適正な輸入申告価格が何かを把握するためには、まずは輸入取引がどの取引に該当するかを検討することが出発点となります。
そして、関税定率法や基本通達において規定された加算要素を適切に把握して正確に算定することが重要です。
本日は、例外的に加算要素から除外される買付代理人に対する手数料に関してご紹介いたします。
1 買付手数料について
関税定率法基本通達4-9(1)において、仲介料その他の手数料とは、輸入取引に関して業務を行う者に対し買手が支払う手数料をいうと規定されております。
このうち、「買付けに関し当該買手を代理する者に対し、当該買付けに係る業務の対価として買手により支払われる手数料」以外のものは、課税価格に算入するとされています。
そして、同通達(3)において、買付手数料に該当するか否かの判断は、契約書等における名称のみによるものではなく、手数料を受領する者が輸入取引において果たしている役割及び提供している役務の性質を考慮して行うものとし、具体的には以下の①から③までの各要素を踏まえるとされています。
①手数料を受領する者が「買付けに関し買手を代理して当該買付けに係る業務を行う者」であることが、買付委託契約書等の文書により明らかであること。この場合において、「買付けに関し買手を代理して当該買付けに係る業務を行う者」とは、買手の管理の下で、買手の計算と危険負担により(イ)から(ニ)までのような業務を行う者をいう。ただし、当該手数料を受領する者が一の輸入取引に関し売手と買手の双方を代理している場合には、当該手数料は買付手数料には該当せず、課税価格に算入する手数料となる。
(イ) 契約の成立までの業務 (ロ) 商品の引渡しに関する業務 (ハ) 決済の代行に関する業務(ニ) その他(例えば、クレーム処理に関する交渉を行う業務)
②手数料を受領する者が買付けに関し買手を代理して当該買付けに係る業務を実際に行っているという実態の存在が文書や記録その他の資料により確認できること
③税関の要請がある場合には、売手と買手との間の売買契約書、輸入貨物の売手(製造者等)が買手にあて作成した仕入書等を提示することが可能であること
2 輸入申告価格は慎重に検討することが必要です
間違った輸入申告価格を申告してしまうと、つまるところ脱税と同じ状況となってしまいますので輸入申告価格は慎重に算定することが必要です。
このような検討を経ることなく間違ってしまうと、数十%にのぼる追徴税や、最悪のケースでは刑事事件化されてしまう場合もあります。
特に加算要素については、関税定率法や基本通達において細かく規定されておりますので、漏れが発生することも多い内容です。
また、買付代理人に該当するかどうかという論点は誤解も多い部分ですので関税定率法や基本通達の内容を正確に把握した上で、適切に対応することが重要です。
当事務所は、輸出入や貿易関連のトラブル、事前教示制度の利用や税関事後調査をはじめとする税関対応等を幅広く取り扱っておりますので、輸入申告価格を正確に把握することが難しい場合等少しでも不安がある場合には、まずはご相談ください。