日本への輸入で知っておくべき「関税率」の種類と優先順位

【結論】どの税率が適用されるかで輸入コストが劇的に変わります

日本に貨物を輸入する際、支払うべき関税額を決める「税率」には複数の種類があり、「どの国の製品か(原産地)」「どんな協定があるか」によって適用される優先順位が決まっています。

結論から申し上げますと、現在の輸入実務において最も重要視すべきは「EPA(経済連携協定)税率」です。特に2022年に発効したRCEP(アールセップ)の活用により、中国や韓国からの輸入でも免税・減税の恩恵を受けられるケースが飛躍的に増えました。

最も有利な税率を選択できるかどうかで、ビジネスの利益率は大きく変動しますので、輸入ビジネスに関わる全員が押さえていただく必要がある内容となります。

 

1 知っておきたい「税率の適用優先順位」

関税率には法律で定められた「国定税率」と、条約に基づく「協定税率」があります。これらが競合する場合、一般的に以下の順序で適用されます。

①特恵税率

②協定税率(ただし、暫定税率又は基本税率よりも低い場合)

③暫定税率

④基本税率:最終的なベースライン。

 

2 現代の輸入実務の主役「EPA税率」

現在、日本の輸入において最も戦略的な価値が高いのがこの税率です。

(1)RCEP(地域的な包括的経済連携協定)のインパクト

2022年1月に発効したRCEPは、中国、韓国との貿易において特に重要なEPAです。 中国や韓国からの輸入貨物に対し、段階的に関税が撤廃・削減されていきますが、実務上の注意点としては、以前はWTO協定税率(約3%〜10%程度)を支払っていた製品が、RCEPを活用することで「無税」になるケースが増えています。

 

(2)CPTPP(いわゆるTPP11)

CPTPPでは、カナダ、オーストラリア、ベトナムなどとの間での高度な自由化を規定しており、農産品や工業製品など、幅広い品目で即時または段階的な撤廃が進んでいます。

 

(3)日欧EPA・日英EPA

チーズやワインなどの食品から、自動車部品などの工業製品まで、欧州・英国との貿易において強力なコスト削減ツールとなります。

【実務家からの注意点】

EPA税率は「自動的」には適用されません。

輸入申告時に、その貨物が確かにその国で作られたものであることを証明する「原産地証明書」の用意、または「自己申告制度」の利用が必須となります。この手続きを誤ると、後日追徴課税を受けるリスクがあるため注意が必要です 。

 

3 開発途上国を支援するための「特恵税率」

特恵税率は、発展途上国からの輸入を促進するための制度です。

①一般特恵税率(GSP): 日本が指定する開発途上国を原産地とする場合に適用。通常の税率より低く設定されています 。

②特別特恵税率(LDC): 後発開発途上国(カンボジア、バングラデシュ等)を原産地とする場合、原則として「無税」となります 。

 

4 世界標準の「WTO協定税率」

WTO加盟国(約160カ国以上)からの輸入に適用される税率です。

実務上、EPAや特恵税率の条件を満たせない場合に、最も頻繁に参照される「上限の基準」となります。

 

5 原則的な「基本税率」と「暫定税率」

①基本税率:法律(関税定率法)で定められた恒久的な税率ですが、現在これが適用されるのはごく一部の非加盟国に限られます。

②暫定税率:産業保護や物価安定などの政策目的で、基本税率を一時的に修正して適用されます。

 

6 最新の輸入ビジネスにおけるリスク管理

現代の輸入において、単に「税率を調べる」だけでは不十分です。

特に注意すべき2点をお伝えします。

①経済安全保障と輸入制限

関税率だけでなく、特定の国からの輸入に対する制限や、輸出管理の強化が進んでいます。税率が低いからといって安易に輸入を決めず、リーガルチェックを欠かさないことが重要です。

②事後調査への備え

税関は輸入から数年後に「事後調査」にやってくることがあります。「EPAを適用して無税にしていたが、実は原産地の証明が不十分だった」と判断されると、数年分の差額関税と延滞税を一度に請求される恐れがあります 。

日本の通関手続では申告納税方式が採用されておりますので、輸入許可が出ているからと言って申告が正しかったというわけではありません。日常的な備えが非常に重要であることは改めて強調しておきたいと思います。

 

7 輸出入・通関のトラブルは、専門知識を持つ弁護士へ

当事務所の代表弁護士は「通関士」の資格も保有しており、法律と実務の両面から輸出入ビジネスをバックアップいたします。

①「この貨物に最適なEPAはどれか?」

②「正しいHSコード(税番)の選択ができているか?」

③「原産地規則の条件を満たしているか?」

こうした悩みは、ビジネスの根幹に関わります。輸入貨物の税率や通関手続きについて、少しでも不安や疑問がある方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

【お問合せは、こちらから】

 

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(プロフィールは、こちら

 

(注)2026年3月時点の法規制に基づき内容を改定

 

 

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