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遺産分割の審判により配偶者居住権を取得するための要件

2021-11-24

相続法改正により、配偶者の居住権を保護するために、配偶者居住権という権利が新たに創設されました(民法1028条以下)。
これは、配偶者の帰属上の一身専属権であり、配偶者が死亡した場合には当然に消滅するものですが、非常に重要な権利です。
このような配偶者居住権の概要については、先日のコラムにおいてご紹介いたしました。
本日は、遺産分割の審判により配偶者居住権を取得するための要件をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 遺産分割の審判により配偶者居住権を取得するための要件

居住建物の所有者が配偶者居住権の設定に反対している場合には、審判により配偶者に居住権を取得させることとするときは、当事者間で紛争が生ずる恐れがあります。
そこで、遺産分割の請求を受けた家庭裁判所は、①共同相続人の間で配偶者に配偶者居住権を取得させることについて合意が成立しているときか、または②配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるときに限り、配偶者に配偶者居住権を取得させる旨を審判することができるものとされております(民法1029条)。

なお、被相続人が建物の共有持分を有していたにすぎない場合には、原則として配偶者居住権が成立することはないとされておりますが、例外的に居住建物が夫婦の共有となっている場合(被相続人と配偶者のみで居住建物を共有していた場合)には、配偶者居住権の成立を認めることとしていますので、注意が必要です(民法1028条1項ただし書き)。

 

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従業員に対する懲戒処分が無効とされた裁判例

2021-11-22

本コラムにおいて、これまで懲戒処分に関して何度かご紹介してまいりました。
本日は、従業員に対する懲戒処分が無効とされた裁判例をご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。

 

1 日本ヒューレット・パッカード事件(最判平24・4・27労判1055・5)

本事案は、精神的な不調により無断欠勤をしていた従業員に対して、会社が懲戒処分を行ったところ、当該懲戒処分が無効ではないかが問題となった事案です。

【判示の概要】
精神的な不調のために欠勤を続けていると認められる労働者に対しては,精神的な不調が解消されない限り引き続き出勤しないことが予想されるところであるから,使用者である上告人としては,その欠勤の原因や経緯が上記のとおりである以上,精神科医による健康診断を実施するなどした上で(記録によれば,上告人の就業規則には,必要と認めるときに従業員に対し臨時に健康診断を行うことができる旨の定めがあることがうかがわれる。),その診断結果等に応じて,必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し,その後の経過を見るなどの対応を採るべきであり,このような対応を採ることなく,被上告人の出勤しない理由が存在しない事実に基づくものであることから直ちにその欠勤を正当な理由なく無断でされたものとして諭旨退職の懲戒処分の措置を執ることは,精神的な不調を抱える労働者に対する使用者の対応としては適切なものとはいい難い。

そうすると,以上のような事情の下においては,被上告人の上記欠勤は就業規則所定の懲戒事由である正当な理由のない無断欠勤に当たらないものと解さざるを得ず,上記欠勤が上記の懲戒事由に当たるとしてされた本件処分は,就業規則所定の懲戒事由を欠き,無効であるというべきである。

 

精神的な不調を訴えていた従業員という特殊な事案ではありますが、昨今精神的な不調を訴える従業員は増加傾向にありますので、懲戒処分を行う場合には、慎重にご対応いただくよう、ご注意ください。

 

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当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
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編集著作物の意義

2021-11-19

事典、雑誌、文学全集、新聞等のように、編集物であり、かつ素材の選択または配列によって操作性する者は編集著作物となり、著作権法上保護されます(著作権法12条1項)。
本日は、編集著作物に関する裁判例をご紹介いたします。
著作権に関する問題は、あまり馴染みがないようで、実は日常生活やビジネスに密接に関係する問題ですので、是非ご参照いただけますと幸いです。

 

1 編集著作物の意義

この点について参考となる裁判例としては、浮世絵春画一千年史事件(東京地判平成13・9・20判タ1097・282)があります。
本件は、浮世絵画集編集のための原稿であるペーパーレイアウトが編集著作物として認められるかどうかが問題となりました。

【判示の概要】
本件著作物のうち、解説文等の文章部分は春画浮世絵の分野における原告の学識・造詣を発揮して作成したもので、創作性を有する著作物であることはいうまでもない。
また、文章以外の部分、すなわち春画浮世絵の画像を選別し、これを配列したものに題字等を付した部分も、前記のとおり、春画浮世絵の分野における原告の学識・造詣を発揮して選別し、歴史的順序やデザイン上の観点からの考慮に従って配列したものであるから、原告の精神活動の成果としての創作性を有するものであって、「編集物でその素材の選択又はその配列に創作性を有するもの」(著作権法12条1項)、すなわち編集著作物に該当するものということができる。

 

以上のとおり、編集著作物となるためには、一定の編集方針に従って編集する必要があるものといえ、単に適当にまとめただけでは、編集著作物とは認められない点には注意が必要です。

 

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元請会社が下請会社の従業員に対して安全配慮義務を負うかどうかについて

2021-11-17

本日は、元請会社が下請会社の従業員に対して安全配慮義務を負うかどうかについて、参考となる裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 三菱重工業神戸造船所事件(最判平3・4・11労判590・14)

下請会社の従業員が、作業に伴う騒音により聴力障害にり患したところ、元請会社が下請会社の従業員に対して安全配慮義務を負うかどうかが問題となった事案です。

【判示の概要】
安全配慮義務が、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として信義則上、一般的に認められるべきものである点にかんがみると、下請企業(会社又は個人)と元請企業(会社又は個人)間の請負契約に基づき、下請企業の労働者(以下「下請労働者」という)が、いわゆる社外工として、下請企業を通じて元請企業の指定した場所に配置され、元請企業の提供する設備、器具等を用いて又は元請企業の指示のもとに労務の提供を行う場合には、下請労働者と元請企業は、直接の雇用契約関係にはないが、元請企業と下請企業との請負契約及び下請企業と下請労働者との雇用契約を媒介として間接的に成立した法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入ったものと解することができ、これを実質的にみても、元請企業は作業場所・設備・器具等の支配管理又は作業上の指示を通して、物的環境、あるいは作業行動又は作業内容上からくる下請労働者に対する労働災害ないし職業病発生の危険を予見し、右発生の結果を回避することが可能であり、かつ、信義則上、当該危険を予見し、結果を回避すべきことが要請されてしかるべきであると考えられるから、元請企業は、下請労働者が当該労務を提供する過程において、前記安全配慮義務を負うに至るものと解するのが相当である。そして、この理は、元請企業と孫請企業の労働者との関係においても当てはまるものというべきである。

以上のとおり、あくまでも事例判断ではありますが、元請会社が下請会社の従業員に対して安全配慮義務を負う場合もある点にはご注意ください。

 

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採用内々定の取消しと損害賠償責任について

2021-11-15

本日は、企業が採用内々定を取消す場合における従業員に対する損害賠償責任をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 採用内々定の取消しと損害賠償責任について

この点について参考となる裁判例としては、コーセーアールイー事件(福岡高判平23・3・10労判1020・82)があります。
事案としては、不動産売買等を業とする会社側が新卒採用の見直しを含む経営改善策が進められていることを応募者に説明することなく内々定を出したが、内定予定日の数日前に突然内々定を取消したという事案です。

【判示の概要】
本件内々定によって内定(始期付解約権留保付労働契約)が成立したものとは解されないから、控訴人(会社側のこと。以下同様。)の本件内々定取消しによって、被控訴人(内々定者のこと。以下同様。)に内定の場合と同様の精神的損害が生じたとすることはできないが、他方、採用内定通知書授与の日が定められた後においては、控訴人と被控訴人との間で労働契約が確実に締結されるであろうとの被控訴人の期待は、法的保護に十分に値する程度に高まっていたこと、被控訴人は、控訴人に就職することを期待して、本件内々定の前に受けていた他社からの複数の内々定を断り、就職活動を終了させていたこと、控訴人において、被控訴人のこのような期待や準備、更には就職によって得られる利益等に対する配慮をすることなく、被控訴人に対して上記のような採用についての方針変更について十分な説明をせずに、本件内々定の取消しを行い、被控訴人からの抗議にも何ら対応しなかったこと、本件内々定取消しによって受けた被控訴人の精神的苦痛は大きく、1か月程度、就職活動ができない期間が生じ、控訴人がいまだ就職できないでいるのも、その際の精神的打撃が影響していることがうかがわれることをも考慮すると、被控訴人が本件内々定取消しによって受けた被控訴人の精神的損害を填補するための慰謝料は50万円と認めるのが相当である。

以上のとおり、会社が内々定を取消す場合には内々定者の期待権の侵害として慰謝料を支払う義務が生じる可能性がありますので、ご注意ください。

 

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輸入貨物と共に輸入される容器と課税価格について

2021-11-12

本コラムにおいて、これまで貨物を輸入する際の課税価格の考え方、加算要素等について何度かご紹介してまいりました。
本日は、輸入貨物とともに輸入される容器と課税価格の考え方についてご紹介いたします。
貨物の輸入をビジネスとして行っている方にとっては、課税価格の考え方は非常に重要ですので、ご参照いただけますと幸いです。

 

1 輸入貨物と共に輸入される容器と課税価格について

輸入貨物の課税価格は、「現実支払価格」にその含まれていない限度において「加算要素」の額を加えた価格によりことを原則としております(関税定率法4条1項)。
この加算要素については、関税定率法4条1項各号において列挙されており、同行2号ロにおいて、「輸入貨物に係る輸入取引に関し買手により負担される当該輸入貨物の容器の費用」が規定されております。
そして、この「容器」とは、関税率表の解釈に関する通則5「ケースその他これに類する容器並びに包装材料及び包装容器の取扱い」の規定により「当該物品に含まれる」おのとされるケースその他これに類する容器及び包装容器をいいます。

以上のとおりですので、例えば、国内でペットボトルに飲料水を詰めて販売するために、海外か、飲料水と、ペットボトルをそれぞれ輸入した場合には、当該ペットボトルは、輸入時に飲料水を収納している容器等ではありませんので、課税価格に加算する必要はありません。飲料水とペットボトルをそれぞれ算定すればよいものと考えられます。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出・輸入や通関上のトラブルに関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

公務員に対して国が負う安全配慮義務について

2021-11-10

本日は、公務員に対して国が安全配慮義務を負うかどうかについて、参考となる裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 自衛隊車両整備工場事件(最判昭和50・2・25労判222・13)

車両整備工場において車両整備に従事していた自衛隊員が、大型自動車に頭部をひかれて死亡した事案です。

【判示の概要】
国と国家公務員との間における主要な義務として、法は、公務員が職務に専念すべき義務(国家公務員法一〇一条一項前段、自衛隊法六〇条一項等)並びに法令及び上司の命令に従うべき義務(国家公務員法九八条一項、自衛隊法五六条、五七条等)を負い、国がこれに対応して公務員に対し給与支払義務(国家公務員法六二条、防衛庁職員給与法四条以下等)を負うことを定めているが、国の義務は右の給付義務にとどまらず、国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたつて、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負つているものと解すべきである。

もとより、右の安全配慮義務の具体的内容は、公務員の職種、地位及び安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によつて異なるべきものであり、自衛隊員の場合にあつては、更に当該勤務が通常の作業時、訓練時、防衛出動時(自衛隊法七六条)、治安出動時(同法七八条以下)又は災害派遣時(同法八三条)のいずれにおけるものであるか等によつても異なりうべきものであるが、国が、不法行為規範のもとにおいて私人に対しその生命、健康等を保護すべき義務を負つているほかは、いかなる場合においても公務員に対し安全配慮義務を負うものではないと解することはできない。

以上のとおり、判例では、安全配慮義務に関して、公務員と一般私人との間で別異に取り扱う理由はないと考えております。

 

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周知商標の概要について

2021-11-08

商標法においては、商標登録を受けることが出来ない事由が列記されております(商標法4条)。
このうち、本日は、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」(10号。いわゆる周知商標)の概要をご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。

1 周知商標の概要について

この点について参考となる裁判例に、麗姿事件(東京高判平14・12・25判時1817・135)があります。

【判時の概要】
本件は、原告を製造元、ちえの輪を総発売元とする原告らの企業グループから申立人が離脱して以降、同企業グループと、申立人に関連する企業グループとの双方が、いずれも自己の業務に係る商品を表示するものとして麗姿商標を使用してきたという事案に係るものである。

仮に、麗姿商標を使用する企業グループが申立人らの企業グループのみであるとするならば、麗姿商標に接した取引者、需要者は、麗姿商標が広く知られていないために特定の企業グループの業務に係る商品を表示するものと認識し得ないか、又は、当該商標が広く知られており申立人らの業務に係る商品を表示するものと認識するかのいずれかであるということができる。しかしながら、本件のように、麗姿商標を複数の企業グループが使用してきた場合には、当該商標そのものが広く知られたとしても、なお、これが複数の企業グループのいずれの業務に係る商品を表示するかについてまで広く知られていなければ、特定の企業グループの業務に係る商品を表示するものとして広く知られているということはできない。その意味でも、本件においては、麗姿商標が、原告らの企業グループではなく、申立人らの企業グループの業務に係る商品を表示するものとして広く知られていると認めることは困難である。

そのため、本件商標の登録出願時において、申立人商標を含む麗姿商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして取引者、需要者の間に広く知られていたということはできない。

 

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請負と労働者派遣の区別について

2021-11-05

本日は、請負と労働者派遣の区別についてご紹介いたします。
経営者にとっては、いずれに該当するかによって規制内容が異なりますので、十分注意していただく必要がありますので、ご参照いただけますと幸いです。

 

1 請負と労働者派遣の区別について

請負と労働者派遣の区別については、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」と題する告示(昭和61年労働省告示37号)が参考となります。

【告示の概要】
請負の形式による契約による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業主であっても、当該事業主が当該業務の処理に関し、①自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること及び②請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであることのいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とするものとされております。

その上で、①の判断においては、(i)業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること、(ii)労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること、(iii)労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること、(iv)企業における秩序の維持確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであることを要するとされております。

また、②の判断においては、(v)業務の処理に要する資金につき、全て自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること、(vi)業務の処理について、法律に規定された事業主としての全ての責任を負うこと、(vii)単に肉体的な労働力を提供するものではないこと、を要するものとされています。

 

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配転命令に関する裁判例

2021-11-03

これまで本コラムにおいて、配転命令の限界に関してご紹介してまいりました。
配転等の人事異動は、従業員、経営者いずれにとっても非常に重要な問題です。
そこで、本日は、配転命令に関する裁判例をご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。

 

1 東亜ペイント事件(最判昭61・7・14労判477・6)

事案としては、別の営業所への転勤について家庭の事情により拒否した従業員に対して、会社側が懲戒解雇を行ったところ、当該懲戒解雇の有効性が問題となった事案です。

【判示の概要】
使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができるものというべきであるが、転勤、特に転居を伴う転勤は、一般に、労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおかないから、使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することの許されないことはいうまでもないところ、当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であつても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもつてなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではないというべきである。右の業務上の必要性についても、当該転勤先への異動が余人をもつては容易に替え難いといつた高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性の存在を肯定すべきである。

 

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