従業員の試用期間を延長することは、就業規則等で具体的な内容を明記しない限りは法的には無効であり認められないと考えられております。
本日は、この点に関して参考となる裁判例をご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。
1 試用期間の延長について
この点について、参考となる裁判例として、ブラザー工業事件(名古屋地判昭59・3・23労判439・63)があります。
【判示の概要】
現行の社員登用制度の内容及び中途採用者の雇用の実態に基づいて右規定を法律的に解釈すると、見習社員が試用社員に登用された時点において、当該試用社員と会社との間に見習社員契約とは別個の期間の定めのない雇用契約が新たに成立し、右契約において原則として六か月の試用期間中に会社において当該試用社員が会社の正規従業員として不適格であると認めたときは、それだけの理由で右雇用契約を解約し得るという解約権を留保したものと解するのが相当である。
一般に、試用期間中の留保解約権に基づく解雇については本採用後の通常の解雇の場合よりも広い範囲の自由が認められるものと解されているから、試用期間中の労働者の地位は本採用後の労働者の地位に比べて不安定であるというべきである。会社においても、〈疎明〉によれば、社員の場合は、無届欠勤でない限り長期間病気欠勤をしても他企業のように休職制度はない代わり解雇されることはないことが認められるのに対し、前認定の中途採用者登用制度の内容によると、見習社員及び試用社員であると病気欠勤も勤怠基準である欠勤換算日数の中に一定の割合で算入されるためそれが長期に及べば雇止め又は解雇されることになるから、この一事からしても、見習社員及び試用社員の地位は社員に比べて不安定であることが明らかである。また、前認定のとおり、選考基準が改訂される場合は、改定後の基準が選考対象者に事前に周知されないため、選考対象者としてはどの程度の勤務・勤怠状態であれば不合格になるかの予測を立てることが不可能であることも見習社員及び試用社員の地位を不安定にさせているというべきである。
右のとおり、試用期間中の労働者は不安定な地位に置かれるものであるから、労働者の労働能力や勤務態度等についての価値判断を行なうのに必要な合理的範囲を越えた長期の試用期間の定めは公序良俗に反し、その限りにおいて無効であると解するのが相当である。
以上のとおり、試用期間の延長に関しては、会社に規定がある場合でも公序良俗に反するとして無効と判断される可能性がありますので、十分注意する必要があります。
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