輸入ビジネスを行っている企業にとって、税関による「事後調査」は避けて通れないリスクの一つです。多くの企業が「インボイス通りの価格を申告しているから大丈夫」と考えていますが、実はここに大きな落とし穴があります。
事後調査で指摘され、多額の課税(関税+消費税+加算税)がなされるケースの相当程度は、単価の誤りではなく「加算要素」の申告漏れに起因しています。
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1 インボイス価格=課税価格ではない
関税法上の「課税価格」は、単に貨物の代金(インボイス価格)だけではありません。
「現実に支払われる価格」に加えて、輸入貨物に関連して買手が負担する費用を加算する必要があります。これを「加算要素」と呼びます。
通関業者(乙仲)は、輸入者から提供されたインボイス等の書類に基づいて申告書を作成しますが、インボイスに記載されていない「別払いの費用」までは把握できません。そのため、輸入者自身が正しく理解し、通関業者に情報を伝えなければ、意図せず「脱税(過少申告)」の状態になってしまうのです。
2 事後調査で指摘されやすい「加算要素」
税関の調査官は、会計帳簿(総勘定元帳など)と輸入申告書を突き合わせ、以下の費用が課税価格に含まれているかをチェックします。
①ロイヤルティ(特許権使用料等)
輸入貨物に関連して、海外のライセンサー等に支払うロイヤルティは、原則として課税価格に加算する必要があります。「貨物代金とは別の契約書で支払っているから関係ない」という誤解が非常に多く、注意が必要です。
② 金型代・無償提供資材
海外の工場で製品を作らせる際、日本側で金型を作成して送ったり、原材料を無償で提供したりしていませんか?これらの費用も、輸入貨物の価値を構成するものとして加算対象となります。
③買付手数料と販売手数料の違い
海外のエージェントに支払う手数料については、「買付手数料」であれば非加算ですが、「販売手数料」等であれば加算対象となるなど、契約の実態に応じた高度な判断が求められます。手数料は基本的に加算対象となる点には注意が必要です。
3 重加算税、刑事事件化のリスクと弁護士の役割
これらの申告漏れが発覚した場合、不足していた関税・消費税に加え、原則として10%(または15%)の「過少申告加算税」が課されます。
さらに、事実を隠蔽・仮装していたと認定されれば、35%~40%もの「重加算税」が課される可能性があります。また、場合によっては刑事事件に発展する可能性もあります。
そのため、事後調査の通知が来た段階、あるいは調査中に指摘を受けた段階で、早期に弁護士へ相談することをお勧めします。
事後調査は、単なる税務処理ではなく「法解釈の争い」でもあります。予期せぬ課税を防ぐためにも、貿易実務に精通した専門家のサポートをご検討ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。

