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半年前の誹謗中傷でも投稿者を特定できる?ログ保存期間を過ぎた場合の対応
匿名掲示板に、自分の過去の失敗談や事実と異なる噂を書き込まれたものの、当時は「そのうち沈静化するだろう」と考えて放置してしまった。しかし、半年経っても検索結果に表示され続け、就職活動や日常生活への影響が心配になってきた。
このような場合、「今からでも削除や投稿者の特定はできるのか」「ログの保存期間が3か月と聞いたが、もう手遅れなのか」と不安に感じる方は少なくありません。
結論からいうと、投稿から半年が経過している場合、投稿者の特定はかなり厳しくなります。ただし、すべてのケースで不可能と決まるわけではありません。利用された回線、掲示板やSNSの仕様、プロバイダのログ保存状況、相手方の最近の利用状況によっては、まだ手続を検討できる場合があります。
1 なぜ「3か月がタイムリミット」と言われるのか
匿名投稿者を特定するためには、投稿に使われたIPアドレスやタイムスタンプを取得し、その情報をもとに接続プロバイダへ契約者情報の開示を求めるのが一般的です。
問題は、接続プロバイダが通信ログを永久に保存しているわけではないという点です。実務上、経由プロバイダの通信ログはおおむね3か月から6か月で削除されると説明されることが多く、ログが消えてしまうと、投稿日時にそのIPアドレスを使っていた契約者をたどれなくなるおそれがあります。ウェブ
特に、携帯電話回線を使った投稿では、ログ保存期間が短いことがあり、「3か月以内に動くべき」と言われることが多いです。第二東京弁護士会の実務解説でも、ISPのログは3か月程度で消える例が多く、3か月以内に誹謗中傷を発見し、コンテンツプロバイダから開示を受けて、ISPに開示請求まで行う必要があるとされています。ウェブ
そのため、投稿から半年が経過している場合、携帯キャリアなどのログがすでに消えている可能性は十分にあります。この場合、どれだけ投稿内容が悪質であっても、技術的に投稿者を特定できないことがあります。
2 半年経っていても可能性が残るケース
もっとも、「半年経過=必ず不可能」とまではいえません。次のような場合には、まだ調査や手続の余地が残っていることがあります。
1. 固定回線から投稿されていた場合
投稿者が自宅や職場のWi-Fi、固定回線を利用して投稿していた場合、プロバイダによっては、携帯回線より長くログを保存していることがあります。
一般的に、ログ保存期間は3〜6か月程度とされることが多いものの、プロバイダごとに実際の保存期間や運用は異なります。何もしなければ一定期間で自動削除されるとしても、個別に保存を求めたり、裁判手続によって保存されていたりする場合もあります。ウェブ
そのため、半年経過しているからといって、確認前に諦める必要はありません。
2. すでにログ保存がされている場合
過去に誰かが同じ投稿や同じ投稿者について開示請求をしていた場合、またはプロバイダに対してログ保存請求が行われていた場合、通常の保存期間を過ぎてもログが残っている可能性があります。
ログ保存の請求には、任意の保存依頼や、ログ保存仮処分・発信者情報消去禁止仮処分などの裁判手続が利用されることがあります。経由プロバイダの通信ログは3〜6か月程度で削除されるため、開示請求訴訟の途中でログが消えないよう、あらかじめ保存を求める手続が重要とされています。ウェブ
3. ログイン型SNSの場合
今回のご相談は匿名掲示板ですが、もし問題の投稿がX、Instagram、Facebookなどのログイン型SNSであれば、別の可能性があります。
投稿自体が半年前でも、投稿者が最近そのアカウントにログインしていれば、直近のログイン時IPアドレスなどから特定を試みられる場合があります。2022年の法改正後、ログイン時情報の開示が問題となる場面が増えており、投稿時のIPアドレスだけではなく、アカウント利用時の通信記録が手がかりになることがあります。
もっとも、ログイン時情報が常に開示されるわけではありません。問題投稿との関連性、ほかの手段では特定できないこと、権利侵害の明白性などを具体的に主張する必要があります。
3 先に削除してはいけない場合がある
投稿者の特定を希望する場合に、特に注意すべきなのが、削除を先行させるかどうかです。
「検索結果に出て困っているから、まず削除したい」と考えるのは自然です。しかし、掲示板やサイトによっては、投稿が削除されることで、その投稿に紐づく管理情報やログの確認が難しくなることがあります。
もちろん、削除を急ぐべきケースもあります。たとえば、個人情報が晒されている、拡散が続いている、就職活動や業務に重大な影響が出ているなどの場合です。
しかし、投稿者の特定を最優先にするのであれば、削除依頼の前に証拠保全と開示手続の見通しを確認するべきです。先に削除してしまうと、後から「誰が書いたのか」をたどる手がかりを失う可能性があります。
4 今すぐ行うべきこと
半年が経過している場合、残された時間は多くありません。まずは、次の資料を保存してください。
- 投稿のURL
- 投稿画面のスクリーンショット
- 掲示板名、スレッド名
- 投稿番号
- 投稿日時
- 投稿本文
- 検索結果に表示されている画面
- 自分のことだと分かる事情
- 投稿内容が虚偽であることを示す資料
- 就職活動などへの影響が分かる資料
スクリーンショットは、投稿本文だけでなく、URL、投稿日時、投稿番号、前後の文脈が分かるように保存することが重要です。検索結果への表示が問題になっている場合は、検索キーワードと検索結果画面も保存しておくとよいでしょう。
そのうえで、できるだけ早く弁護士に相談し、次の点を確認する必要があります。
- 投稿内容が名誉毀損・プライバシー侵害等に当たるか
- 掲示板管理者からIPアドレス等の開示を受けられる可能性があるか
- 接続プロバイダのログが残っている可能性があるか
- 削除と特定のどちらを優先すべきか
- 検索結果への対応も必要か
5 削除と検索結果対策は別に考える
投稿者の特定が難しい場合でも、削除請求や検索結果への対応が可能なケースはあります。
掲示板上の投稿が権利侵害に当たる場合、サイト管理者に対する削除請求や送信防止措置依頼を検討できます。また、検索結果に表示され続けること自体が生活や就職活動に影響している場合には、検索エンジンへの対応を検討することもあります。
ただし、削除が認められるかどうかも、投稿内容が違法といえるか、公共性があるか、真実性があるか、現在も表示され続けることによる不利益がどの程度かによって変わります。単に「過去の失敗談を書かれている」というだけでは難しい場合もありますが、虚偽の噂、私生活上の事実、個人を特定できる情報が含まれている場合には、削除の余地があります。
6 まとめ
投稿から半年が経過している場合、発信者情報開示による投稿者特定は厳しい状況です。特に携帯回線のログが消えている場合には、技術的に特定が困難になることがあります。
しかし、固定回線からの投稿、長めにログを保存しているプロバイダ、すでにログ保存がされているケース、ログイン型サービスで最近のログイン情報が利用できるケースなど、可能性が残る場合もあります。
重要なのは、先に削除だけを進めて手がかりを失わないこと、そして今すぐ証拠を保存して相談することです。半年経っている場合、1日単位で状況が悪化する可能性があります。特定を希望するのであれば、削除依頼の前に、開示請求の可否とログ保存の可能性を早急に確認することをおすすめします。

有森FA法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー・著作権に関するトラブルなど、ネットにまつわる様々なお悩みに対応しています。スマートフォンやSNSが日常に溶け込んだ今、ネット上の問題は誰にとっても身近なリスクとなっています。東京都をはじめ全国からのご相談に対応しており、WEB会議によるご相談も可能です。ひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
2022年の法改正で発信者情報開示請求はどう変わった?新しい手続で本当に早く特定できるのか
ネット掲示板やSNSで誹謗中傷を受けた方から、「2022年の法改正で、匿名投稿者を以前より簡単に特定できるようになったと聞いたのですが、本当ですか」というご相談を受けることがあります。
結論からいうと、2022年10月施行の改正により、発信者情報開示の手続は大きく改善されました。新たに「発信者情報開示命令事件」という裁判手続が設けられ、従来よりも一体的・迅速に投稿者の特定を目指せるようになっています。
もっとも、「誰でも簡単に、すぐに犯人を見つけられるようになった」という意味ではありません。裁判所を通じた手続である以上、投稿内容が違法と評価できること、つまり名誉毀損やプライバシー侵害などの権利侵害が明らかであることを、証拠に基づいて主張・立証する必要があります。
1 以前の手続はなぜ大変だったのか
従来、匿名投稿者を特定するためには、原則として2段階の手続が必要でした。
まず、掲示板やSNSの運営会社など、投稿が掲載されたサービスの管理者に対して、投稿に関するIPアドレスやタイムスタンプの開示を求めます。ここでいうサイト管理者やSNS事業者は、法律上「コンテンツプロバイダ」と呼ばれることがあります。
しかし、コンテンツプロバイダが投稿者の氏名や住所まで把握しているとは限りません。多くの場合、分かるのは投稿時またはログイン時のIPアドレス、投稿日時、ログイン日時などにとどまります。
そこで次に、そのIPアドレスを管理している通信会社・接続プロバイダを特定し、「その日時にこのIPアドレスを使っていた契約者は誰か」という情報の開示を求める必要がありました。
つまり、従来は一般に、
- サイト管理者に対する発信者情報開示仮処分
- 接続プロバイダに対する発信者情報開示請求訴訟
という別々の裁判手続を行う必要がありました。異なる相手方に対して、異なる裁判手続を順番に進めなければならないため、時間も費用もかかりやすい仕組みだったのです。
さらに、接続プロバイダの通信ログには保存期間があります。一般に、アクセスログは数か月程度で消去されることが多く、手続に時間がかかると、せっかくIPアドレスを取得しても、契約者情報にたどり着く前にログが消えてしまう危険がありました。
2 2022年改正で導入された「発信者情報開示命令事件」とは
このような問題を解消するため、改正法により新たに導入されたのが、発信者情報開示命令事件です。
これは、匿名投稿者の特定をより迅速に行うための非訟手続です。非訟手続とは、通常の訴訟よりも柔軟・迅速な処理が想定されている裁判手続の一種です。
発信者情報開示命令事件では、コンテンツプロバイダに対する手続と、接続プロバイダに対する手続を、1つの流れの中で進めることができます。
具体的には、裁判所に対して、まずサイト管理者やSNS事業者を相手方として発信者情報開示命令の申立てを行います。その中で、必要に応じて、接続プロバイダの名称等を提供させる「提供命令」や、ログの消去を防ぐための「消去禁止命令」も申し立てます。
提供命令が出されると、コンテンツプロバイダから接続プロバイダの名称等が提供され、その後、接続プロバイダに対する開示命令の申立てへ進むことができます。さらに、これらの手続は併合され、一体的に審理されることが予定されています。
そのため、従来のように「まず仮処分をして、次に別の訴訟を起こす」という流れと比べると、手続の重複が少なくなり、迅速な解決を目指しやすくなりました。
3 「裁判が1回で済む」という理解は正しいのか
「今は1回で済むのですか」という点については、半分は正しいですが、少し注意が必要です。
新しい手続では、従来のように、サイト管理者に対する仮処分と、接続プロバイダに対する訴訟を別々に進める必要性が小さくなりました。1つの発信者情報開示命令事件の中で、コンテンツプロバイダと接続プロバイダへの請求を連続的・一体的に扱えるため、「手続が一本化された」と説明されることがあります。
ただし、実務上は、最初からすべての情報がそろっているわけではありません。まずサイト管理者から接続プロバイダを特定するための情報を得て、その後、接続プロバイダに対する申立てを追加するという流れになることがあります。
また、相手方が争った場合や、開示命令に対して異議が出された場合には、通常の訴訟に移行する可能性もあります。そのため、「必ず1回の申立てだけで、短期間に氏名住所まで分かる」とまではいえません。
正確には、従来よりも一体的に進められるようになったが、事案によっては追加対応や訴訟対応が必要になることもある、という理解が適切です。
4 ログイン型SNSでは特定の可能性が広がった
2022年改正の重要なポイントの一つが、ログイン型サービスへの対応です。
X、Instagram、FacebookなどのSNSは、アカウントにログインして利用するサービスです。このようなサービスでは、問題投稿そのものの投稿時IPアドレスが保存されていない、あるいは十分に取得できないことがあります。
従来は、投稿時のIPアドレスが取得できない場合、投稿者の特定が難しくなることがありました。
改正後は、一定の要件のもとで、ログイン時のIPアドレスやタイムスタンプなど、いわゆるログイン時情報も開示対象となり得ることが明確化されました。これにより、投稿時情報だけでは特定が難しかったSNS上の誹謗中傷についても、投稿者にたどり着ける可能性が広がっています。
ただし、ログイン時情報であれば常に開示されるわけではありません。そのログインが問題投稿とどの程度関連しているか、ほかに投稿者を特定する手段があるか、開示の必要性があるかなどが問題になります。
5 新しい手続でも「違法性の立証」は必要
発信者情報開示命令事件が導入されたからといって、法的なハードルそのものが大きく下がったわけではありません。
裁判所は、単に「悪口を書かれた」「不快な投稿をされた」というだけで、投稿者の氏名住所を開示させるわけではありません。発信者情報は、投稿者側にとって重要な個人情報です。そのため、開示が認められるためには、投稿によって権利が侵害されたことが明らかであり、かつ、開示を受ける正当な理由があることを示す必要があります。
たとえば、次のような点を整理して主張することになります。
- どの投稿が問題なのか
- その投稿が誰について書かれたものか
- 投稿内容が事実を摘示しているのか、意見・論評なのか
- 摘示された事実が社会的評価を低下させるものか
- 真実性や公共性の反論が想定されるか
- プライバシー情報や個人情報が含まれているか
- 損害賠償請求や削除請求のために開示が必要か
この検討が不十分なまま申立てをしても、裁判所に権利侵害を認めてもらえず、申立てが認められない可能性があります。
6 すぐに犯人を見つけ出せるのか
新しい手続により、以前よりも迅速化されたことは確かです。しかし、「すぐに犯人を見つけ出せる」と考えるのは危険です。
発信者情報開示の手続では、サイト管理者やプロバイダへの照会、裁判所での審理、相手方からの反論、発信者への意見照会など、複数のステップがあります。接続プロバイダは、契約者に対して「情報を開示してよいか」という意見照会を行うのが通常です。契約者が開示に同意すれば比較的早く進むこともありますが、不同意の場合には裁判所の判断を待つ必要があります。
また、海外法人が運営するSNS、複数のプロバイダが関係する通信、MVNOや会社・学校の回線を利用した投稿などでは、手続が複雑化することもあります。
そのため、期間は事案によって異なります。数か月で特定できることもありますが、争いが強い場合や手続が複雑な場合には、さらに時間がかかることもあります。
7 従来型の手続を選ぶこともある
発信者情報開示命令事件は有効な手段ですが、すべてのケースで最適とは限りません。
たとえば、相手方が強く争うことが予想される事案、法的論点が複雑な事案、通常訴訟で慎重に主張立証した方がよい事案では、従来型の発信者情報開示請求訴訟を選択することもあります。
また、削除請求を同時に進めたい場合、投稿の拡散を止める必要がある場合、刑事告訴も視野に入れる場合など、目的に応じて最適な手続は変わります。
大切なのは、「新しい手続だから必ずよい」「従来の手続だから古い」という単純な判断をしないことです。投稿内容、媒体、ログの保存状況、相手方の所在、証拠の強さを踏まえて、最も成功可能性の高い方法を選ぶ必要があります。
8 相談前に準備しておくべき資料
弁護士に相談する際は、次の資料をできる限り準備しておくと、手続選択や見通しの判断がしやすくなります。
- 問題投稿のURL
- 投稿画面のスクリーンショット
- 掲示板のスレッド全体の流れ
- 投稿日時
- 投稿番号
- 投稿者名、ID、アカウント情報
- 相談者本人を指していると分かる事情
- 投稿内容が事実無根であることを示す資料
- 実際に生じた被害の資料
掲示板の場合、投稿番号やスレッドURLが重要です。SNSの場合は、投稿URL、アカウントURL、プロフィール画面、返信や引用の状況も保存しておくとよいでしょう。
9 まとめ
2022年の法改正により、発信者情報開示命令事件という新しい手続が導入され、匿名投稿者の特定手続は従来よりも一本化・迅速化されました。特に、コンテンツプロバイダと接続プロバイダに対する手続を一体的に進められる点、ログイン時情報の開示対象が明確化された点は、SNSや掲示板での誹謗中傷被害者にとって大きな意味があります。
しかし、新しい手続を使えば誰でもすぐに投稿者を特定できるわけではありません。投稿内容が違法といえるか、権利侵害が明らかか、証拠が十分か、ログが残っているかによって結果は変わります。
誹謗中傷の投稿を見つけたら、まずはURLとスクリーンショットを保存し、できるだけ早く弁護士に相談してください。早期に動くことで、ログ消去のリスクを避け、最適な手続を選択できる可能性が高まります。

有森FA法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー・著作権に関するトラブルなど、ネットにまつわる様々なお悩みに対応しています。スマートフォンやSNSが日常に溶け込んだ今、ネット上の問題は誰にとっても身近なリスクとなっています。東京都をはじめ全国からのご相談に対応しており、WEB会議によるご相談も可能です。ひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
匿名アカウントを特定する発信者情報開示請求の流れ|X(旧Twitter)の誹謗中傷にどう対応するか
X(旧Twitter)で、身に覚えのない誹謗中傷が拡散されている。しかも投稿者は匿名アカウントで、誰が書き込んでいるのか分からない。このような場合、「相手を特定して損害賠償請求や刑事告訴をしたい」と考えるのは自然なことです。
匿名投稿者を特定するための代表的な手続が、いわゆる発信者情報開示請求です。これは、SNS事業者やインターネット接続事業者に対し、投稿者の特定につながる情報の開示を求める制度です。
ただし、発信者情報開示請求は、警察に相談すればすぐに投稿者の氏名住所を調べてもらえる、という手続ではありません。刑事事件として警察が捜査する場合もありますが、投稿者を特定して民事上の損害賠償請求などにつなげるためには、通常、裁判所を利用した民事手続を進める必要があります。
1 まず押さえるべきポイント
匿名アカウントの投稿者を特定するには、基本的に次の流れをたどります。
- XなどのSNS事業者から、投稿に関係するIPアドレスやタイムスタンプなどを取得する
- その情報をもとに、通信会社・接続プロバイダを特定する
- 接続プロバイダに対し、その日時に当該IPアドレスを利用していた契約者情報の開示を求める
- 裁判所が開示を認めれば、氏名・住所等が開示される
- 開示された情報をもとに、損害賠償請求、削除請求、刑事告訴などを検討する
従来は、SNS事業者に対する手続と接続プロバイダに対する手続を別々に行う必要があり、時間と手間がかかることが問題とされていました。現在は、法改正により、発信者情報開示命令という非訟手続が設けられ、コンテンツプロバイダと経由プロバイダに対する手続を一体的・迅速に進める仕組みが整備されています。
もっとも、すべての事案で新しい手続だけを使えばよいわけではありません。事案の内容、投稿媒体、保存されているログの種類、相手方プロバイダの対応などによって、従来型の仮処分・訴訟を利用するか、発信者情報開示命令手続を利用するかを検討することになります。
2 ステップ1:問題投稿の証拠を保存する
最初に行うべきことは、証拠の保存です。
誹謗中傷投稿は、投稿者自身が削除することもありますし、アカウントが凍結されたり、表示内容が変わったりすることもあります。そのため、相談前の段階で、少なくとも次の情報を保存しておくことが重要です。
- 投稿のURL
- 投稿本文が分かるスクリーンショット
- 投稿日時
- アカウント名、ユーザーID
- プロフィール画面
- リポスト、引用、返信など拡散状況が分かる画面
- その投稿によって生じた実害を示す資料
単なるスクリーンショットだけでは、URLや投稿日時が分からない場合があります。後の手続では、どの投稿について開示を求めるのかを特定する必要があるため、URLと画面表示の両方を保存しておくことが望ましいです。
3 ステップ2:権利侵害が明らかかを検討する
発信者情報開示請求は、単に「嫌なことを書かれた」「腹が立つ投稿をされた」というだけで認められるものではありません。
開示が認められるためには、一般に、投稿によって名誉権、プライバシー権、肖像権、営業上の信用などの権利が侵害されたことが明らかであり、かつ、発信者情報の開示を受ける正当な理由があることが必要です。
たとえば、次のような投稿は、名誉毀損やプライバシー侵害として問題になり得ます。
- 「あの人は詐欺をしている」など、犯罪行為をしたかのように書く投稿
- 事実に反して「不倫している」「横領している」などと断定する投稿
- 本名、住所、勤務先、家族構成などを晒す投稿
- 事業者について「反社会的勢力と関係がある」「違法営業をしている」などと書く投稿
一方で、単なる感想、論評、批判にとどまる投稿については、開示が認められにくい場合もあります。投稿の文言、前後の文脈、画像の有無、閲覧者がどのように受け取るかを具体的に検討する必要があります。
4 ステップ3:XなどのSNS事業者に対する手続
匿名アカウントの場合、XなどのSNS事業者が投稿者の氏名や住所を直接把握しているとは限りません。多くの場合、最初に取得を目指すのは、投稿時またはログイン時のIPアドレス、タイムスタンプなどです。
従来型の手続では、SNS事業者などのコンテンツプロバイダに対して、発信者情報開示の仮処分を申し立てることが一般的でした。仮処分とは、正式な訴訟の判決を待っていては権利救済が遅れてしまう場合に、裁判所に暫定的な判断を求める手続です。
現在は、発信者情報開示命令手続を利用することも可能です。この手続では、裁判所が、開示命令、提供命令、消去禁止命令という複数の命令を活用しながら、投稿者特定に必要な情報を段階的に取得・保全することが想定されています。
特に提供命令は、コンテンツプロバイダに対し、経由プロバイダの名称等を申立人に提供させる仕組みです。また、コンテンツプロバイダが保有するIPアドレス等を、申立人には秘密にしたまま経由プロバイダへ提供させることも想定されています。
5 ステップ4:通信会社・接続プロバイダに対する手続
SNS事業者からIPアドレスやタイムスタンプなどが判明すると、次に、そのIPアドレスを管理している通信会社・接続プロバイダを特定します。
たとえば、携帯電話回線、光回線、プロバイダ、MVNOなどが関係することがあります。ここで問題となるのは、「その日時に、そのIPアドレスを使って通信していた契約者が誰か」です。
従来型の手続では、接続プロバイダに対して発信者情報開示請求訴訟を提起し、氏名・住所などの開示を求めるのが一般的でした。現在は、発信者情報開示命令の申立てにより、コンテンツプロバイダに対する手続と接続プロバイダに対する手続を併合し、一体的に審理することが可能とされています。
この段階で、接続プロバイダは契約者に対し、「あなたの情報を開示してよいか」という意見照会を行うのが通常です。ガイドライン上も、開示請求を受けたプロバイダが発信者に意見照会を行うための書式が示されており、一定期間内に回答を求める運用が予定されています。
契約者が開示に同意すれば、比較的早く情報が開示されることがあります。一方、不同意の場合には、裁判所が投稿内容や権利侵害の有無、開示の必要性などを踏まえて判断します。
6 スピードが重要な理由
発信者情報開示請求で最も重要なのは、早期着手です。
アクセスログは永久に保存されるわけではありません。一般に、大手アクセスプロバイダのアクセスログの保有期間は3か月程度といわれ、法律上の保存義務もないため、手続が遅れると、開示請求が認められる前にログが消えてしまう可能性があります。
別の実務解説でも、サイト管理者やプロバイダが保存するログの多くは3〜6か月程度で消去されるため、依頼のタイミングによっては投稿者を特定できないことがあると説明されています。
そのため、「様子を見てから相談する」「投稿がもっと拡散してから動く」という対応は危険です。投稿から時間が経てば経つほど、投稿者特定の可能性は低下します。
警察に相談すれば特定してもらえるのか
警察への相談が無意味というわけではありません。脅迫、業務妨害、名誉毀損、侮辱、ストーカー行為など、刑事事件として問題になり得る内容であれば、警察に相談する価値はあります。
しかし、警察が必ず捜査を開始し、投稿者を特定してくれるとは限りません。特に、民事上の損害賠償請求を目的として氏名住所を知りたい場合には、被害者側で発信者情報開示請求を進める必要があるケースが多いです。
したがって、実務上は、警察相談と民事手続を分けて考えるべきです。緊急性の高い脅迫や危険がある場合は警察へ相談しつつ、投稿者の特定や損害賠償請求を視野に入れる場合は、早急に弁護士へ相談して開示手続を検討することになります。
7 特定後にできる法的措置
投稿者の氏名・住所等が開示された後は、事案に応じて次の対応を検討します。
- 投稿者に対する損害賠償請求
- 慰謝料、調査費用、弁護士費用相当額の請求
- 投稿削除の請求
- 謝罪文や再発防止誓約の要求
- 刑事告訴
- 示談交渉
- 訴訟提起
開示手続は、あくまで「相手を特定するための手続」です。氏名住所が分かった後に、どのような請求を行うかは別途検討する必要があります。
8 まとめ
Xの匿名アカウントによる誹謗中傷について投稿者を特定するには、基本的に、SNS事業者からIPアドレス等を取得し、その情報をもとに接続プロバイダから契約者情報の開示を受けるという流れをたどります。現在は、発信者情報開示命令手続により、従来よりも一体的・迅速に進められる仕組みが整備されていますが、ログの保存期間が短いという問題は依然として重要です。
発信者情報開示請求は、時間との勝負です。投稿を見つけたら、URL、スクリーンショット、投稿日時、アカウント情報を保存し、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。早期に動くことで、投稿者を特定できる可能性を高めることができます。

有森FA法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー・著作権に関するトラブルなど、ネットにまつわる様々なお悩みに対応しています。スマートフォンやSNSが日常に溶け込んだ今、ネット上の問題は誰にとっても身近なリスクとなっています。東京都をはじめ全国からのご相談に対応しており、WEB会議によるご相談も可能です。ひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
ネット掲示板に本名・大学名・実家住所を晒された場合の法的対応
【相談内容】
大学生のBさんは、SNS上で口論になった相手から、過去の投稿写真などをもとに身元を特定され、掲示板に本名、大学名、実家の住所を書き込まれました。
さらに、「家に突撃しよう」といった趣旨の煽り文句も投稿されており、Bさんは自分だけでなく家族に危害が及ばないか強い不安を感じています。
悪口や虚偽の事実が書かれているわけではなく、個人情報が掲載されただけの場合でも、法律上問題になるのでしょうか。また、すぐに削除できるのでしょうか。
【弁護士の回答】
結論として、本名、大学名、実家住所を本人の同意なく掲示板に投稿する行為は、プライバシー権侵害に当たる可能性が高いです。特に住所は、私生活の平穏や身体の安全に直結する情報であり、「悪口が書かれていないから問題ない」とはいえません。
法務省の削除依頼に関する手引きでも、本人の同意なく個人情報を公開し、私生活の平穏を侵害する場合には、民法709条の不法行為としてプライバシー権侵害が問題になるとされています。
さらに、「家に突撃しよう」といった投稿が添えられている場合、単なるプライバシー侵害にとどまらず、身の危険を感じる事案です。法務省の手引きでも、投稿によってストーカー被害に遭うおそれがある場合や、危害を加えるような脅しの言葉が書き込まれている場合には、ためらわず警察に相談するよう案内されています。
1 住所・本名・大学名の掲載はプライバシー侵害になり得る
プライバシー侵害は、名誉毀損とは異なります。
名誉毀損は、社会的評価を低下させる事実を摘示した場合に問題になります。これに対し、プライバシー侵害は、たとえ情報が真実であっても、本人が公開を望まない私生活上の情報を無断で公開した場合に成立し得ます。
特に、次の情報はプライバシー性が高い情報です。
- 自宅住所
- 実家住所
- 電話番号
- 学校名と本名の組合せ
- 勤務先
- 顔写真
- 家族構成
- 最寄り駅や生活圏
- 病歴、交際関係、過去のトラブル
「過去の投稿写真から調べれば分かる情報だった」と反論されることがあります。しかし、断片的な情報を収集・照合し、「この人の本名はこれ、大学はここ、実家住所はここ」と特定して掲示板に晒す行為は、単なる公開情報の引用とはいえません。本人が想定していない形で個人情報を結び付け、危害を誘発し得る状態に置く点で、プライバシー権侵害として評価される可能性が高いです。
ネット上で住所などの私生活情報が無断公開された場合、削除請求、発信者情報開示請求、損害賠償請求のいずれも検討可能です。プライバシー侵害は、内容が真実であっても成立する点が名誉毀損と異なると整理されています。
2 最優先は削除と拡散防止
Bさんのケースで最優先すべきなのは、投稿の削除です。
住所が掲示板に残っている限り、第三者に保存・転載・拡散される危険があります。特に「家に突撃しよう」といった煽りがある場合、放置すると実害に発展する可能性があります。
削除対応は、一般に次の順序で進めます。
①証拠を保存する
削除依頼の前に、必ず証拠を保存してください。削除されると投稿自体は消えますが、投稿者の責任追及に必要な証拠も失われることがあります。
保存すべきものは次のとおりです。
- 投稿のURL
- 掲示板名・スレッド名
- 投稿番号
- 投稿日時
- 投稿者名・ID
- 本文
- 本名・大学名・住所が表示されている部分
- 「突撃しよう」など危害を示唆する文言
- 前後の投稿
- スクリーンショット
- 可能であればページ全体のPDF保存
法務省の手引きでも、削除依頼では該当ページURL、依頼内容、侵害された権利や理由を示すことが想定されています。
②サイトやSNSの削除フォームから申請する
多くの掲示板やSNSでは、個人情報の晒し、住所の掲載、嫌がらせ、危害を促す投稿を禁止しています。まずは公式の削除申請フォームから、プライバシー侵害を理由に削除を求めます。
このとき、「本名」「大学名」「実家住所」が掲載されていること、「家に突撃しよう」という危害を誘発する文言があること、本人と家族の安全に関わることを明確に記載します。
③送信防止措置依頼を行う
サイト側が任意削除に応じない場合、プロバイダや掲示板管理者に対して、送信防止措置依頼を行います。ネット中傷対策実務では、削除の方法として送信防止措置依頼や削除仮処分が用いられると説明されています。
削除依頼では、掲示板全体ではなく、問題のある投稿のURLや投稿番号を特定することが重要です。掲示板の場合、どの番号の書き込みが問題かを指定する必要があるとされています。
④裁判所に削除仮処分を申し立てる
任意の削除で対応されない場合や緊急性が高い場合は、裁判所に削除仮処分を申し立てます。プライバシー権侵害を理由とする削除仮処分では、プライバシー権という被保全権利と、放置すれば著しい損害や急迫の危険があるという保全の必要性を示すことが重要です。
Bさんのように、実家住所と危害をあおる文言が同時に投稿されているケースでは、削除の緊急性は高いと考えられます。
3 身の危険を感じる場合は警察にも相談する
「家に突撃しよう」という投稿がある以上、民事上の削除請求だけで対応を終えるべきではありません。
次のような事情がある場合は、速やかに警察へ相談してください。
- 実家住所が書かれている
- 家族が住んでいる住所である
- 「突撃」「行こう」「待ち伏せ」などの文言がある
- 投稿者がBさんに執着している
- 過去にも嫌がらせがある
- 投稿が拡散されている
- 実際に不審者や電話、郵便物などの異変がある
法務省の手引きでも、身の危険を感じる場合や脅迫されている場合は、警察相談専用電話「#9110」やサイバー犯罪相談窓口への相談が案内されています。
警察に行く際は、スクリーンショットを印刷し、URL、投稿日時、投稿番号、投稿内容、SNS上の口論の経緯、相手方アカウントが分かる資料を持参するとよいでしょう。実家にも状況を共有し、インターホン対応、郵便物、来訪者への注意、大学への相談も検討してください。
4 投稿者を特定する発信者情報開示請求
削除だけでなく、投稿者を特定して責任追及したい場合は、発信者情報開示請求を行います。
発信者情報開示請求とは、インターネット上でプライバシー侵害などの権利侵害を受けた被害者が、掲示板管理者や通信事業者などに対して、投稿者の情報開示を求める手続です。
匿名掲示板では、掲示板管理者が投稿者の氏名や住所を直接把握していないことが多いため、通常は次のような流れになります。
- 掲示板管理者に対し、IPアドレス、タイムスタンプ、ポート番号などの開示を求める
- その情報をもとにアクセスプロバイダを特定する
- アクセスプロバイダに対し、契約者の氏名、住所、メールアドレス、電話番号などの開示を求める
- 投稿者を特定した後、損害賠償請求、謝罪要求、再発防止の合意、刑事告訴などを検討する
匿名掲示板では、発信者の氏名・住所までは把握されていないことが多く、第1段階でIPアドレスやタイムスタンプ等のアクセスログ情報を取得し、第2段階でアクセスプロバイダに氏名・住所等の開示を求める流れが説明されています。
発信者情報開示請求は時間との勝負です。通信ログの保存期間は限られており、ログ保存期間の制約から、投稿者の特定を目指すなら早期対応が必要とされています。
5 損害賠償として請求できる可能性があるもの
投稿者が特定できた場合、民法709条に基づき、不法行為として損害賠償請求を検討します。
住所晒しのようなプライバシー侵害では、次のような損害が問題になり得ます。
- 慰謝料
- 削除対応に要した費用
- 発信者情報開示請求に要した費用
- 弁護士費用の一部
- 引っ越しを余儀なくされた場合の転居費用
- 防犯対策費用
- 通院が必要になった場合の治療費
- 学業やアルバイトに支障が出た場合の損害
もっとも、どこまで損害として認められるかは、投稿内容、危険の程度、拡散状況、実害の有無、転居の必要性、証拠の有無によって変わります。
実務上は、住所という秘匿性の高い情報が公開され、危害をあおる文言まである場合、単なる氏名掲載よりも悪質性が高いと評価されやすいでしょう。
6 被害者側の住所をさらに晒さない工夫も必要
Bさんのケースでは、すでに実家住所が公開されています。そのため、削除請求や開示請求の手続を進める際にも、Bさん自身の連絡先や現住所を不用意に相手方へ知らせない工夫が必要です。
裁判外の通知や交渉では、弁護士に依頼することで法律事務所を連絡窓口にできます。また、裁判手続では、ストーカー被害や危害のおそれがある事案で、住所等の秘匿措置を検討できる場合があります。発信者情報開示請求では、被害者自身のプライバシーを守る工夫も重要であり、弁護士名での通知や秘匿措置の活用が紹介されています。
7 まとめ
Bさんの本名、大学名、実家住所を掲示板に投稿する行為は、悪口がなくてもプライバシー権侵害に当たる可能性が高いです。特に実家住所は、本人だけでなく家族の安全にも関わる情報であり、「家に突撃しよう」という文言がある以上、緊急性の高い事案です。
まずは、投稿のURL、日時、投稿番号、本文、前後の投稿を保存してください。そのうえで、サイトの削除フォーム、送信防止措置依頼、削除仮処分を使って、早急に投稿の削除を求めます。
同時に、身の危険を感じる場合は警察へ相談してください。法務省の手引きでも、危害を加えるような脅しの言葉が書き込まれている場合には、ためらわず警察に相談するよう案内されています。
削除後は、発信者情報開示請求により投稿者を特定し、損害賠償請求や再発防止の対応を検討します。通信ログには保存期間があるため、様子を見るのではなく、できるだけ早く動くことが重要です。
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー・著作権に関するトラブルなど、ネットにまつわる様々なお悩みに対応しています。スマートフォンやSNSが日常に溶け込んだ今、ネット上の問題は誰にとっても身近なリスクとなっています。東京都をはじめ全国からのご相談に対応しており、WEB会議によるご相談も可能です。ひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
昔の投稿でも訴えられる?ログ保存期間と発信者特定の実務上の限界
「投稿からかなり時間が経っているが、今からでも投稿者を特定できるのか」
「昔の投稿が最近になって拡散されている」
「法律上の時効にはまだ余裕があるはずなのに、弁護士から急ぐように言われた」
ネット上の誹謗中傷では、民事上の損害賠償請求や刑事告訴の期限だけでなく、投稿者を特定するためのアクセスログの保存期間が極めて重要です。
前回は、民事上の損害賠償請求の時効、名誉毀損罪・侮辱罪の公訴時効、告訴期間について解説しました。
本日は、実務上最も早く問題になる「ログ保存期間」と、数年前の投稿でも対応できる可能性があるケースについて解説します。
1 法律上の時効より怖い「ログ保存期間」
ネット誹謗中傷の対応で最も注意すべきなのは、民事の3年・20年、刑事の3年といった法律上の期間よりも、アクセスログの保存期間です。
発信者情報開示請求では、SNS、掲示板、口コミサイトなどのコンテンツプロバイダからIPアドレス等の情報を取得し、その後、インターネット接続プロバイダから契約者情報の開示を受けるという流れになることがあります。
現在は、発信者情報開示命令制度により、従来よりも手続の迅速化が図られています。
しかし、どれだけ制度が整備されても、投稿者を特定するためのログがすでに消えていれば、発信者の特定は困難です。
実務上、アクセスログの保存期間は3か月から6か月程度といわれることが多く、事業者によってはそれより短い場合もあります。
そのため、投稿から半年以上経過している場合には、発信者情報開示請求を行っても、すでにログが残っていない可能性があります。
2 ログが消えると何が困るのか
匿名投稿の投稿者を特定するためには、通常、複数の情報をたどる必要があります。
たとえば、SNSや掲示板に投稿された場合、まず投稿時に使われたIPアドレスやタイムスタンプを取得します。
次に、そのIPアドレスを管理しているインターネット接続プロバイダに対し、その時刻にそのIPアドレスを利用していた契約者情報の開示を求めます。
このとき、プロバイダ側に接続ログが残っていなければ、「その日時にそのIPアドレスを使っていた契約者」が分かりません。
つまり、ログが消えてしまうと、投稿者を特定するための手がかりが途切れてしまうのです。
法律上、損害賠償請求権がまだ時効にかかっていなかったとしても、相手を特定できなければ、現実に請求することは困難です。
この意味で、ネット誹謗中傷では、法律上の時効よりもアクセスログの保存期間のほうが、実務上のタイムリミットとして厳しく機能することがあります。
3 発信者情報開示請求は時間との勝負
発信者情報開示請求には、一定の準備が必要です。
投稿内容が権利侵害に当たるかを検討し、投稿のURLや日時を特定し、証拠を整理し、裁判所に提出する資料を準備する必要があります。
相手方となる事業者の選定も重要です。SNS事業者、掲示板管理者、サーバー管理者、インターネット接続プロバイダなど、どの事業者に対してどの情報の開示を求めるかを誤ると、手続が遅れてしまうおそれがあります。
また、ログイン型のSNSでは、投稿時のIPアドレスではなく、ログイン時のIPアドレスが問題になることがあります。この場合、どの期間のログイン情報を対象にするかなど、請求内容の設計にも注意が必要です。
そのため、発信者情報開示請求は、単に「開示してください」と申し立てればよいものではありません。投稿内容、媒体の仕組み、ログの保存状況、裁判手続の選択を踏まえて、迅速かつ正確に進める必要があります。
4 数年前の投稿でも対応できる場合
投稿から時間が経っている場合でも、すべてのケースで対応が不可能になるわけではありません。
数年前の投稿であっても、次のような場合には、法的措置を検討できることがあります。
【投稿者がすでに分かっている場合】
元交際相手、元従業員、取引先関係者、同業者、知人など、投稿者が誰であるかを具体的に把握している場合には、発信者情報開示請求による特定が不要なことがあります。
この場合、アクセスログが消えていても、投稿者を被告として損害賠償請求を検討できる可能性があります。
もっとも、相手が本当に投稿したことを立証できるかが問題になります。
アカウント名だけでなく、過去のやり取り、投稿内容の特徴、本人しか知り得ない情報、投稿端末やアカウントの管理状況など、証拠関係を丁寧に整理する必要があります。
【再投稿・転載・拡散がある場合】
古い投稿そのものについてログが消えていても、最近になって第三者が再投稿、転載、引用、リポスト、まとめサイトへの掲載などを行っている場合には、その新たな行為を対象として対応できる可能性があります。
たとえば、数年前の投稿が最近になってまとめサイトに転載され、検索結果で上位表示されるようになった場合、その転載行為や掲載継続について削除請求や損害賠償請求を検討する余地があります。
また、SNS上で過去の投稿が再拡散され、新たな被害が生じている場合には、元投稿だけでなく、再拡散したアカウントの行為も検討対象になります。
【投稿が現在も掲載され続けている場合】
損害賠償請求や刑事告訴には期間制限がありますが、投稿が現在も掲載され続けている場合には、削除請求を検討できることがあります。
削除請求は、現在も続いている権利侵害を除去するための手段です。
特に、検索結果に表示され続けている投稿、口コミサイトに残り続けている虚偽投稿、まとめサイトに転載された記事などは、現在も被害を生じさせている可能性があります。
もっとも、削除が認められるかどうかは、投稿内容が違法といえるか、公共性・公益目的・真実性または相当性が問題になるか、表現の自由との関係で削除が相当かなど、個別事情によって判断されます。
5 削除請求と発信者特定は順番に注意
ネット誹謗中傷の対応では、削除請求と発信者情報開示請求の順番にも注意が必要です。
被害者としては、まず問題の投稿を消したいと考えるのが自然です。
しかし、投稿が削除されると、投稿内容、URL、投稿日時、アカウント情報などの証拠が失われることがあります。また、事案によっては、発信者情報開示請求に必要な情報の確認が難しくなることもあります。
そのため、削除を急ぐべき事案なのか、まず発信者情報開示請求を優先すべき事案なのかを判断する必要があります。
たとえば、企業の信用を大きく毀損する投稿が検索上位に表示されている場合には、被害拡大を防ぐために削除を急ぐ必要があります。
一方で、投稿者に対する損害賠償請求や刑事告訴を重視する場合には、証拠保全やログ保存を優先すべき場合があります。
この判断を誤ると、投稿は消えたものの投稿者を特定できなくなる、あるいは証拠が不足して損害賠償請求が難しくなるといった事態が起こり得ます。
6 時効が迫っている場合に取るべき初動
ネット誹謗中傷を発見した場合、最初に行うべきことは証拠の確保です。
投稿が削除された後では、投稿内容や掲載状況を立証することが難しくなることがあります。
特に、以下の情報を保存しておくことが重要です。
①投稿本文
②投稿のURL
③投稿日時
④アカウント名、ユーザーID、プロフィール
⑤返信、引用、リポスト、コメント欄
⑥投稿が表示されている検索結果
⑦画像、動画、添付ファイル
⑧被害状況が分かる資料
⑨売上減少、問い合わせ、取引停止などの実害がある場合の資料
スクリーンショットを撮る場合には、画面の一部だけでなく、URLや日時、投稿者情報が分かる形で保存することが望ましいです。
可能であれば、証拠保全の方法について弁護士に相談したうえで、公証役場での事実実験公正証書、証拠保全サービス、タイムスタンプなどの利用を検討することもあります。
次に、投稿者の特定が必要かどうかを判断します。
相手が匿名の場合には、発信者情報開示請求やログ保存の手続を早急に検討する必要があります。
さらに、刑事告訴を検討する場合には、名誉毀損罪・侮辱罪の要件、告訴期間、公訴時効、証拠の十分性を確認する必要があります。
7 「もう遅いかも」と思っても確認すべきポイント
投稿から時間が経っている場合でも、次の点を確認することで、まだ対応可能な手段が見つかることがあります。
①投稿者の氏名・住所がすでに分かっているか
②投稿が現在も閲覧可能か
③最近、再投稿・転載・引用・拡散があったか
④まとめサイトや検索結果に新たに表示されているか
⑤投稿内容が虚偽事実か、意見論評か
⑥名誉毀損、侮辱、プライバシー侵害、業務妨害、信用毀損のいずれが問題になるか
⑦証拠が残っているか
⑧損害が具体的に発生しているか
⑨刑事告訴を希望するのか、削除・損害賠償を優先するのか
ネット上の誹謗中傷対応では、削除請求、発信者情報開示請求、損害賠償請求、刑事告訴をどの順番で進めるかが重要です。
先に削除を求めると、証拠やログの確保に影響することがあります。
一方で、放置すると拡散が進み、検索結果に定着することもあります。
そのため、投稿を見つけたら、まず証拠を保存し、そのうえで、削除を急ぐべきか、発信者情報開示を優先すべきか、刑事告訴を視野に入れるべきかを判断する必要があります。
8 まとめ
ネット誹謗中傷の実務で最も早く問題になるのは、発信者情報開示に必要なアクセスログの保存期間です。法律上、民事の損害賠償請求権がまだ時効にかかっていなくても、ログが消えてしまえば投稿者を特定できず、現実の責任追及が難しくなることがあります。
投稿から時間が経っている場合でも、投稿者が分かっている場合、再投稿や転載がある場合、現在も投稿が掲載されている場合には、まだ取り得る手段が残っていることがあります。
「昔の投稿だから無理だろう」と諦める前に、次の点を確認してください。
①投稿は現在も残っているか
②投稿者を特定できる事情はあるか
③最近の再拡散や転載はあるか
④証拠は保存できているか
⑤削除、発信者情報開示、損害賠償、刑事告訴のどれを優先すべきか
重要なのは、気づいた時点で証拠を確保し、できるだけ早く対応方針を決めることです。
時効やログ保存期間が迫っている場合でも、事案によっては緊急の保全措置や発信者情報開示手続によって間に合う可能性があります。
過去の書き込みであっても、諦める前に、投稿内容、掲載場所、投稿時期、拡散状況、投稿者特定の可能性を整理し、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

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弁護士に依頼するメリット・デメリット|自分で行う開示請求との成功率の違い
「発信者情報開示請求は、弁護士に頼むと費用が高い」
「ネットで調べれば自分でもできるらしい」
そう考えて、ご自身(本人訴訟)で手続きを始めようとする方がいます。
もちろん、法律上は本人でも手続きは可能ですが、そこには専門家でなければ乗り越えられない多くの壁が存在します。
今回は、弁護士に依頼する場合と自分で行う場合の違いについて、忖度なしに解説します。
1 比較表
| 項目 | 自分でやる場合 | 弁護士に依頼する場合 |
| 費用 | 実費(数万円)のみで済む | 着手金・報酬金がかかる |
| 手間 | 書類作成、裁判所への出頭など膨大 | ほぼ全て丸投げできる |
| スピード | 手探りで行うため時間がかかる | 最短ルートで行うため速い |
| 精神的負担 | 誹謗中傷を直視し続ける必要がある | 弁護士が代行するため軽減される |
| 成功率 | 法的知識不足で失敗しやすい | 専門知識により最大化される |
2 最大のリスクは「権利侵害の立証」の難しさ
開示請求で最も難しいのは、「この書き込みは違法だ」と裁判官やプロバイダを説得する(法的に構成する)ことです。
単に「傷ついたから開示して」と訴えても、裁判所は認めません。
ここの詰めが甘いと、せっかく裁判を起こしても「権利侵害が明らかではない」として棄却(敗訴)されてしまいます。一度失敗すると、同じ事案でやり直すことはほぼ不可能です。
3 プロバイダの対応の違い
サイト管理者やプロバイダによっては、一般人からの任意の開示請求は門前払いし、「弁護士からの照会なら対応する」「裁判所の命令がないと動かない」という態度をとるところも少なくありません。
弁護士名義で通知を送るだけで、相手の対応の本気度が変わることは実務上よくあります。
4 加害者にバレずに進められるか?
自分で手続きを行う場合、開示請求の過程で、相手方(加害者)に自分の氏名や住所が知られてしまうリスクがあります(訴状に原告の住所氏名が記載されるため)。
弁護士に依頼すれば、手続き上の工夫により、被害者の個人情報を極力秘匿したまま進めることも可能です。
5 結論:費用対効果をどう見るか
確かに費用はかかりますが、それは「成功率」と「安心」、そして「時間」を買うためのコストです。
「絶対に失敗したくない」「相手を特定して責任を取らせたい」という本気度が高いのであれば、最初から専門家である弁護士に任せるのが、結果として一番の近道となります。

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リツイート(リポスト)や「いいね」でも訴えられる?
「共感したから『いいね』を押しただけ」
SNSにおいて、これらの行為は日常的に行われています。
しかし、そのワンタップが、時には数百万円の損害賠償請求に繋がる可能性があることをご存知でしょうか。
今回は、拡散行為(リポスト/リツイート)と、賛同行為(いいね)の法的責任について、最新の裁判例を交えてみていきます。
1 リツイートは「投稿と同じ」とみなされる
他人の誹謗中傷投稿をリツイート(リポスト)する行為について、裁判所は厳しい判断を下しています。
過去の裁判例において、裁判所は「リツイートは、元の投稿内容をそのまま自身のフォロワーに表示させる行為であり、自身の発言として発信したのと同等の責任を負う」と判断しました。
つまり、「他人が書いた悪口だから自分は関係ない」という言い訳は通用しません。
コメントなしのリツイートであっても、その内容が名誉毀損に当たる場合、リツイートした人自身も損害賠償責任を負うことになります。
2 「いいね」を押しただけで違法になる?
これまでは、「いいね」を押す行為は単なる好意的な反応に過ぎず、違法性は問えないと考えられていました。
しかし、状況が変わりつつあります。
2022年の東京高裁判決において、執拗に他者を侮辱する投稿に対して繰り返し「いいね」を押した行為が、名誉感情を侵害する違法行為であると認定されました。
もちろん、すべての「いいね」が直ちに違法になるわけではありませんが、
①悪意を持って執拗に行われた場合
②社会的な影響力がある人物が行った場合
③ハラスメントの一環として行われた場合
などは、法的責任を問われるリスクがあります。
3 安易な拡散(拡散希望)のリスク
「犯人はこいつだ!拡散希望!」
ネット上の私刑(リンチ)や、デマ情報の拡散に加担してしまうケースも後を絶ちません。
もし拡散した情報が「人違い」や「デマ」だった場合、元の投稿者だけでなく、拡散した全員が法的責任を問われる可能性があります。
「みんながやっているから大丈夫」ではありません。被害者が本気になれば、拡散者を片っ端から特定して訴えることも物理的には可能です。
4 もし訴えられたら、または被害に遭ったら
自分が拡散してしまった側で、開示請求の意見照会書が届いた場合は、すぐに弁護士に相談し、適切な回答書を作成する必要があります。場合によっては早期の示談が最善策となります。
逆に、自分の悪口が拡散されて被害に遭っている場合は、元の投稿者(発信源)を特定すると同時に、悪質な拡散者に対しても法的措置を検討しましょう。デマの拡散を止めるには、毅然とした対応が必要です。

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退職者による書き込みへの対応
「転職会議」「OpenWork(旧Vorkers)」「キャリコネ」「en Lighthouse(旧カイシャの評判)」などの転職口コミサイト
これらは求職者にとって有用な情報源ですが、企業にとっては退職者(元社員)による恨み節や、事実と異なる書き込みの温床となりがちです。
こうした専門サイトの削除は、一般的な掲示板とは異なる難しさがあります。
1 各サイトの削除ポリシーと傾向
これらのサイトは、「会員登録した元従業員」から情報を集めるビジネスモデルであり、投稿者の匿名性を強く守る傾向があります。また、サイト側も「多少のネガティブ情報も、求職者にとっては有益」というスタンスを取っているため、問い合わせフォームからの任意の削除依頼には、なかなか応じてくれません。
「事実と異なる」と主張しても、「投稿者の主観的な体験・感想ですので削除できません」と返答されるのが関の山です。
2 削除・特定のための法的手段
任意の削除が難しい場合、裁判所への「仮処分申立て」を行います。
ここで重要になるのが「虚偽の事実」であることの立証です。
例えば、「サービス残業を強要された」と書かれた場合、会社側は「タイムカードと給与明細を照らし合わせ、全額支払われている」という客観的な証拠を提出します。
裁判所が「真実ではないことが明らか」と判断すれば、サイト運営者に対して削除命令やIPアドレスの開示命令が出されます。
3 投稿者は誰か?-退職者の特定
開示請求が進み、プロバイダから契約者情報が開示されれば、投稿者が「どの元社員か」が特定できます。多くの場合、円満退社しなかった人物や、在職中にトラブルがあった人物です。
特定後は、損害賠償請求を行うだけでなく、「退職時の秘密保持誓約書違反」を問える可能性もあります。
4 サイト側とのガイドライン攻防
裁判まで行かなくても、各サイトの「ガイドライン違反」を精緻に指摘することで、削除に成功するケースもあります。
①個人名の記載: 上司や同僚の実名が出ている。
②プライバシー侵害: 社内の特定の個人しか知らない事情が書かれている。
③過度な暴言: 批評を超えた侮辱的表現がある。
転職口コミサイトの悪評は、数年にわたって採用活動の足を引っ張り続けます。
「どうせ消えない」と諦めず、特に悪質なものから優先的に法的対処を行うことが、優秀な人材を確保するための投資となります。

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競合他社による嫌がらせの口コミ―不正競争防止法や偽計業務妨害での対抗措置
「ある時期から急に、低評価の口コミが増えた」「内容が具体的ではなく、同業者しか知らないような専門用語が使われている」
もしこのような不自然な口コミがあれば、それは競合他社による組織的なネガティブキャンペーン(嫌がらせ)かもしれません。
ライバルを蹴落とすための誹謗中傷は、単なる名誉毀損を超えた重い責任を問える可能性があります。
1 「不正競争防止法」違反としての責任
不正競争防止法では、「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、または流布する行為(信用毀損行為)」を不正競争行為として禁止しています(同法2条1項15号)。
もし加害者が競合他社であると特定できた場合、この法律に基づいて以下の請求が可能です。
①差止請求: 書き込みの削除や、今後同様の行為を行わないよう求める。
②損害賠償請求: 売上の減少分だけでなく、信用の回復に必要な措置(謝罪広告など)の費用も請求できます。
2 「偽計業務妨害罪」での刑事告訴
嘘の情報を流して他人の業務を妨害する行為は、刑法の「偽計(ぎけい)業務妨害罪」(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)に該当します。
競合他社が身分を隠して(あるいは業者を使って)大量の虚偽口コミを投稿し、お店の予約を妨害したり、問い合わせ対応に忙殺させたりする行為は、立派な犯罪です。警察が捜査に入れば、会社のパソコンなどが押収され、相手企業にとっては致命的なダメージとなります。
3 同業者の特定は難しい?
「ライバル社がやっている気がするが、証拠がない」という場合がほとんどでしょう。
しかし、発信者情報開示請求を行うことで、意外な尻尾が掴めることがあります。
①IPアドレスが会社のものだった: 脇の甘い従業員や経営者が、会社のWi-Fiから投稿しているケースがあります。IPアドレスからプロバイダを特定し、それが法人契約であれば、相手企業を特定できる可能性が高まります。
②投稿のタイミングや内容の類似性: 複数のアカウントを使っていても、接続元が同じであったり、投稿のクセが似ていたりすることから、同一人物による自作自演が暴かれることがあります。
4 泣き寝入りせず調査を
同業者からの嫌がらせは、放置すればエスカレートし、自社の存続に関わります。「もしかして?」と思ったら、疑心暗鬼になる前に弁護士へ調査を依頼してください。法的な証拠を掴めば、相手に対して強力な反撃が可能になります。

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企業のネット風評被害対策
現代のビジネスにおいて、インターネット上の評判(レピュテーション)は企業の資産そのものです。「検索したら悪口が出てくる」というだけで、売上の低下や採用活動の不振に直結するリスクがあります。
本日は、企業が直面する風評被害の実態と、弁護士を入れることで何が変わるのかについて解説します。
1 風評被害が企業に与える「3つの実害」
ネットの書き込みを「たかがネット」と軽視していると、ボディブローのように経営にダメージを与えます。
①売上・集客への影響
飲食店やサービス業では、口コミサイトの点数が0.1下がるだけで数%の売上減になると言われています。BtoB企業でも、取引開始前の与信調査でネガティブな情報が見つかり、契約が見送られるケースがあります。
②採用活動(リクルーティング)への影響
求職者のほぼ100%が、応募前に対象企業を検索します。「ブラック企業」「パワハラがある」といった書き込みがあれば、優秀な人材ほど応募を避けます。内定辞退の増加にも直結します。
③従業員のモチベーション低下
自社が悪く書かれているのを見るのは、既存社員にとっても辛いものです。「うちの会社、こんなに評判が悪いの?」と不安になり、離職率の増加を招きます。
2 「表現の自由」と「企業の名誉」
企業には、個人と同様に「名誉権」や「信用」を守る権利があります。
しかし、企業は社会的な存在であるため、個人に比べて「批判を受け入れるべき範囲(受忍限度)」が広く解釈される傾向にあります。
「料理が美味しくない」「サービスが悪かった」といった顧客の感想レベルや、「残業が多い」といった事実に基づく労働環境への批判は、正当な批評として保護される可能性が高く、簡単には削除できません。
一方で、「事実無根の嘘」「過度な罵倒」「誹謗中傷」については、法的措置により削除や特定が可能です。
3 法務部ではなく外部弁護士に依頼するメリット
多くの企業には法務担当者がいますが、ネット風評被害対策は非常に専門的なノウハウ(IPアドレスの仕組み、各サイトの削除基準、海外法人への送達など)を要する特殊分野です。 通常の企業法務(契約書チェックなど)とは勝手が違うため、社内で対応しようとすると時間がかかり、その間に被害が拡大してしまいます。
ネット問題に特化した外部弁護士であれば、「どの書き込みなら消せるか」の目利きが早く、最短ルートでの削除・開示請求が可能です。

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