本日は、退職勧奨を断った従業員に対する子会社への出向命令が無効であると判断された裁判例についてご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。
1 リコー退職勧奨拒否事件(東京地判平25・11・12労判1085・19)
【判示の概要】
そもそも、業務上支障のない余剰人員の割合を六%とする客観的、合理的な根拠自体が明らかとはいえない。各部門一律に同じ割合で余剰人員を人選するよう割り振られていることからみても、六%という割合は、事業実績や将来の経営予測に基づくきめ細やかな検討によって算出されたものではなく、競合他社と比較した、売上げに対する人件費率の目標値から機械的にはじき出された数値であることがうかがわれる。
余剰人員の人選が、人事グループによる依頼後わずか一か月強で終了していること、一般の従業員が第一七次中計の大規模な人員削減方針を知った時点では、既に余剰人員の人選が相当程度進行していたと思われること等も併せ鑑みれば、被告における余剰人員の人選が、基準の合理性、過程の透明性、人選作業の慎重さや緻密さに欠けていたことは否めない。
以上の点及びその他の事情を踏まえると、余剰人員の人選は、会社側が主張するような事業内製化を一次的な目的とするものではなく、退職勧奨の対象者を選ぶために行われたものとみるのが相当である。
したがって、本件出向命令は、人事権の濫用として無効というほかない。
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