採用内々定の取消しと損害賠償責任について

本日は、企業が採用内々定を取消す場合における従業員に対する損害賠償責任をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 採用内々定の取消しと損害賠償責任について

この点について参考となる裁判例としては、コーセーアールイー事件(福岡高判平23・3・10労判1020・82)があります。
事案としては、不動産売買等を業とする会社側が新卒採用の見直しを含む経営改善策が進められていることを応募者に説明することなく内々定を出したが、内定予定日の数日前に突然内々定を取消したという事案です。

【判示の概要】
本件内々定によって内定(始期付解約権留保付労働契約)が成立したものとは解されないから、控訴人(会社側のこと。以下同様。)の本件内々定取消しによって、被控訴人(内々定者のこと。以下同様。)に内定の場合と同様の精神的損害が生じたとすることはできないが、他方、採用内定通知書授与の日が定められた後においては、控訴人と被控訴人との間で労働契約が確実に締結されるであろうとの被控訴人の期待は、法的保護に十分に値する程度に高まっていたこと、被控訴人は、控訴人に就職することを期待して、本件内々定の前に受けていた他社からの複数の内々定を断り、就職活動を終了させていたこと、控訴人において、被控訴人のこのような期待や準備、更には就職によって得られる利益等に対する配慮をすることなく、被控訴人に対して上記のような採用についての方針変更について十分な説明をせずに、本件内々定の取消しを行い、被控訴人からの抗議にも何ら対応しなかったこと、本件内々定取消しによって受けた被控訴人の精神的苦痛は大きく、1か月程度、就職活動ができない期間が生じ、控訴人がいまだ就職できないでいるのも、その際の精神的打撃が影響していることがうかがわれることをも考慮すると、被控訴人が本件内々定取消しによって受けた被控訴人の精神的損害を填補するための慰謝料は50万円と認めるのが相当である。

以上のとおり、会社が内々定を取消す場合には内々定者の期待権の侵害として慰謝料を支払う義務が生じる可能性がありますので、ご注意ください。

 

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