Archive for the ‘発信者情報開示請求関連’ Category

事実摘示型と意見論評型の判断基準

2022-10-27

名誉毀損に該当するかどうかの判断基準においては、その表現が事実を摘示するものなのか、それとも意見論評の類のものなのかによって、用いられる判断基準が異なります。

そこで、本日は、ある表現について、事実を摘示するものなのか、それとも意見論評の類のものなのかに関する判断基準を示した、最判平成10年1月30日(集民187・1)について、本日はご紹介いたします。

1 最判平成10年1月30日の判示内容

最高裁は、ある表現について、事実を摘示するものなのか、それとも意見論評の類のものなのかに関して、以下のとおり判示しました。

「名誉毀損の成否が問題となっている部分において表現に推論の形式が採られている場合であっても、当該記事についての一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に、当該部分の前後の文脈や記事の公表当時に右読者が有していた知識ないし経験等も考慮すると、証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を右推論の結果として主張するものと理解されるときには、同部分は、事実を摘示するものと見るのが相当である。」

ある表現について、事実を摘示するものなのか、それとも意見論評の類のものなのか、いずれであるかによって、裁判での争い方は大きく異なるものであるところ、その判断基準を明確に判断した判例として非常に有名なものです。

ただし、「証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項」に該当するかどうかそのもので、争いとなる場合も多いので、判断基準としては明確になりましたが、実際の争いの場では、依然として一義的に区分けがされるとは言い切れない状態というの実情です。

2 名誉毀損に関するトラブルに巻き込まれてしまった場合

最近では、個人間におけるトラブル、企業への誹謗中傷など、様々な場面でのインターネットトラブルが増加の一途をたどっております。

また、意図的なものから自分としては違法行為を行う意図はなかったものの、結果として違法行為に該当する行為を行ってしまっているものまで、様々な態様が存在します。

インターネットトラブルに関しては、被害者の立場、加害者の立場のいずれの立場においても、民事事件、刑事事件の両方の側面から慎重にどのように対応を進めるべきかを検討することが重要です。

どのような対応を取る必要があるかにつきましては、まずはインターネットトラブルに詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

私生活上の平穏について

2022-10-20

私生活上の平穏を人格的利益として法的保護の対象である旨を判示した判例である、最判平成元年12月21日(民集43・12・2252)について、本日はご紹介いたします。

1 最判平成元年12月21日の判示内容

最高裁は、以下のとおり判示しました。

「被上告人らの中には、電話、葉書、スピーカーによる嫌がらせや非難攻撃を繰り返し受け、家族に対してまで非難の宣伝をされた者があり、その余の者も右事実を知り同様の攻撃等を受けるのではないかと落ち着かない気持ちで毎日を送ったことは前示のとおりである。被上告人らの社会的地位及び当時の状況等にかんがみると、現実に右攻撃等を受けた被上告人らの精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度内にあるということはできず、その余の被上告人らの精神的苦痛も、その性質及び程度において、右攻撃等を受けた被上告人らのそれと実質的な差異はないというべきところ、原審が適法に確定したところによると、被上告人らの氏名・住所・電話番号等を個別的に記載した本件ビラを大量に配布すれば右のような事態が発生することを上告人において予見していたか又は予見しなかったことに過失がある、というのであるから、被上告人らは上告人の本件配布行為に起因して私生活の平穏などの人格的利益を違法に侵害されたものというべきであり、上告人はこれにつき不法行為責任を免れないといわざるを得ない。」

不法行為に該当するかどうかの判断基準である受忍限度という概念を用いて、一定の場合には、私生活上の平穏が人格的利益として法的に保護されるものであることを明確に判断した判例として非常に有名なものです。

2 名誉毀損に関するトラブルに巻き込まれてしまった場合

最近では、個人間におけるトラブル、企業への誹謗中傷など、様々な場面でのインターネットトラブルが増加しております。

意図的なものから自分としては違法行為を行う意図はなかったものの、結果として違法行為に該当する行為を行ってしまっているものまで、様々な態様が存在します。

インターネットトラブルに関しては、被害者の立場、加害者の立場のいずれの立場においても、民事事件、刑事事件の両方の側面から慎重にどのように対応を進めるべきかを検討することが重要です。

どのような対応を取る必要があるかにつきましては、まずはインターネットトラブルに詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

法人に対する名誉毀損

2022-10-13

インターネットトラブルの代表的なものとして名誉毀損に関するトラブルがあります。

ここで、法人に対する名誉毀損に関して、損害賠償請求をどのように捉えるべきかが問題となった事案がありました。

その判断を示した判例である、最判昭和39年1月28日(民集18・1・136)について、本日はご紹介いたします。

1 最判昭和39年1月28日の判示内容

法人に対する名誉棄損における損害賠償請求について、最高裁は、以下のとおり判示しました。

「民法七一〇条は、財産以外の損害に対しても、其賠償を為すことを要すと規定するだけで、その損害の内容を限定してはいない。すなわち、その文面は判示のようにいわゆる慰藉料を支払うことによつて、和らげられる精神上の苦痛だけを意味するものとは受けとり得ず、むしろすべての無形の損害を意味するものと読みとるべきである。従つて右法条を根拠として判示のように無形の損害即精神上の苦痛と解し、延いて法人には精神がないから、無形の損害はあり得ず、有形の損害すなわち財産上の損害に対する賠償以外に法人の名誉侵害の場合において民法七二三条による特別な方法が認められている外、何等の救済手段も認められていないものと論詰するのは全くの謬見だと云わなければならない。

 思うに、民法上のいわゆる損害とは、一口に云えば、侵害行為がなかつたならば惹起しなかつたであろう状態(原状)を(a)とし、侵害行為によつて惹起されているところの現実の状態(現状)を(b)としa-b=xそのxを金銭で評価したものが損害である。そのうち、数理的に算定できるものが、有形の損害すなわち財産上の損害であり、その然らざるものが無形の損害である。しかしその無形の損害と雖も法律の上では金銭評価の途が全くとざされているわけのものではない。侵害行為の程度、加害者、被害者の年令資産その社会的環境等各般の情況を斟酌して右金銭の評価は可能である。その顕著な事例は判示にいうところの精神上の苦痛を和らげるであろうところの慰藉料支払の場合である。しかし、無形の損害に対する賠償はその場合以外にないものと考うべきではない。そもそも、民事責任の眼目とするところは損害の填補である。すなわち前段で示したa-b=xの方式におけるxを金銭でカヴアーするのが、損害賠償のねらいなのである。かく観ずるならば、被害者が自然人であろうと、いわゆる無形の損害が精神上の苦痛であろうと、何んであろうとかかわりないわけであり、判示のような法人の名誉権に対する侵害の場合たると否とを問うところではないのである。尤も法人の名誉侵害の場合には民法七二三条により特別の手段が講じられている。しかし、それは被害者救済の一応の手段であり、それが、損害填補のすべてではないのである。このことは民法七二三条の文理解釈からも容易に推論し得るところである。そこで、判示にいわゆる慰藉料の支払をもつて、和らげられるという無形の損害以外に、いつたい、どのような無形の損害があるかという難問に逢着するのであるが、それはあくまで純法律的観念であつて、前示のように金銭評価が可能であり、しかもその評価だけの金銭を支払うことが社会観念上至当と認められるところの損害の意味に帰するのである。それは恰も民法七〇九条の解釈に当つて侵害の対象となるものは有名権利でなくとも、侵害されることが社会通念上違法と認められる利益であれば足るという考え方と志向を同じうするものである。」

2 名誉毀損に関するトラブルに巻き込まれてしまった場合

最近では、個人間におけるトラブルにとどまらず企業への誹謗中傷も多くなっております。

企業としては、なかなか消費者側に対して訴えを提起することは難しい側面もありますが、企業としての評判や従業員を守るためにはしかるべき法的な対応を取らざるを得ない場合もございます。

どのような対応を取る必要があるかにつきましては、まずは弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

名誉棄損の判断基準

2022-10-06

インターネットトラブルの代表的なものとして名誉毀損に関するトラブルがあります。

では、名誉毀損とはどのように判断されるものなのでしょうか。

その判断方法を示した判例である、最判昭和31年7月20日(民集10・8・1059)について、本日はご紹介いたします。

1 最判昭和31年7月20日の判示内容

名誉毀損に該当するかどうかの判断基準として、最高裁は、「名誉を毀損するとは、人の社会的評価を傷つけることに外ならない。それ故、所論新聞記事がたとえ精読すれば別個の意味に解されないことはないとしても、いやしくも一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従う場合、その記事が事実に反し名誉を毀損するものと認められる以上、これをもつて名誉毀損の記事と目すべきことは当然である。」と判示しました。

名誉毀損に関するトラブルにおいては、投稿者側の反論として、自分としてはそのような意味で投稿したわけではない、良く読めば自分の真意が分かるはずであり、名誉毀損には該当しない等と主張される場合があります。

しかしながら、人の名誉が客観的に毀損されたかどうかの判断においては、上記のとおり、あくまでも一般読者の普通の注意と読み方を基準として判断されることとなります。

投稿者がどのような意図であったかや、良く読めばどのように理解することができるといったことは関係ありません。

投稿者側の主張もあながちわからなくはないのですが、現在の判例を踏まえますと、裁判においては容れられることのない主張となりますので十分注意する必要があります。

2 名誉毀損に関するトラブルに巻き込まれてしまった場合

上記のとおり、名誉毀損とは、あくまでも当該表現内容について、一般読者の普通の注意と読み方を基準に判断されることとなりますので、自身では名誉毀損をしている意図がない場合でも名誉毀損に該当してしまう場合が相当程度ございます。

名誉棄損は刑事事件化する可能性もある問題となりますので、安易に大事にはならないだろうと考えてしまうことは非常に危険であると言わざるを得ません。

特に上記のとおり、自分では名誉毀損を行ったという意識がない方は、実際には非常にリスクのある状況にあると言えます。

被害者の立場、加害者の立場を問わず、名誉棄損に関するトラブルに巻き込まれてしまった場合には、速やかにインターネットトラブルに詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

正当な主張と名誉棄損との境について

2022-09-29

名誉棄損等で問題となっている事件の加害者となった方からのご相談をお受けしていると、軽い気持ちで知人や有名人の誹謗中傷をしてしまっている方もいる一方で、「良くない」ことをした個人や事業者に対しての正当な評価と他の方への注意喚起のために投稿している方も非常に多くいらっしゃいます。

ジャーナリストやマスコミといった業種の方々同じような感覚で、社会的に「悪い」ものを摘発して何が問題となるのか、違法性阻却事由が認められるはずであると強く信じていらっしゃる方も多くいらっしゃいます。

法的な観点からアドバイスできることとしては、問題がある方や会社があったとしても、基本的にはインターネットやSNS等で公衆に対して自身で発信をすることはやめた方がよいといえます。

もちろん、事実の公共性、目的の公益性、真実性の証明といったことができる場合には違法性阻却事由に該当することになりますし、仮に事実の主張ではなく論評の場合には、論評の域を逸脱していなければ法的には問題ないこととなります。

しかしながら、これらの立証は、現実問題としては非常に難しいというのが実情ですし、仮に立証できるとしても多くの手間がかかってしまい、逆に自分自身にとって大きなデメリットとなってしまいます。

したがって、基本的には、特定の人物や企業に対して名誉棄損等に該当する内容を自身で発信することは控えていただいた方が安心です。

では、何か問題のある人物や企業から被害を直接的な被害を被った場合において、泣き寝入りをするほかないのかというと、そのようなことはありません。

民事上の裁判手続や刑事事件化、あるいは関係する行政や業界組織への苦情申立てなど、合法的な手続の中で被害回復を図っていくことが重要です。

インターネットやSNSの発展によって、誰もが大衆に対して情報発信をできるようになったことはメリットが多くある一方でデメリットも多くあります。

そのデメリットの中の一つが、まさに名誉棄損等に該当する可能性が飛躍的に高まったということですので、インターネットやSNSの利用においては十分ご注意ください。

インターネットトラブルが発生した場合には、被害者の立場であっても、加害者の立場であっても、いずれの立場であっても速やかに対応を進めることが必要です。

どのような対応を最終的に取るにせよ、まずは慎重に状況を検討することが必要ですので、弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

パブリシティ権侵害について

2022-09-22

ニュース番組等で、芸能人のパブリシティ権侵害等の特集がなされることも多くありますので、パブリシティ権という表現を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

パブリシティ権という権利は、法的な性質を理解することがなかなか難しい側面はあるのですが、肖像権との違い等を質問いただくことも増えてきましたので、本日はパブリシティ権に関して概要をご紹介いたします。

1 パブリシティ権とは

 パブリシティ権については法律上の明文があるわけではなく、裁判例上認められていると考えられている権利になります。

具体的には、最判平成24年2月2日において、パブリシティ権侵害が不法行為法上の違法となる場合について、人の氏名、肖像等(以下、併せて「肖像等」という。)が有する顧客吸引力を排他的に利用する権利(パブリシティ権)が人格権に由来する権利の一内容を構成するとした上で、肖像等を無断で使用する行為は、「専ら顧客吸引力の利用を目的とする場合」に、パブリシティ権を侵害するものとして不法行為法上違法になると判示しております。

 そして、「専ら顧客吸引力の利用を目的とする場合」として、①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合、②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付する場合、③肖像等を商品等の広告として使用する場合という3類型を示しています。

 肖像権侵害の一類型と言えなくはないのですが、肖像のうちの商業的な部分に特に着目した権利と言えますので、肖像権とは別種の権利と考えた方が法的には理解しやすいと考えられます。

2 パブリシティ権侵害が問題となった場合に

パブリシティ権侵害が問題となる場合についてですが、なかなか一般の方がパブリシティ権侵害の被害者となる場合は多くはないものと思われます。

一般の方の肖像が顧客誘引力を有する場合はあまり多くないと考えられるからです。

もっとも、昨今ではインターネット、SNSの爆発的な普及によって、一般の方の画像を商業目的で利用される場合も相当程度あるものと思いますので、一般の方だからといってパブリシティ権が一切認められないというわけではない点には注意が必要です。

パブリシティ権侵害の加害者、被害者のいずれの立場においても、権利侵害が問題となった場合には、速やかに弁護士等にご相談いただくことが重要です。

権利の法的性質自体がなかなか難しいものがありますので、権利侵害が問題となる場合には、まずはご相談いただくことをお勧めいたします。

発信者情報開示に関する新制度の下でのコンテンツプロバイダ

2022-09-15

発信者情報開示請求に関して、被害者救済の観点から従来の法律が改正され、新たな制度が創設されました。

新制度によって、サイト管理者等のコンテンツプロバイダは従来よりも大幅に責任が増大しました。

そのため、コンテンツプロバイダは従来のような受動的な立場では責任を果たしたことにならず、一定の積極的な対応を求められることとなります。

本日は、新たな制度のもとで、サイト管理者等のコンテンツプロバイダがどのような対応を行う必要があるか、その概要をご紹介いたします。

1 従来のコンテンツプロバイダの対応について

従来の制度の下では、権利者側がコンテンツプロバイダに対してIPアドレスの開示を仮処分手続によって求め、仮処分手続が認められた場合にはじめてコンテンツプロバイダはIPアドレスを権利者側に開示をすることとなります。

そのため、コンテンツプロバイダは、あくまでも受動的に仮処分手続に従うという対応を取れば十分ということでした。

2 新制度のコンテンツプロバイダの対応について

新制度の下では、権利者側は提供命令の申立を裁判所に行うことが可能です。

提供命令によって、コンテンツプロバイダは、問題となっているIPアドレスのアクセスプロバイダを特定し、アクセスプロバイダに関する情報を申立人に対して提供することが必要となります。

そのため、従来はコンテンツプロバイダとしては自身が保有している情報のみを仮処分に基づき開示すればよかっただけですが、新制度の下では、自身で必要な情報を収集することが必要となりますので、対応には注意が必要です。

コンテンツプロバイダにとっては、アクセスプロバイダの特定作業等はなかなか行ったことがないものだと思います。WHOIS検索等を利用して特定していくことが必要となりますので、ご自身での対応が難しい場合には一度弁護士等にご相談いただくことをお勧めいたします。

3 被害者、加害者いずれの立場を踏まえても、早期に弁護士にご相談いただくことが重要です

被害者の立場はもちろんのこと、加害者の立場を踏まえても、インターネットトラブルが発生した場合には、早期に弁護士にご相談いただくことが必要です。

新制度の下では、被害者救済の観点から様々な制度が新設されておりますが、被害者にとっては時間との戦いという側面が依然として強く残っている点には十分注意をしていただくことが必要です。 また、加害者の立場を踏まえても、短期間のうちに被害者側から慰謝料請求等がなされる可能性がありますので、速やかに対応を検討する必要があります。

発信者情報開示に関する新制度

2022-09-08

発信者情報開示請求に関して、従来の法律が改正され、新たな制度が創設されました。

この件は、テレビのニュース番組等でも特集されておりますので、なんとなく聞いたことがあるという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

従来の制度を変更し、被害者救済をより確実に行うことができるようにすることが制度変更の趣旨となります。

本日は、どのような変更があったのか、その概要をご紹介いたします。

1 従来の発信者情報開示請求手続の基本的な流れ

従来、例えば、匿名掲示板上において誹謗中傷などを行った投稿者を特定するためには、大きく2段階の手続を経る必要がありました。

具体的には、1段階目として、コンテンツプロバイダに対してIPアドレスの開示を求める仮処分手続、2段階目として、アクセスプロバイダに対して投稿者の氏名住所等の情報の開示を求める裁判手続、を順に行う必要がありました。

このように、2段階の裁判手続を順に行う必要があったことから、最終的な投稿者の特定までに半年以上の時間が掛かることが通常であり、1年以上かかる場合もよくあるという状況でした。

また、アクセスプロバイダの通信ログの保存期間の問題もあり、時間との戦いという側面も強くあり、被害者救済の観点からは非常に多くの問題があるという状況でした。

2 新制度の下での発信者情報開示命令事件の基本的な流れ

新制度の下でも、概念として2段階の手続が必要となることに変わりはないのですが、実際には1つの裁判手続で統一的に進めることができるようになりました。

その結果、手続上は、従来よりも数か月程度早く投稿者の特定まで至ることができるようになったと考えられております。

開示命令の申立、提供命令の申立、消去禁止命令の申立等の新たな手続が新設された結果といえます。

これらの手続の詳細については、後日改めてご紹介いたします。

3 被害者、加害者いずれの立場を踏まえても、早期に弁護士にご相談いただくことが重要です

上記のとおり、発信者情報開示に関する新たな手続は、被害者救済の観点からは大きな前進といえますが、だからといって悠長に構えていることはできません。

これまでよりも若干時間的に余裕ができたとはいえ、アクセスプロバイダの通信ログが残っている間に消去禁止命令を実施する必要があります。

そのため、インターネット上のトラブルにおいて被害者の立場の方は、可及的速やかに弁護士までご相談いただき、手続をスタートさせていただくことが必要です。

また、加害者の立場の方にとっても、投稿後速やかに被害者側から慰謝料請求等がなされる可能性がありますので、自身がトラブルの加害者となってしまった場合には、その後の手続を踏まえてできるだけ速やかに対応を検討することが必要です。

侮辱罪に該当する投稿内容

2022-09-01

1 侮辱罪で違法と判断される具体例

侮辱罪は、2022年7月7日以降の行為については最大懲役刑もあり得る刑に厳罰化されました。

逮捕等も十分あり得る犯罪に該当するようになったことから、今後はますます自信の投稿内容に注意する必要があります。

そこで、本日は、これまで侮辱罪に該当すると判断された事例として公表されているものをご紹介いたします。

①インターネット上の匿名掲示板に「昔、どっ突かれては泣きながら猫パンチして笑われ者だった○○は自分の稼ぎで自分の家族を住まわせる住まいすら持てなくて豚女房の親が買ったボロ家で情けねー住み着き生活している廃品クズ野郎(笑)」などと掲載されたケースにおいて、投稿者に9000円の科料が科された。

②インターネット上の匿名掲示板において「母親が金の亡者だから、稼げ稼げ言ってるらしいよ!育ててやってんだから稼いで金よこせ!って言われてんじゃないかしら?」、「子供達しょっちゅう施設に入ってたらしいよ」などと掲載されたケースにおいて、投稿者に9000円の科料が科された。

③インターネット上の匿名掲示板において「○○って?」と題するスレッドに、「○○は自己中でワガママキチガイ」「いや違う○○は変質者じゃけ!」などと掲載されたケースにおいて、投稿者に9900円の科料が科された。

④インターネットサイトの口コミ掲示板において、「詐欺不動産」、「対応が最悪の不動産屋。頭の悪い詐欺師みたいな人。」などと掲載されたケースにおいて、投稿者に9000円の科料が科された。

2 投稿が問題のないものか投稿前に立ち止まることが非常に重要です

侮辱罪に懲役刑が導入されたことで、不用意な投稿の抑止力になることが望ましいところではありますが、実際に問題のある投稿がなされることはなかなか難しいことも予想されます。

投稿者には表現の自由があるものの、他者を傷つけて良いということはありません。

自分としては軽い気持ちで行った投稿であっても、相手を傷つけるだけではなく、刑事罰まで科されるリスクもありますので、SNSやインターネット上の投稿には最大限慎重に行っていただく必要があります。

自身がSNSやインターネット上に投稿を行う前には、一度立ち止まって投稿が問題ないかどうか振り返って検討していただくようご注意ください。

侮辱罪に該当する表現

2022-08-25

1 侮辱罪で違法と判断される具体例

侮辱罪は、2022年7月7日以降の行為については最大懲役刑もあり得る刑に厳罰化されました。

そこで、侮辱罪に該当しうる行為であるのかどうか、という点がこれまで以上に問題となる場面が増えてきますので、本日は、侮辱罪で違法と判断される具体例として公表されている行為をご紹介いたします。

あくまでも一例にすぎませんが、人によってはこの程度の投稿で問題になるのかと疑問を持たれる方もいるかと思います。今後、インターネット上に投稿をする際に検討いただく際の判断資料となれば幸いです。

①配信動画において「BM、ブタ」などと発言した投稿者に対して、9000円の過料が科された。

②インターネット上の匿名掲示板において、「とうとうYouTubeのコメントは頭おかしくなった 本人がアカウント何個も作って自作自演乙w アホ丸出しで長文タラタラ。読んでも気持ち悪さが勝って なんちゃ理解出来んわw 親子共々、精神が幼すぎ。子供が可哀想や」、「○○も昔は若かったけど、もう40前のええ歳した大人やろ?周りから痛い目で見られてるん気付かんかい。」などと掲載されたケースにおいて、投稿者に対して9000円の科料が科された。

③インターネット上の匿名掲示板において、「○○って金も無いし女も居ないし友達もいない童貞だろ? 裏で悪口言われまくりなの知らないのは本人だけだ ワキガと口臭どうにかして接客しような?」などと掲載されたケースにおいて、投稿者に対して9000円の科料が科された。

④インターネット上の匿名掲示板において、「○○に出没する○○勤務の女尻軽やでなぁ笑笑」などと掲載されたケースにおいて、投稿者に対して9000円の科料が科された。

2 迷ったら投稿しないことが一番重要です

侮辱罪に懲役刑が導入されたことで、不用意な投稿の抑止力になることが望ましいところではありますが、実際に問題のある投稿がなされることはなかなか難しいことも予想されます。

投稿者には表現の自由があるものの、他者を傷つけて良いということはありません。

投稿者が気を付けることは、自分自身で迷ったら投稿しないことが何よりも重要ということです。

自分としては軽い気持ちで行った投稿であっても、相手を傷つけるだけではなく、刑事罰まで科されるリスクもありますので、SNSやインターネット上の投稿には最大限慎重に行っていただく必要があることを改めてご注意ください。

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