特殊関係と課税価格への影響

0 はじめに:相談事例

まずは、親子会社間や関連会社間の取引において、多くの企業が直面する具体的な相談事例をご紹介いたします。

【相談者:海外ブランド日本法人 F社 サプライチェーンマネージャー】

「当社はフランスにある親会社から香水や化粧品を輸入し、国内で販売しております。親会社からの仕入価格はグループ内価格として設定されており、一般的な卸売価格よりも低く設定されています。先日、税関から『売手と買手の間に特殊関係があるため、現在の申告価格が妥当かどうか精査が必要である』との指摘を受けました。長年この価格で輸入してきましたが、親子会社であるという理由だけで、インボイスの価格が否定されてしまうのでしょうか。また、どのような関係があれば『特殊関係』に該当し、どのような基準で価格の妥当性を証明すればよいのでしょうか。」

輸入取引において、売手と買手の間に密接な関係がある場合、その価格が恣意的に操作されているのではないかという疑念が税関側に生じます。以下では、関税評価における「特殊関係」の法的定義とその影響について詳細に解説いたします。

1 特殊関係が課税価格に与える法的影響

原則として、輸入貨物の課税価格は「取引価格」に基づき決定されます。しかし、売手と買手の間に「特殊関係」があり、その関係が取引価格に影響を及ぼしていると判断される場合には、その価格を課税価格として採用することができません。

【根拠法令】

関税定率法第4条第2項第4号

「買手と売手との間に特殊関係(…中略…)がある場合において、その特殊関係が当該輸入貨物の取引価格に影響を与えていると認められるときは、第1項の規定(取引価格による決定)は適用しない。」

この規定の目的は、関連企業間での不当な低価格申告による関税逃れを防止することにあります。特殊関係があること自体は違法ではありませんが、その価格が「独立した第三者間での取引価格」と同等であることを輸入者側が立証できなければ、例外的な決定方法(同種貨物の価格や国内販売価格からの逆算など)に移行することになります。

2 「特殊関係」の具体的な定義と範囲

「特殊関係」の範囲については、関税定率法施行令および基本通達によって厳格に定められています。以下の9つの項目のいずれかに該当する場合、法的な特殊関係が存在するものとみなされます。

「法第4条第2項第4号に規定する政令で定める特殊な関係がある場合は、次に掲げる場合とする。」

以下に、その具体的な内容を整理した一覧表を掲載いたします。

【表:関税法上の特殊関係に該当する9つの類型】

特殊関係の内容(定義) 具体的な詳細・補足説明
相互の役員兼任 一方の役員が他方の役員(取締役、監査役、理事等)を兼ねる場合
共同経営者 法令上認められた形態で、出資や労務を共にし事業を営む関係
使用者と被用者 いわゆる雇主と従業員の関係にある場合
5%以上の株式所有 一方が他方の議決権付株式の5%以上を直接・間接に所有する場合
直接又は間接の支配 一方が他方を法律上又は事実上、拘束し指示する立場にある場合
同一第三者による所有 同一の第三者が、売手・買手双方の株式を5%以上所有する場合
同一第三者による支配 売手と買手の双方が、同一の第三者から直接又は間接に支配されている
共同による第三者支配 売手と買手が共同して、同一の第三者を直接又は間接に支配している
親族関係 配偶者、6親等内の血族、及び3親等内の姻族

3 特殊関係の各項目に関する専門的解説

3-1 「支配」の概念

ここでいう「支配」とは、必ずしも株式の過半数を所有している必要はありません。例えば、主要な取引先であり、その指示に従わなければ事業継続が困難であるような「事実上の支配」も含まれます。また、技術提携や独占販売権の付与に伴い、経営上の重要な意思決定が他方によって左右される場合も慎重な判断が求められます。

3-2 親族関係の範囲

関税法における親族の範囲は非常に広く設定されています。「6親等内の血族」には、従兄弟の子供や孫までが含まれます。個人輸入や小規模な家族経営企業間の取引において、この規定を見落とし、事後調査で指摘を受けるケースが散見されます。

4 「価格に影響を与えている」かどうかの判断基準

特殊関係に該当した場合でも、直ちに取引価格が否定されるわけではありません。関税定率法基本通達4-19では、以下の要素などを加味して、その価格が妥当かどうかを審査されます。

4-1 取引状況の検討(事情の精査)

売手と買手との間の取引が、特殊関係のない通常の顧客に対する販売価格の決定方法と同一である場合、あるいはその価格が当該業界の通常の価格形成慣行と一致している場合などは、「影響を与えていない」と判断されます。

4-2 標準価格との比較

輸入者が、その取引価格が以下のいずれかの価格(標準価格)に近いものであることを証明した場合です。

①同種又は類似の貨物に係る取引価格(特殊関係のない者間のもの)

②国内販売価格から逆算した課税価格

③製造原価から積み上げた課税価格

5 実務上の対策:輸入事後調査への備え

税関の輸入事後調査において、特殊関係間の取引価格は重点的な確認項目となります。企業としては、あらかじめ以下の資料を準備しておくことが重要です。

①価格決定プロセスを説明する書類:価格表(プライスリスト)、原価計算書、グループ内の移転価格ポリシー

②第三者向け価格との比較表:親会社が他国の非関連企業に販売している価格との差異説明

③移転価格税制との整合性:法人税法上の移転価格文書(ローカルファイル等)との整合性。ただし、税務上の「独立企業間価格」と関税上の「課税価格」は必ずしも一致しない点に注意が必要です。

6 特殊関係の未申告によるリスク

輸入申告において事実があるにもかかわらず特殊関係が存在しないものとして申告し、後の調査で発覚した場合には、意図的な隠蔽とみなされ、重加算税が課されるリスクが高くなります。

また、一度価格が否認されると、過去数年分に遡って更正(追徴課税)が行われるため、多額のキャッシュアウトが発生し、経営に深刻なダメージを与える可能性があります。

7 おわりに:当事務所のサポート

輸入貨物の課税価格、特に特殊関係が絡む事案は、関税法の中でも最も技巧的で専門性の高い領域です。税関当局との見解の相違が生じた際、論理的な証拠を持って対抗するためには、深い法知識と実務経験が不可欠です。

当事務所では、代表弁護士が通関士資格を保有しており、輸出入や通関に関する豊富な知見を有しております。

①特殊関係の該当性診断:貴社の取引構造を精査し、法的なリスクを洗い出します。

②価格妥当性の立証支援:税関に対し、現在の取引価格が正当であることを証明するための法的意見書を作成いたします。

③事後調査の立会と交渉:不当な価格否認が行われないよう、現場での適切な主張と交渉を代行します。

「親子会社間の取引価格に不安がある」、「税関から説明を求められているが、どう答えればよいかわからない」といったお悩みがあれば、まずは当事務所までお気軽にお問い合わせください。貴社の適正な輸入申告と、円滑な国際ビジネスを全力でバックアップさせていただきます。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

 

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