厚生労働省は、妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取扱いの禁止を、各都道府県労働局雇用均等室長宛に発出した通達(平27・3・27雇児雇発0327第1号、雇児職発0327第2号)において明記しておりますが、妊娠・出産・育児休業等を契機としていても、法違反ではないとされる例外の1つとして、
「業務上の必要性から不利益取扱いをせざるを得ず、業務上の必要性が、当該不利益取扱いにより受ける影響を上回ると認められる特段の事情が存在するとき」
と規定しております。
そこで、本日は、上記「特段の事情」についてご紹介いたします。
このページの目次
1 「特段の事情」の内容について
「特段の事情」が存在する場合として、違法ではないと言い得るのは、以下の①及び②の要件を充足する場合であると考えられます。
①「業務上の必要性」から不利益取扱いをせざるを得ない状況にあること。
②「業務上の必要性」が、不利益取扱いにより受ける影響を上回る場合であること(不利益取扱いや、不利益取扱いの契機となった事由に、有利な影響がある場合(例:本人の意向に沿った業務負担の軽減等)は、それも加味した影響)。
以上の①及び②の要件を充足する場合は、妊娠・出産・育児休業等を「契機とし」た不利益取扱いであっても、法が禁止している妊娠・出産・育児休業等を「理由とする」不利益取扱いではないと考えられております。
2 「業務上の必要性」から不利益取扱いをせざるを得ない状況にあること、について
「業務上の必要性」から不利益取扱いをせざるを得ない状況とは、例えば、経営状況(業績悪化等)や本人の能力不足等を理由とする場合には、以下の事項等を勘案して判断することになります。
ア 経営状況(業績悪化等)を理由とする場合
(i)事業主側の状況(職場の組織・業務態勢・人員配置の状況)
(ii)労働者側の状況(知識・経験等)
イ 本人の能力不足・成績不良・態度不良等を理由とする場合(ただし、能力不足等は、妊娠・出産 に起因する症状によって労務提供ができないことや労働能率の低下等ではないこと)
(i)事業主側の状況(職場の組織・業務態勢・人員配置の状況)
(ii)労働者側の状況(知識・経験等)
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