵害とされることがあります。
いわゆる「並行輸入」が合法と認められるためには、以下の3要件をすべて満たす必要があります。
①日本国内の商標権者と、外国の商標権者が同一または支配関係にあること
②国内外で使用されている商標が実質的に同一であること
③国内商標権者が輸入品について品質保証等の統制ができること
これらを証明できる資料がない場合、商標権侵害と判断されるリスクが高くなりますので注意が必要です。
3 正規品であることの立証が重要
また、そもそも正規品ではないという疑いを掛けられる場合もありますが、「偽物ではない」という主張だけでは不十分です。以下のような立証資料をそろえることで、正規輸入品であることを主張できます。
①海外サプライヤーとの正式な契約書
②輸出元が正規メーカーまたはライセンス保持者であることを示す証拠
③商品の製造証明書、シリアルナンバー、ラベル等の識別情報
④輸入時の通関記録・インボイス・支払証明書類
4 権利者との交渉・和解の可能性
差止処分がなされた後であっても、正規の権利者と交渉し、使用許諾契約や輸入許可を得られる場合もあります。
この場合、交渉の窓口として弁護士を活用することで、損害賠償リスクの軽減や今後の安定供給の確保にもつながります。
知的財産権の問題は、たとえ故意で行ったものでなくとも重い責任が問われることがあります。輸入ビジネスにおいては、事前の法的チェックとトラブル発生時の冷静な対応が鍵を握るといえるでしょう。
当事務所では、知財トラブルへの対応や交渉支援、輸入前のリーガルチェックまでサポートいたします。お気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
通関業者任せは非常に危険です
輸入ビジネスにおいては、自主通関を行っている方もいるでしょうが、多くの企業は通関手続を通関業者に委託しています。
そして、通関業者に所属し実際に通関手続を行うのが「通関士」です。
しかしながら、すべてを通関業者や通関士に「丸投げ」してしまうことには、重大なリスクがあります。
今回は、通関実務における「業者任せ」に潜むリスクと、輸入者として必要な対応について解説します。
1 輸入申告の最終責任は「輸入者」にあります
通関手続きは外部に委託できても、法律上、輸入申告者=納税義務者はあくまで輸入者本人です。
つまり、仮に通関業者が誤ったHSコードを適用したり、価格・数量を誤って申告したりしても、それによって発生した追徴課税や罰金等は輸入者が負担することになります。
2 よくある「通関業者任せ」のリスク事例
① HSコードの誤分類
業者が判断したHSコードが実際の商品と合っておらず、税率が大幅に異なる場合、税関から過少申告と判断されてしまうおそれがあります。
②原産地や価格の確認不足
インボイスや契約書の記載内容が曖昧でも、業者がそのまま申告してしまい、後日税関調査で否認される場合があります。
③規制品目の見落とし
薬機法や電波法の対象となる商品でも、業者が気づかずに申告してしまうことで、輸入差止や廃棄の対象になることがあります。
3 「プロに頼んだのに通関でトラブルに」は防げるか?
多くの輸入者は「専門家に頼んでいるから大丈夫」と思いがちですが、通関業者は輸入品の真の内容・取引背景・契約条件までは把握できないことが多いのが実情です。
通関業者は、あくまでも輸入者が提供した情報に基づいて申告手続を行いますので、輸入者が以下のような基本情報の提供と内容確認を怠ると、輸入申告においてトラブルに発展しやすくなります。
①商品仕様書・写真・カタログを業者に正確に提供する
②HSコードや税率の根拠を確認し、疑問があれば相談する
③規制対象か否かを事前に弁護士等に相談する
④修正インボイスや追加書類が必要な場合は速やかに対応する
⑤通関後の書類は必ず保管・再確認しておく
これらを徹底することで、「通関業者任せ」によるトラブル発生のリスクを最小限に抑えることができます。
4 弁護士の活用場面
「通関の専門家=通関士」と思われがちですが、法的トラブルに関しては弁護士の領域です。法令違反のリスクを防ぐには、通関士との連携とあわせて、法務面からの確認も不可欠です。
例えば、弊事務所では、以下のようなサポートを提供しております。
①税関から照会や調査が入ったときの対応支援
②通関士とのコミュニケーションサポート
③契約書やインボイス等の法的確認
④輸入スキーム全体のリスク診断
繰り替え利子になりますが、通関士や業者に任せていても、最終的な責任は輸入者に帰属します。「お任せ」で済ませず、自社でも内容を理解・確認する姿勢が重要です。
トラブルを未然に防ぐため、通関業務の外注管理と、法務リスクの把握体制を構築しましょう。輸入手続きに関する法務チェックや税関対応のアドバイスをご希望の方は、ぜひ当事務所までご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
インボイスの誤記と修正手続き
輸入手続きにおいて提出が求められる代表的な書類のひとつが「インボイス」です。
インボイスは、輸入申告時に貨物の価格・数量などを示す最も重要な資料の一つですが、記載ミスや情報不足があると、通関手続きの遅延、課税評価の誤り等の問題につながります。
今回は、インボイスの誤記がもたらすリスクと、その修正手続きの実務について解説いたします。
1 インボイスに盛り込むべき基本項目
インボイスには、以下のような情報が盛り込まれている必要があります。
①輸出者名・輸入者名
②商品の品名・数量・単価・総額
③原産地(Country of Origin)
④輸送条件(FOB、CIFなど)
⑤発行日
これらの情報は、課税価格の算定を行うための重要な情報となりますので、誤った情報が記載されると脱税等の自体が発生する可能性がありますのでくれぐれも注意が必要です。
2 インボイス誤記の典型例
以下は、実務でよく見られる誤記例です。
①数量・単価・通貨の記載ミス
②原産地の誤表示(例:実際は中国製だがベトナム製と記載)
③商品名の不明瞭な記載(例:”accessory” のみではHSコード判定が困難)
④実際の支払い金額とインボイス金額が異なる(値引きや無償提供の未記載)
こうした誤記があると、輸入事後調査で過少申告(アンダーバリュー)と判断され、過少申告加算税や重加算税の対象となることがあります。
誤記が判明した場合には資料の差し替えを行うことが考えられますが、仮に申告手続きが終了していた場合には、修正申告を行う必要があります。
3 輸入事後調査でのチェックポイント
税関の輸入事後調査では、インボイスの記載の正確性が厳しくチェックされます。
特に以下のような点がある場合には注意が必要です注目されます。
①継続的に不自然な価格での取引がある
②関連会社との間で価格が恣意的に設定されている
③サンプル品・ノベルティ等が未申告になっている
適正な価格・内容でインボイスを発行してもらうことが重要であり、輸入者としては各データ(発注書・見積書・送金証明など)を保存しておく体制が求められます。
インボイスは単なる「送り状」ではなく、関税申告の根拠となる法的文書です。
誤記や説明不足は税関とのトラブルの原因となり、追徴課税や信用低下にもつながります。
当事務所では、インボイスや通関書類の法務チェック、税関からの照会対応などのご相談を総合的に対応しております。ミスのない体制づくりをサポートいたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
原産地に関する虚偽申告のリスクと罰則
国際取引において「原産地(Country of Origin)」は、関税率の適用、輸入制限の有無、統計分類等に大きな影響を与える重要な要素です。
しかしながら、誤った原産地を申告してしまった場合、たとえ意図的でなくても重大な法的リスクを招く可能性があります。
今回は、原産地に関して虚偽申告をしてしまった具体的なケースと、その法的リスク・罰則について解説いたします。
1 そもそも原産地とは何を意味するのか?
「原産地」とは、商品の実質的な『生産が行われた国』を指します。
単に出荷された国や中継地ではなく、実質的な価値が形成された場所が『原産地』となると考えることになります。
例えば、中国で生産された商品を一度ベトナムに移し、そこから日本に輸出しても、実質的な加工が一切行われていなければ「中国」が原産地となります。
2 原産地を偽るとどうなるか?
関税法では、輸入申告に際して虚偽の記載を行った場合、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科されると定められています。
たとえば、FTAやEPAを利用する際に、原産地証明書を偽造・誤記して関税免除を受けると、それ自体が関税法違反となることは改めて留意が必要です。
3 誤った原産地に基づく申告の典型例
①三国間取引での誤解
ベトナムから商品が届いたが、実際の製造は中国だったケース
②梱包・ラベリングの国を原産地と誤認
実際の加工は別の国であったケース
③委託加工による原産地の錯誤
部品は日本製だが、組立はタイで行われていたケース
4 輸入税関事後調査で発覚するリスク
原産地に関する虚偽の申告は、輸入時には見逃されていても、後日の輸入税関事後調査で発覚するケースが多いです。
この際、仕入契約書・製造工程・インボイスなどを求められ、証明できない場合には過去数年分にわたる未納税分と追徴課税を課されることがあります。
これだけでも、場合によっては高額になり、ビジネスのその後に大きな悪影響が発生することになり得ます。
5 防止策:実態確認と記録の保存
原産地の申告ミスを防ぐためには、次のような体制を整備することが重要です。
①仕入先からの製造工程の情報・証拠を取得
②原産地証明書の真偽や発行機関を確認
③社内での品目別原産地管理台帳の作成
④不明点があれば、税関の「事前教示制度」を利用して原産地を確認する
原産地の虚偽申告は、知らずに行っていたとしても重い責任が問われる可能性があります。輸入事業においては、形式上の書類だけではなく実態に基づいた確認と記録の保存が求められます。
原産地に関するリスクを事前に回避したい方や、調査対応でお困りの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。輸入法務の視点から、正確で安全な輸入体制づくりをお手伝いします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
税関での輸入差止~突然の通知にどう対応するか?~
ある日、輸入予定の商品について「税関から差止に関する通知が届いた」経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな突然の事態に、輸入事業者の多くは戸惑い、不安を抱えながら対応を迫られます。
税関による輸入の差止は、知的財産権(商標権・著作権など)の侵害が疑われる場合に行われる措置であり、正しく対応しなければ、商品は廃棄され、損害が膨らむおそれもあります。
1 税関での差止とは?
税関は、特定の知的財産権(商標権・著作権・意匠権など)を侵害する物品の輸入を未然に防止するため、輸入通関前に貨物を差止める権限を有しています。
商標権者などがあらかじめ税関に「輸入差止申立」をしていた場合、それに該当する貨物が通関されようとすると、税関が内容をチェックし、該当の可能性があれば輸入者に対して通知書等を送付してきます。
2 通知が届いたときに取るべき初動対応
通知を受け取った場合、焦って自己判断で対応するのは非常に危険です。まずは以下の手順で冷静に対応しましょう。
①通知書の内容を確認する
すなわち、対象商品は何か?差止申立人(商標権者など)の氏名・権利名は?回答期限(通常は10日~14日以内)は?
②輸入した商品に関する権利関係を再検討する
並行輸入か否か?そもそもの真贋の確認?海外取引先との契約内容は?
③提出資料を準備する
3 弁護士に相談することの重要性
①権利侵害があるかどうかの法的評価
②提出書類の作成支援
③必要に応じた税関への同行対応
4 回答を怠るとどうなるか?
期限までに意見書や資料を提出しない場合、税関は輸入者に争う意思がないものと判断し、原則として差止を行うことになります。
この場合、対象貨物は返送や廃棄の措置となり、関税・消費税の返還が認められないこともあります。さらに、継続して同様の輸入を試みても、税関から都度詳細なヒアリングが行われることもあり得ます。
5 今後の再発防止策
税関からの差止通知は、輸入事業者にとってはその後のビジネスにうまく生かすことができる貴重な契機でもあります。特に、再発を防ぐためには、
①事前に税関の「知的財産情報検索システム」で権利の有無を確認
②新たな商品を扱う前に弁護士等の専門家にチェックを依頼
③海外取引先に「権利侵害のないこと」の保証条項を求める
輸入差止は、放置すれば損害が拡大する重大な法的トラブルです。しかし、正しく対応すれば、差止解除や将来の予防につなげることも可能です。
当事務所では、輸入差止対応に関する相談・書類作成・税関への対応支援などを幅広く行っております。突然の通知にお困りの際は、どうぞお早めにご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
商標権侵害と税関における差止の実態
輸入ビジネスを営む上で注意が必要なものが知的財産権侵害に該当してしまうリスクですが、特に注意が必要なものが商標権の侵害です。
海外で正規に販売されている商品であっても、日本での商標権を侵害している場合には、税関で差止めが行われ、輸入ができなくなることもよくある話です。
今回は、商標権侵害物品に関する輸入リスクと、それに関連する「差止」の実態について解説いたします。
1 そもそも商標権とは?
商標権とは、企業が自己の商品やサービスを他の商品やサービスと区別するための「マーク(ロゴ・名称)」等を保護する権利です。
日本では、商標法に基づいて商標を登録した者が、その商標を使用する独占的な権利を有します。
たとえば、「NIKE」や「Apple」のようなブランド名・ロゴは、商標権によって保護されており、権利者の許諾なしに輸入・販売することは原則として認められません。
2 並行輸入と商標権侵害の違い
実務上よく問題になるのが、『並行輸入』です。
名称だけでも聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
これは、正規の製品を海外の正規ルートから購入し、日本に輸入・販売する行為を指します。以下の3つの要件を満たさない場合、商標権侵害となる可能性がありますので十分注意が必要です。
①商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたこと
②外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより、当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであること
③我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行いうる立場にあることから、当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないこと
3 税関における差止
日本では、知的財産権の侵害物品が輸入されようとしている場合、税関において輸入を止めることができます。商標権者が事前に差止申立(認定手続)を行っていると、税関が輸入品をチェックし、該当する場合は輸入者に対して通知・意見聴取がなされ、差止処分が行われることになります。
税関から通知を受け取った輸入者は、期限内に意見書・資料などを提出しなければ、商品は没収・廃棄処分となる可能性あります。
4 対応を誤ると多大な損失に
商標権侵害で差止を受けると、単に商品を輸入できなくなるだけでなく、輸送費・検査費用・廃棄費用の負担、さらには商標権者からの損害賠償請求や訴訟に発展する可能性もあります。
特にEC販売などでは、商品説明ページに商標が表示されているだけで広告的使用による侵害とされることもあり、輸入前・販売前の段階でのチェックが重要です。
商標権の侵害は、知らずに輸入しただけでも法的責任を問われるリスクがあります。
特にブランド品や海外メーカー品を扱う場合は、事前に十分な調査と法的チェックを行うことが不可欠です。
当事務所では、知的財産権の調査、輸入トラブル対応、税関とのやり取りまで幅広くサポートしております。お困りの際はお気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
輸入禁止の品目と輸入制限品目
輸入ビジネスを行う上で、最も注意すべき法的リスクのひとつが「輸入してはならない品目」(禁制品)の存在です。
特に、税関での貨物の差止や行政処分を受ける原因として多いのが、「輸入禁止の品目」や「輸入制限品目」に該当する商品を知らずに輸入しようとしてしまうケースです。
この記事では、両者の法的な違いと、輸入事業者として知っておくべきポイントを解説します。
1 「輸入禁止の品目」とは?
輸入禁止品目とは、関税法および関係法令により、輸入が禁止されている貨物のことを指します。これらを輸入しようとすると、税関での即時差止の対象となり、刑事責任を問われることも十分あり得ます。
主な輸入禁止品目の例は、
①麻薬、大麻、覚醒剤などの薬物
②銃砲、爆発物、刀剣類(正当な許可のない場合)
③わいせつ物、児童ポルノ等
④偽造貨幣・有価証券
⑤病害虫が付着した植物類 等
これらは、国家の治安・秩序や国民の健康・安全にかかわるため、輸入が禁止されています。
2 「輸入制限品目」とは?
一方、輸入制限品目とは、「輸入そのものは禁止されていないが、一定の条件を満たさないと輸入できない品目」を指します。
関税法や外為法、各種個別法令(薬機法・電波法・食品衛生法など)により制限が課されています。
主な例としては、
①医薬品・医療機器(薬機法に基づく承認が必要)
②無線機器(電波法上の「技適マーク」必要)
③食品・飲料品(食品衛生法に基づく検査・届出が必要)
④化粧品や衛生用品(製造販売許可・成分規制等)
⑤一部の農産品・畜産品(動植物検疫が必要)
3 「知らなかった」では済まされないのが現実です
税関での差止や廃棄命令、追徴課税などの制裁は、輸入者の故意・過失を問わず課されます。「他の業者が輸入していたから大丈夫だと思った」、「海外では普通に販売されていた」、といった認識は通用せず、「自己責任」であることはくれぐれも注意が必要です。
4 対策としての事前確認と専門家の関与の重要性
輸入したい商品が「禁止」されているものか又は「制限」されているものか、そしてどのような許可・検査が必要なのかといったことを事前に調査することが重要です。
特にリスクの高い品目(医薬品・美容関連・電子機器など)については、法令に精通した弁護士や専門家の助言を受けることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
繰り返しになりますが、「輸入禁止品目」と「輸入制限品目」は混同されがちですが、実際は大きく異なります。知らずに扱えば、重大な法的責任を負う可能性もあるため、十分な注意と事前確認の徹底を心がけることが必要です。
輸入ビジネスを安心・安全に進めたい方は、ぜひ当事務所までご相談ください。
スタートアップ時のご相談からトラブル発生時の対応まで、総合的にサポートいたします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
HSコードの誤記とその法的リスク
輸入手続きにおいて重要な役割を果たすのが「HSコード(Harmonized System Code)」です。これは世界共通の品目分類コードで、関税率の決定や、統計処理の基礎にもなっています。このようなHSコードを誤って申告すると、いわゆるアンダーバリューの状況となり、脱税とみなされるリスクがあります。
今回は、輸入事業者が知っておくべきHSコードの仕組みと、誤記による法的リスクについてご紹介します。
1 HSコードとは?
HSコードは、国際的に統一された品目分類システムで、6桁の基本コードをもとに、各国が細分化したコード(日本では最大9桁)を使用しています。たとえば、類似の「革製のバッグ」であっても、素材や用途によって対応するコードが異なり、それに応じて関税率も変わるのが特徴です。
この違いが申告価格や通関手続きに大きく影響します。
2 なぜHSコードの誤記が問題になるのか?
HSコードの誤記には大きく分けて以下の2パターンがあります。
(1)意図しない誤記
輸入者が商品内容を正確に把握しておらず、誤って類似のコードを使用してしまうケースです。
この場合でも、結果として過少申告となれば追徴課税の対象となり、一定の場合には過少申告加算税(10%)等が課されます。
(2)意図的な低税率コードの使用
より低い関税率のコードを故意に利用して輸入申告を行い関税を逃れるケースは、いわゆる脱税に該当しますので、税関から「重加算税(35%)」や、関税法違反による刑事告発の対象とされる可能性があります。特に、継続的に同じ誤りをしている場合には厳しい対応が予想されるところです。
3 税関事後調査で発覚するリスク
税関は、輸入完了後一定期間が経ってから帳簿や申告内容を調査できる権限を有しています。
いわゆる税関事後調査では、HSコードの妥当性についても厳しく精査され、例えば、同業他社と異なるHSコードの利用が続いている場合などは疑念が強くなります。
4 対応策:正確な分類と相談体制の整備
HSコードは必ずしも自明ではなく、判断が難しいケースも多々あります。
そのため、以下のような対応が重要です。
①商品の仕様書・カタログ・写真などの証拠資料を整備する
②不明な場合は税関の「事前教示制度」を活用する(無料で分類の照会が可能)
③輸入量が大きい場合は、対応経験のある弁護士等に事前確認を依頼する
HSコードの誤記は「単なるミス」で済まされるとは限りません。
ときに悪質と判断され、事業継続に深刻な影響を及ぼすケースも十分あり得るとことです。輸入ビジネスの信頼性を高めるためにも、HSコードの適切な理解と、正確な申告体制の構築が不可欠です。
当事務所では、輸入手続きや税関対応に関する法務アドバイスを数多く取り扱っております。HSコードに関する不安や、事後調査の対応準備など、お気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
関税法と関税定率法の基礎知識
輸入ビジネスを行う上で避けて通れないのが「関税」です。
関税とは、外国から商品を輸入する際に課される税金のことで、日本では主に関税法および関税定率法によって定められています。
これらの法律を正しく理解しておくことは、誤った申告によるトラブルを防ぐ上で非常に重要です。
本記事では、関税に関する基本的なルールと注意点をご案内します。
1 関税法とは?
「関税法」は、関税の納付義務や申告方法、不正輸入に対する罰則など、関税に関する手続きや制度全般を定めた法律です。
たとえば、輸入者は商品が到着した後、通関手続を行う際に、貨物の詳細(品目、数量、価格、原産地など)を税関に対して正確に申告する必要があります。
虚偽の申告をした場合、関税法違反となり、過少申告加算税(10%)、重加算税(35%)が課されるほか、悪質と判断されれば刑事罰(10年以下の懲役または1000万円以下の罰金等)に処されることもあります。
2 関税定率法とは?
「関税定率法」は、輸入品ごとの関税率や計算方法を定めた法律です。
輸入品には、品目ごとに「HSコード」が割り当てられており、それに基づいて関税率が決定されます。
たとえば、革製のバッグには10%以上の関税がかかる一方で、電化製品には関税がかからない場合もあります。また、特定の国との間でFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)が結ばれている場合、一定の条件を満たせば関税が軽減または免除されることもあります。この辺りの正確な知識を取得することは、輸入ビジネスを行う上では必須となります。
3 誤った輸入申告がもたらすリスク
関税の申告は非常に専門的であり、「インボイス価格」と実際の取引価格に差がある場合や、誤って関税率の低いHSコードを申告した場合、事実上の脱税と類似の状況となり、輸入事後調査において多額の追徴課税を受ける可能性があります。
特に、海外サプライヤーとの取引においては、現地価格がディスカウントされていたり、送料・保険料が価格に含まれていなかったりすることもあるため、輸入価格(CIF価格)を正確に把握することが重要です。
課税価格の考え方を正確に理解しておくことで誤った輸入申告を減らすことができます。
4 プロのサポートを活用するメリット
通関業者を通じて申告手続きを行うことが一般的ですが、最終的な責任は輸入者自身にあることは当然です。
関税法や関税定率法の内容を正確に理解し、輸入価格の根拠資料を都度保管する体制を整えておくことが、将来の税関事後調査への備えにもなります。
また、取引スキームの初期段階から弁護士などの専門家に相談することで、法的リスクを未然に防ぐことができます。
輸入に関する法務チェックや税関とのやり取りでお困りの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
輸入ビジネスを始める前に知っておくべき前提となる法律とは?
個人事業主から中小企業まで、インターネットを活用して海外の商品を仕入れ、日本国内で販売する「輸入ビジネス」が広く行われています。
しかしながら、このビジネスには特有の法的リスクがあり、事前に正しい知識を持たずに参入すると、税関での差止め、追徴課税等の行政処分に加え、最悪の場合には、罰金、懲役といった刑事責任にまで発展するおそれがあります。
本日は、輸入ビジネスを始めるにあたり、最低限知っておくべき主要な法律とそのポイントをご紹介します。
1 関税法・関税定率法
まず基本となるのが、「関税法」と「関税定率法」です。
これらは、海外から商品を輸入する際の申告方法、税率の決まり方、不正な申告に対する罰則などの基礎的な内容を定めています。
例えば、貨物の内容や価格を故意に低く申告する「過少申告」(いわゆるアンダーバリュー)は、通告処分といった行政処分の対象となるだけでなく、悪質な場合は関税法違反として刑事告発されることもあります。
2 知的財産権関連法(商標法・著作権法など)
見落とされがちなのが、「商標権」「著作権」などの知的財産権です。
たとえ海外では合法に流通している商品であっても、日本国内に同一の商標登録がある場合、その商品を無断で輸入・販売することは権利侵害とされる可能性がありますので、適法に輸入することができる『並行輸入』の要件を満たす必要があります。
また、税関により差止めを受けることもあり得、権利者側から民事裁判を提起される訴訟リスクも生じます。
3 輸入品に関する個別法令(食品衛生法・薬機法・電波法など)
食料品や医薬部外品、電子機器などは、それぞれ個別の法令に基づいた基準が設けられています。たとえば、海外で販売されている化粧品をそのまま輸入・販売しようとしても、日本の薬機法上の「許可」がなければ違法となります。
4 トラブルを未然に防ぐために
輸入ビジネスにおけるトラブルの多くは、「知らなかった」「海外では大丈夫だった」等という根拠のない思い込みから始まります。税関対応や行政調査が発生した場合、その場で適切な法的対応が取れるかどうかで、事業継続に大きな影響が出ます。
当事務所では、輸入前の契約チェックから、税関対応、知財リスクの精査、事後調査対応まで、ワンストップでサポートしております。小さな疑問でも構いませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。