暴言・暴行とパワハラ

昨今パワーハラスメント(以下「パワハラ」といいます)は社会全体の問題となっており、実際に、パワハラに関するご相談をお受けすることは多くなっております。
そこで、本日は、パワハラと認められる事由について、裁判例を踏まえてご紹介いたします。
以下の事案がそのままあらゆる場合に適用できるわけではなく、あくまでも暴行に関する参考となる事案ですので、ご注意ください。

 

1 名古屋高判平成20・1・29労判967・62

(1)事案の概要
A社の従業員であったXが、勤務中、同社の従業員であったYから胸倉を掴まれ、頭・背中・腰を板壁にたたきつけられたり、頭突きをされたりといった暴行を受けるとともに、その後の労災保険申請手続等において、A社の従業員Zから、暴言を言われ、これによって、外傷性ストレス障害(PTSD)にり患したと主張して、A社らに対し、不法行為による損害賠償請求をした事案です。

(2)判示
裁判所は、YのXに対する上記暴行やZのXに対する暴言につき違法性があると判断しました。
ただし、この裁判例の注意点としては、Xが主張したPTSDについては認定せず、A社がXに損害を加えようとしているという類の被害妄想を焦点とする妄想性障害を罹患したと認定しました。

上記裁判例は、事案として明確に暴言や暴行が認められるというそもそも違法性の認定のハードルが低い事案であったとは考えられますが、実際にパワハラとして暴言や暴行がなされることは、パワハラの典型的なケースといえますので、今後の参考となる裁判例といえます。

 

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