「退職する従業員に競業避止義務を課したいのですが、どのように考えればよいでしょうか。正直なところ、ノウハウ等を持っている従業員であるので、例えば、今後一切競業をしないということまで約束させることができることが望ましいのですが、そのようなことは可能でしょうか。」、というご相談をお受けすることがあります。
結論としては、退職する従業員に対して一定の競業避止義務を課すことは可能ですが、ご相談にあるような退職後永久に競業を禁止するといったことはできません。
以下、ご説明いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。
このページの目次
1 原則
職業選択の自由は憲法上人権として保障されているので、原則、従業員が他社で競業をすることを防ぐことはできませんし、退職を認めないといった対応を取ることもできません。
在職中であれば、労働契約上の付随的な義務として競業が禁止されると考えることもできますが、退職後の従業員に対しては、上記職業選択の自由を踏まえ、競業避止義務が当然に認められるということにはなりません。
2 退職後の競業が制限できる場合
退職後の競業制限を設けるために企業側が行うべき対応としては、従業員の在職中に、退職後の競業避止義務を定める誓約書等を締結しておく必要があるものといえます。
しかしながら、あくまでも職業選択の自由に抵触する措置となりますので、競業禁止に関して合理的な制限を設けられていることが必要です。
この点に関する裁判例をみますと、競業制限の期間や禁止される競業行為の範囲・地域が必要最小限にとどめられていた、また、適切な代償措置が講じられていた等の点が有効性を判断する上でのポイントになっているものといえます(大阪地判平12・6・19労判791・8等)。
3 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、人事労務を幅広く取り扱っております。
在職中の従業員の競業避止義務、退職後の従業員の競業禁止をはじめ、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。