法人に対する名誉毀損

インターネットトラブルの代表的なものとして名誉毀損に関するトラブルがあります。

ここで、法人に対する名誉毀損に関して、損害賠償請求をどのように捉えるべきかが問題となった事案がありました。

その判断を示した判例である、最判昭和39年1月28日(民集18・1・136)について、本日はご紹介いたします。

1 最判昭和39年1月28日の判示内容

法人に対する名誉棄損における損害賠償請求について、最高裁は、以下のとおり判示しました。

「民法七一〇条は、財産以外の損害に対しても、其賠償を為すことを要すと規定するだけで、その損害の内容を限定してはいない。すなわち、その文面は判示のようにいわゆる慰藉料を支払うことによつて、和らげられる精神上の苦痛だけを意味するものとは受けとり得ず、むしろすべての無形の損害を意味するものと読みとるべきである。従つて右法条を根拠として判示のように無形の損害即精神上の苦痛と解し、延いて法人には精神がないから、無形の損害はあり得ず、有形の損害すなわち財産上の損害に対する賠償以外に法人の名誉侵害の場合において民法七二三条による特別な方法が認められている外、何等の救済手段も認められていないものと論詰するのは全くの謬見だと云わなければならない。

 思うに、民法上のいわゆる損害とは、一口に云えば、侵害行為がなかつたならば惹起しなかつたであろう状態(原状)を(a)とし、侵害行為によつて惹起されているところの現実の状態(現状)を(b)としa-b=xそのxを金銭で評価したものが損害である。そのうち、数理的に算定できるものが、有形の損害すなわち財産上の損害であり、その然らざるものが無形の損害である。しかしその無形の損害と雖も法律の上では金銭評価の途が全くとざされているわけのものではない。侵害行為の程度、加害者、被害者の年令資産その社会的環境等各般の情況を斟酌して右金銭の評価は可能である。その顕著な事例は判示にいうところの精神上の苦痛を和らげるであろうところの慰藉料支払の場合である。しかし、無形の損害に対する賠償はその場合以外にないものと考うべきではない。そもそも、民事責任の眼目とするところは損害の填補である。すなわち前段で示したa-b=xの方式におけるxを金銭でカヴアーするのが、損害賠償のねらいなのである。かく観ずるならば、被害者が自然人であろうと、いわゆる無形の損害が精神上の苦痛であろうと、何んであろうとかかわりないわけであり、判示のような法人の名誉権に対する侵害の場合たると否とを問うところではないのである。尤も法人の名誉侵害の場合には民法七二三条により特別の手段が講じられている。しかし、それは被害者救済の一応の手段であり、それが、損害填補のすべてではないのである。このことは民法七二三条の文理解釈からも容易に推論し得るところである。そこで、判示にいわゆる慰藉料の支払をもつて、和らげられるという無形の損害以外に、いつたい、どのような無形の損害があるかという難問に逢着するのであるが、それはあくまで純法律的観念であつて、前示のように金銭評価が可能であり、しかもその評価だけの金銭を支払うことが社会観念上至当と認められるところの損害の意味に帰するのである。それは恰も民法七〇九条の解釈に当つて侵害の対象となるものは有名権利でなくとも、侵害されることが社会通念上違法と認められる利益であれば足るという考え方と志向を同じうするものである。」

2 名誉毀損に関するトラブルに巻き込まれてしまった場合

最近では、個人間におけるトラブルにとどまらず企業への誹謗中傷も多くなっております。

企業としては、なかなか消費者側に対して訴えを提起することは難しい側面もありますが、企業としての評判や従業員を守るためにはしかるべき法的な対応を取らざるを得ない場合もございます。

どのような対応を取る必要があるかにつきましては、まずは弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

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