税関事後調査では、申告の正確性を確認するために、多くの資料提出が求められます。
しかし、輸入事業者からすると「どこまで出す必要があるのか」、「資料を準備するには非常に手間があるので出来るだけ手間を省きたいが」といった不安も少なくありません。
今回は、税関に対する資料提出の範囲と対応上の注意点について、実務と法的視点の両面から解説いたします。
このページの目次
1 資料提出の根拠と調査の目的
税関は事後調査の一環として輸入者に対し、輸入に関係する帳簿・書類等の提出を求めることができます。
提出を求められるのは、輸入申告に用いた資料だけでなく、価格設定・原産地・契約関係に関する社内資料等も含まれる場合があります。
税関の目的は、主に以下の3点です。
①適正な関税額が申告・納付されているかの確認
②原産地申告(FTA・EPA利用含む)の正確性の検証
③過少申告や不正申告の有無の調査
2 提出を求められる代表的な資料
調査通知時に「提出をお願いしたい資料一覧」が提示されます。一般的には以下のような資料が該当します。
①インボイス、パッキングリスト、B/L(船荷証券)
②契約書(売買契約、委託製造契約など)
③支払明細、送金証明(TT送金書等)
④関税評価計算書・価格根拠資料
⑤原産地証明書、製造工程表(FTA関連)
⑥関連会社間の取引価格設定の社内資料
⑦会計帳簿(仕訳帳・元帳・総勘定元帳)
その他、税関から追加的にメールや社内資料の提示を求められることもあります。
3 任意提出であっても協力義務はある
税関調査は任意の行政調査であり、強制調査ではありませんが、調査への協力を拒否したり、資料の提出を怠った場合、好ましくない状況となる可能性があります。
そのため、合理的な範囲で協力しつつ、自社の立場を明確にし、誤解を避ける書面作成が重要です。
4 弁護士を介した対応のメリット
①提出範囲が妥当かを法的に精査
②誤解を防ぐための説明文の作成
③税関との交渉(口頭説明・書面やり取り)の代理
④自社に不利な主張に対する法的反論の構築
税関対応は「専門用語」「法律論」「税務知識」が複雑に絡むため、弁護士が資料整理のアドバイザーとして関与することは、実務上非常に有効です。
税関への資料提出は、「何でも出せばよい」というわけではありません。
提出範囲を明確に整理し、必要に応じて補足説明や弁護士の関与を通じて、誤解のない対応を行うことが、調査結果を左右する鍵となります。
当事務所では、事後調査対応の総合的サポートを行っております。事前準備や初動対応でお困りの際は、ぜひご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。